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発端丈山
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益山寺の大銀杏
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発端丈山の山頂
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眼下の内浦湾
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忘れられた名コース
…大沢温泉-《バス》-修善寺-《電車》-伊豆箱根鉄道線伊豆長岡駅-《バス》-山麓駅-《ロープウェイ》-葛城山452m〜益山寺〜発端丈山410m〜三津浜-《バス》-JR沼津駅 【歩行時間:
2時間30分】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
* 第1日目(前々日・5月3日)=田子の燈明ヶ崎遊歩道と雲見の烏帽子山
* 第2日目(前日・5月4日)=長九郎山
西伊豆の山旅の最終日。東京への帰路、立ち寄ったのが葛城山(かつらぎさん・452m)と発端丈山(ほったんじょうざん・410m)だった。当初、私達夫婦が計画していたのは、大仁駅から城山(じょうやま・342m)へ登り、葛城山を往復してから発端丈山へ向かうというロングウォークコース(コースタイム5時間20分)だった。しかし、前泊地の大沢温泉(松崎町)でゆっくりと朝食を摂ってから、となると、バスと電車を乗り継いで大仁駅から歩き出すのはどうしてもお昼近くになってしまう。という訳で、大岩壁の城山を未練を残しながらカットして、例によって楽をしての…長岡温泉からバスとロープウェイを利用しての…軽ハイキングと相成った次第。
「かつらぎ山ロープウェイ」で標高差約400mを一気にかせぎ、山頂駅でゴンドラから降り立ったのはお昼の12時15分頃。一帯はパノラマパークとかいう園地で、観光客だらけだった。葛城山の由来や当地の自然についての案内板をしみじみと読んでから、由緒ある葛城神社(案外小さい)で手を合わせ、二等三角点の脇を通り過ぎる。発端丈山へのハイキング道の入口はその少し先、百体地蔵の傍の右手にひっそりとあった。
* 葛城山の別名は、「日本山名事典(三省堂)」の該当項によると、山容が横臥した涅槃仏に似ていることから寝釈迦山とも呼ばれているそうだ。
山道へ入った途端、いきなりの急降下。昨日の雨で湿った道は滑りやすく、注意が必要だった。しかし、それも長くは続かず、穏便で歩きやすい傾斜に変わる。昔、頼朝などの源氏の武者達が盛んに行き来していたという道を、今、私達は小鳥たちのお喋りを聞きながらゆっくりと歩いている。人影はまったく途絶えた。
静かな小道に腰を下ろし、修善寺駅で買ってきた800円の鯵寿司弁当を食べてみたが、これがまた非常に美味しかった。新鮮な鯵のたたきと当地名産のさくら葉の塩漬け(桜餅を包むあれです)との組み合わせが絶妙だ。尚、この食用のさくら葉(オオシマザクラの葉)は伊豆の松崎で全国の70パーセントを生産しているそうだ。
昼食後、縦走路を左へ逸れて、静かな山寺・益山寺(真言宗の古刹・高野山の末寺)へ立ち寄ってみた。分岐からの往復は約10分。境内には沢山の観音石仏が並んでいる。県指定の大楓(樹種はイロハモミジかも)や町指定の大銀杏(イチョウ)の木は、流石に天然記念物、その大きさと風格にはビックリした。境内の奥、階段を上がった処に伊加麻志神社(延喜式内社・祭神は三島大神)があったが、神仏混淆の日本の歴史をここでも垣間見ることができた。
新緑のプロムナードを登り返し、戦国時代に北条氏が狼煙台を設けたという発端丈山の小広い山頂へ着いたのは午後2時40分、ここにも誰もいなかった。クマンバチが宙を飛び、トカゲが地を這っている。ベンチ傍の形の良いイチョウの木が印象的だ。ガイドブックには、この山頂は樹林のため展望はあまり良くない、と書いてあったが、東の方向には葛城山が樹林から頭を出しているし、西の眼下には海岸線が見下ろせる。そして北北西の中空には富士山も薄ぼんやりと浮かんでいる。いやなに、眺めはナカナカだ。最近、山頂部の木々を伐ったのかなぁ…。
その駿河湾越しの富士山や、内浦湾などの景色を楽しみながら標高差410mを一気に下る。今日は7月上旬の暑さ、だとか。西日をもろに受け、半袖一枚でも汗びっしょり。麓近くのミカン園から振り返ると、樹冠の上に人なつっこい発端丈山の半円の山頂部が見えている。三津(みと)長浜のバス停へ着いたのは午後3時55分だった。
下山後、「このコースの印象を一言で云うと何だろう」 と佐知子に聞いたら、「忘れられたハイキング道、ってところかしら」 との返事が返ってきた。私もそうだと思う。でも、忘れてしまうにはあまりにも勿体無い、静かで情緒豊かなコースだった。
こうして私達の西伊豆の山旅は終わったが、三日間を費やしても西伊豆のまだほんの一部分しか歩いていないことに改めて驚かされる。伊豆半島は名勝だらけのとてつもなく大きなハイキングランドだと思った。
* 伊豆三山: 何時のことからか、城山342m(じょうやま)・葛城山452m(かつらぎやま)・発端丈山410m(ほったんじょうやま)の総称を伊豆三山と呼んでいるようだ。少なくも私達夫婦が歩いたこの時点(2002年頃)にはそのような呼び名はなかったと記憶している。多分その後、伊豆の国市観光協会などが発した呼び名ではないかと推察する。NHKの「にっぽん百名山」にも取り上げられたりして、“忘れられた名コース”どころか、かなりメジャーなコースになっているようだ。[後日(2023年2月)追記]
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檜林を抜ける
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新緑のプロムナード
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