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No.300 鍬ノ峰(くわのみね・1623m)
平成24年(2012年)8月30日 曇り 駅レンを利用

鍬ノ峰・略図
麓(安曇野方面)から鍬ノ峰を望む
麓から鍬ノ峰を望む

岩塔の右下をロープ伝いに行く
岩塔をトラバース

標識などはありませんでした
南峰にて

南峰から北峰へ向かう
笹を漕いで北峰へ


北アルプス前衛の山へ日帰り登山!

《レンタカー利用》 新宿7:00発あずさ1号…松本着9:39-《レンタカー・約60分》-鍬ノ峰登山口11:30〜鉄塔下〜岩塔〜鍬ノ峰 (往復)…登山口着16:20…豊科温泉(入浴)…松本 【歩行時間: 3時間20分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 鍬ノ峰は「分県登山ガイド・長野県の山(山渓)」に載っていた大町市の里山で、私にとってはかなりマイナーな存在だ。先月の御嶽登山の際の“東京〜塩尻・松本”のあずさ回数券が残っていたので、それを使って日帰り登山を! というコンセプトで選んだ山である。ハックルベリーフレンドのT君とのまったりタンデム登山。松本駅前からレンタカー(駅レン)でのアプローチ。車種は軽自動車。イージーで比較的に安上がりだけれどチト遠い…。 * 実際は、高速バスを利用したほうがもっと安上がりです。
 松本駅前から豊科〜穂高〜有明〜と、JR大糸線に沿った国道147号線を北上していると、安曇野の田園風景の左前方に(カーナビの行く手を示す赤線の方向に)際立った鋭鋒が見えてくる。それが鍬ノ峰だった。こちらからだとピラミッド型に見えるので「常盤富士(ときわふじ)」とも呼ばれているらしい。けっこうかっこいい! 近づくにつれて山頂部(北峰と南峰)の間隔がなだらかに開いてきて、鍬の歯型になってくる。けっこう面白そう!
 餓鬼岳の登山口を通り過ぎる辺りからさらに道(林道前越線)は細くなる。でも軽自動車だから全然問題ないのだ。暫く進むと5〜6台は停まれそうな駐車スペースに着いた。その少し手前の右側が鍬ノ峰の登山口だった。T君の高度計によると、ここは標高既に約1170mだ。なにやかやで、歩き始めたのは11時30分頃だった。
 植生などについてメモをとりながらT君の後を追う。ヒノキ林に雑木林(天然林)の入り交ざる山道だが、近年はヒノキの手入れをあまりしていないようで、その大部分を台頭してきたミズナラなどの天然の木々が占有している。

* このときの私のメモ: ミズナラ、リョウブ、ツガ、(右下の沢方向に)トチノキ、シラカバ(少し)、アカマツ、ネジキ(意外と多い)、ゴヨウマツ(キタゴヨウ?)、カラマツ、ハウチワカエデ(カエデ類は少ない)、ツツジ類、シャクナゲ(ツクシシャクナゲ?・とても多い)、オオカメノキ(赤い実)、ナナカマド(色付き始め)、ダケカンバ、林床のササは葉裏に毛があるのでクマイザサかも?、…ブナは侵入してきていないようで…、割と若い自然林かも。足元のベージュ色の岩は燕岳のそれに似て花崗岩のようだ。→ 地形が急峻で岩っぽい地質がブナには向いていないのかもしれない…。

 トンボや蝶々が飛び交う尾根道の所々からは、餓鬼岳方面が近くに見えている。鍬ノ峰の南峰には標識などは何もないので、気をつけないと通り過ごしてしまいそうだが、ここが多分南峰だろうという箇所で、私たちは大町市街方面を俯瞰しながら昼食にした。T君は「ちらし寿司」。私は「岩魚ずし」。松本駅で購入してきた駅弁だ。山行では“旅情”も味わうことができるのが楽しい。
 南峰と北峰の間は20分足らずの距離で、山頂標識と二等三角点のある北峰からは360度の展望だった。生憎と蓮華岳や鹿島槍などの北アルプス方面(西面)には雲が出てしまって、真西に位置する(七倉岳〜不動岳〜烏帽子岳と続く山稜の)中腹の七倉ダムが白濁したエメラルドグリーンの湖面を見せていた。しかしながら東面は抜けるような青空で、遠くの入道雲が目に眩しく、大町や安曇野の田園風景が美しく光っている。周囲には落葉低木のウスノキ(ツツジ科スノキ属)の葉がきれいに色づき始めていて、赤い実が美味しそうに垂れ下がっている。
 山頂の南側に細い松の木が1株あって、てっきりゴヨウマツだと思っていたのだが、山頂を辞すときによく見てみたらアカマツだった。いつ枯れてもおかしくない様子だったので、心の中で 「がんばれ!」 と励ました。
 その少し先の、採集の繰り返しによって低くいじけたコシアブラの木は、“山菜の女王”ゆえの悲劇で、少し可哀想だと思った。季節がらもあって咲いている花はほとんどなくて…、ホツツジの花が控え目に咲いていたのが印象的だった。シャクナゲの山として有名なので、やはりその季節に登ったほうがよかったかもしれない。
 来た道を下るので気は楽だが、急坂が続くので膝の悪いT君にとっては辛かったようだ。遠雷におびえながら、ゆっくりと休み休み下って、登山口の駐車場に戻ったのは午後4時半頃だった。車に乗ったとたん、一天にわかにかき曇り、稲妻と雷鳴と激しい雨。間一髪、ラッキーだった。山中ではだれにも出会わず、静かな山で“命の洗濯”ができたのがなによりだ。
 帰路、豊科温泉「湯多里・山の神」で山の汗を流してから松本駅前でレンタカーを返した。近くの食堂などで反省会をやるか迷ったが、なるべく早く(今日中に)家に帰ろう、ということになった。新宿へ向かう車中(あずさ34号)で、“チーズいか”をつまみにして飲んだ缶ビールの味は、う〜ん、矢張り最高!

豊科温泉「湯多里・山の神」 豊科温泉「湯多里・山の神」: 安曇野市の日帰り温泉施設。JR豊科駅の東、里に近い山間に位置する。駅からは遠いので、ここは車を利用する客に限られると思う。館内に売店はあるが、酒類は販売していない。地元の客が多いようだった。
 石タイル貼りの内湯、岩を配した露天風呂ともに適度な広さでのんびりとくつろげる。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性低温泉)、加温、無色透明。蛇口から流れ出る湯も温泉水を利用しているようで、湯量は豊富なようだ。ヌルヌル感のある湯で、入浴後の暫くは肌がすべすべして気持ちがよかった。「美人の湯」には大納得だ。入館料は3時間まで400円。
  豊科温泉「湯多里・山の神」のホームページ



***  鍬ノ峰の山稜は何となく秋の気配 ***
臼の木:ツツジ科スノキ属の落葉低木
ウスノキ
赤く熟れた実は甘くて美味しいよ〜
穂躑躅:ツツジ科ホツツジ属の落葉低木
ホツツジ
こちらは毒があるので要注意!

周囲はササやウスノキなどの灌木です
鍬ノ峰の山頂(北峰)・この方向は青空が覗いていた

東面は抜けるような青空でした
鍬ノ峰の山頂から大町市街方面を見下ろす(安曇野はもっと右)

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