ベルウィックを出発してから10日目。第13話が6日目で、前回第14話は2日に渡る出来事だったから、結構な密度だ。冒頭のスコットのナレーションは、今回は「航行記録」ということになっていたが、その記録方法は、艦内通話に使う受話器に向かって吹き込むというかたちだったように見える。
今日も支障なく航海は進んでいる。クレアとペンチは航路の誤差のチェックに、まだマニュアルに頼っている。仕方ないか。カチュアはコンピュータの点検。既に答のわかっている問題を出して、正解を出すか調べる。なるほど。今日は83番の問題。マキはパペットファイター。「まだ2、3機、わずらってんのいるけど」、人手は「ノーサンキュー」ロディ、バーツはぼつぼつRVの整備。わかんないところだらけ、そりゃそうだ。
ケイトさんの姿が見えないのを、そろそろみんな心配し始めた。マルロとルチーナはケイトの部屋に遊びに行ったらしく、彼女が酒を飲んでいるのを知っている。2人の関心は、酒がおいしいのかどうかにあるのだが。子どもにとっては、いやーなにおいがして、おいしくない飲み物。大人の飲み物なのだ。ルチーナの父親は、酒臭い息で娘を頬ずりしたりするのかも。ロディがそれを聞きつける、「ケイトさんがお酒を」
ケイトは、ククトニアンの男が語った話を聞き返して思い悩んでいた。酒とタバコにうずもれながら。男の話によれば、ククトニアンはククト星に住んでいたが、人口増加などで周辺の星に移住を開始、クレアドもその1つだった。つまり、侵略したのは地球の側になる。こんな重大なことをいきなり聞かされても、どうしたらいいか分からない。相談しようにも、周りには子どもばかり。こんな時にクレークが生きていれば。って、そりゃあ美化しすぎでは。クレアドの司令とか、さっさと戦死した艦長とか、特攻した中尉とか……。まあ軍はもみ消してしまうかもしれないが。
「お酒は体によくありません」中学生的セリフ。鼻で笑うケイト。「一人にしておいてちょうだい」正論だけど、わかってたって飲まずにはいられないときがあるんだよぉぉ。ロディはケイトのことを心配しているのだが、あまりに力不足。一緒につきあって飲んでやるくらいでないと(無理)。すごすご引き下がるしかない。
食事時になってもケイトは現れない。ケンツはジミーからソーセージを奪おうとしてたり。クレアは食事を包んでケイトのところへ。泥酔した(?)ケイトは机につっ伏して寝ていた。ククトニアンの男のメッセージをミュートにしてかけたまま。うっかり音量をあげてしまったクレアは、カチュアが異星人であると知ってしまう。ククトニアンには骨格に特徴があるにしても、よくわかるものだ。日本人が、ベトナム人と日本人を見分けられるように(イギリス人にはできないだろうが)、ケイトが地球人とククトニアンをどこか違っていると感じたように、ククトニアンにはククトニアンをすぐそれとわかるのかもしれない(にしても首の骨までとっさに観察できるのは変だが)。部屋を飛び出し、壁に手をつけるクレア。「カチュアがククトニアン? そんなことって」通りかかったマキは、彼女のただならぬ様子に気づく。
「誰にも言わないから」とは悪魔のささやき。事の重大さを知らないからこそ言えるセリフ。とはいえ、マキ、何も言わずに秘密を守ることを約束する。右手をあげて宣誓のポーズ。"I swear..."って感じでカッコイイ。でも子供には分からないだろうな。クレアがしゃべった内容は、にわかには信じがたいものだった。「カチュアが異星人の子だって」――「うっそー?」
狭い船内、狭い人間関係で秘密を守るのは難しい。しかも聞かれたのがシャロンなのは最悪。シャロンは、あんなところでバナナを食べていたのは(食後のデザート?)、こっそり持ち出したからだろうか。聞いたシャロンは一目散にブリッジに飛び込んで、大音量で報じる。が、シャロンと他の子では受け止めかたに差があるようで。シャロンの、「この中に異星人が乗ってんだ」という言いかたも悪いのだが、聞いたロディたちは「侵入箇所」を調べろとか、そういう反応。言い直したシャロンの言葉は、やはりみんなには信じられない。「冗談にしてはタチが悪いぞ」に、「オレまともだもん」とは、「タチの悪い冗談は言わない=まとも」ということ?
