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No.211 南天山(なんてんやま・1483m)
平成18年11月29日 晴れ マイカー利用

南天山 略図
山頂は両神山展望の特等席!

《マイカー利用》 関越自動車道・花園I.C-《車2時間》-鎌倉橋〜方円ノ滝〜(沢コース)〜南天山〜(尾根コース)〜方円ノ滝〜鎌倉橋-《車30分》-大滝温泉(入浴)-《車1時間30分》-花園I.C… 【歩行時間: 3時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 その山体はすっぽりと武州(埼玉県)にあるけれど、すぐ北は上州(群馬県)で、西は信州(長野県)だ。南側の甲州(山梨県)にも近く、国境の深い山、といった感じの南天山。ガイドブックの多くには「奥秩父の山」として紹介されているが、「日本の山1000(山渓)」の区分けによると「北秩父」となっている。どういう風に云ったらこの山の位置を分かりやすく伝えることができるのかなぁ、と考えてみたが、なかなか名案は思い浮かばない。山好きの人や百名山志向の人になら簡単に伝える説明がある。つまり、両神山と甲武信岳の中間に位置する物凄く深い処…。

 一年のうちでも朝の遅い今頃、未明の東京を出発。明るくなり始めた関越自動車道を走り、花園インターから国道140号線を荒川に沿って西へ進む。ここも、今年はやはりその盛期が少し遅れていたようで、秩父の里など、山裾は今が盛りの紅葉だ。
 秩父盆地の目抜きを過ぎ、秩父鉄道終点の三峰口駅も通り過ぎ、甲州へ抜ける雁坂トンネルへ続く道を左に分け、支流の中津川に沿って更に遡上する。ループ橋や幾つものトンネルを通り、冬季(12月〜3月)休業期間を間近に控えひっそりとしている秩父市営の「彩の国ふれあいの森・こまどり荘(*)」の脇を通り過ぎる。三峰口駅からの乗合バスはここ(中津川バス停)まできているらしい。中津川村はかなり昔に大滝村に吸収され「中津川村キャンプ場」などにその名だけが残されているようだ。その大滝村は昨年の4月に秩父市に吸収されている。 ここも市町村合併の嵐が吹きまくったようだ。
 中津川バス停の地点から更に林道(歩くと約40分)を進み、鎌倉橋の南天山登山口(標高約820m)へ着いたのは午前9時頃だった。 5〜6台で満車になりそうな駐車スペースはガラーンとしていて、とりあえずそのど真ん中に駐車した。朝霧も消えて、すっきりとした青空が顔を出している。登山口には「体験の森遊歩道」の案内板があり、これから歩くコースがよく分かる。初めての道をスタートするときは何時もそうだが、なんかワクワクする。
 コース上の所々にも標識があって、登山口から南天山の山頂まで(正確には尾根コースの山頂直下・西の肩まで)の距離3000mのうちの今いる地点がどの辺りなのかが分かるようになっている。至れり尽くせりの道標で、なんら心配することはない。既に冬枯れの景色の中、鎌倉沢を何回も渡り返しながら、徐々に高度を上げる。道もしっかりしている。その名(鎌倉沢)が示すように、この地は平家の落人伝説がある処らしい。
落差約20mあります
方円の滝

