No.136 御前山1405m(奥多摩) 芽吹きの新緑とカタクリを尋ねて |
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INDEX @ 水久保沢へ下る H14/04/14 A 月夜見峠から入山 H16/04/10 B 栃寄沢を登る H19/04/22 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 御前山@ 水久保沢へ下る 平成14年(2002年)4月14日 新宿発のホリディ快速「おくたま1号」は新緑や春植物を求めるハイカーたちで満員だった。終点の奥多摩駅に降り立ったのは9時14分。トイレだなんだでモタモタしていたら奥多摩湖方面行きのバスは出てしまって、駅前の停留所には乗りきれなかった沢山のハイカーが未だ行列を作っている。タクシーの乗り場にも行列ができていたが、私達夫婦は予定通りこちらの最後尾に並んだ。そのタクシー待ちの約30分、駅舎の庇などに巣造りをしているムクドリやツバメ夫婦のけな気な様子をずっと見ていた。
林道を暫らく歩いて「あづまや」で一休み。ここいら辺は「体験の森」と名付けられていて、様々な遊歩道が入り組んでいる。私達は「あづまや」から少し歩いたところ、標高約850mの地点で林道に別れを告げ、登山道へ入った。僅かだが、道端にニリンソウ、アズマイチゲ、ハシリドコロ、スミレ類などが咲いている。高度が上がってくると芽吹きの新緑は徐々に影を潜め、雑木林は冬木立の様相を呈してくる。お目当てのカタクリの薄ピンクの花があちこちの林床に咲き出している。 山頂は混んでいることが予想されたので、避難小屋手前の「涌水の広場」のベンチでお弁当の大休止。傍らにカタクリが咲いている。食後、“涌き水”を探してみたけれど、見つけることはできなかった。春靄の中、カラマツ林の隙間から奥多摩北側の山々がぼんやりと見えていた。 水の湧いていない「涌水の広場」から少し登り、稜線直下の避難小屋でトイレ休憩。建て直して間もないのか小奇麗な小屋だった。その小屋前の水場にはこんこんと涌き水が流れているが、飲用には煮沸してから、と注意書きがしてあった。ここでたまたま通り合わせた監視員の方から聞いた話だが、当局で昨日も水質検査をしてみたが、見た目はきれいだけれど、大腸菌が規定量以上含まれているとのことだった。特に3月〜4月は大腸菌の量が多い、とも言っていた。 稜線へ出て、下山道の主流となっている湯久保尾根コースを左へ分け、御前山の山頂へ向かう。小広い山頂はカラマツ、リョウブ、ブナ等の木々に囲まれていて、展望はイマイチだけれど、のんびりと休むにはいい処だ。ただ、この日は人影があまりにも多過ぎた。 御前山山頂を早々に辞し、稜線を西へ、カタクリの群落にため息をつきながら、惣岳山(そうがくさん)へ登り返す。こじんまりとした惣岳山の山頂からは三頭山がよく見えるが、ここから眺めると三頭山のピークは二つしか見えなくて、これじゃ二頭山だね、などと佐知子と話した。 惣岳山を少し下り、大ブナ尾根コースを前方に見送り、左の小河内峠・月夜見山方面への尾根道へ入ると人影は急に少なくなる。暫らくは未だカタクリの群落が続く。いくつかの小ピークを越えながら、明るい自然林の尾根道を進むと、右手の下方に奥多摩湖がチラホラと見えてくる。 いい気分で歩いていたのだが、小河内峠からの分岐で恐れていたことが現実のものとなった。北側の山腹をからめて奥多摩湖へ下る尾根コースが閉鎖されていたのだ…。何冊か読んだガイドブックのひとつに、一応通行禁止だが歩くことはできる、と書いてあったのだけれど、こうブロックがきつくては進入できそうもない。 完全に参った。月夜見山からの帰路のコースは調べていないし、峠からタクシーを手配するにしてもべらぼうに時間とお金がかかりそうだ。当てもないまま取り敢えず月夜見山方面へ向かって小高いピーク(水窪山?)に登ってみた。ピークの奥まで登って、ひらめいた。北側の斜面が開けていて、奥多摩湖へ向かう方向に広い道(らしきもの)が続いている。踏み跡も、ごく僅かだけれどついている。 「何とかなりそうだよ」 と、後方に残してきた佐知子に声をかけ、恐る恐る、意を決して急坂を下り始めた。暫らく下ると、小河内峠からの進入禁止のブロックがしてあったトラバース道が右から合流した。広くて歩きやすい雑木林の尾根道(防火帯かな?)を尚も下る。勿論、誰とも出会わない。コースの指導標などは朽ち果てていて何も読めない。水久保沢へ下るショートカットの入口を見過ごさないように慎重に歩く。ニリンソウが咲いている。どこかでウグイスが囀っている…。
