前話(第42話)の翌日(?)。多くて3日とたっていないはず。ふたたびアジト。何の前触れもなくシャロンの声が朗々と。「とざい、とーざい、うち出でたりますは、ククト星一の花形、シャロン之丞パブリン之助(介? <どっちでもいいって)」缶に乗ってころころ前進、いきなり芸を披露する。フレッドとペンチがはやす。彼女ならやりかねないのだが、なぜか。それはマルロとルチーナをなぐさめるためだった。「どうした? 元気出せー!」だが、落ちこむ2人は泣き出してしまう。
びっくりして缶から落ちるシャロン、しかし踏ん張って転ばない。この芸は彼女が率先してやり始めたのだろうか? にしてはさっさと怒りだしてしまったのだが。ピエロの鼻をわざわざつけるあたりがプロっぽい(?)。それにしても彼女はこんなことまでできてしまうとは……脱帽。ちょっとこういう役をシャロンに押しつけすぎの感もある。待てよ、もしかしてシャロンのお母さんはサーカスのダンサーなんだろうか。……サーカスの少女に哀愁を感じてしまうのは「鉄腕アトム」なみに古い発想か。
3人は、マルロやルチーナの両親もクレアのお父さんと一緒に避難しているとなぐさめる。が、どこに行ったのかきかれると黙るしかない。「きっと会えるわ、元気出して」とは言うのだが……。
そこへケンツが吉報を持ってくる。「みんな落ちついて聞け」と言って深呼吸。もったいつけすぎでシャロンにたたかれる。「気をもたせるんじゃねえよ」その報とは、みんながジェダの船に乗せてもらえることになったこと。ケンツがもったいをつけすぎたために、事情は「兄さんに聞こう」ということに。「ツンツン、オレが聞いてやるよ。ホレ、しゃべれ!」
ジェダたちが地球軍とコンタクトをとることになり、それに彼らも随行するということだ。どっちにとっても願ったり叶ったり。しかし敵が徹底的な掃討作戦を計画していることが判明。今いるアジトだけでなくククト全土を対象にしているらしい。そしてシャトルはプログラミング航行――事前にプログラミングした進路どおりに航行する――なので攻撃を受けたらひとたまりもない(不便すぎる……)。
そこでバーツがうって出ることを提案。どうせミューラァはアジトの位置を知っているのだから、先制攻撃して敵を攪乱しよう。それにジェダがのるのはいいとして、「あのミューラァと互角に渡りあえる」のがロディたちだけってのは情けない。だいたいロディたちだって、今までデュラッヘの銃をはね飛ばしただけで、まともに攻撃をあてたことなんてないんだぞ。……まさか、ジェダは子どもたちをおだてて出撃させて、自前の戦力を温存しようなんて考えてないだろうな?
今回はさすがに一部の子どもたちは居残り。クレアが自分から行くことを希望したほかは、年少組は待っている間に出発の準備。ペンチは洗濯の途中だったりする。「おにいちゃんたち、きっとかえってくるよね」と不安なマルロたちに「もちろんよ」と答えるカチュアの表情が明るい。
敵の基地へのみちみち。スコットはバギーに同乗するクレアに、「あんな過激なことを言うなんて」と、参加を志願したのに驚いてみせる。「あら、あたしだって銃くらいは持てるわ」と返される。そしてスコットは、クレアのお父さんが彼女に気づいたかな、と。気づいたのだが、クレアのほうではそのことはわからない。
トゥランファムの中では、マキがケンツに「ねえ誰が一番好き? 好きな子、いるんでしょ?」と問う。いささか唐突という気もしないでもないが、「バイファム」ならではの会話。マキも相手がケンツだから聞けたんだろう。だってロディあたりが相手だと雰囲気がまずいよね。マキは、自分にボーイフレンドができたからのろけたかったのかなあ、違うかなあ。そうだとしたら「一番が父ちゃんで、二番がパンツバンズ将軍」なんて答えられたのは雰囲気ぶちこわしだろうなあ。ケンツの本音はどうなんだろうか。本当に「考えたこともない」ほど単純なやつなんだろうか? そんなやつ、いないと思うのだが。自分でも自分の気持ちに気づいていないだけだと考えたい。「おまえだ、って言ってほしいのか?」「まさかーあたいにはバーツがいるんだから、あたいの見るところシャロンね」「シャロン!?シャロンなんて勝手に決めんなよ」
