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No.79 荒船山1423m(西上州)
平成11年(1999年)2月6日 晴れ マイカー利用


荒波に浮かぶ不沈航空母艦

《マイカー利用》 上信越自動車道・下仁田I.C-《車》-旧内山峠〜艫岩〜荒船山〜旧内山峠-《車》-下仁田温泉(泊)… 【歩行時間: 4時間10分(雪道)】
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 上信越自動車道の下仁田インターから国道254号線を30分ほど西へ進み、群馬と長野の県境・内山トンネルを抜けたところでタイヤチェーンを取り付けた。久しぶりのチェーン巻きの作業に若干手間取った。林道に入って10分ほどで内山登山口の駐車場に着いた。10センチほどの積雪だった。
樹林越しに京塚山を眺める
樹林越しの京塚山

荒船山山頂部:京塚山への道
荒船山の山頂部
 歩き始めたのは9時17分。雪は段々と深くなってくる。暫らく歩いて気がついた。なんと、車の中にアイゼンを置き忘れてしまったのだ。目の前の雪を見ていてアイゼンを忘れるなんて、しかも、ストックやサングラスなどは最初から眼中になかった。本当にどうかしていた。途中で引き返すのもシャクに思い、意地で突き進んでしまったが、矢張り大苦戦を強いられた。しかも、トレースは一人分の靴跡のみだった。
 幅約400メートル、長さにして約2000メートルはあるという広い山頂部の北端にある艫岩(ともいわ)に辿り着いたのは11時30分頃だった。足元が切れ落ちているのでけっこうなスリルだ。割と立派に見える浅間隠山や、真白で雄大な浅間山の手前の妙義山、八風山、物見山、などの懐かしい山々がパノラマになって眼に飛び込んでくる。それらのずっと左奥に見えているコブタンは蓼科山に違いない。
 もっとゆっくりと山座同定をしたかったが、寒くてじっとしていられない。それで荒船山南端の京塚山(行塚山・経塚山)を目指したのだが、アイゼンなしの下りに時間的な自信が持てず、平坦な山頂部の中間地点まで行って引き返した。その中間地点で擦れ違った四十歳位の男性こそが、雪上に道案内の足跡(トレース)を残してくれた「先達の人」だった。一言二言、言葉を交わしたが、とてもさわやかな感じのする人だった。
 この日、この山にいたのはその単独行の男性と、山頂部で追い抜かされた私達と同世代の中年カップルだけだったようだ。「百名山病(*)」に取り憑かれてしまっていたのかな、妙に心細くなってきた。傍に「荒船山」の標柱の立つ閑散とした休憩舎で昼食。空腹だったので冷たいオニギリも美味しかったが、寒さのせいか、疲れのせいか、私達夫婦の交わす言葉は少なげだった。白い静寂が私達を襲う…。
 しかし、思いのほか下りは順調だった。よくよく考えてみると、危険な箇所は殆どなく、スキーの要領で、滑ることを前提に靴を運んだら楽しく下山できた。日没を覚悟していたのだが、午後2時15分には内山登山口の駐車場に着いてしまっていた。恐れていた“雪目”にもならずにすんだ。なーんだ、京塚山へ楽々行けたじゃないか、と思ったが、それはそれ、その時のその決断は安全登山の見地からも正しかったのだ、と無理矢理結論付けた。兎にも角にも、久しぶりの静かな山行だった。
 車での帰路、振り返って眺めた荒船山は矢張り珍しい山容だった。日本のテーブルマウンテン、別名を軍艦山と云うらしい。

*** この日は下仁田温泉に宿をとり、翌日は小沢岳登山 ***

* 百名山病: 俗化された人影の多い山ばかり登っているうちに、そんな山のみが本当の素晴らしい山だと思い込んでしまう、対自然精神錯乱症候群の一種。

下仁田温泉「清流荘」: 上信電鉄下仁田駅から車で6〜7分の、割と閑静な一軒宿。駅から歩いて行ってみたいロケーションだ。戸建ての離れの部屋が「売り」のようだが、私達は本館へ案内された。ケチッた(一番安い13,000円の宿代)のが原因かな。それにしても、廊下が吹き抜けになっているというのは珍しい。露天風呂の脱衣所も露天で、野趣溢れているのはいいのだが、とにかく寒かった。内湯は檜造り。単純泉(炭酸水素塩泉)、加熱。日本秘湯を守る会の会員旅館。
 特別料理は鹿の刺身。ここの名物なんだそうだが、二人前5切れで3,000円はチト高い。一人前と間違えていたんじゃないのかなァ。(聞きそこなった。)
 宿の裏庭で鹿を飼っていた。ドキッとして仲居さんに訊ねたら、単なるペットだそうで食肉用ではないとのことだった。
  「清流荘」のHP



雄大な浅間山と、その手前の八風山と物見山
山頂から浅間山を望む
内山峠付近からの荒船山
荒船山(軍艦山)

* 平成21年(2009年)9月、人気漫画「クレヨンしんちゃん」の作者として知られた臼田儀人さんが、荒船山の艫岩から滑落(転落?)してお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表します。合掌…。[後日追記]

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