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根本山
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登山口に到着!
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林道の崩壊箇所を進む
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根本沢の渓畔林
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鉄ハシゴを登る
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根本神社の鐘楼堂
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根本山の山頂
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十二山神社を通過
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熊鷹山の山頂
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スリルと変化に富んだ根本沢コース
《マイカー利用》 …東北自動車道・佐野藤岡I.C-《車60分》-不死熊橋〜(根本沢)〜根本神社(奥宮)〜行者山〜峰の平〜中尾根十字路〜根本山1199m〜十二山神社〜十二山1143m〜熊鷹山1169m〜(石鴨林道)〜不死熊橋-《車30分》-桐生温泉「湯らら」(入浴)-《車40分》-佐野藤岡I.C 【歩行時間:
5時間30分】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
上野(こうずけ・群馬県)と下野(しもつけ・栃木県)にまたがるのが桐生川で、その源流部に聳えるのが根本山(ねもとやま・1199m)だ。かつてはいわゆる修験道の山として、特に江戸時代には参詣の人々で賑わったという。“幕吏の手の届かぬ山頂付近で当時は賭博が開帳されていた…”
というのがお国柄を反映しているようで面白い。清流の桐生川は渡良瀬川に合流して坂東太郎(利根川)となって太平洋へ注いでいる。
昭和54年に、この地域(根本沢一帯)は群馬県と栃木県の自然環境保全地域に指定されている。また、昭和61年には桐生川源流林は国の「森林浴の森100選」にも選定されている。…もう、出掛ける前から期待に胸が膨らむ。
明け方まで降っていた雨は上がったようだ。快方へ向かうという天気予報を信じてマイカーを走らせる。助手席には何時もの山の相棒(妻の佐知子のこと)が、カーナビに仕事を奪われて眠そうにしている。
東北自動車道の佐野藤岡I.Cから一般道へ入り、県道66号線(群馬県道・栃木県道66号桐生田沼線)を北西へ進む。梅田湖を梅田大橋で渡ってから右折して、桐生川に沿って県道上藤生大州線を北上する。対岸の森に薄紫色のアクセントをつけているのは(ヤマ?)フジで、近くの沿道に黄色く咲いているのはヤマブキに違いない。
集落が途絶えて心細くなってきた頃、駐車スペースのある二又の分岐へ出る。林道三境線を左方へ見送り、直進して石鴨林道を進む。すると間もなく車止めのある不死熊(ふしくま)橋手前の狭い駐車スペースに着いた。何処も彼処も閑散としている。仕度して、歩き始めたのは午前9時20分頃。春の花と夏の花の狭間で足元に咲いている花は少ないが、新緑のグラデーションがなんとも云えず美しい。
じつは、私達はしょっぱなから道を間違えてしまう。復路に判明したことだが、不死熊橋を渡った左手の岩壁にロープがあって、ここが目指す根本沢コースの入口だったのだ。道標がなかったことが直接の原因で、上流の滝に目を奪われていたことが間接的な原因だが、仮にガイドブックをよく読んだりサイト検索で下調べをしてきたとしても、そこが登山口だと気付くのはかなり難しいと思う。
なんか変だなぁと思いながら、右側へ続く林道を少し進むと分岐があって、そこには道標があり、左方が「中尾根コース」へ続く道になっている。 「もうこうなったら尾根コースを進もう!」 と佐知子と意気投合する。道沿いのヤマツツジの花がちょうど見ごろを迎えている。
暫くするとまた道標のある分岐があり、右手が中尾根コースの山道になっている。ここで2万5千図を取り出してよく見ると、このまま直進すれば当初予定の根本沢コースへ合流するようだ。 「やっぱり沢コースを進もう!」 と気を取り直し、崖崩れで寸断された林道を恐々と進む、付和雷同な私達夫婦だった。
根本沢は、期待に違わぬ、植生豊かな原生の渓畔林だった。イロハモミジ、イタヤカエデなどのカエデ類、ヤマハンノキやヤシャブシなどのハンノキ類、イヌシデやアカシデなどのシデ類、サワシバ、イヌブナ、ミズナラ、サワグルミ、ケヤキなども姿を見せるが、なんといってもシオジ(モクセイ科の落葉高木)の巨木が無造作に林立する森の姿が素晴らしい。栃木県のサイト(自然環境課)によると、ここのシオジ群落は“ほぼ分布北限にあたる”とのことで、かなり貴重な存在であるらしい。私にとっては、この沢にチドリノキ(カエデ科カエデ属)が多かったのも非常に興味深かった。サワシバやクマシデなどの所謂普通の形の葉に似ていてちっともカエデらしくないが、葉のつきかたが対生なので見分けがつく。やはり水っけを好む(谷あいの)樹種らしい。
