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No.73 大弛峠から 金峰山2599m
アルペンムードも楽しめる「山の中の山」 マイカー利用

五丈石の岩棚から手を振る・まるで女学生のような・・・
金峰山 略図
金峰山の頂上に立つ
金峰山の頂上

《マイカー利用》 中央自動車道・勝沼 I.C-(車1時間)-大弛峠〜朝日岳2579m〜鉄山2531m〜金峰山2599m(往復) 【歩行時間: 4時間40分】
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  インデックス
  その1. 全山紅葉だ! 1998/11/07
  その2. 既に定番 私達の名コース! 2001/09/08
  その3. バイケイソウが咲いていた! 2013/08/02
  コラム. 尾崎喜八の「金峰山の思い出」


金峰山・その1 全山紅葉だ! 平成10年11月7日 高曇り

  中央自動車道の勝沼 I.Cを降りて塩山方向へ進み、川上牧丘林道をひたすら走り上って、閑散とした大弛(おおだるみ)峠に着いたのは8時15分頃。 東京の自宅からは約3時間のドライブだった。 ここは既に標高2360mだ。
  そそくさと支度をしてから徐に歩き始める。 苔むしたシラビソの倒木など、十文字峠付近の山道とよく似ているな、と思いながら黙々と緩斜面を登る。 シャクナゲが目立ち始めると、そろそろ(あっという間に)森林限界だ。 上空も下界も曇ってはいたが、幸運にも山はスッキリ。 朝日岳山頂部の見晴らしの良い岩場へ出た処で、富士山をはじめ殆どの展望の山々がその姿を現した。
  鉄山を巻き、ハイマツ帯を過ぎ、金峰山手前の開けた尾根道へ出た。 花崗岩の明るい頂稜だ。 そこの北側斜面のガレ場で早めの弁当を食べた。 眼前の小川山2418mが大きい。 その左のとんがった岩峰の集合体が瑞牆山2230mか…。 確かに奥秩父山塊の西のはずれにあってひときわ異様だが、思ったより低くて小さいな。 ここから見ると小川山が横綱で、瑞牆山は太刀持ち程度にしか見えない。 右手を振り返ると、三宝、甲武信、木賊のスリーショット。 三宝山や木賊山に比べて甲武信岳が特に立派という訳でもないのに、何故、甲武信岳だけが有名なんだろう。 北奥千丈岳は背は高いけどパッとしないね、などと、勝手に山々の品定めをしながらの大休止は、少し寒かったけれど、至福のひとときでもあった。
金峰山頂上から眺めた五丈石
五丈石

カラマツの黄葉がキレイ
林道から眺めた金峰山
  昼食後、3等三角点脇の岩上・金峰山頂上に立つ。 南西方面の、眼前の五丈岩(石)がまず目につく。 その手前がちょっとした広場になっていて、数組のパーティーが休憩していた。 その五丈岩の背後から右方向にかけて、頭の白くなった南アルプスの山々がはっきりと見える。 八ヶ岳の景色も素晴らしい。 小川山頂上部の右、御座山との間の奥に、何か貫禄のある大きな山が見える。 広場の方位盤で確認したら、なんと浅間山だった。 先々週登った黒斑山の形も識別できた。 急に思いついた今回の山行だったが、大成功だ。
  見晴らしの良いガレた尾根を少し下り、五丈石を反対側からも観察して、案外と小さな祠に手を合わせる。 それから、臆病な佐知子を残して、一人で、矢張り、五丈石によじ登ってみた。 途中のテラスで立ち止まっていたとき、下の広場にいた老夫婦に 「行けそうですか」 と尋ねられて、「登ろうと思えば登れそうですよ」 と答えたが、私はそこから先には登らなかった。 まだ命は惜しいから…。
  名残りは尽きないが、細長い山頂部をあとにして、ふと振り返ると、さきほど声を掛けてきた老夫婦の奥さんが、私が登ったのと同じ五丈岩の中間地点(テラス)で、ニコニコと手を振っていた。 高い所に登って少年のようにはしゃぐのって、何か、とてもいいと思う。 遠くから眺めたせいもあるけれど、その老婦人、まるで女学生のようにも見えた。
  帰りの縦走路、朝日岳山頂手前から眺めた富士山がまた素晴らしかった。 夕焼けに染まり始めた空にライトブルーの山並。 下方の山々は全山紅葉。 大スクリーンに映し出された名画のようだった。 残念ながら金峰山の頂上でフィルムを使いきってしまい、写真に残すことはできなかった。 が、しっかりと眼に焼きついた。
  大弛峠から車での帰路、夕映えの静かな林道からも紅葉や黄葉を堪能することができた。 今回のコースは何故か私達の持っているガイドブックには載っておらず、金峰山登山としてはマイナーで卑怯なショートカットコースなのかも知れないが、「穴場」だと思った。

