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No.356 太良ヶ峠から 棚山1171m
平成29年4月22日 曇り時々晴れ

ほったらかし温泉から棚山を望む:左端は兜山
略図
NTTのゲート前:指導標は無し
太良ヶ峠の棚山登山口

この少し先から道は細くなる
まず広い管理道を歩く

雄花序のほうが雌花序よりも少し長い
キブシの雄花序

前方が棚山の山頂
棚山へ向かう

手前に三等三角点の標石
棚山の山頂にて

ぐるっと一周してみました
重ね石

ヤマザクラの咲く緩斜面
下山路の林道から撮影
土産物店なども建ち並ぶ
ほったらかし温泉

薄緑色のステキな時間が流れる…
今の私達にはちょうどいい山かも…

JR中央本線・山梨市駅-《タクシー約25分・4,520円》-太良ヶ峠〜ドコモふれあいの森と電波塔との分岐〜神峰〜棚山〜前こぶ〜重ね石〜ほったらかし温泉-《タクシー約10分・2,400円》-山梨市駅 【歩行時間: 2時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ


  山と高原地図(昭文社)のNo.26「金峰山-甲武信岳・奥秩父(2015年版)」を近所の図書館から借りてきた。 その付録冊子の目次欄をじっくりと眺めていたら、「周辺の山々」の項に“棚山(たなやま)”という聞いたことのない山名が目についた。 ガイド文を読んでみるとJR中央本線の山梨市駅からほど近い距離にあり、グレードは“初級”となっている。 下山地が「ほったらかし温泉」とのことで、ますます興味津々だ。 山梨市観光協会公式サイトの該当ページによると、“山梨百名山の兜山(かぶとやま)と帯那山(おびなやま)に挟まれて、今までは知名度も低く不遇な山” であったらしい。 しかし最近、コースが整備されてきて“登山者が徐々に増えてきている山” でもあるという。
  東京に住む私達夫婦にとっては笹子トンネルから先はちょっと遠く感じてしまうのだが、特急電車とタクシーをフルに利用すれば半日登山(遅くとも夕方までには帰宅)ができそうだ。 まぁ云ってみれば大名登山、ということになるのかもしれないけれど…。
  …という訳で、春うららかな土曜日の朝に、いそいそと出掛けた。

  新宿駅7時30分発の「あずさ3号」が山梨市駅に着いたのは定刻の8時58分。 瀟洒な駅前広場から予約のタクシーに乗り込む。 タクシーの運転手さんは(本人の話によると)当地では一番の古株で、山登りの趣味はまったくないようだったけれど、とても話好きの方だった。 万力公園にある根津嘉一郎(*)の銅像の脇を通ったときなど、真剣に快活に説明してくれたりして、私達は眠っている場合ではなかった。
* 初代・根津嘉一郎(1860-1940): 当地(山梨市)の出身。「鉄道王」と呼ばれた近代日本を代表する実業家。初代東武鉄道社長。
  太良ヶ峠の手前から(その北西に位置する)帯那山登山をする乗客は何人も乗せたことはあるけれど、(南東に位置する)棚山へ登る客は初めてだ、といったようなことも古株の運転手さんは話してくれた。 どうやら「ほったらかし温泉」からの往復登山が棚山の主流であるらしい。 なお、地図などでは太良ヶ峠(たらがとうげ)となっているけれど、現地では太良峠(たらとうげ)と呼んでいた。
  兄川(笛吹川の支流)に沿った長い坂道(山梨県道31号・甲府山梨線)を快調に飛ばしながら 「太良峠にほんとうに棚山の登山口があるの?」 と首を傾げて運転手さんが云う。 私達はちょっと心配になって、ポケットから地図のコピーを取り出して運転手さんに見せようとした。 すると運転手さんは車を路肩に止めて、その地図をチラッと見て、う〜ん、と唸った。
  ものすごく不安だったけれど、帯那山の登山口を通り過ぎてからも暫くタクシーは走って、標高1110mに位置する太良ヶ峠にとりあえず停車した。 こじんまりとした峠で、道路の左側(東側)にNTTのゲートがあった。 道標の類は何もなかったけれど、多分このゲートが棚山の登山口に違いないと云うと、古株の運転手さんも車から降りてきた。 それからそのゲートの右手を指さして、ここが甲府盆地の絶景ポイントで、夜景スポットでもあるんだよと教えてくれた。 …この日は春霞で、なんかもゃ〜としていたけれど…。
  ゲート脇の隙間をすり抜けて、NTT電波塔の広い管理道を歩き出したのは9時30分頃だった。 振り返ると、古株の運転手さんが心配そうに私達を見送っている。