お約束でクシャミするシャロン。だがリンゴの皮をむいていた。「やめとく、バッチイのやだ」とマルロが食べなかったあれは、シャロンが自分で食べたのだろうか。
ロディは、ミューラァはアジトを知っているのに今まで一度も姿を見せなかったのはなぜだろうとバーツに話す。バーツの返事は、一斉につぶす機会を待っていたのではと答えるが、実際には単にロディが因縁をつけられていたかららしい。
そのミューラァは新任隊長(オタ)が訓辞をたれるのを見下ろしていた。兵士が言っていた「やつらのスティックを1つ残らず引っこ抜き、新任隊長にプレゼントしてみせますよ」ってどういう意味? 「お前たちにできるならやってみるがいい」とつぶやくミューラァ。
ゲリラたちの一行はその基地が見えるところまで来ていた。偵察する一行。「顔だすんじゃないよ、そうでなくたっておまえの太い眉毛は目立つんだから」ってひどい言いぐさ。
アジトの博士とデュボアはシャトルの設定。「メインアドレス7000より、I/Oモードでブロック転送終了」ってそれじゃ地球のコンピュータみたい……。博士はククトに残る。新しく北半球にできた研究所(このアジトのことかも)を充実させるために。デュボアは、地球人が自分たちを受けいれてくれるのか心配だ。博士は、自分は彼ら、つまり子どもたちに賭けたと言う。あのミューラァにできなかったことを。
奇襲開始、ミューラァは飛来するバイファム(なんか怪獣みたいな表現?)を見上げる。ジェダは今回もギャドルに乗り込む。リーダーが自ら危険を省みずに戦うのは、士気を鼓舞するにはいいけど、体ももたないだろうし、怪我をしたら組織自体が崩壊しそうだ。
パイロットの乗る前にARVを撃破していく。マキが「なんだか複雑な気持ち」と言ったのは、こちらから攻めるからか。
ゲーハーの司令(アイゼル)は、反乱軍と地球人がすでに手を結んでいたと知って(それは誤解だけど)愕然とする。どうもミューラァはリベラリスト基地の位置はおろか、リベラリストとロディたち(=地球人(の一部))が手を組んだことすら話していないらしい。「誇り高い軍人」なら、嫌でも報告すべきでは? そうじゃないと、後で余計に疑われるだけだと思うけれど。そもそもあのトレーラーをどうやって奪ったのかを、どう説明したのだろう?
肩マント(?)をひるがえして事態を静観するミューラァはかっこいい。だが、そのあとのやりとりはみっともないかも。「これが伝統ある精鋭部隊の姿かね? 機動兵器の性能だけではやつらは倒せん」と新任隊長を皮肉る。うらみごとなのは間違いない。「……はっきり言おう、おまえの部下ではやつは倒せん」「ふん、そうおっしゃるあなたならできるとでも言いたいのですか? ……あなたの倒せなかったやつを、いまあなたの目の前で倒してみせます」「ふん、愚かな。後悔するさ」
奇襲のときのメカ・アクションは今回なんとなく不調。なんというかおもちゃっぽい動きだった。メカのテカリかたは80年代っぽい。
スコットたちもバギーで乗り込んでくる。銃を撃つのはクレア。「落ちついて」撃てないのはお約束。銃を持つと「まるで別人」なのはこわいぞ(そういうスコットの運転もそうとうなものだけど)。敵がいなくなっても撃っているのは昔のスコットと同じ。でもクレアだと「かわいい」という評価になるんだろうな。ところでクレアはまたパンチラ。今まで絶対にさせなかったのに、最近になってなぜかするようになった。
戦いはあっけなく終わる。ミューラァが出てこなかったのを気にするロディ。
スコットはクレアに言われて、自分たちのトレーラーを発見する。航海日誌を取り返すために、銃弾が飛び交う中に1人残るのがいかにも彼らしい。だけど、何であんなにいろいろトレーラーの中に積んでおくのかな? ちょっと不自然では? エロ本は分かるけど(夜中に3人でトレーラーに集まったりしていたり)。それ以外(ん? エロ本は、捨ててあったってことは、誰かがあさっていたのか?)。スコットの航海日誌を筆頭に、ルチーナのクマのぬいぐるみ、ペンチの詩集なんて……? トイレ洗浄用具がなぜあったのかは突っ込まないことにしよう(といいつつしている)。