奥多摩湖の周遊歩道をゆっくりと歩いていると、小河内ダム堰堤を渡る頃から急に人影が出てくる。奥多摩湖のバス停に着いたのは午後4時35分だった。奥多摩駅行きの次のバスまでは1時間以上も待たされるとのことで、携帯電話でタクシーを呼んだ。10分ほどでタクシーが到着。相乗りした他の3名のパーティー(大ブナ尾根コースから下山とのこと)から聞いた話によると、奥武蔵のカタクリの花は2週間前が盛りだったとのことだった。矢張り今年は異常なほど春が早かったようだ。 奥多摩の日帰り温泉施設「もえぎの湯」で汗を流してから帰路についた。ちょっとした冒険もして、予想以上に疲れたけれど、春を満喫し、初夏をも垣間見た、思い出に残るステキな山行だった。 * この後、水窪山〜水久保沢のルートには手作りの道標が整備されたようです。[平成22年12月・追記] 奥多摩温泉「もえぎの湯」: 奥多摩駅から歩いて約10分、多摩川畔の断崖に位置する町営の日帰り温泉施設。開湯は平成10年9月とのことで、まだ真新しい。やや小さめな施設だけれど、落ち着けるレイアウトだ。ただ、週末の夕方ということもあってか、イモ洗い状態で、如何せん混雑しすぎていた。食堂はゆったりとしていて、くつろげた。人気があるのはそれだけの需要がある、ということで、この近辺にもう一箇所くらい日帰り入浴施設があってもいいと思う。 フッ素泉、PH9.85、無味無臭透明、泉温19.0℃、循環。男女別露天風呂あり。 * この後もちょくちょく利用させてもらっているが、何時行っても従業員たちの感じがとても良い。[後日追記] 「もえぎの湯」のHP
御前山A 月夜見峠から入山 平成16年(2004年)4月10日
今回は、山頂までの高低差が最も少ない(最も楽な)月夜見第二駐車場からのアプローチです。タクシー代はかかりますが(奥多摩駅から7千ウン百円)、大勢での登山でしたら割り勘で、それほどでもないと思います。尚、2年前に私達が逆から辿ったこの月夜見コースは、その東端で惣岳山の少し西側を巻いていましたが、現在は惣岳山の山頂へ直接通じていました。ルートが若干変更されたようです。 賑やかな御前山の山頂で大休止の後、下山は大ブナ尾根ルートを辿り、奥多摩湖へ出ました。けっこうきつい下りでしたが、ミズナラやコナラなどの冬枯れの明るい道で、楽しめました。大ブナ…、というネーミングの割には、残念ながらブナは少なく、その巨木も、私の見た範囲ではなかったようでした。麓の近くではミツバツツジが所々きれいに咲いていました。 地元のタクシーの運転手さんから聞いた話ですが、ここいら辺は殺人事件の死体の捨て場所で、しょっちゅう発見されるそうです。大雨の降った翌日などには、死体が半分くらい浮いてくるそうです。何らかの理由で死体を奥多摩の山林や谷底へ棄てようと思っている方に一言アドバイス。どうせ埋めるのならば、もっと深く掘ったほうがいいようです。と、これはブラックジョークです。 御前山B 栃寄沢を登る 平成19年(2007年)4月22日
このメジャーな季節の御前山が少しは静かになってきた原因について、もう少し考えてみました。ふと思い当たったのは、近年、カタクリの花がずっと大人気で、東京近郊にもその花を観賞できる公園のようなものがけっこう整備されたので、その影響もあるのかなぁ、ということでした。実際、わざわざきつい思いをして御前山に登らなくても、あちこちに「カタクリの自生地」なるものがたくさんできました…。 ところで、“自生”の意味を広辞苑で調べてみますと “人為によらず自然に生ずること” となっていますが、“自生地”って一体どういう意味でしょうか? 栃寄沢を歩いたのは今回が初めてでしたが、思っていたよりもずっとステキな登山道でした。サワグルミ、オニグルミ、トチノキといった沢筋の木々たちや「栃寄大滝」などの景色が素晴らしいです。おまけにワサビ田があったり、あちこちの足元にはニリンソウ、ハシリドコロ、ヨゴレネコノメなどが群落して咲いていたり、飽きませんでした。 2〜3日前に雪が降ったらしく、その雪解けの影響で山頂部の山道はグチャグチャになっていて少し歩きづらかったです。カタクリの花は、山頂部の稜線では少し早すぎて、下部(標高1200mくらいの処)が丁度満開でした。 この御前山はカタクリ、ニリンソウ、アズマイチゲなどの春植物(*スプリングエフェメラル)を観察するにはもってこいの山だと思いました。 日帰りでコースタイム約5時間(累積標高差約1000m)のこのコースは、私たち中高年パーティーには少しきつく感じましたが、全員元気よく無事に下山できました。「もえぎの湯」の湯上りの生ビールのうまかったことと云ったら、もう最高でした! * スプリングエフェメラル(Spring ephemeral ): 「春の儚い(短い)命」 という意味だそうです。春の落葉樹林で、木々たちが葉をつけて林床に光が届かなくなるまでのワンチャンスをものにする春植物のことです。春先に花を咲かせ夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごします。例えば、アズマイチゲ、ニリンソウ、フクジュソウ、セツブンソウ、トウゴクサバノオ、ムラサキケマン、カタクリ、アマナ、ヒメニラ、ショウジョウバカマ、ハシリドコロ…などがそうです。 なお、スミレやネコノメソウの仲間などのように葉が夏以降も残るものはスプリングエフェメラル(春植物)とは呼びませんので、注意が必要です。
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