  アカマツ(多い)、コナラ、カラマツ、リョウブ、イヌブナ、クリ、ヤマザクラ、ハンノキの仲間、などが明るく茂る広い道を暫く進み、ドコモふれあいの森や電波塔方面へ行く道を左に分けると、道は狭くなってきて登山道っぽくなってくる。 手作りの指導標が要所にあるので、もう大丈夫、この道は間違いなく棚山へ向かっている。 スギ・ヒノキが思っていたよりも少ないので(つまり自然林に近いので)、それがとても嬉しい。 足元に目立って咲いているのはスミレ類がほんの少しだけだけれど、そのかわりアカマツやヤシャブシの球果があちこちに落ちていて、中空ではキブシの薄黄色の花穂が今を盛りに咲いている。 「(キブシの)長めの花穂は雄花(雄株)で、短めが雌花(雌株)だよ」 と説明する私の話を、佐知子は珍しく素直に聞いている。 どこを見回しても、芽吹きの新緑が目にやさしい。 …アカマツやヤシャブシなどの陽樹(パイオニア樹種)が多いということは、この森が若齢段階にあるということだ。
  やがて岩堂峠・兜山方面への山道を右に分け、地味なピークの神峰(かんぽう)で小休止。 それから少し下って再びアップダウンする。 何気に、マメザクラの若木にほぼ満開の花が下向きに咲いている。 そしてトラロープの張られた最後の急坂を登り切ると、三等三角点1171.05mのある棚山の山頂だった。
  棚山の山頂にもアカマツとヤシャブシが多いけれど、それらが疎に生えているので展望は案外と良い。 生憎の春霞で近隣の低山や甲府盆地などがもぁ〜っと見える程度だったが、すっきりと晴れていれば南アルプスや富士山などがよく見えたはずだ。 とりあえず山頂に点在する小岩(安山岩質かな?)にどっかと腰を降ろして、コーヒーブレイクの大休止。 時計を見ると10時半。 太良ヶ峠の登山口からは正味1時間足らずの歩程ということになる。 「今の私達にはちょうどいい山ね、この棚山は」 と佐知子がぽつんと云った。
  棚山の山頂を辞し、南の方向へ少し下るとすぐ左手に山ノ神経由コース(沢コース)を分け、今回は重ね石コースを辿る。 道は幾分岩っぽくなってきて、アカマツの巨木が目立つようになってくる。 「秋に来れば松茸が採れるかしら」 などと話しながら、気分のいい天然林を25分も下ると、正面に大石が二つ重なった鏡餅のような「重ね石」が見えてくる。 ぐるっとその周りを見物してから、例の(手書きの)指導標に従って左側の山腹へ進む。
  そして、明るい日差しの緩斜面に陣取って、昼食の大休止にする。 佐知子自慢の(美味しいご飯+美味しい海苔+手作りの梅干)おにぎりだ。 周囲には咲き残りのカタクリや咲き始めのヒトリシズカが散在している…、薄緑色のステキな時間が流れる。
  再び歩き出すと間もなく山ノ神コースと合流して、ハシリドコロの咲く気持ちのいい沢筋を下る。 と、いつしか道幅が広くなっていて、辺りの視界が開けてきた。 林道へ出たようだ。 左上の斜面には(整地のための?)伐採工事用の重機が作業中だったが、右下のなだらかで広い斜面には何株ものヤマザクラがちらほらと薄桃色に咲いている。 それは植えたものなのか、それともヤマザクラの木だけ残して伐採したものなのか、は私には分からない。 何れにしても(人工的だが)素晴らしいロケーションなのだ。 その斜面の広い下部(ほったらかし温泉方面)の先には(これまた)もゎ〜っと甲府盆地が見えている。 道端にはたくさんのタンポポやスミレ類がきれいに咲いている。
  (シカやイノシシ避けの?)鉄柵を二つ抜けて、昨年の6月にオープンしたという「ほったらかしキャンプ場」を右下に見る。 …矢張りこの一帯は(行楽用に)大がかりな整備や拡張の工事が(今も)進められているんだ、と悟った。
  大駐車場に近づくと急に人影が出てきて、施設の建物が並ぶ「ほったらかし温泉」に辿り着いた。 まだ午後の1時15分なので、しめしめ、ゆっくりと温泉入浴が楽しめるぞ。

* 棚山登山のコースについて補足: 正直言って、今回のコース(太良ヶ峠〜棚山〜ほったらかし温泉)は若干歩き足りない感がありました。 (タクシーを利用しないで)駅から歩いて登るとか、兜山か帯那山(あるいはその両座)と併せて歩くとか、もう少し工夫するとより充実した山行になると思います。

温泉マーク ほったらかし温泉: 山梨県山梨市の棚山の東麓、標高約670mの台地に位置する人気の日帰り温泉施設。 営利法人が運営しているようだ。 泉質はアルカリ性単純泉で、「あっちの湯」と「こっちの湯」の2軒の湯屋が離れて並ぶ。 入浴券は大人800円だが、1枚だけでは両方の湯には入れない。 私達は広いほうの「あっちの湯」を選んだ。
  “売り”にしているだけあって、露天風呂からの(甲府盆地方面の)眺めは秀逸だ。 きっと夜景も素晴らしいと思う。 日の出の1時間前に開場して夜の10時まで営業している、というのも頷ける。
  湯上がりに、景色を眺めながら広場のベンチで飲んだ生ビールの味は最高だった。 土産物を買ったりして付近をフラフラと散歩していたら、大駐車場の西の方向に棚山が、棚のような山容でひっそりと聳えていた。 山名の謂れは言わずもがなだね、と私達は小声で話し合った。
 外部サイトへリンク 「ほったらかし温泉」のホームページ

  (ほったらかし温泉からの)帰路の予約タクシーは今朝方お世話になった古株の運転手さんで、山梨市駅までの車中は話が弾んだ。 私達が予定通り下山できてほっとしたらしい運転手さんは快活に話しまくり、当地出身の小説家でエッセイストの林真理子さんの話をずっとしていた。

温泉マーク やまなしフルーツ温泉ぷくぷく: ほったらかし温泉の少し下部に位置する、矢張り展望に優れた温泉施設です。 詳細については金峰山・その3の頁を参照してみてください。

  佐知子の歌日記より
 淡く濃く みどりみどりの山々に 桜がふあーんとほほえんでいる
 棚山の芽吹きのあおにつつまれて君との時間
(とき)をゆっくり登る
 山梨の盆地や山を見渡して長湯になりぬ「ほったらかし温泉」
 赤ワインの一升瓶を買い求め夫は手早くリュックに詰める
 新宿が近くになるとたまらずに目薬をさすドライアイの夫

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夜叉五倍子:カバノキ科ハンノキ属の落葉高木
ヤシャブシの新芽と球果
芽生えの新緑です
新緑の下山道

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