しかしいつまでものほほんと植物観察をしているわけにはいかなかった。何度となく(合計で約20回)渡渉を繰り返すのだが、今朝方までの雨の影響で水量が多く、慎重にならざるを得ない。道標も頼りなく、ルートファインディングにも気を遣う。
「十四丁」とか「十三丁」などと彫ってある古い丁石が沢筋の所々に出てくるが、これもかつての隆盛の名残りであるらしい。天満宮から根本山神社までの距離を示す標石とのことだ。魚止めの滝を過ぎ、2基の石祠の前でも中休止。林床のリョウメンシダも新緑で、その明るい緑が美しい。
「五丁」の丁石を確認してから少し進んだ辺りは、ロープの張ってある箇所もあるが、道が崩落して荒れている難所もあったりして、注意が必要だ。ヒデノキ沢に架かる木橋は崩れていた。沢の二股を右折するころから鉄ハシゴやクサリもでてきて、いよいよこのコースの核心部だ。瀬音が段々と遠のいていく。
岩稜の上に今にも朽ち果てそうな鐘撞堂や祠が建っていたが、それが根本神社の奥宮だった。柱が土台から浮いていたりして危なそうな建物だったので、私達は近づくのをためらって通り過ぎてしまったが、やっぱり参拝すべきだったかなぁ…。
根本神社奥宮からは更に長いスリルの岩場が続いた。クサリやヒノキの根っこにつかまって必死に登る。この辺りが行者山と呼ばれているようだが、これも標識が無いので判然としない。急登が一段落する箇所から振り返ると待望の展望が北面に開け、日光の男体山や皇海山が浮き上がっている。左端には懐かしのギザギザ頭(袈裟丸山)もよく見えている。辺りのトウゴクミツバツツジはまだ花をつけているが、アカヤシオは殆ど散っていて、落ちているピンクの花びらを足元に見ながら進む。石灯籠のある場所を通り過ぎ、峰ノ平と思しき小ピークを越え、中尾根十字路を左折すると間もなく根本山の山頂だった。
根本山の山頂部はミズナラ、リョウブ、ネジキ、ツツジ類、ツガなどの雑木林だった。標高の関係か、こちらは未だ芽吹きの春で、林内は明るい。その奥まった処に辛うじて花をつけているアカヤシオを発見して、私達は大いに盛り上がった。13時45分頃、山頂を辞す。
暫くすると古びた鳥居や石祠や石碑のある荒れた感じの広場へ出るが、ここが十二山神社(十二山根本山神社)のようだった。何故か大きな斧の刃のようなものが無造作に地面に転がっていたりする、不可思議な空間だった。十二神将に因む謂れがあるらしい。さらに熊鷹山を目指し、北東の方向へぐるっと馬蹄形に尾根道を進む。
やはり樹林に囲まれて展望の無い十二山の地味な山頂を通過し、なだらかに南へ向う。稜線の一帯はミズナラやブナやリョウブなどが疎に生える明るい林で、林床は背の低いミヤコザサだ。木々の隙間からは周囲の山々がよく見えている。右手には谷を隔てて根本山も頭を出している。 「あんなに険しかったのに、こっちから見るとドテッとした姿なのね」 と佐知子が感慨深げに云っている。
二等三角点のある熊鷹山の山頂へついたのは14時50分頃だった。周囲にはトウゴクミツバツツジやアカヤシオもまだ咲いている。木製の展望台へ上がると1点360度の(本日一番の)大展望だ。遠景は霞んでいたが、近くの安蘇山地の山々や日光連山などはくっきりと見えている。西の方向には赤城山と思しき大容量が山頂部に雲を被ってずっしりしている。花や展望に恵まれて、私達は仕合わせなひとときを過ごす。
熊鷹山から稜線を南へ少し下り、丸岩岳へ続く尾根道を左へ見送って、標高差約200mの急勾配をずんずん下る。間もなく石鴨林道へ出て、ここからは十二沢に沿ったなだらかな林道歩きが約1時間。振り出しの不死熊橋に戻りついたのは16時30分頃だった。変化に富んだ今回の日帰り周遊コースは、私達にとってはちょうどいいボリュームの歩程だ。
たっぷりと新緑に染まった私達の心を、なるべくそっとしておきたかったので、静かに車を走らせて帰路についた。
 桐生温泉「湯らら」: 根本山登山の帰路には、桐生市や佐野市や太田市などに日帰り温泉施設がたくさんあり、下山後の入浴には事欠かない。この日は桐生温泉に立ち寄ってみた。清潔で立派な大浴場、露天風呂、サウナ、大広間、レストラン、エステ関係など、なんでもありといった感じの、近頃の地方都市によくあるパターン。地下1560mから湧き出る天然温泉を使用、とのこと。私達は利用しなかったが、砂塩風呂(別料金・予約制)はちょっとユニークかも。
入浴後、閑散とした大広間で食事したりして、充分に休んでから家路についた。なにやかやで、大満足な一日だった。
* 佐野市の「佐野やすらぎの湯」については「赤雪山から仙人ヶ岳」の頁を参照してみてください。
桐生温泉「湯らら」のHP
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
熊鷹山の山頂から西面を望む(右側の山が根本山)
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クサリ場を登る
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アカヤシオ咲くミヤコザサの山稜
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