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No.256 蕨山(わらびやま・1044m)
平成21年(2009年)4月8日 晴れのち曇り

蕨山・略図
寒菅(カヤツリグサ科):常緑の多年草
カンスゲ(寒菅)

登山道から伊豆ヶ岳(奥武蔵)を望む
伊豆ヶ岳を望む

けっこうきつい登りです
岩場の急登

展望に恵まれた心地よい空間です
蕨山の山頂

樹林の隙間からピラミッド型の蕨山が見えた!
振り返って蕨山を望む

金比羅神社の鳥居をくぐる
金比羅神社から下る


アカヤシオ咲く明るい稜線

西武池袋線飯能駅-《バス60分》-名郷〜蕨入林道終点〜蕨山1044m〜藤棚山920m〜大ヨケの頭771m〜小ヨケの頭〜金比羅山660m〜金比羅神社跡〜さわらびの湯(入浴)-《バス50分》-飯能駅 【歩行時間: 4時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 人影の多い里山的な奥武蔵だが、その西側の奥まった山域では静かな山歩きが楽しめる。しかも下山地に日帰り温泉施設(さわらびの湯)がある蕨山の登山は、何時も私達夫婦が気にしていた“秘蔵っ子”のワンデー・トレイルだった。都心ではサクラの花が大方散ってしまった春の日に、わくわくいそいそと出かけてみた。

 しかし朝、電車のポイント故障とかで、出だし絶不調だった。予定を約1時間ほど遅れて飯能駅前からバスに乗り、終点の名郷(なごう)から歩き出したのは午前10時近くになっていた。それでもまだ時間に余裕があったのは不幸中の幸いだったかもしれない。
 山里のあちこちにはヤマブキが鮮やかに咲き、道端にはスミレ類が満開だ。地元の農家のオバチャンが 「蕨山登山ですか」 と優しく声を掛けてくれる。しかし今日はあまりゆっくりとはしていられない。下山地の「さわらびの湯」が18時までの営業なので、ゆったりと湯に浸かりたい私達としては、めずらしく、自然と気合が入り急ぎ足になっている。
 約20分ほどの林道歩きの終点が登山道の始まりで、沢を右へ渡って、まずは鬱蒼としたスギ林をひたすら登る。林縁にはカンスゲが案外と愛くるしい花(白い小穂)を咲かせている。
 歩き始めて1時間ほどで空が透けてきて、稜線へ出た。ここからは所々ヒノキの植林地帯も交じるが、そのほとんどはコナラ、ミズナラ、モミ、ツガなどの明るい天然林(雑木林)だ。森の脇役(中間層)はリョウブ、ヤマザクラ、アオハダ、シデ類、アカマツなどで、未だ冬枯れの様相だ。常緑低木のアセビが、花は未だ咲き始めのようだったが、青々とした葉を茂らせて景色に美しいアクセントをつけている。ダンコウバイが黄色に咲き、樹林の隙間からは近くの山々が見えている。
 岩っぽい急登のピークが山頂かと思うとその先はタルんでいて、また急登だ。そんなことが何回か続いて 「意外とタフな山ねぇ〜」 と息が切れ始めた。長袖のシャツはとっくに脱いでTシャツだけになっているが、それでも汗が流れ落ちる。 「ここのところ、暫らく登っていないからなぁ〜」 と私も弱音を吐く。 やっぱり1ヶ月に一日程度の登山では体力は元の木阿弥だ。 「せめて2週間に1度くらいは登山をしましょう!」 と彼女。これについては私も異存はない。
 有間山1214mへ至る尾根道を右に分け、再びタルんだ先を約10分間も登り返すと、ようやくやっと、そこが好ましい小空間の蕨山山頂だった。木製のベンチに腰掛けて、ここで大休止。持参のオニギリをほおばりながら、展望案内板などを参照して、展望三昧の至福の時間を過ごす。

