「私達の山旅日記」ホームへ

No.299 大弛峠から 国師ヶ岳北奥千丈岳
平成24年(2012年)7月10日 曇り時々晴れ マイカー利用

国師ヶ岳と北奥千丈岳・略図
右奥が登山口です
満車の大弛峠

国師ヶ岳の稜線にて:画像をクリックすると大画像
オオシラビソの純林
画像をクリック!


“新・近くてよい山”かも…

《マイカー利用》 中央自動車道・勝沼 I.C-《車・約80分》-大弛峠〜夢の庭園〜前国師岳〜国師ヶ岳2592m〜三繋平〜北奥千丈岳2601m〜前国師岳〜夢の庭園〜大弛峠 【歩行時間: 1時間50分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


* プロローグ: 梅雨の晴れ間を狙っての、久しぶりの単独行。 目指すは奥秩父最高峰の北奥千丈岳2601mと1等三角点のある国師ヶ岳2592mだ。 …なんて書き出すとかっこいいが…、マイカーをフル活用しての、大弛峠からのピストン軽登山だ。 歩行時間は正味2時間にも満たないので、歩き屋さんには全然物足りないボリュームかもしれない。 しかしながら、手軽に山岳展望と“亜高山帯”を堪能できる得難いトレイルであることには間違いない。 私がもっと歳をとったら「大弛峠〜北奥千丈岳〜国師ヶ岳」は珠玉のコースになるかもしれない、という予感もしている。 もっとも、往復登山でなければ…そして時間がうんとあれば…西側の金峰山方面や東側の甲武信岳方面へ抜ける本格的な縦走登山も楽しめるのだが…。

* 大弛峠(おおだるみとうげ) 中央自動車道の勝沼インターから約80分、午前9時30分頃、大弛峠へ着いてまず驚いた。 平日だというのに、もう既に駐車場は満杯だったのだ。 正確な台数は数えなかったけれど、道路上の縦列駐車組も含めてざっと50台近くの車が停まっていた。 ここはもう既に金峰山や国師ヶ岳などの登山基地としてメジャーになっていたのだ。 甲州側からの大弛峠への道(川上牧丘林道など)が、平成20年3月に琴川ダムができて益々整備されたことも関係していると思う。 14年前(平成10年)に初めて大弛峠を訪れたときの私の記憶→No.73金峰山からすると、今昔の感がする。 あのときは秋のシーズン(しかも週末)にもかかわらず、大弛峠の駐車スペースはガラ〜ンとしていた。 で、「穴場だ!」と思ったので、その旨を山行記録にも書いたのだが…、もしかして、ここの大ブレークに私のホームページも一役買ってしまったのではないだろうか、といった苦い思いが脳裏をよぎる。 私の買いかぶりかもしれないが…。
  大弛峠は日本最高所の車道峠で、標高は既に2360mだ。 つまり、いきなりシラビソやハクサンシャクナゲなどの亜高山帯の植生を楽しむことができる、というのがやっぱり凄いと思う。 東側の登山口を少し進むと大弛小屋があり、その前庭を通り過ぎると木段で、周囲はシラビソ林だ。 否、よくよく観察するとシラビソやコメツガやネズコはかなりの少数派で、そのほとんどがオオシラビソのようだ。
  長野県との県境に位置するこの大弛峠一帯は“西奥仙丈の原生林”として「やまなしの森林100選」に選ばれている。 山梨県が発行しているその解説書によると、“シラビソとオオシラビソを主体とする原生林…”とのことだが、少なくとも今回観察した範囲ではオオシラビソが圧倒的に優先していたように思う。 きびしい条件下だから、それらの樹木は樹齢(約50年〜約150年?)の割には細身だ。

*** おまけのコラム ***
シラビソオオシラビソの違い
その葉っぱの、見た目の違いがわかりますか?
シラビソの葉:枝が透けて見えます
シラビソ(シラベ)
(若い)オオシラビソの葉:枝が殆ど見えません
オオシラビソ(アオモリトドマツ)
オオシラビソは枝が見えないほど葉が蜜に茂っています!

