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No.218 九鬼山970m(くきやま・道志山塊)
平成19年4月11日 イマイチの天気

九鬼山 略図
桃太郎が九匹の鬼を退治した山…

新宿…大月…富士急行線禾生駅〜落合橋〜愛宕神社〜天狗岩〜富士見平〜九鬼山〜紺屋休場〜札金峠分岐〜林道〜札金鉱泉跡〜富士急行線田野倉駅…大月…新宿 【歩行時間: 3時間40分】
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  富士急行線の禾生(かせい)駅から歩き出したのは午前8時50分頃だった。 天気予報は外れて雲行きはあまり芳しくないが、東の方向には九鬼山の鈍角三角形がよく見えている。 菅野川と朝日川が本流の桂川に合流する地点の落合橋を渡りながら、「ここいら辺りの集落が九鬼(くき)かしら…」 と妻の佐知子が振り返った。
禾生駅方面から九鬼山を望む
九鬼集落と九鬼山

九鬼集落を通過
サクラ咲く山里

アスファルト道はここまで
愛宕神社脇を通過

南西面に張り出した絶好の展望台
天狗岩にて

中央にあるのが2等三角点
九鬼山の山頂

下山路は新緑の気配が・・・
芽吹き始めた森
  今回の九鬼山山行のインターネット検索による下調べで印象に残ったサイトは 「白籏史朗の甲斐山歌−九鬼山の頁」 だった。 それによると ”九鬼山の名は山麓にある九鬼集落の名をとったもの…” とあった。 多分佐知子はそれを思い出していたのだろう。 超有名な山岳写真家の白籏史朗氏が当地(大月)の出身であるということもそのとき初めて知ったことだった。 “小学生時代はここ(九鬼山)一帯は遠足の場所であった…” という白籏氏の言葉も興味深い。
  この地域には百蔵山(モモくらやま)、おばあさんが桃を拾った桂川、犬目(いぬめ)で犬、鳥沢で雉(きじ)、猿橋で猿を家来にした、など、桃太郎伝説に因む地名や山名が何故か多い。 九鬼山で桃太郎が九匹の鬼を退治したことは(当地では)有名な話、らしい。 ウ〜ン、さもありなん、かなぁ…?
  クキ(九鬼・久木)には「小高いところ」という意味もあるらしい(日本山岳ルーツ大辞典)。 読み方としては、三省堂の日本山名事典には「くきやま(さん)」となっていて、禾生駅の女性駅長も「くきやま」と云っていたが、私は「くきさん」のほうが呼び易いし親しみがもてるような気がする。 まぁ、どっちでもいいのだが…。
  九鬼山の山頂直下にはリニアモーターカー(山梨リニア実験線)が東西に突き抜けている。 「桃太郎伝説があったり、世界最速(時速581キロ)で走るというリニアカーがあったり、なんか、九鬼山って面白いね」 などとあれこれと佐知子と話し合いながらのんびりと歩いていたら、レンガ造りの用水橋の下をくぐり、杉山新道への分岐へ出た。 杉山新道のほうが幾分なだらかで歩きやすいということだが、私達は急斜面の愛宕神社コースを選び左へ進んだ。 間もなくこじんまりとした愛宕神社も通り過ぎ、満開のサクラ咲く里道が終わって山道へ入る。
  九鬼の里では菜の花や帰化植物のヒメオドリコソウが春を謳歌していたけれど、山へ入るとタチツボスミレなどのスミレ類やシックに重なって薄紫色に咲くジュウニヒトエ(シソ科キランソウ属)がその花の盛期を迎えていた。 淡黄色のミヤマキケマンも紅紫色のムラサキケマンも群れて咲いている。 ミミガタテンナンショウが不気味に鎌首を持ち上げている。 春爛漫だ。
  しかし急勾配の尾根道だ。 北側(左側)をアカマツに守られたヒノキやスギの人工林が続く。 近年においては何処の里山でもそうだが、病害虫などの原因による所謂「松枯れ」が問題になっている。 この森のアカマツも、真直ぐに伸びたよい樹形なのだが勢いがなく、涸れている個体が多いのが矢張り気にかかる。
  やがてコナラ、クヌギ、ホオ、シデ類などの二次林(雑木林)へと辺りの林相が移り変わる。 林床は葉の白い隈取りが殊に美しいミヤコザサだ。 キブシが薄黄色の花穂をぶら下げ、モミジイチゴやマメザクラ(フジザクラ)は花をつけ始めている。 下向きに咲くそれらの花たちはことさら可憐だ。 しかし矢張り急坂だ。 汗が身体中から流れ落ちる。
  濃い春霞のためもあって、この日はとうとう近くに大きく見えるはずの富士山を望むことはできなかった。 それでも、山頂手前の天狗岩や富士見平からは都留市街が一望でき、その奥の南面から西面にかけて道志の御正体山(あぁ、この右奥に富士山がある筈なのだ…)や御坂の三ツ垰山、近くの高川山などが薄ぼんやりと見えている。 くっきりと晴れていれば南アルプスも望むことができるとのことで、それもちょっと残念だ。
  こじんまりと長細い九鬼山の山頂へ着いたのは11時20分頃だった。 ガイドブックには「西側にわずかな展望があるだけの樹林の頂」と書かれてあったけれど、最近木を伐ったのだろうか、北面が大きく開けていて、滝子山や百蔵山などの大菩薩連嶺の山々も見えている。
  三角点の標石の上に座ったり山頂標識や指導標にタオルや上着などをかけて大声で騒いでいた先着の中高年男女パーティ(14〜5名)には、はっきり云って、少しムッとした。 かといって山頂標識も三角点も写真に撮らないで早々に下山するのも悔しいことだったので、山頂の隅の若いニシキギの脇で、佐知子とお弁当のオニギリをゆっくりと食べながら静かになるのをひたすら待った。
  しかし 「〜待てば海路(甘露?)の日和あり〜」、とはいかなかった。 やがて山頂はその中高年パーティが去って静かになったのだけれど、益々雲が厚くなってしまい、展望は殆どなくなってしまったのだ。 すっきりと現れた2等三角点(何故か点名は遅沢山)や山頂標識を写真に収めると、私達はそそくさと下山の途についた。
  山頂の北東側の急斜面(ロープ場)を下り、尾根から西方向へトラバースする。 コナラやミズナラに交じりイヌブナやマンサクやチドリノキが目立つ、いい感じの細い道だ。 もうひとつ西側の尾根道へ出て、大きく北へ進むと、こちら側も真直ぐに幹の伸びたアカマツが目立つ稜線だった。
  浅野孝一氏の著書(「関東百山」・共著・実業之日本社)によると、この辺りは昔(昭和30年代後半の頃)はヤブのきつい処だったらしい。 足元を見るとスミレ類やジュウニヒトエがたくさん咲いている。 クサボケの赤い花やヤマブキの黄色い花の色も鮮やかで、まるで濃厚な油絵を見ているようだ。 シジュウカラやウグイスが囀っている。 ウソのツガイが大きなヤマザクラの幹の上で仲良くしている。
  西面の展望がよいとされる紺屋休場を通り過ぎ、札金峠手前の朝日小沢(猿橋)方面への分岐を左折して、ここからは西へ向かう。 林道へ出て、道端の黄色い花たち(ミヤマキケマンやキジムシロなど)を観察しながらだらだらと下る。 ポツンポツンと小粒の雨が降り出したが傘をさすほどではなかった。
  札金鉱泉跡の廃屋を過ぎ、富士急行の線路に沿って北上すると間もなく田野倉の閑静な駅だった。 山頂で出合った中高年パーティとここでもいっしょになったが、私達夫婦はその中の何人かと目が合うと、何時ものクセでニコッと作り笑いの挨拶をしてしまった。 午後2時。 まだ全然日は高かった。