三富村の温泉民宿「治郎兵衛荘」に着いたときは、もう真っ暗だった。 泊り客は私達夫婦だけ。 風呂はタイル貼り。 泉質は緩和性低張微温泉。 アットホームな感じだった。 紅葉の最盛期、しかも土曜日。 一泊二食付き一人6,500円。 ここも「大穴場」だ。

金峰山の山稜から瑞牆山・小川山方面を望む
金峰山の東山稜から北西方向を望む(後日撮影)

*** コラム ***
尾崎喜八の「金峰山の思い出」

  金峰山というとすぐに思い出すのが詩人・尾崎喜八(1892−1974)の散文集「山の絵本」に出てくる「花崗岩の国のイマージュ」という、今や古典的な名紀行文です。 その内容は、(多分)昭和の初期に、彼の終生の親友でライバルでもあった河田(かわだみき)と、瑞牆山から金峰山を旅したときの様子を丹念に綴ったものです。 8年前(1993年)に岩波文庫から再編版の「山の絵本」が刊行されたときに、私はそれをむさぼるように読んで、奥秩父への憧憬を一層深めたものでした。
  そして尾崎喜八ファンになってしまった私は立て続けに彼の「詩集」を古本屋で買って読んでみました。 しかしその「詩」は冗長で、読んでいるこちらが恥ずかしくなるくらいに饒舌すぎて、凡才の私には読みづらいものでした。 饒舌なのが「詩」であるということを、私は知らなかったのです。
  ところが一篇だけ妙に分かりやすくて何時までも頭から離れない詩がありました。 それが「高原詩抄」の中の「金峯山の思ひ出」でした。 それは紀行文の「花崗岩の国のイマージュ」と対を成す、山の悦びを凝縮したエッセンスでもありました。
  ・・・・・・・・・・
  尾根へ出たら目が覚めたやうで、
  筒ぬけの空にくらっとしたな。
  もう其処では暑さと寒さとが縞になってゐたな。
  ・・・・・・・・・・
  それからたうとうてっぺんだったな。
  天の方が近かったな。
  二人きりだったな。
  なんだか人間をもう一皮脱ぎたいやうな気がしたな。
  ・・・・・・・・・・
  それから五丈石の下へうづくまって
  ハンケチの端で珈琲を濾したな。
  思ひ出せば何もかもたのしいな。
  ・・・・・・・・・・
           
尾崎喜八「金峯山の思ひ出」より

金峰山・その2 既に定番 私達の名コース 平成13年9月8日 曇り
山の仲間たちをお誘いして…

赤い実をつけていました
ナナカマドの実
  台風15号と16号が接近中でしたが、今日一日は何とかもちそうだったので出かけてみました。 今回はご近所の奥様たち山歩会をお誘いして、総勢6名の、曇りで展望には恵まれなかったけれど、賑やかで楽しい山行でした。
  鉄山の北側をトラバースし、暫らく登り詰めたハイマツ帯の稜線地点で、メンバーのSさんが急に座りこんで動けなくなりました。 軽い貧血症状を起こし、気分が悪くなったようです。 寝不足等の体調不良と軽い高山病が原因と思われました。 おまけに、泣きっ面にハチ、雨も降り出しました。 しかし、流石に海外でも活躍している登山家(ロッククライマー)を息子にもつSさん。 少しの休憩で「復活」してしまいました。 金峰山の山頂を目の前にして、この時、引き返すことも考えたのですが、心配は杞憂となりました。 雨もすぐに上がり、予定通り、山頂部五丈岩の広場で大休止の後、和気あいあいのうちに、全員無事に楽しく下山できました。 百名山初挑戦の皆さんでしたが、そのバイタリティには頭の下がる思いがしました。 どうかめげずに、これからも山歩きを続けてほしい、と思いました。
  下山後は、牧丘の鼓川温泉で汗を流してから帰路につきました。

  苔むしたシラビソ林の幽趣と花崗岩の明るい頂稜に代表される奥秩父の重鎮・金峰山。 あの小暮理太郎氏が「…百貫の貫禄を具えた山の中の山である」と讃えた金峰山。 この山は何時来ても、きっと素晴らしい山なんだろうな、と、しみじみとそう思いました。

