雪化粧の大峰山
第1日=近鉄下市口駅-《タクシー》-行者還トンネル西口〜聖宝ノ宿跡〜弥山1895m〜弥山小屋 第2日=弥山小屋〜八経ヶ岳1915m〜弥山小屋〜狼平〜頂仙岳1717m(巻き道)〜栃尾辻〜天川川合-《バス》-洞川温泉(泊)… 【歩行時間: 第1日=2時間30分 第2日=4時間50分】
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第1日目(11/21): 東京駅午前6時発の新幹線「のぞみ1号」は速すぎて、車窓から景色を眺めているとめまいがしてくる。 富士山もろくに鑑賞できなかった。 確か、その時の富士山には思ったほど雪は積もっておらず、八合目以上にうっすらと白の縦縞が見えた程度だった。
薄雪の伊吹山を見送ると、あっという間に京都着。 8時15分だった。
はじめて利用した近鉄。 橿原(かしはら)神宮前で乗換え、下市口着10時9分。 ここから行者還トンネル手前の登山口までのタクシー料金は12,000円だった。 林道から弥山が見え隠れしていたが、山頂付近は、なんと真っ白。
ここ数日前に降り積もったものらしい。 雪山の装備を何も持ってこなかった。 紀伊半島の11月。 まさか、と思っていた。
不安な気持ちで歩き出したのは11時40分頃だった。 擦れ違った単独行の男性に稜線付近の積雪の様子を尋ねてみた。
“寒いけれど歩行には問題がない”とのことで、とりあえずほっとした。

聖宝ノ宿跡
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ヒメシャラやシャクナゲなどの木々を横目で見ながら、程よい急坂を登っていくと、もう雪道だ。 高度に比例して雪が深くなっていく。 幸いアイスバーンにはなっていなかった。
稜線に出て暫く歩くと、辺りはブナの原生林だった。 聖宝理源大師(*)の等身大の青銅製座像のある「聖宝ノ宿跡」で昼食。 寒さはそれほどでもなく、おにぎり、ゆで卵、くさや等、旨かった。
特にくさやは旨かった。 考えたら、こんなに山行に適した食べ物はそうざらにはない。
問題はニオイだが…。
弥山小屋着は午後2時50分。 小屋にザックを置いてすぐ近くの弥山頂上を往復。 樹林に遮られ展望の得られない山頂だったが、立派な祠が祭ってあった。
鳥居の傍らには「皇太子殿下行啓記念」と彫られた石碑も立っていた。 辺りは一面の銀世界。 トウヒなどに貼りついた雪模様がとてもきれいだ。 その木々の梢の隙間から、八経ヶ岳のなだらかな三角形が、白装束の林の衣を着て間近に横たわっている。
小屋の前まで戻って、東側の樹林の間を数十メートルほど進んだ処が「国見八方睨(国見台)」という少し開けた空間で、曇空だったが、大台ヶ原や大峰山系北部の山並が展望できた。
感無量。 でも夕暮れが近づいてきた。 いよいよ本格的に寒くなってきた。
10人ほどしか泊り客のいない閑散とした小屋も寒かった。 プラス3千円の2階の個室を利用したのは私達だけ。 小さなストーブは部屋をなかなか暖かくしなかった。
…それでも7時半頃には、もう夢の中…。
* 聖宝理源大師(832〜909): 大峯中興の祖。修験道当山派の開祖。京都醍醐寺を創建。

早朝の国見台にて

八経ヶ岳の山頂
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第2日目(11/22): 超遠望は利かないが、快晴だ。 未明、薄暗がりのなか、小屋前広場のテント組に気をつかいながら、「国見台」へ出てみた。
ぼんやりと、しかしクッキリと山々の稜線が見える。
見通しはすこぶる明るい。
朝食後、早速出発。 まず、三度「国見台」へ。 朝焼けの空をバックに北側の山々が黒々と横たわっている。
右奥東方の大台ヶ原は相変わらず雄大だ。 その左手前、行者還岳から大普賢岳へと続く一塊の山群が絵になっている。
そのさらに左方、女人禁制の山上ヶ岳から稲村ヶ岳の岩峰群へと続く山稜の姿が素晴らしい。
近畿の最高峰・八経ヶ岳(はっきょうがたけ: 八剣山、仏経岳などとも呼ばれている)の山頂では、熊野三千六百峰などの大展望を心行くまで楽しんだ。 振り返ると、なだらかな雪の樹林の山稜に弥山小屋が小さく見えている。 遠くまで来た甲斐があった、と思う反面、心の中で奥秩父の山々と比較しているやましい気持も多少はあった。 異国へ行って故郷の良さを知る、そんな感情に似たものが、確かにそのときの私達にはあった。
それにしても、三連休の「百名山」だというのに、この山の、この閑散とした静けさは一体何だろう。
そういえば弥山小屋の主人が、小屋は明日で閉める、と言っていた。 私達はシーズンの一番外れにこの山を訪れた、ということか。
いずれにしても、人影が疎らなのは嬉しい。
長い下り、栃尾辻でパンとハムとリンゴの昼食。 高度が下がってくると、檜混じりの杉の人工林に変わってくる。
四十雀(シジュウカラ)を発見。 ツッピー、ツッピーとは鳴かないで、ピーヒョロと鳴いていた。 帰ってから小図鑑で調べたら、この鳥は約30種類の声があるといわれているそうだ。
また勉強になった。
天川川合のバス停到着は午後1時45分。 バスの待ち時間、近くの食堂でおでんをつまみにビールを飲んだ。 ホロ酔い気分で洞川温泉に着いたのは3時少し前。
何か、時間の経つのがとても早く感じられた。
この翌日はみたらい渓谷自然研究路を歩きました。


弥山小屋前の広場にて
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雪化粧の八経ヶ岳
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稲村ヶ岳の岩峰群を望む(下山路にて)
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