南天山を目指す
尾根道を進む

かなり狭いです
南天山の山頂

逆ヘの字の穏やかな沢です
鎌倉沢を下る
 歩き始めて30分もするとちょっと立派な滝(方円ノ滝または法印ノ滝・落差約20m)のすぐ左前へ出る。白波を立てて流れ落ちるこのナメ滝は、奥久慈(茨城県)の袋田ノ滝のミニチュア版といったところで、風情があってとてもよかった。
 俯きながら歩くので、踏み分けている落葉をたよりに樹種を同定する。ミズナラを主体にホオノキ、オオカメノキ、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ヤマモミジ、シナノキ、トチノキ、(イヌ?)ブナ、シデ類(イヌシデなど)、ハンノキの類(ケヤマハンノキなど)、ウツギの類、ツツジの類(ミツバツツジなど)…など、特に高木については何れも細身の若木ばかりだ。天狗の団扇のような落葉もあったけれど、これはハリギリのようだった。ヒノキやカラマツの人工林といい、深い山の割には、少なくとも数十年前頃までは、かなり「人手」の加わった森だったのではないか、と推察した。
 人工林と若い自然林が入り交じる山であることの是非はさておいて、この南天山の南面に位置する穏やかで明るい鎌倉沢の渓畔林には趣きがあった。川原の所々に立つ背の低い木は、葉が落ちているので分かりにくかったけれど、どうやらオオバアサガラ(*)のようで、それがなんとも云えずいい格好で沢の景色を引き立てている。流れる水は飲めるほどに清らかだ。
 方円ノ滝からさらに30分ほど進むと道は二手に分かれていて、ここで中休止にした。道標によると右が「尾根コース」で左が「沢コース」だ。同じ道を往復するのもなんなので、私達夫婦は相談して、「沢コース」から上り「尾根コース」を下ることにした。
 伏流水になり水音の消えたカレ沢を少し登ると支尾根に入り、鬱蒼としたヒノキ林の急坂になる。ゼーゼー云いながらジグザクと登るとやがてカラマツ林になり、ひょいと稜線へ出た。分岐から約30分だった。枯枝の隙間から待望の展望が開ける。北面の諏訪山、倉門山、オオナゲシ、赤岩岳などの上武国境の岩峰群が間近で、迫力のある山岳風景だ。それらの奥には西上州の山々が連なり、その更に左奥には白銀に輝く浅間山も見えている。振り返って南面を望めば、奥秩父の三国山や十文字峠の奥の甲武信岳(三宝山だったかも?)などから奥多摩へ至る山々が太陽を背に受けて灰色に見えている。
 心軽やかに、明るい稜線を東進する。辺りにはひねた(痩せた)ヒノキやカラマツの他にはやはりひねたツガも目立っている。中・低木ではリョウブ、ツツジ類(アカヤシオなど)、ハンノキ類(ケヤマハンノキやヤシャブシなど)がひっそりとしており、常緑低木のアセビが葉を茂らして道々をきれいな緑で彩っている。目を上げると、シジュウカラ(またはその仲間?)が、稜線部の樹間を盛んに飛び交っている。
 なだらかにアップダウンして、尾根コースとの分岐(南天山の西の肩)を過ぎると最後の岩場の登りだが、これはあっという間で、南天山の山頂に着いたのは11時半頃だった。両神山がギザギザ頭を連ねて、ついに、眼前に大きく横たわる。
 南天山山頂の周囲は背の低いヒノキや立ち枯れのカラマツなどが疎に生えているだけなので、両神山や秩父の山々の景色など、一点360度の素晴らしい展望だ。単独行の中年男性が休憩していたが、この岩ゴツの山頂は狭いので、私達夫婦と彼の三人で丁度いいくらいだ。ウイークデー(月曜日)だったこともあるけれど、この日この山に登ったのはこの三人だけだったと思う。上品な感じの単独行の中年男性は、十数年前にこの山頂部で起きた山火事の話などを二言三言私達としてから、コンロで作ったラーメンを食べ終わると、ゆっくりと立ち去った。それからはずっと静けさが私達二人を包んだ。山火事(落雷?)の名残りの焼け焦げた立木や、何故かぽつんとしている細身のシラカンバなど、辺りの景色も観察しながら、なんと1時間半近くを山頂で過ごした。
 下山は予定通り「尾根コース」を辿った。距離は短いが稜線歩きの楽しさ(=展望)がスポイルされてしまうのがこの「尾根コース」のようで、上方の一部はカラマツ林でそれ以外はヒノキ林、というロケーションは「沢コース」と同じだった。ジグザグに下って、来た道と合流して、森の中にリスを発見したりして、気持ちのよい沢筋をグングン下り、午後2時半頃、あれよあれよと云う間に振り出しの鎌倉橋に戻ってしまった。
 帰路には140号線上にある大滝温泉「遊湯館」に立ち寄り、山の汗を流した。南天山は、東京から日帰りで充分な山だった。

 ガイドブックによると、この南天山は「玄人好みの山」ということになっている。奥深い山ということもあり、素人の私達夫婦は、じつは、周到な準備をしてかなり気合を入れて歩いたのだが、案外あっけなかった。最近(ここ10年くらいの間かなぁ…)登山道の整備などが進んだらしく、道ははっきりとしていて歩きやすく、道標もしっかりしていたことなどが「あっけなく」感じた理由だと思う。そしてもうひとつ案外だったのは、この山のほとんどが、現在も過去も、平凡な人工林であったということだ。しかし、(多分)高度経済成長期に皆伐されてほっぽっておかれた一部の人工林が、今では(若い)自然林になっている処も随所にある。このままほっぽっておかれたとしたら、数百年数千年後には立派な原生林になっているはずだ。「自然保護」について、何が良くて何が悪いのか、ということは難しくて私にはよく分からないが、若い森にしろ老齢な森にしろ、豊かな自然っていうのはとても良いことだと思う。
 何れにしてもこの山は、少なくても現在は、「玄人好みの山…」ではない。現在、そしてこれからの南天山は、東京近郊のその他の多くの山と同じように、家族連れのハイキングなどによい山だと思う。特にミツバツツジなどの咲く新緑の初夏や10月下旬〜11月中旬頃の紅葉の盛りがいいと思う。しかし、その時季には、いい山は他にもたくさんあるので、困ってしまう…。
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オオバアサガラの花(クリックで大画像)
花(6月に撮影)

* オオバアサガラ(大葉麻殻・エゴノキ科) 本州以南の渓流沿いなどに見られる落葉(小)高木。細い枝などはちょっと力を入れるとポキポキと折れてしまって全然だらしのない木だけれど、その幹は床柱に使われることもあるという。初夏には白く清々しい花序を垂らし、ハイカーたちの目を楽しませてくれる。アセビなどと同じようにシカが食べない植物なので、その食害対策に最近注目されているらしい。近畿以西に見られるアサガラは花は少し大き目だが、葉はこれより小さい。

おおたき「こまどり荘」: 南天山登山のベースとして最適です。その後の奥秩父や北秩父の山歩きに何回か利用させていただいていますが、お勧めの宿泊施設(温泉付き山の宿)です。すぐとなりに森林体験施設「森林科学館」もあります。設備やロケーション等の詳細については「こまどり荘」の公式HPを参照してみてください。[後日追記]
大滝温泉「遊湯館」: No195「秩父御岳山」の頁 を参照してください。



南天山の山頂から両神山(北東方面)を望む
ギザギザの稜線に個性があります
・・・大ナゲシ・・・赤岩尾根・・・八丁尾根・・・両神山・・・

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