  牧丘「鼓川温泉」: 小楢山の温泉の項を参照してください。

金峰山の山頂は目の前だ
金峰山頂への山稜にて
金峰山頂付近から瑞牆山を望む
瑞牆山
山稜から撮影
五人の乙女と一人の召使い
五丈岩の広場にて


金峰山・その3 バイケイソウが咲いていた! 平成25年8月2日 曇り
再び 山の仲間たちをお誘いして…

  再びの、山の仲間たちとの、大弛峠から金峰山のピストン登山です。 急遽決まった山行だったこともあり、参加者は5名で、マイカー1台で間に合いました。 効率的で倹約的で、つまり経済的です。

ダケカンバの幹に寄り添うバイケイソウ
ダケカンバに寄り添う…

バックは五丈石です
金峰山の山頂にて

  金峰山周辺の山稜は、“花崗岩の国”と呼ばれるほどにアルペン的な景観ですが、本コースの4分の3くらいはシラビソやオオシラビソの鬱蒼とした(苔生した)純林を歩きます。
  “鬱蒼…”と書きましたが、実際は所々に(縞枯れ的に)明るく開けた箇所(ギャップ)が出てきます。 台風などの強風が原因か、単なるシラビソの寿命(短命で数十年〜百年と云われています)か、地質や地形によるものか、その原因については諸説あるようです。
  それらのギャップには亜高山帯における落葉広葉樹の代表選手・ダケカンバが侵入しています。 ダケカンバは太陽の光が充分ならば、多少の悪い地質や地形はものともしない陽樹なのです。 そして、その明るい林床にはバイケイソウが群落して咲いていました。 独特な緑色の集合花にも、幅広で平行脈の葉にも風情があります。 今夏は数年に一度の、バイケイソウやコバイケイソウの当たり年とのことです。
  バイケイソウの他に目立って咲いていた花はタカネニガナやハクサンシャクナゲなど、シカの食害が影響しているのか、数も種類も少なかったです。 五丈石の付近には見ごろのトウヤクリンドウやヒメコゴメグサが、これも数は限られていますが、可憐に咲いていました。
  暑くもなく寒くもない微風、高曇りのさわやかな一日…。 近くの小川山や瑞牆山などの景色を眺めながら、山頂手前のハイマツに囲まれた岩っぽい広場で大休止。 みんなで飲む、コンロで沸かしたココアや紅茶が、喉から胸へ温かく流れ落ちます。
  このコースは、いつ来てもいいなぁぁぁ、と今回も思いました。

やまなしフルーツ温泉ぷくぷく: この日、私たちが下山後に立ち寄った山梨市の日帰り温泉施設です。 「山梨県笛吹川フルーツ公園」内の上部、甲府盆地や富士山や南アルプスなどが望める絶好のロケーション。 平成23年8月にグランドオープンしたそうで、どちらかというとスーパー銭湯的です。 ここの“売り”は、なんといっても大展望です。 新日本三大夜景のひとつに選ばれているそうで、風呂場からも食堂からも良く見えます。 これはまったく見事でした。 入浴料は時間制限なしの800円で、24時まで営業している、というのもスゴイと思いました。 泉質はアルカリ性単純泉。 このさらに上部に「ほったらかし温泉」という施設もあるようで、そちらも面白そうです。 平日だから空いていたのかもしれませんが、まだ(当分は)穴場かもしれません。 勝沼 I.Cまでは車で約30分の距離でした。
  「フルーツ温泉ぷくぷく」のホームページ

「ほったらかし温泉」については「太良ヶ峠から棚山」の頁を参照してみてください。

佐知子の歌日記より
 しらびその林の床の幼木の みどり葉きらり受けつぐいのち
 マスコットは君の作りし温度計 リュックを離れて道迷いなり



大弛峠から金峰山・写真集: 大きな写真でご覧ください。

大弛峠から国師ヶ岳と北奥千丈岳: H24年7月の山行記録です。

* 大弛峠までバスが開通!: この後(H26年6月〜)、塩山駅から焼山峠、大弛峠(金峰山)線が新路線として開通したようです。 この方面への交通手段の選択肢が益々広がっています。(後日追記)



苔むすシラビソの原生林:奥秩父らしい〜
苔生したシラビソの原生林 ・ オオシラビソやトウヒも交じります

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