「私達の山旅日記」ホームへ

No.106 草津白根山2171m
平成12年(2000年)5月28日 高曇り マイカー利用
草津白根山 略図
逢ノ峰から
逢ノ峰頂上から見た白根山2160m・右奥は横手山2307m
白根山・右奥は横手山

逢ノ峰から火口原と横手山、岩菅山
横手山の右奥に岩菅山


至近距離でカモシカと遭遇

《マイカー利用》 四阿山登山…あずまや温泉(泊)-《車》-白根火山バスターミナル〜逢ノ峰2110m〜本白根山2171m〜鏡池〜ロープウェイ山頂駅〜バスターミナル〜湯釜展望台〜バスターミナル-《車》-草津温泉(入浴)… 【歩行時間: 3時間】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ

*** 前項・四阿山からの続きです ***

 大雨になる筈の天気予報は大ハズレ。昨夜半からの雨は止んだようだ。明るい日差しがホテルの部屋の窓から飛び込んできた。朝のテレビの天気予報では、雨の心配はまったく無くなっていた。うれしい「誤算」で、大慌てで山行の支度をする。
 「あずまや高原ホテル」から車で約1時間20分。白根火山バスターミナルの駐車場に車を停めて、雨上がりの清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。昨日までの悪天候の天気予報のせいか、観光客などの人影はめっきり少ない。
 まず、レストハウスの隣にある「美化センター」に立ち寄り、白根火山の概観とハイキングコースについて予習した。受付の張り紙に“コースのガイドマップを無料でコピーいたします”と書いてある。今回の山旅、出かける前から、この日は悪天候のため登山は断念、と決めつけていたようで、気合が抜けていたせいか、草津白根山の地形図を家に忘れてきてしまった。このガイドマップのコピーの無料配布には、本当に救われた。
 「美化センター」のおねえさんに感謝感激して、歩き出したのは午前10時丁度だった。弓池を右手に見下ろしながら南西の方向へ向かい、まずは標高差100m足らずの眼前の逢ノ峰(あいのみね・2110m)へ登る。逢ノ峰の山頂展望台から振り返ると、白根山(湯釜方面)の火山独特の眺めが一望できる。その湯釜の奥に顔を出しているのは横手山2305mで、さらに右奥の残雪を頂いた横長の台形の山・岩菅山2341mが美しい。
 登山道にはまだかなりの残雪があったが、踏み固められていて歩行には問題ない。花はまだ咲いていないので、樹木の観察などをしながらゆっくりと歩く。木々の幹には樹木名と簡単な解説を書いたボードがぶら下がっていて、勉強になる。トウヒとコメツガの違いはなんとなく理解できたが、シラビソとオオシラビソ(アオモリトドマツ)の違いは、幹と葉を見ただけでは全く分からない。シラビソと比べて球果が大きいから大シラビソというのだそうだ。実際は葉のつき方や樹皮の色合いなどでも識別できるそうだが、私達のような素人にはなかなか難しい。
 → シラビソとオオシラビソの違いについてはここをクリック![後日追記]
 逢ノ峰から1時間ほども歩くと視界が開け、左手前方に本白根山の噴火口跡が大きく広がった。なるほど、ローマのコロシアムのようにも見える。右上の断崖のザレはコマクサの群落地帯のようだ。ロープなどが張ってあり厳重に保護されている。こんな凄い急斜面に咲くなんて、矢張りコマクサはタダモノではないと思う。
残雪の山道を行く
本白根山へ向かう

