佐知子の歌日記・第五集
佐知子の短歌集6〜可愛い孫たち〜
孫に伝えるバナナ伝説
南大菩薩:湯の沢峠から大蔵高丸

はにかんでそっと取り出すチョコクッキーバレンタインの孫ほほ赤く

将棋さす子の目光りて盤に射すスポットライトあてるがごとく

孫帰り静かな部屋で栓を抜く とくとくとくとビールこだます

おさがりのスーツなれども胸はって力いっぱい飛べ一年生

それぞれの孫自慢するおしゃべりに老い仕度など挟み込むなり

夏の陽にTシャツの肩すこしあげ「オレ」と云うなり六歳の孫

十歳の女孫
(まご)と美肌の湯につかり しっとりしたねと腕をみせあう

湯上りに「ああいい気持ち」と云いながら空を見上げる六歳男子

テラスにてくつろぐ孫はお台場の景色となりぬ緑のTシャツ

品えらび迷いに迷う孫の足ララランランと誕生日なり

帰るなりリレーの補欠になったよとよろこぶ孫の肩がふるえる

台風に臨時休校の孫たちはゲームにパソコンピアノにトランプ

三等賞 おなじでよかった徒競走 負けずぎらいの二人の孫の

騎馬戦に女子が参加の小学校 出席名簿も男女混合

積雪の予報に捜す赤いそり三十年のほこりが積もる

大雪にソリを出してはみたものの滑って遊べぬ坂のない街

会うごとに背が伸びたねと言えばすぐ柱のきずに寄りかかる孫

おでこにはボールがあたった赤いこぶ七歳おのこのがまんの勲章

靴をぬぎ窓に鼻よせ電車みた孫は本日多摩川をみる

目はうつろインフルエンザに臥せる孫 母の帰宅にひざへすり寄る

封を切りコロコロコミック読む前に孫は付録の工作をする

首ひねり指おりかぞえ歌を詠む我をときどき見やる孫かな

遠足にかずえちゃんだけ持ってきたと孫に伝えるバナナ伝説

ゲームする孫のとなりでテレビつけ再放送の「相棒」を見る

少年は小さな池をのぞき込みニヤリと次のあそびを見つけた

夕食中 静かにしてと孫は言う「妖怪ウォッチ」見ているときは

「おかえり」を母に云いたく待つ孫は友の「あそぼ」を断りにけり

十二歳の孫とその母笑いあい赤い毛糸のあやとり続く

マンガからゲームにノート靴下に妖怪ウオッチ出没をする

汐留の満月を見て俳句などつくったと言う八歳の孫

ほめられてはずかしそうに目をふせる水玉ドレスの似合う孫なり

ぬか漬けのきゅうりをほおばりずすずすと日本茶をのむ八歳の孫

二画面のアニメと野球のテレビつけ孫はするりととろろ飯食う

お帰りと二十メートル先で手を振れど走っては来ぬ もう三年生

大きめの制服のそで折りまげて孫は今日から中学生

けん玉を上手くあやつる孫をほめ男子に帰りて教え居る夫

もういいといつかは言わん誕生会 十本のろうそくを消す孫は

手のひらに蝉の抜け殻のせながら少女は追えりいやがる男子
(おのこ)

給食会 孫らとおいしく味わえり脱脂粉乳なんてものは無し

梅干を作りはじめて十三年孫は髪長きおとめになりぬ

年毎にその声小さくなってゆく「鬼は外!」言う十歳孫の

孫からの「ありがとメール」を待っている夫落ち着かぬ夜ホワイトデー

「本当にいい子たちだ」と夫は言い晩酌すすむ五月の夕べ

飛ぶハエをこわいと言って足早にトイレへ逃げる孫は十四歳

百合花にアレルギーある孫が来る窓を開ける花瓶を隠す

十代の孫らの会話は意味不明 娘の通訳が頼りとなりぬ

看護婦に「きれいな赤ちゃん」と云われし孫は日焼けの野球少年

年男の孫は恥じらい躊躇する 我
(わ)がそっとまく節分の豆

大津波の映像声なく孫と見て黙祷をする二時四十六分

「ドラえもん」見なくなったねと夫が言う十二と十五の孫が帰りて

コンクールに八小節のソロなれど孫のフルート澄みわたりゆく

涙ぐむ娘をみれば夫もまた手にハンカチの孫の卒業式

平成25年から30年にかけての、可愛い孫たちに関する短歌を編集しました。

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