その他の違いについて
 種 名  樹 皮  葉(線形)  球果(松かさ)
シラビソ 平滑・灰白色 15〜25mm 長さ 4〜6cm
径 1.5〜2cm
オオシラビソ 平滑・灰色 15〜20mm 長さ 6〜9cm
径 3.5〜4.5cm
コメツガ(参考) 亀甲状燐片
 松に似る
 4〜14mm 長さ 1.5〜2cm
径 約1.3cm

* 3種とも耐寒性や耐陰性が非常に強く、極相の森をつくります。 
* オオシラビソの名の由来については、その球果が(シラビソと比べて)大きいからとする説が有力です。
* その分布について、シラビソの北限は福島県吾妻山系の鳥子平で南限は紀伊半島の仏教ヶ岳。 オオシラビソの北限は八甲田山系の前岳で南限は南アルプスの大無限山とのことです。
* オオシラビソは特に雪に強いですが、急傾斜は苦手のようです。 寒さに対してはシラビソのほうが耐性があるようです。 其々適応進化してきた結果、なのだと思います。 面白いですね、自然って。
 * 本欄は「日本の野生植物(平凡社)」などを参考にして記述しました。
 


展望もGood!です
夢の庭園

復路の夢の庭園にて
ラーメンの彼方に金峰山

オオシラビソの縞枯れ現象かも
立ち枯れた樹木

ここも明るくていい感じです
前国師岳の山頂

生憎ガスってしまいました
国師ヶ岳の山頂

ガスが切れてきたぞ!
北奥千丈岳の山頂
* 夢の庭園: 暫く進むと道は二手に分かれる。 どちらを選んでも大した差はないようだが、行きも帰りもやはり南側の「夢の庭園」コースを選んだ。 県の解説板には 「高山植物のマットのうえに、巨木と灌木が自然の采配によって巧みに配置されたこの庭園は、昭和35年、当時山小屋管理人をしていた山本今朝忠さんが発見し、夢の庭園と名付けられて紹介されるようになりました。」 と書かれてあった。 なるほど、“重畳たる花崗岩にシャクナゲの群落がおりなす景勝地(北村武彦氏)”、だと思った。
  往路は生憎と雲が厚かったが、復路はガスが晴れ、眼前の朝日岳や金峰山などが夢の庭園からもよく見えていた。 とても気分のよい処だったので、復路はここで野菜たっぷりの塩ラーメンを作って食べたのだ。

* 登山道: ハクサンシャクナゲのトンネルを潜ったりすると気分は壮快だ。 小鳥たちが囀り、足元にはミツバオウレンが小群落してあちこちに咲いている。 所々の展望がいいのは、本来は高木のオオシラビソやネズコやダケカンバなどが、森林限界に近いということもあり、矮小化しているからだ。 灌木のタカネナナカマドやクロマメノキの新緑も美しい。 アズマシャクナゲの花期は既に終わっていて、ハクサンシャクナゲの花はこれからだが、花芽が殆ど出ていなくて、今年は不作のようだ。
  この縦走路(尾根道)は木段や木道など(これ以上は望めないほどに)整備されている。 往年の奥秩父の大先達…今は亡き小暮理太郎氏や田部重治氏がこれを知ったらさぞかしビックリするだろうなぁ…、と、歩いていて何回も思った。

* 前国師岳: 夢の庭園から東へ暫く進むと、北奥千丈岳との分岐(三繋平)の少し手前にややピークになっている開けた頂稜があり、そこに「前国師岳」の標識が立っていた。 国土地理院の地形図には載っていない、所謂山名注記のない山で、今の今まで私はこの山の存在を知らなかった。 帰宅してから例の「日本山名辞典(三省堂)」を捲ってみたが、ここにも記載されていなかった。 花崗岩の岩ゴロを配したその小広い山頂からは、眼前の国師ヶ岳やその右手(南東方向)の北奥千丈岳が近くに大きく見えている。 足元には房状のコケモモの花が、薄桃色に俯いて咲いていた。
  国師ヶ岳付近にも数箇所あったが、この前国師岳山頂部の西側の一角でも数十株のオオシラビソが立ち枯れていた。 規模は小さいが、多分、縞枯れ現象(*)の類いだと思う。 光が射しこんできた下層にはその後継樹が元気よく育っている。
 * 縞枯れ現象については本サイトの該当コラム欄を参照してみてください。