マキが「あんた、立ち聞きしたね! このおしゃべり!」と叫んでも後の祭り。ロディは、なぜケイトがやけを起こしているか、やっと合点がいく。しかし、早くもカチュアと顔をあわせる機会が来てしまった。ブリッジにやって来たカチュア。バツの悪い一同。彼女の用件は、ケイトさんだった。ケイトさんがまたお酒を飲んでいる。それを聞いて駆け出すロディ。彼を追いかけるクレアとマキをバーツが止める。ここはロディに任せておいたほうがいい。……まさか、気をつかってるんだろうか??カチュアの体をシャロンの好奇心に満ちた視線がなめ回す。
再びケイトの部屋を訪れるロディ。クレアが来たときには寝ていたのに、ケイトは起きてまた飲みだしたのか。「失礼よ、ノックもなしに」さっきよりは強く出るロディだが、「みんな仲間でしょう」あたりはやはり中学生か。仲間というより、クラブの顧問みたいなものだと思う。「今のわたしにはこれが必要なのよ」、「子どもの君に何がわかるというの」そういえばスコットはケイトの歳を知っているだろうが、ロディはどうなんだろう? 12歳の年齢差をどう考えているのかな?
グラスを奪おうとするロディ。もつれる2人。暗がりに白いケイトの手足。重なる2人の顔。手からすべり落ちるグラス。あらわな胸元。激しい息づかい。部屋を飛び出したロディは壁に手をつく(さっきのクレアと同じ)。寝つかれない夜。バーツとフレッドはなぜ1つのベッドで寝ているかな?
次の日の朝が来て、カチュアが異星人という事実は、周知のものになっていた。ただ一人、当の本人を除いて。犯人はやはりシャロンか。こうなってしまうと、カチュア自身のプライベートなことを、本人以外の人が知って黙っているのは、ほとんどいじめだ。
フォークを落とすカチュア。ささくれる雰囲気。「なんで異星人と同じテーブルでメシ食わなくっちゃならないんだ!?」異星人とか、敵とか、ひどく観念的な言葉一つでカチュアへの見方が180度変わるケンツ。カチュア本人ではなく、自分の中のカチュアのイメージが変わっただけなのだが。「敵ってわたしのこと?」、問いつめられ一瞬たじろぐケンツ。が、次の瞬間には「お前が異星人だってことはわかってんだ!!」(ケンツは、もしかしてカチュアが隠していたのだと思っていたのだろうか?)
思いがけないところからケンツは反撃をくらった。ケンツにむしゃぶりつくジミー。マキの、そしてロディの制止もはねのける。結局彼を止めたのはカチュアだった。ジミーは止めたが、カチュアの涙は止まらない。
カチュアの去った食堂では、ケンツが泣く番。本当のことを言う、それがまずいときもある。カチュアには何の罪もないし、いきなり聞かされたカチュアはショックだろう。ひとの痛みがわからないのはケンツのよくないところ。みんなになじられて、ケンツは泣きだしてしまう。「俺ばっかしぃぃ」言い出しっぺというか元凶のシャロンは、思わせぶりな行動をしておいてなんともないのはちょっとずるい。
報告を受けたケイトは(いつもの服装に戻っている)、13人を集めて、異星人の男・ラレドのメッセージを公開する。「青い髪の少女」、つまりカチュアはククトニアンであること、先に攻撃をしかけたのは地球側であること、さらに地球の避難民のほとんどは捕虜となって「悪魔の星」ククトの衛星タウトにとらわれていること。とりわけ子どもたちにショックだったのは、両親が捕虜になっていることだった。
カチュアは自室で悩みと悲しみに沈む。「わたしのどこが異星人っていうの?」自分がどこかひとと違うと思っていても、自分の両親は本当の両親のはずなのだ。ケイトにすがりついて泣くカチュア。
年長組は、カチュアのことより、今後とるべきみちが新たな問題となっていた。既に心は両親を助けに行くほうに固まりつつある。しかし航路の変更、そして自分たちだけで助け出せるのか、まったくおぼつかなかった。
「青い髪の少女」という表現は、やはり聞いててひっかかる。「ピンクの髪のお子さまが迷子になっています」ってなるんだろうか、ルチーナなら。
- 原画
- スタジオ・ムサシ、土屋幹夫、河南正昭、村木新太郎