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大滝(不動滝)
子供たちの絵
カッコソウの保護地
雷神岳神社(肩の広場)
雷神岳神社の狛犬
東峰(桐生岳)の山頂
西峰(仁田山岳)の山頂
花台沢ノ頭にて
山稜のミズナラ(?)林
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森林浴の尾根歩きが素晴らしい!
東武鉄道・新桐生駅-《タクシー25分》-大滝登山口(樹徳高校大滝山荘前)〜不動ノ滝〜雷神岳神社(肩の広場)〜桐生岳(鳴神山東峰980m)〜仁田山岳(鳴神山西峰)〜雷神岳神社〜湯山沢ノ頭945m〜花台沢ノ頭812m〜三峰山697m〜金沢峠〜金沢集落・兼宮神社・観音橋バス停-《バス40分》-新桐生駅 【歩行時間:
4時間20分】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
東武伊勢崎線の浅草駅から午前7時40分発の特急「りょうもう3号」に乗り、 新桐生駅に着いたのは9時17分。都内の自宅から栃木県や群馬県などの近郊の山へ行くときはいつも感じるのだが、関東平野はとても広い。
新桐生の駅前からはタクシーを利用する。渡良瀬川を渡って、市街を抜ける辺りからその支流でもある桐生川に沿って遡行する。ようやく山々が近くになってきて、閑静な梅田町に入る。下山予定地の観音橋バス停を通り過ぎ、その少し先から県道66号線を右に見送り、桐生川の支流の高沢川に沿って更に北上する。
新桐生駅前から約25分で、石の鳥居と樹徳高校大滝山荘の建物がある鳴神山(なるかみやま)の大滝登山口に到着した。ここは木品集落の少し手前に位置しているようだ。大人しいタクシーの運転手さんに支払った料金は3,950円。久しぶりのいつものメンバー(夫婦登山)だ。言葉少なげにそれぞれ案内板を見たり準備体操をしたりして、鬱蒼とした杉林に足を踏み入れたのは10時頃。スギの赤っぽい雄花が…、花粉をいっぱいためて今にも破裂しそうだ。予想によると今春はスギ花粉の飛散量が特に多いらしい。そんなおどろおどろしい光景を脳裏に描きながら、恐々とそっと、沢に沿った広い登山道(林道)を西へ進む。
歩き始めて間もなく、落差7〜8メートルほどの、“大滝”というにはこじんまりしているが、案外立派な「不動ノ滝」を左手に見物する。登山道の傾斜が徐々にきつくなってくる。風の音と瀬音に交じって佐知子のザックに括りつけられているクマよけの鈴の音が林内に鳴り響く。
所々に「しぜんをたいせつに!」などと書かれた子供たちの絵が木の幹に括りつけられていて、心和むのだが、古くなって汚れてしまい見るに堪えない状態のものもある。
足元が岩っぽくなってきた。この山の地質はチャートなどの堆積岩であるらしい。
鳴神山は田中澄江さん(1908〜2000)の「新・花の百名山」でも紹介されている“花の山”だ。この平凡な人工林に、春になるとカタクリ、ニリンソウ、ヒメイワカガミ、スミレ類、などの花がたくさん咲くというから不思議だ。この山で初めて発見されたのでその名がついたというナルカミスミレはヒトツバエゾスミレ(エイザンスミレの変種)の白花品種であるという。鳴神山名物のカッコソウ(勝紅草:サクラソウ科サクラソウ属)やヒイラギソウ(柊草:シソ科キランソウ属)は絶滅の危惧される貴重な種であり、特にカッコソウは地元で保護・育成しているようだ。
そのカッコソウの保護地を過ぎると空が開けてきて、間もなく山頂直下の“肩の広場(雷神岳神社)”に到着する。辺りは何時の間にかスギ林からヒノキ林に移行している。予想していた通り稜線では強い風が吹いている。
雷神岳神社は“なるかみだけ…”と読むらしい。この地域に落雷が多いことと関係がありそうだ。日本武尊を祀る本殿は安普請だが、オオカミと思われるコミカルな表情の一対の石像(狛犬)がユニークだ。暫く神社付近をウロウロしてから、ジャケットの風防をしっかり頭に被って、気を引き締めて、まずは右手の東峰・桐生岳へ登る。鳴神山は双耳峰なのだ。