* 蕨山の山頂からの展望: 東側の眼前には古御岳を従えた伊豆ヶ岳851mが名栗の谷を隔てて双耳峰のように見えている。北側の大持山1294mの金字塔がなんといっても大きく、その右肩の奥に武甲山1304mがぴょこんと頭を出している。西側と南側は樹林の隙間からの展望だが、逆沢の谷を隔てた有間山1214mが近くて大きく、その左奥には奥多摩の峰々も薄っすらと見えている。この日は春霞で近景だけだったが、晴れ渡っていれば上州や日光の山々も望めるという。

 蕨山の山頂に別れを告げ、南東方向に下山する。高度が下がるにつれてミズナラ林からコナラ林へと徐々に変化するが、近縁種ということもあり見た目は殆ど変わらない。明るく透けた樹林から振り返って見て、こちら側からの蕨山の山容がピラミッド型だということがこのとき初めて分かった。
 藤棚山920mの山頂は樹林に囲まれていて、三等三角点の標石がひっそりとあった。そこで少し休憩してから再び歩き出し、尾根道を更に下る。やがて林道が右下に見えてきた。地形図などには載っていない林道なので、割りと最近にできたものと思われる。
 その辺りから登山道沿いに、淡紅色のアカヤシオの花が次から次へと咲き始めていて、その上品でファンタジックな美しさにウットリ。ガイドブックなどをちゃんと読んでいなかったせいもあるが、この予期せぬ“快事”に私達は驚喜した。
 仕合わせな気持ちで大ヨケの頭771mを過ぎ、林道を横切って再び山道へ入る。眼下に名栗湖がチラチラ見えてきた。小ヨケの頭は何時の間にか通り過ぎてしまったようだ。道標がなかったので、金比羅山660mの山頂へ至るはずの道も知らずに左へ見送って巻き道を進んでしまった。三等三角点のある金比羅山の山頂を外してしまったことは、その先の金比羅神社跡の小さな石祠のある広場へ出て初めて気がついたのだ。 「まぁいいか」 と何時もの私達で…、もちろん登り返す気力も根性もない。金比羅神社は平成12年(2000年)に焼失したという。その名残りと思われる周囲の焼き焦げた木々が痛々しい。
 午後3時50分、どんどん下ってドスンと下りついた処が竜泉寺の墓地だった。アスファルトを渡って広々とした空き地を通り、いそいそと「さわらびの湯」へ向かう。周囲には植栽されたスイセンやユキヤナギが満開に咲いている。
 とうとう他のハイカーには誰にも出会わない、静かな蕨山だった。明るい雑木林のプロムナードやほどよい歩程など、この山は都心からの日帰り登山にはうってつけだと思った。なんと云っても、くどいようだが、下山地に温泉があるのが何よりだ。
 山名に因むワラビはこの山には生えないというが、蕨山にはそんなミステリアスな一面もあるようだ。

* 蕨山の山頂について: 下山後に国土地理院の地形図を見直して分かったことだが、蕨山は実は双耳峰であるらしい。手前の小ピークに分岐があったが、これを有間山方面へ100m近く進んだ尾根上に真の蕨山の山頂(西峰)があるようで、その標高が山名辞典などにも書いてある1044mであるらしい。私達が憩ったピーク(東峰)の山頂標識の標高表示が1033mとなっていたのがなんとなく気になっていたのだが、その意味が理解できて目からウロコだった。なお、ネット検索の情報を要約すると、蕨山の真の山頂(西峰)は山頂標識もない鬱蒼とした処、であるらしい。事前に分かっていればちょっと“探検”してみたかったのだが…。

名栗温泉「さわらびの湯」については伊豆ヶ岳(その2)の頁を参照してみてください。



蕨山の静かなプロムナードにて(蕨山〜大ヨケの頭)
若い雑木林(二次林)です
明るい雑木林
七分咲きでした
あっ・・・ アカヤシオだ!

