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No.29 塩原自然研究路(富士山1184m)
 平成8年(1996年)6月22日〜23日 晴れときどき曇り

塩原自然研究路・塩原渓谷歩道 略図
新緑の新湯富士山
大沼と新湯富士


ゆったりと時間が流れて…

第1日=JR那須塩原駅-《バス45分》-大網〜(塩原渓谷歩道)〜福渡-《タクシー15分》-新湯(奥塩原) 第2日=新湯〜温泉神社〜富士山(まき道)〜大沼園地〜塩釜温泉-《バス40分》-那須塩原駅 【歩行時間: 第1日=2時間 第2日=3時間10分】
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  田舎の老いた両親といっしょの親孝行軽ハイキング。 奥塩原温泉をベースに、第1日目は箒川沿いの塩原渓谷遊歩道を、第2日目は塩原自然研究路を歩いた。 何れも定評のある名湯から名湯を結ぶ、温泉ハイキングの教科書みたいなコースだ。
  父が宿酔と坐骨神経痛でいつもの元気がなく、母の心臓病も心配だったりで、2日目、予定していた富士山(新湯富士)には登らず、林道のまき道(ヨシ沼コース)を辿った。 ゆっくり歩いて、ゆったりと時間が流れた。 ミズナラ、サワグルミ、トチノキ、カツラ、ハルニレ、ブナ、カエデ類などの新緑が眩しく、空気がとても美味しい。
  ヨシ沼では全長が20mmにも満たないという日本一小さなトンボ(ハッチョウトンボ)が観察できる、とのことだが、まだその季節に早かったものか見ることはできなかった。 また、大沼園地の辺りは天然記念物に指定されているモリアオガエルの生息地で、ちょうど今頃が産卵期とのことだが、観察心に気合いが入っていなかったのか、ちょっと目には全然分からなかった。 父と母の様子を「観察」することに専心していたから…。

* 富士山(ふじやま・1184m)について: 本家の富士山は休火山でコニーデ型だが、この奥塩原の富士山はトロイデ型で活火山(塩原火山の寄生火山)とのことだ。 本家と比較するのは可哀想なくらいに小さな山だけれど、しかし富士山だ。 新湯富士(あらゆふじ)とも塩原富士(しおばらふじ)とも呼ばれているようだ。 面白そうな山で、山頂を踏まなかったのがちょっと悔やまれる。
  尚、塩原自然研究路は日本で最初にできた自然研究路とのことで、大沼の森は「日本森林浴百選」にも選ばれているそうだ。

  この十年後、同地を訪れ富士山に登る機会を得ました。詳細は下欄を参照してください。[後日追記]

「下藤屋旅館」:後日(H18年10月)撮影 奥塩原温泉・新湯「下藤屋旅館」: 酸性単純硫化水素泉、総檜風呂、露天風呂。 硫黄臭の立ち込める、いい湯だった。 湯量も泉質も文句なし。 外湯巡り(3つの共同浴場・宿泊者は無料)も素朴で情緒があった。 「日本秘湯を守る会」の会員宿でもある。 湯治するのにきっといい温泉だね、と父は云っていた。
 * この後、実際、父は数回にわたってこの温泉旅館で湯治生活をしています。[後日追記]
  「下藤屋旅館」のHP


秋の富士山
草紅葉と新湯富士


社(左奥)は改築中でした
温泉神社

「有毒ガスにつき立入禁止」の立札
噴煙展望所

私を含め、むさくるしい男たち4人
新湯富士の山頂

富士山(新湯富士)登山
平成18年(2006年)10月29日(高曇り)

《マイカー利用》 東北自動車道・西那須野塩原I.C-《車40分》-奥塩原・新湯〜富士山1184m(往復) 【歩行時間: 1時間40分】

  それから十年後の秋、新湯富士へ登る機会を得ました。 歩程にして2時間足らずの往復登山ですが、自然が大好きな仲間たちと、お弁当持参でゆっくり・のほほんと歩きました。 麓の紅葉には少し早すぎましたが、山頂部の周辺(標高約1000m以上)はその真っ盛りで、たっぷりと「装った山」を味わってきました。

