人身御供の先生方、ゴメンナサイ <m(__)m>
JR東北新幹線白石蔵王駅-《バス1時間40分》-蔵王刈田山頂駅〜刈田岳1758m(往復)〜(馬ノ背)〜熊野岳1841m〜自然園〜名号峰1491m〜峩々温泉(泊)-《バス1時間》-白石蔵王駅 【歩行時間:
3時間50分】
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東北新幹線・2階建ての「やまびこ201号」・東京発午前6時22分、白石蔵王着8時35分。駅前からバスに乗り、遠刈田(とおがった)温泉で乗換え、蔵王エコーラインを通り、蔵王刈田山頂のバス停に着いたのは10時30分だった。バスの途中、山頂近くの駒草平で、運転手さんの配慮による数分間の停車時間があった。雪渓の残る熊野岳や刈田岳を背景にした駒草平には、文字通りコマクサが点在している。バスの車窓から眺めたかぎりでは、花の季節にはまだ早く、気の早い一輪だけが辛うじて咲いていた。
ポカポカとうららかな「五月晴れ」で、近くの山々を眺めるには充分な天候だったが、遠望は利かなかった。月山、朝日、飯豊の峰々が北西から南西の方向にかけて見えるはずなのだが、全く見えない。バスの運転手さんの話によると、この地域は晴れていても霞の多いところで、1年のうちでも朝日や飯豊が見えるのは何日もないとのことだった。
観光客に紛れて歩き出したのは10時40分。ザックが軽い。
まず幅広い参道を登り、刈田嶺神社の鎮座する刈田岳山頂を往復。それから、くすんだエメラルドグリーンの御釜を右手に見ながら、荒涼とした「馬ノ背」をゆるやかに登ると、あっという間に熊野岳山頂に着いてしまった。火山岩の礫地にはイワヒバリが飛んでいる。
広く細長い溶岩台地の熊野岳山頂には熊野神社が建っていて、そのさらに西奥には斉藤茂吉の歌碑が立っている。石に彫られた文字はかなりの達筆で読みづらい。→「みちのくをふたわけざまにそびえたまう 蔵王の山の雲のなかに立つ」
北蔵王や南蔵王の山々、今登ってきた方向には御釜や刈田岳などがよく見える。北西の方向、地蔵岳の右奥に霞んで広がっているのは山形盆地だ。展望を楽しみながらの大休止、佐知子が作ってきたおにぎりがとても美味しい。
名号峰(みょうごうほう)に向かってなだらかな尾根道を下っていくと、到るところにイワカガミが咲いている。濃桃色のギザギザの花が下向きに咲く様は、少しゴージャスすぎる感じもするが、矢張り美しい。ハイマツに囲まれたザレ地にはコマクサの群落もあったが、こちらの方は花はまだ咲いておらず、渋い薄緑の金魚藻のような草が点々と地面に貼り付いているだけだった。何時の間にか人影は少なくなっていた。
「自然園」と呼ばれるあたりを通過したとき、シャクナゲの蕾にそっと触れてみた。 見た目より柔らかく、もうすぐ開花するんだな、と思った。何処か、下の樹林の方からウグイスのさえずりが聞こえている。
花崗岩のピークの、誰もいない名号峰でのんびりと展望を楽しんでいたら、6〜7人の賑やかな男女のパーティーが追いついてきた。狭い山頂だったので彼らの会話が凡て耳に入ってくる。学校の先生たちのようだ。40歳位のリーダーと思われる男性が、蔵王は古くからの信仰の山で、山そのものが蔵王権現なのだ、と山に向かって手を合わせながら説明していた。この先生たちとは今夜の宿(峩々温泉)も一緒だった。
新緑を楽しみながらの下山。ガイドブックにはチシマザサ(ネマガリダケ)の藪道は悪路、と書いてあったが、土の道は終始歩きやすかった。ホトトギスやカッコウの懐かしい鳴き声が聞こえてくる。やがて蝉時雨…、エゾハルゼミ(地元ではイワゼミとも言うようだ)がビィービィーと鳴いている。この蝉は例年6月まで鳴いているそうだ。
下山途中、「熊に注意」の看板に思わずビックリ。途中で追い抜いた例の賑やかな先生たちを先に行かせて、付かず離れず後を追いかけた。今月の初め、尾瀬の桟道で中年夫婦が熊に襲われたとのニュースが伝わってきたばかりだ。矢張り熊は怖い。人身御供の先達をさせてしまった先生方、ゴメンナサイ。と、なにやかやで、峩々温泉に着いたのは午後4時25分だった。
峩々温泉: 標高850メートル、蔵王の御釜に源を発する渓流濁川(にごりがわ)沿いの緑豊かな山間に位置する一軒宿。泉質はナトリウム・カルシウム・炭酸水素塩・硫酸塩泉(含芒硝重曹泉)。泉温58度。源泉掛け流し。内湯は総檜造り。圧巻は露天風呂。ライトアップされた対岸の柱状節理の岩盤を見上げながらの入浴は最高だ。その他、日帰り専用の露天風呂などもある。飲むと胃腸に効くそうだ。食堂での食事。味はナカナカだ。六畳トイレ付きの部屋で一人14,000円だった。
部屋の窓から見下ろすと、渓流に架かった橋の上の電線にキセキレイが止まっていた。私達は行かなかったが、懐かしのボンネットバスによる無料ナイトツアー(刈田岳などへ行って星空観賞?)も企画されていたようだ。
翌朝、今日も晴天。 宿の付近を散歩してみた。アスファルトの道を暫く登ってみたが、蔵王山の稜線は見えてこなかった。そのかわり、シジュウカラなどの小鳥たちがさえずっていた。森の中からキツツキ(アカゲラ?)のドラミングが聞こえてきた。山の朝って、本当にいいもんだ。
「峨々」とは、国語辞典によると、山や岩などが険しくそびえたっているさま、とある。地図では「蛾々」、ガイドブックなどでは「峨々」となっており、実際の宿の看板やパンフレットには「峩々」と書かれてあるが、一体どれが本当なのか。遠刈田温泉のバス停まで送ってもらった車中、運転してくれた宿のご主人に尋ねてみようと思っていて、つい忘れてしまった。
「峩々温泉」のHP
刈田岳山頂より熊野岳と御釜を望む
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