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「バイファム」第29話感想

ジェイナスはタウトに入港した。なんだかあつらえたように具合のいいデッキのかたちという気はする。
警戒はするものの、みんなはロディたちの案内で上陸(?)する。すでに事情を知っているロディとカチュアが先頭に立つ。ククトニアンの建物に入るのは初めてだから、やはり色々ともの珍しい。彼らでもベッドやテーブルや椅子を使っているのだ。かたちや色は変で、地球人の趣味にはあわなくても。そして彼らだってオバケじゃあるまいし、食堂では食事をとる。これまた、味はだいぶ違うみたいだが。
しかし、マルロたちにはそんなことより、両親のいたところに行ってみたい欲求のほうが強かった。今はいなくても少しでもぬくもりを求めて……。なぜカチュアが知っているのかはともかく、彼女がその部屋へみんなを連れていく。
ここでミューラァ画面に初登場、あとでもう一度出てきてから、ロディとばったり会う。よく考えると彼って逃げそびれているだけでは?
その部屋は明かりをつけても薄暗く、あまり広くもない。ベルウィック、クレアドから脱出して捕らえられた人って何人くらいだったんだろう? ここには数十人がいいとこに見えたが。残りは無事地球軍に保護されたのか、それともまさか……。
移送されたのが急だったのか、部屋の中にはセーターなど、いろんな物が落ちている。形見、ではないが子どもたちはそれが気になって、てんでにそれらを集め始める。しかしカチュアはそれを眺めて立っているだけだ。
そのうちに、クレアが壁に何やら書いてあるのを発見する。「地球に帰る日はいつだろうか? マミー私のぶんまで生きてくれ」どうやら捕虜となった人が気を紛らすために書いたメッセージだ。ひょっとすると、両親が自分たちにあてたものがあるかもしれない。みんなは(今度はカチュアも)それを探す。「"どんなところへ行っても私たちの愛は変わらない"……何だこりゃ? くっせーメッセージ!」とシャロン。マキは「あーあ、なんでこんなことになっちゃったのさ」とため息まじり。やがてバーツが1つの書き置きを見つける。ルチーナへだ。
「愛するルチーナへ。パパとママは朝も昼も夜もあなたの無事を祈っています。ルチーナ、あなたのそばにいつもパパとママの心があることを覚えておいてね。元気で会えることを祈りつつ……」
「それから?」「ここまでだ」泣き出すルチーナ。マルロも。彼はうらやましいと思ったのかな? ペンチ、フレッドももらい泣き。ほかの子どもたちも涙ぐんでいる。バーツは「たまんねえぜ」と、まだ探そうとする小さい子たちを置いて、ロディ、スコット、それにマキと一緒にジェダに会いに行く。
ジェダは、地球人の捕虜がククトに移されたと語る。ククトが居住可能かどうかを確かめる実験台として。「我々にもっとも近いアニマル」と失言。ククト人のククト星なのに、昔は人が住めなかったというのは、これだけだとよくわからない話だ。話を聞くマキのお尻がやけに小さくて、短パンがことさら短く見えた。
ロディは部屋の隅に、見覚えのある石板を見つけた。彼が石板の役割について聞くと、ジェダはこう答えた。石板は本来、荒廃した星を再生させるマシンだと。しかし、戦争が始まって別の能力を発揮するようになった。つまり、コンピュータシステムを狂わせる力。それによって作戦が滅茶苦茶になり、全面戦争が回避されたのだと彼は言う。それはどのタイミングでなんだろう? ククト軍がクレアドとベルウィックに侵攻したときは、むこうが圧勝したけど。しかしこれでジェイナスがここまで来られた理由はわかった。まさに「幸運の女神」がいたというわけだ。ジェダは、地球のコンピュータはまったく影響をこうむらなかったと聞いて、少し関心を示す。