再び蕨山へ H24年(2012年)4月29日 晴れ

蕨山の山頂にて 「山歩会」の定例山行です。
 今年は春が遅かったので、新緑の時季もずれ込んでいるようです。おかげで、芽吹きの新緑や山腹のパッチ状の萌黄色を存分に楽しむことができました。ミツバツツジはほぼ満開で、アカヤシオも辛うじてまだ咲いていたり、所々にはヤマザクラも咲き始めていました。山がくすくすと笑い始めていたのです。
 しかし、下山地の「さわらびの湯」は大混雑で、30分待ち、とのことだったのでカットせざるを得なかったのが残念でした。いつもはガラガラの路線バスも、この日は行きも帰りも超満員でした。やはりGWは避けるべき、との教訓です。山中はとても静かだったのですが…。
 帰路の飯能駅近くの中華店で打ち上げをしましたが、麦酒や紹興酒が美味かったので、ついつい飲み過ぎてしまいました。(^_^)/~

*** コラム ***
ヒノキ林の下層木にヤマザクラを植えた理由

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手入れされた人工林
 今回(H24年4月29日)の蕨山からの下山時、小ヨケの頭から金毘羅山へ向かって尾根道を下っているときにとても気分のいいことがありました。それは、右側(南側)のヒノキの人工林が(今時珍しく)とてもよく手入れされていたことです。埼玉県の県有林のようでした。間伐された空間には落葉広葉樹のイロハモミジとヤマザクラの幼樹が植えられてあり、異種による複層林に誘導しようとしているのが理解できました。それ自体はとてもよいことだと思います。
  しかしちょっと疑問に感じたこともありました。それは植えられた樹種のことです。陰樹(耐陰性が高い)のイロハモミジはヒノキなどの高木の下層でも何とか育っていくかもしれませんが、ヤマザクラは陽樹(耐陰性が低い)なので、はたして暗い林内で育つでしょうか。それとも、光環境を管理して下層木(ヤマザクラの幼樹のことです)の生長を維持させるのでしょうか。その場合、上層木(ヒノキのことです)の間伐や枝打ちがしばしば実行されなければなりませんが、そんな“手間とヒマと金”を費やす気力とやる気と勇気が県にあるのでしょうか…。もしかして、植林地帯の北側が明るい雑木林(自然林)なので、そちらから斜めに日が差し込むのを見越した施策かもしれません…。と、まぁ、(多分)当地の森林施業の専門家たちが考えて植えたのですから、私がやきもきすることはないとは思いますが…。

 と、ここまで書いたところで、ふと思いついて、上述の文章をほとんどそのまま埼玉県・森づくり課の担当者宛てにEメールで送ってみました。するとなんと、20〜30分後には間伐・森林循環担当の職員さんから丁重な電話があって、懇切丁寧に説明していただきました。この素早い対応には流石に驚いて嬉しかったです。
 説明された内容を要約すると次のようになります。

 埼玉県・森づくり課からの回答内容
(上述の意見については)概ねその通りである。つまり今後も枝払いや間伐などの管理を充分に行うつもりだ。尾根筋の登山道がギャップ(林床に光が射し込む樹冠の隙間)になることや、北側の明るい雑木林も光環境に寄与するはずだが、実際にうまくヤマザクラが育つかどうかは未知数で、不安がある。シカなどの食害も心配だ。
あえてヤマザクラを植えたのは登山者の目を楽しませたいからである。
植えたイロハモミジやヤマザクラだけでなく、自然の埋土種子(シードバンク)からの実生も期待している。
このような意見や質問は大変に嬉しい。今後も埼玉県の山や森をよろしくお願いしたい。

 なお、「ヤマザクラは短命だから(将来的に樹種を)変更しやすい」 ともおっしゃっていましたが、それは多分なにかの勘違いだと思いました。ソメイヨシノは短命だけれどヤマザクラは(陽樹としては)けっこう長生きなんです。しかしながら、ずいぶんと長い間、熱を込めて色々と説明していただいた埼玉県・森づくり課の担当職員さんには本当に感激しました。
 蕨山のこの山稜における(数年後の)ヤマザクラの花やイロハモミジの紅葉がとても楽しみです。うまく育ってくれればいいのですが…。
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