桐生岳の狭い山頂には4つの小さな石祠があった。そして、一点360度の大絶景、と云いたいところだが、西側の赤城山方向がツツジ類やアカマツなどの樹木に遮られているので、厳密には“一点300度くらい”といったところかも。近くの足尾山地の眺めは勿論のこと、北面の袈裟丸山から皇海山、奥白根山、男体山…と続く日光連山の景色が特に素晴らしい。標柱の裏側に括りつけられている温度計によると摂氏約2度だ。風の弱まっている南側の少し下った小平地に陣をとり、ヤシオツツジの枝の隙間から桐生の街並みなどを俯瞰しながら、浅草駅で買ってきた弁当を食べる。佐知子は「三社いなり」、私は「鳥めし弁当」。山で食べる駅弁はとても美味いのだ。
食後、いったん“肩の広場”に戻ってから西峰の仁田山(にたやま)岳へ急坂を登り返した。こちらも狭い山頂で石祠は2基、周囲はヤシオツツジなどのツツジ類だらけだった。その花期はさぞかしステキだろうと思う。登ってきた道と反対の方向にはっきりとした踏み跡が続いていたので、少し進んでみて驚いた。じつは東峰の桐生岳山頂から少し下った処に川内方面への分岐があり、そちらへ進めばこの西峰の山頂はすぐ近くだったのだ。その道標に“仁田山岳山頂への近道”とでも、カッコ書きでもいいから、標記しておいてくれたらよかったのに、と佐知子が不満をぶちまけていた。まぁ、時間にして数分の“まわり道”だから…、そうコトを荒立てずともよいのではないかとも思うし…、“肩の広場”から西側を回りこんだおかげで赤城山の全容もくっきりと見ることができたのだし…。
ところで、鳴神山の山頂にあるはずの三等三角点(点名:岳山)のことだが、桐生岳山頂にあった石柱は桐生市の基準点だったし、仁田山岳の山頂付近にも、いくら捜しても三角点の標石は見つからなかった。帰宅してから国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」にアクセスして、その“現況情報”を読んでみてわかったのだが、鳴神山の三角点は2010年1月18日現在で「亡失」してしまっているようだ。この山では…、カッコソウなどの希少な山野草だけでなく、三角点の標石まで“盗掘”されてしまったのだろうか…?
雷神岳神社のある“肩の広場”から南へ続く山稜の林相が素晴らしかった。湯山沢ノ頭を過ぎる辺りまでは、左手(東側)が鬱蒼としたヒノキの人工林で、右手(西側)が明るい天然林だったが、その先からは両側とも天然林なのだ。私達夫婦が大好きなミズナラ林だ。脇役の樹種はヤマザクラ、ミズキ、イヌブナ、クリ、リョウブ、ホオノキ、ネジキ、シデ類、ツツジ類などで、なんともステキな森林浴の尾根歩きだ。四等三角点の標石がある花台沢ノ頭、石祠と神像が置かれた三峰山、と快適にアップダウンしながら進む。
足元を見ながら歩いていてふと気付いたことがある。落ち葉はその殆どがミズナラだと思っていたのだが、それがやけに大きいのだ。まるでカシワの葉っぱのようだ。関東山地においてはミズナラは凡そ標高1000m以上に生育するが、この山稜はその高度的な(垂直分布の)下限に位置していて、ギリギリの線で、ミズナラにとっては恵まれた環境なのかもしれない。
→ ナラガシワかそれらの交雑種だった可能性もあります。(後日追記)
三峰山を過ぎると再び左(東)側がヒノキ林になって、それを風害などから守るために植栽されたと思われるアカマツが右側に目立ってくる。
金沢峠から左折して尾根を外れ、再び出てきたスギの人工林をひたすら下る。下りも気分のいい沢筋だ。しかし早々に林道の舗装路へ出て、しーんと静かな金沢集落を通過する。県道66号線に突き当たる左手前に兼宮神社があり、その斜め前が観音橋バス停だった。午後4時丁度。4時45分発の新桐生駅行きのバスまでにはまだたっぷりと時間があるので、付近を散歩したり兼宮神社に参拝したりしたが、それでも時間が余ってしまった。バス停のベンチにじっと腰掛けていると、風が強いのでとても寒い。この桐生市の「おりひめバス」の運賃が200円均一、ということはこのあと知ったことなのだが、そのときは驚いて感動した。
後日談だが、この日から佐知子は風邪を引いてしまって、おまけに石油ストーブの灯油缶を運んだときにギックリ腰をやってしまい、自宅でずっとヒーヒー云っている。
鳴神山の山頂からの展望(北面)
左奥が袈裟丸山、右奥が男体山・・・わかるかなぁ…
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