その時、地球の艦船が接近してきたと連絡が入った。ジェダはあわてて撤退の準備を始める。スコットたちは、来るのはローデン大佐だと考え、だから大丈夫だと言ったが、ジェダはさすがにそこまで楽観的はなく、無益な戦いは避けたいと去って行った。
こうしてはいられないと、スコットたちはローデン大佐と連絡を取るべく、ジェイナスへ急ぐ。早くしないと、ジェダさんたちと戦争になってしまう。
しかし、ロディは戻る途中でジェイナスを双眼鏡(?)で観察する男を遠くに見かける。不審に思った彼は、ほかの3人を先に行かせ1人残る。彼は、逆光の中悠然と歩いて行く男の後ろ姿に銃を向ける。「動かないでください!」振り返った男は、「君は地球人か?」と地球の言葉で質問した。ロディの銃にはとんちゃくせず、終始余裕の表情で、ロディに質問を続ける。そして、バーツが来てロディの注意がそれたすきに、素早く身をひるがえして逃げ去る。
ジェダたちを乗せた船がククトへと去って行く。ジェダは「母星ククトに帰ります」と通信を入れ、金髪軍人も別の船の中でそれを聞いていたようだ。ククトには地球人を連れていって、居住できるか確かめているくらいなのに、ジェダはなぜそこに帰るのかと、(この時点では)不思議かも。
彼らの船に、ローデンの艦隊が攻撃をしかけ、スコットはレーガンに通信をいれる。事情を聞いた彼はあっさり攻撃を中止した。それをとがめるアデルだが、ローデンは、逃げる者まで討ちとることはない、そして利用できるものは最大限に利用する、敵中の敵、こんな効果的なものはない、と。そんなやりとりは、子どもたちは知るよしもない。しかしバーツは、ローデンがジェダたちを「反乱分子」と言ったのにひっかかるものを感じていた。
ほかの子どもたちは、ローデンたち軍人が、自分たちをククトに連れて行ってくれるのだと喜ぶが、バーツだけは苦虫を噛んだような表情。ローデンは、「あとは我々に任せたまえ」と言った。それでも素直に喜べないバーツは、ロディとともにローデンを訪ねる。が、彼は不在で、かわりのアデルとは話しづらい。2人はそこで"BANDAI"のロゴの書かれたコンテナに積まれて、スリング・パニアが運び込まれているのを見かける。地上戦用のオプションと知って、2人はそれをどうにかして手に入れなくてはと考えた(ヒゲの軍人氏はトゥランファム用って言っていたけどね)。
ところがジェイナスへ戻ってみるとそれどころではなかった。ローデンはジェイナスに3時間以内に後方に下がるように命令したのだ。彼は「軍人として、民間人を保護する義務がある」と言う。そうじゃなくても、子どもを戦場に連れていくなんて、本来は正気の沙汰じゃない。だが両親に会うためにここまで来た彼らにとっては寝耳に水。
「しょせん大人なんだよ」とバーツ。「本当にあのローデン大佐の言ったことかよ」とケンツ(しかし軍人の端くれなら命令は絶対だけどねえ)。シャロンは「兵隊なんてそんなもんだよ。だけどさ、オレたちは軍人じゃないぜ」と鋭い見方。マキは「そうだよ、今さらそんなこと言われたって」。アオリの構図が独特の雰囲気。
しかし、タウトに敵の船が4隻接近してくる。敵の巻き返しだ。「コードS20」が発令され(第9話は「S21」)、レーガンは発進して行く。それを好機と見て、ロディたちは置き去りにされたスリングパニアをこっそりくすねる。どういう風の吹き回しか、パイロットスーツを着て。
全体的に、絵が独特だった。ルチーナがメッセージを聞いて泣き出すときの口のかたちとか、ミューラァの気配を感じて銃を構え直すロディとか。作監の個性か?
原画
河口俊夫、松原徳弘、香川浩、塚本篤

Vd: 1999.12.18, Vd: 1998.4.16