* 国師ヶ岳と北奥千丈岳: 主稜線上に1等三角点の大きな標石がドーンと鎮座する国師ヶ岳2592m。 そしてその主稜線上の西の鞍部・三繋平(みつなぎだいら)と呼ばれる地点から南へ約200mの位置にドテっと横たわっているのが北奥千丈岳2601mだ。 両峰間の直線距離は(地形図で読むと)約330mで、この2峰が“ご近所付き合い”をしているのがわかる。 何れもベージュ色の花崗岩と荒砂の明るい山頂で、周囲に背の低い植物が疎に生えている。 つまり“てっぺんハゲ”で、この2峰が喧嘩しても“怪我ない(毛が無い)”と思う。 両峰とも南面が特に大きく開けているので展望はすこぶる良い。
  其々の山頂で30分間ほどの休憩をして、その間に周囲をウロウロと歩き廻ってみた。 (背の低い)オオシラビソ、(ひねた)ダケカンバ、ハクサンシャクナゲ、ガンコウランなど、その植生は似たり寄ったりだったが、北奥千丈岳の山頂部には(高山帯の象徴ともいうべき)ハイマツが目立っていたのが印象的だった。 流石に奥秩父の最高峰、と云うべきか。 でも、両峰の標高差は僅か9mなのだけれど…。

  国師ヶ岳の山名は、恵林寺を創立したことでも有名な吉野時代の高僧・夢想国師の名がその由来であると聞く。 山頂からは富士山も望めるらしいが、ここではとうとう雲とガスだった。 国師ヶ岳からの展望をあきらめて、引き返して分岐(三繋平)から北奥千丈岳へ向かう辺りから、ようやくガスが晴れてきて、ここからは嬉しい展望の山旅になった。 “山旅”とはいっても数十分間だったが…。
  北奥千丈岳の山頂からは富士山は望めないらしく、南アルプスも厚い雲の中だったが、金峰山やその右肩の朝日岳、さらに右手の小川山などが雲の切れ間から見え隠れしていた。 北面にはダラっとした国師ヶ岳の山頂部が近く、その右奥には甲武信岳方面が薄っすらと見えている。 庭園風の岩上を行ったり来たり、晴れ間を狙ってカメラを構えたり、サーモスの熱いコーヒーを飲んだり、ここでも30分はあっという間に過ぎた。
  大弛峠から甲州側に7〜8分ほど下った路上にマイカーを停めてある。 そこに“下山”したのは午後1時10分頃だった。

* エピローグ: “かつては奥秩父でもっとも奥深くに位置し、重厚な山として知られた”国師ヶ岳も北奥千丈岳も、思っていたよりはずっとステキな山だった。 今までは遠目でしか眺めておらず、ダラっとした緑の山容から、眺望もない平凡な山だろう、となんとなく思っていた。 しかし実際は、何れも花崗岩の大岩がゴロっとしている、展望にも恵まれた美しい山頂だった。 大弛峠を挟んで、その反対側(西側)には百名山の金峰山もあるのだから、なるほど、この周辺の異常なほどの人気には納得せざるを得ない。 私はまったく云えた義理じゃないが、本来は石楠花新道や天狗尾根コースなどのハードなルート(上級者向き)を辿って、麓から登るべき山なのかもしれない。 それらのクラシックコースが忘れ去られつつあるのは、山ヤさんたちにとってはとても残念なことであるに違いない。 しかし…、楽なほう(大弛峠コース)へ行ってしまうのは、これは人の常で、まぁ仕方のないことだとも思う。 とにかく、今回の山行は距離が短いので、あっという間だった。
  昭和の初期、大島亮吉氏は谷川岳を「近くてよい山」と評したというが、今回の国師ヶ岳と北奥千丈岳については“新・近くてよい山”なんてコピーがちらっと脳裏に浮かんだ。 私のインスピレーションとか創造力なんてせいぜいこんなものだが…。 (^_^;)
  大弛峠からの帰路には牧丘町の「花かげの湯」に立ち寄って、それでも夕方には東京の自宅に帰ることができたのだから、時間(ヒマ)のないのほほんハイカーの私にとっては、やはり近くてよい山だったと思う。