* サブコースについて: そのボリュームにおいて本頁の九鬼山だけのハイキングでは物足りないと感じる方には、下山コースに札金峠から「馬立山(まだてやま・760m)〜沢井沢ノ頭〜菊花山644m〜大月駅」、または「馬立山〜厄王山(御前山)730m〜神楽山674m〜猿橋駅」、といったルートがいいかもしれません。 この場合の総歩行時間(コースタイム)は何れも5時間強になると思います。 また、富士急線を境にその反対側(西側)に聳える高川山976mを九鬼山と同日に登ることも可能だと思います。 ただしその場合(JR初狩駅〜高川山〜富士急行線禾生駅〜九鬼山〜富士急行線田野倉駅)の総歩行時間は約7時間のロングコースです。
  それらのバリエーションルートについては、恥ずかしながら、私達は現地へ行ってから考えて知ったことでした。 それらのコースについては事前に調べておらず、該当の地形図も持参していなかったので、早すぎる時刻の下山に「勿体ない…」と思いながらも、大月コースや猿橋コースや高川山登山は断念してしまいました。 時間に余裕のあるときは近隣地域の地形図も持参すべき、と、それが今回の反省点でした。
  これらの(九鬼山周辺の)コースはとてもいいと思うのですが、下山地に適当な温泉入浴施設がないのがちょっと残念です。





九鬼山の道
九鬼集落の「落合水路橋」の下をくぐり抜ける
シックなレンガ造りの用水橋
真直ぐな樹形が美しい(下山路にて)
アカマツの尾根道
よく手入れがされていました(下山路にて)
ヒノキ林へ入る

九鬼山の春の花々
ケシ科キケマン属:有毒
ミヤマキケマン
バラ科ボケ属:日本原産
クサボケ
ヒカゲスミレの変種・高尾山に多い
タカオスミレ
シソ科キランソウ属:日本固有種
ジュウニヒトエ

*** コラム ***
九鬼山のあのニシキギは何処へ?

* この後、私が属しますNPOの主催による自然観察ハイキングを九鬼山で行いましたが、その下見などで数回、同コースを歩く機会を得ました。 ちょっと気になったのは、私達夫婦が初めて九鬼山を訪れたとき(本項のH19年4月現在)は、その山頂の西側にニシキギの若木が確かにあったのですが、その翌年にはもうなくなっていた、ということです。 紅葉のとてもきれいな低木なのですが…。 “盗掘”でしょうか。 もしもそうならば、非常に残念なことです。



逆光ですが… 秋晴れの九鬼山(H20年11月に撮影)
南大菩薩方面を望む
九鬼山の山頂にて
富士見平から富士山を望む
富士見平にて
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