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No.257 戸倉三山(臼杵山・市道山・刈寄山)
平成21年(2009年)4月22日 薄晴れのち曇り

戸倉三山・略図
スギ・ヒノキの人工林が多い
植林地帯を登る

麓のあちこちに咲いていました
チゴユリが満開!


樹林に囲まれて展望はない
臼杵山(南峰)の山頂

稜線から北西を振り返る
御前山(左奥)と臼杵山

ここも殆ど展望はない
市道山の山頂

小広い山頂には2等三角点がある
刈寄山の山頂

芽吹いたばかりの萌黄色の天然林
新緑の下山道

下山道から対岸の山腹を撮影
石切り場を望む

立派な里宮
今熊神社に到着


歩き屋さんにお勧めのコース

JR五日市線・武蔵五日市駅-《バス15分》-荷田子〜荷田子峠〜臼杵山842m〜市道山795m〜イッポチ山780m〜鳥切場〜入山峠〜刈寄山687m〜今熊山505m〜今熊神社〜今熊山登山口-《バス40分》-八王子駅 【歩行時間: 7時間50分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(臼杵山)へ


  私達夫婦が昔から使っているガイドブックには「健脚向き」と書かれていたので、何となくずっと敬遠していたのが奥多摩の戸倉三山縦走だった。 戸倉三山とは臼杵山(うすぎさん・842m)、市道山(いちみちやま・795m)、刈寄山(かりよせやま・687m)の総称で、秋川の南側(奥多摩の南東部)に位置する低山群だ。 武蔵五日市や八王子の街に近くて、バスの便がよい割には人影の少ない山域であるらしい。 “標高の割には懐が深い…”というコピーも私達の気を惹いていた。

  荷田子(にたご)バス停近くの公衆トイレで用を済ませてから、道標に従って、おもむろに長丁場の第一歩を踏み出したのは午前8時30分頃だった。 登山口から少し進むと、畑の農作物をイノシシなどの食害から守るためのものであると思われるが、電気が通っているネットが行く手を阻む。 傍らに「乙津・青木平地区獣害対策協議会」なる名義の掲示板があって、電気柵の開閉についての注意書きがある。 それを何度も読み返してから、恐る恐る開いて山道へ入る。
  いきなりの急登が続く。 道端の林下ではチゴユリが花期を迎えていて、次から次へと、その小さくて下向きな白花を群落させている。
  歩き始めてから30分足らずで荷田子峠へ出て、さらにスギやヒノキの人工林をひたすらに登る。 コナラやイヌシデなどの林縁の雑木がどれもこれも芽吹いていて、その淡い緑にウットリ。 目の高さにはモミジイチゴやニガイチゴなどのキイチゴ属が白い花を付け、足元にはタチツボスミレや小さなフモトスミレが咲き乱れている。 木も草も、全部新緑だ。
  しかし、クモの巣が顔に絡みついてうっとおしい。 私達が今日の最初のハイカーなのだろうと察した。 そのうち単独行の中年男性に追い越されて、それからはクモの巣は気にしなくてよくなった。 追い越されることのメリットは、クマ避けにもクモの巣避けにもなるということだ。 (^^ゞ
  この荷田子峠から臼杵山まで続く稜線はグミ尾根と呼ばれているようだ。 その中間地点に「戸倉山茱萸御前(ぐみごぜん)」と彫られた石碑があった。 グミ御前とはなんなのか、ちょっと話題にした。
 「なにか面白い謂れがあるのかしら…」
 「この辺りにはグミの木はなさそうだよ…」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
  息が切れ始めているのでそれ以上の思考と会話は成立しない。 時折、左側(南東側)の盆掘川(秋川の支流)の流れる谷を隔てた山腹から「ドーン」と発破の轟音や機械音が聞こえてくる。 例の石灰岩採掘の音だ。
  臼(うす)と杵(きね)は男女のことで、北峰と南峰からなっている双耳峰であることが臼杵山の名の由来であるらしい。 しかし、私達はうっかりして巻き道を進んでしまったらしく、臼杵神社のある北峰をやり過ごしてしまった。 ユニークな狛犬が番兵しているという臼杵神社をひとめ見てみたかったが、戻って登り返す気力は私達にはない。 三等三角点の標石と山頂標識のある南峰で小休止の後、再び気合を入れて南へ下る。 歩程7時間以上のロングコースだ。 軟弱で根性無しの私達にとってはかなり手ごわい今回の山行。 樹木の観察などもほどほどにして、先を急がなくてはならない。
  急坂を下って上ってコブを越える。 稜線上のアカマツはどれもこれも立派な大きさのものだが、悲しいことに殆ど全滅(立ち枯れ)だ。 「これってやっぱし松くい虫…?」 と佐知子が珍しく質問してきたので、私は得意になってマツノザイセンチュウ(殺し屋)とマツノマダラカミキリ(運び屋)の憎らしくも微笑ましい共生の関係を長々と説明した。 松枯れは昨年の9月にとうとう青森県でも確認されたようで、北海道を除く全国に蔓延してしまったようだ。(*
  スギ・ヒノキの植林地帯を縫うようにコナラ、ミズナラ、エンコウカエデ、リョウブ、アブラチャン、アセビ、モミ、などの天然林が交差する。 ひらひらと、たくさんのヤマザクラの花びらが散っている。 林下のミヤマシキミが白い小花を集合させている。 クロモジの新葉をちょっと失敬して鼻を近づけると、なんとも云えぬよい香りで、疲れが一瞬消えるようにさえ感じる。
  再び登り返して市道山(*)のこじんまりとした山頂へ出る。 ここも木々に囲まれて殆ど展望がなくて、三等三角点の標石と例の立派な山頂標識がポツンとあった。 その傍らでは、先ほど私達を追い越していった単独行の中年男性が休憩していた。 あとから思うと、彼が今回の山行で出会った唯一のハイカーだった。
  大休止の市道山山頂を少し下って、逸歩地(一歩地、市歩地、イッポチ山)から醍醐・和田峠方面への吊り尾根を右に分け、「峰見通り(みねみどおり)」へ入る。 これから先も小さなピークをいったいいくつ越えただろうか。 うんざりするほどのアップダウンが延々と続く。 樹林の隙間から北西の方向にチラチラと見えていた御前山が、この辺りでは手前の山影に隠れ、今度は大岳山が春霞の中に浮かんでいる。 何れにしても、樹林の隙間からの微かな山岳展望だ。
  やがて大きな送電鉄塔が建つピークを巻いて、鳥切場(トッキリバ)と呼ばれる、これも謂われ因縁のありそうな箇所を通り過ぎ、北(左)へ方向転換する。 それから送電線に沿って暫らく進み、入山峠で林道をクロスしてから刈寄山へ登り返す。 そろそろ“時間”が気になりだした。
  小広い刈寄山の山頂には二等三角点の標石とベンチがあった。 この戸倉三山は3座とも山頂に三角点があるが、その割には展望がないのが残念だ。 しかし、この刈寄山山頂の手前にある東屋の辺りは開けていて、南西方向には笹尾根やその奥の丹沢の山々などがよく見えている。 晴れ渡っていれば富士山も見えるそうだ。 その反対側の北東方面には武蔵五日市の街並みなども見渡せる。 今回のコース上では数少ない展望箇所だったので、ここでゆっくりとしたかったのだが、もう午後の4時20分を過ぎている…。
  芽吹きの新緑が目に優しい稜線を、矢張りアップダウンしながら徐々に下る。 道端ではヤマツツジも咲き始め、クサイチゴは白花を、ミツバツチグリは黄花を、今を盛りに咲かせている。 谷を隔てた右手には石灰岩採石の荒れた山肌が見え隠れしている。
  刈寄山から1時間ほども歩くと今熊山山頂への分岐に出る。 私達は少し迷ったが、今熊山山頂往復はあきらめて、そのまま石段を下った。 今熊山のピーク(*今熊神社奥社)を極めることができなかったのは残念だったが、軟弱な私達の疲れは既にピークに達していたのだ。
  途中、大きく開けていてトイレなどもある箇所を通過して、ドスンと下りついた処が、思っていたよりもずっと立派な、ミツバツツジの咲く今熊神社(里宮)だった。 どうやら用意していた懐中電灯は使わないで済みそうだ。 ほっとして山里のアスファルトを約20分ほど歩いて、今熊山登山口バス停へ着いたのは6時25分だった。 間もなく八王子駅行きのバスがきて、私達は車中の人になる。 日が大分長くなってきた晩春だが、やっぱり夜の帳(とばり)が降りてきた。