「やられたな、小僧どもに。まさかあれに乗っているのが子どもとは誰も思うまい」と草を口にくわえてつぶやくミューラァ。物音でスコットに気づく。「何を探しているのかね?」「いやちょっと……え?」「早く行ったほうがいい」ギブルが遠くから近づいてくる。「おまえはミューラァ!」ロディは「あなた」だったのに。とっさにトイレ用吸盤をつかむ。「動くな、動くと…!」動じない(あたりまえ)ミューラァは「ここにもあるぞ」と足元のケースを蹴ってよこす。それが探していたものだったので思わず「ありがとう」とスコット。我にかえった彼は運転席に飛び込みエンジンをかけようとするが、なかなかかからない。「近よるな」と言ったのにミューラァは近づいてきて、「これもそうだろう」と熊のぬいぐるみを投げ込み、エンジンを一発でかける(車が動かなかったらどうするつもりだったんだろう)。「急げ!」とせかされて発車。
心配して戻ってきたバイファムをミューラァが見上げる。「ごめん、実はちょっと話しこんでしまってね」「話しこむってあんなところで? 誰と?」バーツも戻ってくる。「我らが隊長が気になってな」「そうなんだ、その隊長と会ってたんだ。……ミューラァだよ、ミューラァ。……彼はなかなか思ったより紳士的なやつでね。本当だぞ、ちゃんと話もしたんだ」「ウソだろ?」「ウソなもんか。ま、はじめは僕もちょっとびっくりしたが――無理もないだろ? なんたって相手は敵の隊長なんだから。だが僕はキャプテンとして堂々と渡りあったんだ。さすがの彼も手出しはできなかった。驚いたか、ロディ? 僕は素手でミューラァと渡りあったんだ」
しゃべりまくるスコット。足で運転するあたりかなりハイ。結局スコットはミューラァと出会ったことを信じてもらえたのだろうか? ミューラァの振る舞いは「渋い」と評すべきなのだが、某エンドラの騎士を思いだしてしまった……。
ミューラァは新任隊長をまたもや皮肉る。「見せてもらったよ、君のみごとな指揮ぶりを」「意表をつかれただけです。援軍が帰りしだい借りは返す、必ず」……この人、声が鼻づまりぎみ?
RVがカーゴに収納される。いよいよ出発、RVはロケットに積んで別に打ち上げる。スコットが命がけで奪還した帽子をかぶるケンツが妙に70年代っぽい。シンエイ動画というか東京ムービー新社というか。ケンツの頭にパンツをかぶせて「ケンツのパンツはシマシマパンツ」とはやすシャロンを見て、マキ「ウフ、逆なのかもね」。うーん、どうなんだろう? たしかに彼女のほうが年上だしね。それはともかく、ああいうちょっかいを出せるのはまだシャロンには初潮がきていないってことなんだろうか? ということは「13」でもその話はやらないのだろうか? この場面のマキの腰に手をあてるしぐさが色っぽかった。
サライダの指示で石も積み込まれる。「静かに、丁寧にあつかってくれ」という彼の指示はクレークをほうふつさせる。石は子どもたちに託される、地球とククトの友情のシンボルとして持っていくために。もともと生物再生装置だから、地球にとっても必ず有益なものになるはずだ。
子どもたちが次々乗り込む。最後に乗るカチュア「博士」「くじけずにな」「はい」さらばサライダ。
「小さい子はともかく、両親に会えるという喜びより、僕は1人として欠けることなくみんなそろってククト星を脱出できることのほうがなぜかうれしかった」
ラストのボギーはいまさら言及するまでもないだろう(何百kmか旅したのだから、ちょっとできすぎだが)。「どんどん離れてゆきます」ジェイナスを降り、そこから持ち出したトレーラーはボロボロ、バギーも置いてきただろう。なんだか体一つになってしまった感じだ。
今回作監が第38話に引き続き、1998.7.18でベタボメした桜井美知代だった。彼女がほかの回も作画していたらもっと違った雰囲気の作品になったかもしれない。かなり独特の作画だ。まず冒頭の落ちこむマルロ、ルチーナ。あの半眼が彼女っぽい。そしてシャロンの動き。ロディたちから宇宙船に乗せてもらうと聞いたフレッドのはしゃぎかた。バギーで基地に向かうときのクレアの表情。エロ本を見つけて「こんなことしてる場合じゃない」とはっとなるスコットの目が点になるところ。宇宙船の中でのフレッド。
- 原画
- アド・コスモ、横山泰和、五味文子、横山博之、スタジオ・ムサシ、グループどんぐり