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No.296 三方分山1422m(御坂山地)
平成24年(2012年)2月19日 晴れ午後からは曇り

三方分山・略図
前方の鞍部が女坂峠です
精進からスタート

バックは三方分山です
女坂峠にて大休止

思ったほどの積雪ではなかったです
残雪の山稜を登る

自動シャッターで証拠写真
三方分山の山頂にて

手前の大室山が可愛らしい(わかるかなぁ〜)
子抱富士(山頂から撮影)

ステキな自然林です
ミズナラの山稜

下山道から振り返って眺めた三方分山
三方分山を振り返る


人間って案外とワンパターンなのかも…

富士急行河口湖駅-《バス35分》-精進(標高約900m)〜女坂峠〜三方分山1422m〜精進山1409m〜精進峠〜パノラマ台手前の鞍部〜パノラマ台下-《バス14分》-富士緑の休暇村・ゆらり(入浴)-《タクシー15分》-河口湖駅 【歩行時間: 3時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 その頂上からの山稜が三方に分かれているから三方分山(さんぽうぶんざん)、なんだそうだ。なんとも珍しい山名で、三省堂の山名事典を開いても、御坂山塊の西端(精進湖の北北西)に位置するこの1座だけのようだ。ガイドブックの「関東近辺・ブルーガイドハイカー・いで湯を楽しむ100山(実業之日本社)」に載っていた山で、交通の便にやや難点はあるけれど、静かで簡単そうで面白そうな山に思えた。そこで、定年後の“ヒマ”をもて余している友人のSさんとT君をお誘いした。高血圧と心臓が心配なそのお二人と、腰痛と痔と水虫に悩む私との、ヨレヨレオジサン3人組のパーティーだ。

 新宿から8時14分発の「ホリデー快速・河口湖号」に乗り、どんどん大きくなる前方の富士山を車窓から楽しみ、終点の河口湖駅に着いたのは10時20分だった。電車と乗合バスを利用しての今回の山行だが、午前中は河口湖駅前からの当該バスは10時38分発で、この日の運行が少し遅れていたこともあり、精進バス停から歩き始めたのは11時半頃になってしまった。
* じつは、河口湖駅前までは新宿や東京駅前から高速バスを利用する手があり、そのほうが料金も安くて便利です。
 湖面標高900mの、小さくてひっそりとした精進湖を背にして北へ向かう。歩き出すともう寒くない。左へ少し行けば諏訪神社の境内にあるという天然記念物の「精進の大スギ」を見物できるのだが、今回はあっさりとカットして、直進して先を急ぐ。富士河口湖町教育委員会の解説板によると、この峠越えの道は甲斐と駿河を結ぶ古道のひとつ(旧中道往還)とのことで、由緒ある道を私たちは歩いているらしい。
 家並みが途絶えると登山届のポストがあったので、メモ書き程度だが、必要事項を書いた紙きれを投函した。この登山者名簿投函用のポストに「上九一色村・富士吉田警察署」と書かれてあったけれど、そうだね、この地はオウム真理教事件の拠点となった処だったね、と私たちはひそひそと会話した。
* 山梨県の上九一色村は2006年3月に分割され、北部は甲府市に、南部は富士河口湖町に編入されています。
 周囲はスギ・ヒノキの人工林にコナラ、ハンノキ類、シデ類などの雑木林が交ざる、よくある里山の風景だ。古い石垣に往時が偲ばれる。そんな整備された沢筋の山道を登ると、やがてコナラに替わってミズナラが台頭してきて、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ヤマザクラ、アセビ、モミ、ツガなどの針広混交林になってくる。振り返ると、それらの木々の隙間から精進湖が見下ろせる。高度をさらに上げると、左手に三方分山の一角と思しきピラミッド型の山影も見えてくる。
 途中で1回小休止して稜線(女坂峠=阿難坂)へ出て、ここでお昼の大休止。長老のSさんはいつもの通り、起きてこない奥さんを気遣って自分で握ってきた大きなおにぎり3個。T君は例の高カロリー(ギタギタのとんかつ)駅弁だ。私は今朝のコンビニでメロンパンにするかどうするか迷ったが、結局いつものおにぎり2個(鮭と梅干)とゆで卵1個。う〜ん、人間の行動様式って、特に私や私の友人たちは、どうしようもないワンパターンなのかもしれない。
 女坂峠からは旧中道(なかみち)往還に別れを告げ、左折して稜線を西へ進む。ブナが目立ち始め、ミズナラ、リョウブの比率も高くなる。明るくて気持ちのよい林相だ。幸いに積雪はそれほどでもなく、ザックに入れてきた軽アイゼンは使わないで済みそうだ。
 体中が汗ばんできたころ、富士山側が開けた三方分山の静かな山頂に着いた。しかし残念。本日は午後から下り坂だという天気予報が当たって、富士山の上半身には雲がかかってしまっている。手前に青木ヶ原の樹海が広がり、その奥の大室山がちょこんと可愛らしく、この方角からの富士山の姿を「子抱富士」と呼んでいるそうだ。
 三方分山の山頂から分かれる3方向の尾根筋を境に、富士山が見える南東側が富士河口湖町で、西側が身延町、北側が甲府市だ。木々の隙間から見える甲府の街並みの奥には、奥秩父の山々が案外立派に聳えている。ついさっき女坂峠て大休止したばかりなので、登頂の記念写真(アリバイ証明のための証拠写真)を撮り終えるとすぐ、南の山稜へ向かって縦走を続ける。
 今は葉を落として寂しそうなカラマツ林を右側(身延町側)に見て、少し下ってから少し上って、三等三角点はあるが地味な感じの精進山の山頂を通過する。それからず〜っと下って鞍部の精進峠でも一休み。この先もアップダウンの連続で、それほどきつくはないと思うのだが、常日頃の鍛錬不足の私たちはそろそろ顎を出し始める。ブナ・ミズナラ・ツガが主人公の素晴らしい自然林の稜線歩きなのだが、疲れてきたときは大体において自然観察をする心の余裕がなくなっている。今回は特に長老のSさんの息が辛そうだ。で、ここいら辺りから(いつもの通り)大幅なペースダウンで対処する。つまり、休憩の合間にゆっくりと少し歩く、といった風だ。ゆっくりと歩いたおかげか、奥秩父の左手に白装束の八ヶ岳が時々見えるのが確認できた。
 しかし“時間”が気になってきた。当初の計画ではこの先のパノラマ台から烏帽子岳へと更に稜線を南進して、本栖湖側へ下山する予定だったのだが、それをあっさりとあきらめて、パノラマ台手前の鞍部から精進湖の西岸(パノラマ台下)へ下ろう、ということになった。すると何故かヨレヨレだったSさんの足が急に速くなって、T君も私もやっぱり足が速くなって、Sさんを先頭に3人が一丸となって行進する図になった。「気合」というのは恐ろしいものだとつくづく思う。温泉と冷えたビールが脳裏にちらつくと、いつも私たちの足は速くなるのだ。
 下山途中の開けた個所でも富士山の下半身を眺めたが、この子抱富士を(半分は心眼だけれど)見ることができたことに満足して、さらに軽い足取りでホイホイと下る。私たちが上りに歩いた道は人工林が主体だったが、この下山路はミズナラやブナが主体の天然林で、山道としてはこちらのほうが好ましく思えた。
 あっという間にドスンと着いた下山口がパノラマ台下のバス停で、日没のちょっと前だった。やっぱりほっとした。暮れなずむ精進湖が目の前に大きく、しかしひっそりと佇んでいる。これも午後はこれっきゃないという17時06分のバスに余裕で間に合った。あとは、そう、温泉と冷えたビールしか私たちの頭にはない。