  私達夫婦にしては珍しく、ひたすら歩いた今回の山行だった。 この戸倉三山縦走コースは、交通の便がよくて都心からこんなにも近いのに山深さを感じさせる、得がたいコースだと思う。 日帰り登山で、とにかく一日中歩いていたい、という健脚のハイカーには特にお勧めのトレイル、かもしれない。

* 近くに立ち寄り湯がないとばっかり思っていましたが、あきる野市(第三セクター)の日帰り温泉施設「秋川渓谷・瀬音の湯」が一昨年(平成19年4月)にオープンしていたようです。 これは帰宅してから知ったことで、下調べが不十分だったと反省しました。
 → 「瀬音の湯」については「御岳山から日の出山」の該当欄を参照してみてください。(後日追記)


* マツ材線虫病については ウィキペディアの該当頁 を参照してみてください。

* 市道山(いちみちやま)の山名について: かつて市の立つ日にこの山を越えて五日市まで行ったことに由来しているそうだ。 (「ヤマケイ・アルペンガイド4」より)

* 今熊神社ついて: 今熊山は古くから「関東のよばわり山」といわれ、行方不明者を探す人々の信仰を集めたという。

* 八王子八峰登山大会について: 八王子市の主催で毎年5月に行われている人気のイベント。 今年で20回目になるそうだ。 八峰とは今熊山、刈寄山、市道山、醍醐丸、陣馬山、景信山、小仏城山、高尾山のことで、合計32.5kmを踏破する。 アップダウンが続くかなりきついコースなので、歩き通せる人は限られると思う。 私達が今回歩いた戸倉三山縦走コースのうち今熊山〜刈寄山〜市道山の区間がその一部に該当する。 八峰を一日で踏破するのは軟弱で根性無しの私達には到底無理なことだ。 短縮コースもあるとのことだが、人間を見に行くような“登山大会”には、多分私達は参加しないと思う。 負け惜しみに聞こえそうだが…。
 → この大会はH23年の東日本大震災を契機に中止となっているようです。(後日追記)



戸倉三山は春爛漫・草も木も新緑だ!
このコースでは貴重な天然林です
木々は芽吹きのパステルカラー
グミ尾根にたくさん咲いていました
フイリフモトスミレも満開!
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