本白根山の展望台より噴火口跡を眺める
本白根山の噴火口跡
 この噴火口跡の斜面(火口壁)をトラバースしている時、ちょっとしたハプニングが起きた。左手、噴火口対岸上のピーク(展望台)にいる団体の登山者たちが大声で叫んでいる。どうやら私達夫婦に向かって何かを言おうとしているらしい。距離にして300m以上はあるのでよく聞き取れない。しかし、鬼気迫るその叫び声に、一瞬、私達の身の危険を感じた。右手のガレ崖を咄嗟に見上げたが、落石の危険ではないらしい。少し安心して後ろを振り返った途端、唖然とした。大型のカモシカが私達の後方からすぐ傍まで近付いてきているではないか。斜面上の細い一本道、逃げ場はない。佐知子が私を追い越して走り始めた。 「走ってはいけない!」 と、私は小さな声で注意した。そして、なるべくゆっくりと、しかし早足に、前方に向かって歩いた。少し歩いてから後を振り返ると、カモシカはキョトンとした様子でこちらを見ながら立ち止まっていた。充分な距離まで歩いたと思われる地点で、もう一度振り返ってみた。カモシカが、立ち止まっていた地点から登山道を外れ、噴火口跡の底部へ向かって真っ直ぐに下っていくのが見えた。ほっとした。そして後悔した。写真を撮るのを忘れていた…。
 本白根山の山頂部(ピークは測定点の2171m、三角点は2165m)は有毒火山ガス噴出の危険があるため立ち入ることができない。本白根探勝歩道の最高地点2150mの標板に満足するしかないようだ。本白根山展望台2145mでお弁当を食べながら、大展望と人影の少ない本白根の景観を満喫した。
 周遊コースの復路、鏡池で周氷河作用による亀甲型構造土とやらを観察してみた。池の底を目を皿にしてよく見たけれど、なんか、分かったような分からないような、そんな感じだった。
 と、なにやかやで、バスターミナルの駐車場へ戻ったのは午後2時10分だった。車にザックを置き、観光客の人並みに混じり往復正味約20分、白根山の湯釜を見物した。生れて此の方、何回目の湯釜見物だろうか。白濁したエメラルドグリーンの火口湖と褐色の火口壁が織り成す雄大なパノラマは、いつ見ても、この上もなく美しく幻想的な風景だ。展望台から写真を何枚か撮ったが、私のバカチョンズームの最大の広角(35mm)で、左端の地蔵岳方面を含め、湯釜の全体像を撮るのに3枚を繋げても少し足りないくらいだった。尚、この先の白根山山頂は登山禁止になっている。
 この湯釜のある白根山と、向かいの逢ノ峰と最高峰の本白根山(先ほどまで私達が歩いていた処)を併せて草津白根山と呼んでいるらしい。面白いのは、火山活動の静穏期と活動期が信州の浅間山と逆になっているらしい、ということだ。こちらの(上州の)草津白根山の火山活動は、現在はきわめて平穏であるようだ。→つまり、浅間山の噴火活動が今は活発なのだ。
 車での帰り道、草津温泉の湯畑前にある無料共同浴場(白旗の湯)で汗を流してから、一路東京へ向かった。雨の天気予報(登山中止)が曇り(登山決行)となり、儲かったような気分の今回の山行だったが、草津白根山は「おまけ」で行くような軽率な山では、断じてない。トレイルも植生もバラエティに富んだ素晴らしい山だった。そして、万座温泉と草津温泉に挟まれた、温泉好きの私達にはたまらない魅力をもった山でもあった。花の咲く季節は、きっと、もっと素敵だろうと思う。

草津温泉「白旗の湯」: 草津には18ヶ所もの無料の共同浴場があり、その中でも草津温泉のシンボルである湯畑の前にある「白旗の湯」が特に有名であるという。源頼朝が狩りの途中で見つけた温泉とのことで、源氏の白旗に因んで命名されたらしい。
 私達は、どこかいい日帰り入浴施設はないものかと、湯宿のひしめき合う草津の街を歩いていてたまたま見つけて入浴してみたのだが、矢張り“無料”には驚いた。建物は立派で、源泉掛け流しも流石だが、木造りの浴室は少し暗い感じがした。無料、ということは良いことなのか、ちよっと難しい問題だと思う。数名で混雑している浴槽に、私はかなり遠慮して…というのは無料だから…後ろめたい気持で浸かった。で、何故かせわしなく、ゆっくりと寛げなかった。妻の佐知子も同じようなことを言っていた。せめて一人500円くらいの入浴料をとってみては如何だろうか、と思ってしまった気の弱い私達だった。
 男女別にそれぞれ2つの木造りの浴槽。含硫化水素酸性泉、PH2の酸っぱい湯、微白濁、硫黄臭。なんといっても草津の湯、泉質も湯量も全く問題なし。ただ、ぬる湯好きの私には、2つの湯船ともチト熱すぎた。まぁ、ホースから水をじゃんじゃん流せばいいのだが、それも遠慮してしまって…。



湯釜展望台から振り返って眺めた本白根山
本白根山方面(中央が逢ノ峰)
湯釜展望台にて
湯釜(白根山)
このページのトップへ↑
No.105「四阿山」へNo.107「男体山」へ



ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!