花かげの湯:左の建物は「山梨市花かげホール」 花かげの湯: 牧丘町にある山梨市営の日帰り温泉施設。 甲州市の恵林寺にも近い。 泉質はアルカリ性単純泉で循環加熱。 露天風呂はややぬるめ、内湯はやや熱めの湯温設定がしてあるようだった。 なじみと思われる顧客が多かったが、地元でもこの風呂は人気があるようだ。 ほどよい広さの湯船で、まったりと時を過ごせた。 館内には食事処や指圧マッサージルームなど施設も充実しているが、家路を急ぐ私は今回は利用しなかった。 入浴料は3時間まで(市外在住の客は)500円だが、山梨市観光協会のホームページから「We限定割引クーポン」をコピーして持参すると400円にしてくれる。 JAF会員向けのサービスもしていたようだ。
  山梨市の日帰り温泉施設には、この「花かげの湯」のほかにも「鼓川温泉」と「みとみ笛吹の湯」があり、下山後のそのときの気分で選べるのが何よりだと思う。
 食堂の天ぷらが美味しくて、しかも物凄いボリュームでした。[後日追記]
  「花かげの湯(山梨市観光協会)」のホームページ



国師ヶ岳と北奥千丈岳
ドテっとした山容です
北奥千丈岳から国師ヶ岳を望む

こちらもドテっとしています
前国師岳から北奥千丈岳を望む

足元に咲いていた花たち
三葉黄蓮:キンポウゲ科オウレン属の多年草
ミツバオウレン
苔桃:ツツジ科スノキ属の常緑小低木
コケモモ

金峰山の五丈岩が見えています
北奥千丈岳から金峰山方面を望む(左から 金峰山→朝日岳→小川山)
この方向からも、五丈岩を配した金峰山の山容は立派です。
流石に「山の中の山」と云われるだけのことはある、と改めて感心しました。



再び 大弛峠から国師ヶ岳と北奥千丈岳
平成28年9月3日 曇り時々晴れ

JR中央本線塩山駅9:30-《バス45分》-柳平-《バス30分》-大弛峠2360m〜夢の庭園〜国師ヶ岳2592m〜北奥千丈岳2601m〜夢の庭園〜大弛峠-《バス30分》-柳平-《バス35分》-花かげの湯(入浴)-《タクシー10分》-塩山 【歩行時間: 2時間弱】

国師ヶ岳の山頂にて  山の仲間たち山歩会をお誘いして、2年前に新設されたというバス・乗り合いタクシーの路線(焼山峠・大弛峠線)を利用して、国師ヶ岳と北奥千丈岳をピクニックしてきました。 心配な空模様でしたがなんとかもちこたえて、ときおり青空も顔を出して、金峰山などの近景がよく見えました。
  正味の歩行時間は2時間足らずのショートコースですが、いきなりのひんやりとした空気の…オオシラビソやダケカンバなどの亜高山性の植生にみなさん大満足。 季節がら花はほとんど咲いておらず、セリバシオガマがほんの少し咲いていた程度でしたが、タカネナナカマドやゴゼンタチバナやコケモモの赤い実が可愛らしく目立っていました。
  帰路には「花かげの湯」へ立ち寄って、例によって甘露甘露の大団円。 ここの食堂の天ぷらが物凄いボリュームで、しかもカリカリして美味しいので、食べ過ぎて帰宅後も暫くは胃が重たかったです。
  東京〜塩山間を、今回初めて「青春18きっぷ」を利用してみました。 確かにかなりの割安ですが、座席の確保や乗り換えの手間など、やっぱり少し疲れました。 …歩いている時間よりも電車やバスに乗っている時間のほうがずっと長くて、筋肉疲労というよりは(とても楽しい)旅疲れといった感じです。
 * 塩山〜大弛峠のバス・乗り合いタクシー便の詳細については栄和交通の該当ページを参照してみてください。

  佐知子の歌日記より
 青春の18きっぷを持ちつつも譲られ座るシルバーシート
 2リットルの水の重さを知る仲間 よろこび啜る山の味噌汁
 ピカソでもゴッホでもない青の空 奥秩父にてゆるりと眺める

このページのトップへ↑
No.298「日留賀岳」へNo.300「鍬ノ峰」へ



ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!