* コース概要: 新湯「下藤屋旅館」の近くに車を停めて、案内板に従って坂道を登ります。 辺りには硫黄の臭いが立ち込めて、いかにも名湯・奥塩原温泉です。
  石段を登ると温泉(ゆせん)神社があり、現在はその社が改築中のようでした。 説明板によると、この温泉神社にある石幢(せきどう)は栃木県の指定有形文化財(考古資料)になっているようで、その歴史は16世紀初頭に遡るとのことでした。 意外と古い歴史で、しかもその「証拠」がはっきりと残っているというのがスゴいなぁ、と思いました。
  十年前に歩いた「巻き道」を右に分け、今回は富士山への道を登ります。
  15分ほども登ると、硫黄の臭いが漂う爆裂火口跡の上部へ出ます。 そこが「噴煙展望所」と呼ばれる本コースで唯一の展望箇所です。 西面180度の眺めで、湯煙を上げる岩斜面の眼下には奥塩原温泉の閑静な建物群が見えています。 左奥の少し高い山の連なりは高原山の辺りでしょうか。 心安らぐ落ち着いた景色です。
  初夏の花期はさぞかし美しいだろうな、と思われるナツツバキや(トウゴク?)ミツバツツジが目立つ斜面をトラバースして登ります。 進むにつれて森の主人公が広葉樹のミズナラやブナから針葉樹のアスナロやネズコ(クロベ)に変化します。 標高約950mの登山口から富士山頂の1184mまでの、標高差にしてわずか約230mの区間のこの植生の変化(垂直分布)は、まさに驚きです。
  ゆっくりと歩いても1時間ほどの、あっという間の山頂です。 樹林に囲まれているので展望はありませんが、私好みのしっとりと落ち着いた空間です。 このときはネズコなどの植生に目を奪われて、その確認を完全に忘れていましたが、この山頂には三等三角点の標石があるはずでした。 下山後に調べて分かったことですが、富士山の三角点は山頂標識のある地点から少し戻った小さなピークにあったようです。 これはちょっと心残りでした。

* 富士山(新湯富士)の植生について補足: ルート上のごく一部(中腹)にカラマツの人工林が交ざりますが、そのほとんどはブナ・ミズナラ・アスナロ混交林(自然林)で、それらの巨木も点在する明るい森の美しさは天下一品です。 山頂部にはネズコ(クロベ)、アスナロ、サワラなどのヒノキ科の針葉樹が多く、よく似ているそれらの違いを理解するにはうってつけです。 また、山頂部手前の小広い鞍部にはオシダが群生していますが、その様子は芸術的でもあります。
  今回の富士山登山(塩原自然研究路の一部・西側の登山道)で観察のできた樹種名を、私のメモに書いてある順番通りに以下に書き写します。 いくつかの樹木には名札がかかっていましたので、実際に同定した樹種はこのメモの半分くらいです。 いっしょに歩いた森林インストラクター仲間のみなさんにもご協力をいただきました。

富士山(西側登山道)の樹木: ミズナラ、ナツツバキ(登り始めの地点に特に多い)、(トウゴク?)ミツバツツジ、コシアブラ、ゴヨウツツジ、ナナカマド、ヤマツツジ、(ベニ?)サラサドウダン、ヤマウルシ、ネジキ、ツガ、ヤマハンノキ、オオカメノキ、ハウチワカエデ、ウラジロモミ、ハリギリ、ブナ、ハクウンボク、アワブキ、クリ、ホオノキ、アサダ、ヤマザクラ、コミネカエデ、ウリハダカエデ、カラマツ(植林)、トチノキ、アスナロ、サワラ、ネズコ。
 
* 林床の主はクマザサ(又はその仲間?、ネマガリダケではないと思う)。
富士山山頂部の樹木: ネズコ、アスナロ、サワラ、ウラジロモミ、ブナ、ミズナラ、トウゴクミツバツツジ。


古町温泉「もみじの湯」 塩原温泉・古町温泉「もみじの湯」: このコース(塩原自然研究路)は、その西にも東にも名湯だらけで、温泉好きの私たちにはたまらない魅力です。 塩原温泉郷には日帰り入浴専用の露天風呂が幾つもあると聞きますが、今回私たちが下山後に立ち寄ったのは中心地(古町温泉街)の箒川対岸にひっそりと位置する「もみじの湯」でした。 古町の商店会が管理しているそうです。
  2003年4月にオープンしたという「塩原もの語り館」の横にある駐車場に車を置き、「紅の橋」を渡って進むとモミジに囲まれた小さな露天風呂が見えてきます。 これが混浴の「もみじの湯」で、入浴料の100円を缶カラに放り込んでから、これも青天井の脱衣所で服を脱ぎます。 野趣あふれています。 ご婦人方にはちょっときついロケーションかもしれません。
  泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で、もちろん源泉掛け流し。 ほとんど無色透明無臭でしたが、肌にはやわらかく感じました。 当地の名物風呂のひとつらしく、近くの温泉宿の宿泊客も入浴していました。 あと1〜2週間もすると、その紅葉はすばらしい、と予感しました。



こちらは少し若い自然林
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新湯富士の「ブナ・ミズナラ混交林」
黄葉と紅葉の・明るくて美しい森

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