* 今回の反省点: 三方分山を知るきっかけになったのは、本文でも書いたとおりガイドブックに載っていたからで、該当項を担当したのがあの著名な登山家・岩崎元郎さんだった、ということも興味をそそられた理由のひとつです。岩崎さんのガイド文には 『パノラマ台から烏帽子岳の山稜は味わいのあるコース』 と書かれてあり、時間に押されてその手前の鞍部から精進湖畔へエスケープしてしまったのが、心残りといえば心残りでした。まぁしかし、この下山路(エスケープルート)も“味わいのあるコース”だったのが救いではありました。とにかく、歩き始めたのが11時30分頃、というのがいくらなんでも遅すぎました。

富士眺望の湯「ゆらり」 富士眺望の湯ゆらり: 富士山麓に位置する今時流行りの(なんでもありの)日帰り温泉施設。富士緑の休暇村バス停から徒歩約3分、道の駅「なるさわ」に隣接。下山口のパノラマ台下バス停から14分、河口湖駅までは21分(タクシーで約15分)。日曜日ということもあり、家族連れなどで大変混みあっていた。16種類の湯(その半分近くは別料金)、というのがすごいけれど、浴室は狭く感じた。塩化物温泉・弱アルカリ性低張性低温泉。無色透明無味無臭。微かにヌメリ感。「風水」と「波動」をとりいれたとのことだが、私にはわけが分からない。ほうとう鍋などを食しながら飲んだ地ビールは、高かったけれどすごく美味かった。
 貸バスタオルと貸タオル付だが、入泉料が1,200円というのはやっぱり高いと感じた。だいいち私には大きなバスタオルを使うという習慣がなく、普通の(小さな)タオルが1本あれば入浴に不便は感じないし、そのタオルはいつもザックに入れてある。…まぁいいか。
* 閑散としたバスを降りて「ゆらり」へ入ると、何処から集まってきたのかと思うほどの人の数。ここでも路線バス組はかなりの少数派で、その殆どがマイカー利用組だった。需要が少ないのでバス便が少ないのか、バス便が少ないから需要が少ないのか、さて、ニワトリとタマゴ、どっちだ?
* 帰宅後のサイト検索でわかったのですが、「ゆらり」は近くの「ふじてんスキー場」と同会社による経営のようで、特にスキーシーズンの週末は、夕方になるとスキー帰りの顧客で混雑するらしいです。
  「富士展望の湯ゆらり」のHP



間もなく日没です
下山地(パノラマ台下)から精進湖を望む

竜ヶ岳登山の帰路に撮影
精進湖畔から子抱き富士を望む
後日撮影(H30年12月)
とてもいい感じの縦走路でした
老ブナの目立つ山稜
ブナ・ミズナラなどの明るい山稜。
ヒガラが「ツッピィ・ツッピィ」と
早いテンポで囀っていました。


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