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No.337 鋸岳・敗退!(南アルプス)
平成27年7月21日 晴れ マイカー利用

林道脇に車を止めて撮影
西側(戸台の林道上)から鋸岳を望む

鋸岳・戸台川コースの略図増水している!急流だ!ザックが重い!

《マイカー利用》 中央自動車道・伊那 I.C-《車50分》-戸台川河原の駐車場・車止めのゲート〜白岩堰堤〜第2堰堤(撤退) 【歩行時間: 約3時間】
* 当初の計画: 戸台川・車止めゲート〜角兵衛沢案内板〜大岩下ノ岩小屋(テント泊)〜角兵衛沢のコル〜鋸岳・第1高点2685m(往復)
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ(鋸岳)


  甲斐駒ヶ岳2967mの北西にはギザギザの峰々が連なっているが、その鋸歯状の岩稜の総称を鋸岳(のこぎりだけ)というらしい。 ピークの主なものは三角点峰2607m、第1高点2685m、第2高点2675m、烏帽子岳2594m、三ツ頭2589mで、いかにも難しそうで怖そうだ。 ぶよぶよと出っ張ったビールっ腹に鞭を打って、勇気を出して挑戦することにした。 しかし結論を先に書いてしまうと、完全敗北というか門前払いというか…、アプローチの段階で敗退してすごすごと引き返すことになる。 あまりにも恥ずかしい結末なので、この山旅日記にアップするかどうかもけっこう悩んだのだが、今後の資料というか警鐘というか戒めというか懺悔というか、とにかく、あらましだけでも書いておこうと思う。
私の車だけでした。
戸台川河原の駐車場

信濃撫子:別名ミヤマナデシコ。ナデシコ科の越年草。
シナノナデシコ

三峰川発電所取水口
白岩堰堤の取水口

向こう岸には道があるみたい・・・
第2堰堤:ここから撤退

小鬼百合:ユリ科の多年草
コオニユリ

  まず近所の本屋で昭文社の「山と高原地図(北岳・甲斐駒)」を買ってきて、それを広げてみた。 鋸岳の登山ルートには北西側の釜無川コース、南側の戸台川コース、そして甲斐駒ヶ岳との縦走コース、などがあるようだ。 鋸岳の第1高点と第2高点の区間(岩場)は特に怖そうなので、そこを通る縦走コースはこの際あっさりとカットして、鋸岳最高峰の第1高点に目標を絞る。
  「釜無川コースのアプローチに利用する作業道は、現在、ダム工事および道路工事のため、ゲートより奥部が立入禁止になっている」 とのことで、平日を利用する予定の私はこれ(釜無川コース)もカット。 結局、私が選んだ鋸岳登山のコースは、戸台川の河原を遡上してその枝沢の角兵衛沢をつめるルートだった。 テントを担いで角兵衛沢の中間地点(大岩下ノ岩小屋)で1泊すれば、なんかとても簡単そうに思えた…。

  中央自動車道の伊那 I.Cから約50分、戸台川の河原につくられた大きな駐車場に車をぽつんと止める。 梅雨明けの上天気だ。 仕度して、(無人の)登山相談所前に設置されているポストに登山届けを投函してから、気合を入れて歩き始めたのは午前9時30分頃だった。 車止めのゲートの隙間から作業道へ入り、少し進むと河原歩きとなる。 所々の足元にはショッキングピンクのきれいな花、日本固有種のシナノナデシコが咲いている。 落葉低木のフサフジウツギも(その名の通り)藤色の円錐花序をつけてあちこちに咲いているが、こちらは帰化植物(外来生物)であるらしい。 前方の上流方向を見上げると、駒津峰を従えた甲斐駒ヶ岳がくっきりと見えている。 思ったほど暑くなく、そよ風が気持ちよい。 …と、ここまでは至極順調だったのだが…。
  最初の渡渉は靴を脱いで裸足で歩いたが、永いこと文明の波に洗われてきた私のやわな足裏がすぐに悲鳴を上げる。 おまけに水の冷たさに足が耐えられない。 で、2回目の渡渉は(靴を履いたまま)じっくりと浅瀬を捜して渡ったのだが、早くもそこでドボンをしてしまう。 いゃ〜まいったなぁ〜と、まだここまでは余裕だったのだが、次の(3回目の)幅1メートルほどの短距離の渡渉が最悪だった。 なんと私は、跳んでしまったのだ。 自宅で計った今回のザックの重量は14キロほど(つまり、プラス3リットルの水分で17キロくらい)あったが、それをまったく考慮に入れていなかった。 向こう岸の砂利石には(少なくとも)届くだろう、と予想してジャンプしたのが大間違い。 そのずっと手前で派手にドボンをしてしまったのだ。 おまけにひっくり返って、…これは運よく対岸側に転んだのだが…、亀がひっくり返ったのと同じようなもので、じたばたしても暫くは起き上がれない。 なんといっても17キロの(軟弱な私にとっては)大ザックだ。 もうこの段階で、早くも戦意を喪失し始める。 一昨日までの梅雨と昨日の雨(夕立ち?)で、戸台川は予想以上に増水しているようだ。
  それでも再び立ち上がって、前期高齢者の仲間入りをして日の浅い(つまりまだ充分に若い)私はたくましく前進する。 たまにピンクテープを発見してホッとするが、それは完全ではなくて、その場しのぎの気休めに過ぎない。 …そう、川の流れは常に移動するので、それに従って“道”も移動するのだ。 踏み跡もかなり薄くて、どこが道だかよく分からない。 行き止まって進めなくなると、ぐるっと大きく巻いたり、フサフジウツギの“ヤブコギ”をしたり、その都度工夫しながら遡上する。 靴の中はグショグショだ。
  三峰川発電所取水口がある白岩堰堤(2番目のダム)は、階段を登ってその小さな作業所の脇を通り抜ける。 それからまたヤブコギをしたり河原を歩いたり、暫くは左岸を歩いていたのだが、第2堰堤(3番目のダム)の手前ではたと足が止まった。 どうやってもこの堰堤を(左岸からは)越せないのだ。 行ったり戻ったり弁当のメロンパンを齧ったり、30〜40分はウロウロしただろうか、高巻くルート(巻道)も無いことを確認して、対岸を眺めると、はたしてあちらには“道”がありそうなのだ。 しかし、どこを探しても、重いザックを担いで(安全に)渡渉できる箇所が発見できない。 いつもは耳に心地よい瀬音がやけに大きく響き、悪魔の唸り声のように聞こえる。 今朝の出がけに妻から「くれぐれも無理はしないでね!」と言われた言葉も(これは天使のささやきだったのかもしれないが)耳に響く。 …結局、膝上まである(と思われる)急流に恐れをなして、重いザックにも嫌気がさして、断腸の思いで、ここ(第2堰堤)から引き返すことにした。 あきらめて肩の力が抜けた復路、行きには気がつかなかったコオニユリが河原の片隅にひっそりと咲いているのを発見した。
  河原の駐車場に戻り着いたのは午後1時半頃だった。

  帰宅した翌朝、脛に痛みを感じたので見てみたら、数箇所に傷があった。 手の甲には(どんな虫かは分からないけど)虫さされの跡が大きく赤く腫れて熱をもっている。 …あきらめと悔恨の情に包まれていったときの、あのときの自身の心を思い出して、なんともやるせない気持ちになった。
  事前の情報収集不足だったのだ。 アプローチで、こんなに大変な渡渉があるとはまったく予想していなかったので、その心の準備も装備もなかったのが戦意喪失のもう一つの理由でもある。 今回は“敗退”ではなく“撤退”と考えて、いつかきっと捲土重来、アクアシューズなどの準備をして再挑戦したいと思う。

白州塩沢温泉「フォッサマグナの湯」 白州塩沢温泉「フォッサマグナの湯」: 帰路に立ち寄ったのが山梨県北杜市白州町のこの日帰り温泉施設。 ほとんど国道20号線沿いといってもいいほどの、標高800メートに位置する釜無川の河岸に建っている。 “フォッサ・マグナの地下に眠っていた日本の名湯”というのがキャッチコピー。 マイカー利用の下山後には便利だと思う。 中央自動車道の小淵沢I.Cまでは約10分の距離だった。
  ほどよい広さの露天も内湯も無色透明無味無臭だったが、高アルカリ性ナトリウム・カルシウム塩化物泉とのことで、わずかにヌルヌル感がある。 循環+半掛け流しと思われるが、必要かつ十分だ。 食堂は無いが広い休憩所がある。 静かでゆったりできたのはいいけれど、利用料金の820円はチト割高感かも。 入浴後に飲んだビン牛乳が絶品だった。
  それにしても、この風呂での私は脛などの自分の身体の傷にまったく気がつかなかった、というのが(あとから思うと)不思議でならない。 この時点でも、相当にぼんやりしていたのだと思う。
  白州塩沢温泉「フォッサマグナの湯」のHPへ



戸台川の河原から眺めると…
河原から甲斐駒を望む
上流方向には甲斐駒〜駒津峰〜双児山がくっきりと…
戸台川の河原
下流を見下ろすと…、こんな感じの(広い)河原です。

フサフジウツギ(房藤空木): 中国原産の栽培種らしいが…
房藤空木:フジウツギ科の落葉低木
河原のあちこちにに群生していて、このヤブコギもけっこう大変でした。

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