森林浴と展望のリゾートコース
《マイカー利用》 …関越自動車道 月夜野I.C-《車15分》-林道三峰東線・起点(駐車場)〜河内神社〜追母峰949m(パラグライダー離陸点)〜三峰沼(周遊)〜吹返峰1088m〜三峰山(後閑峰)1123m〜吹返峰〜河内神社〜駐車場-《車20分》-「三峰の湯」(入浴)-《車15分》-月夜野I.C… 【歩行時間:
4時間】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
ここで云う三峰山1123mは群馬県の沼田市とみなかみ町の境に位置する山で、「みつみねやま」と発音するのが正しいらしい。日本山名事典(三省堂)によると三峰山は全国に22座ほどある。他県の三峰山と区別するために特に上州三峰山と呼ばれているようだが、上州(群馬県)にはじつはもうひとつの三峰山629m(桐生市)がある。こちらのほうは上州…を冠して呼ばれることはないようだが、その呼び方は「みつみねさん」と発音するようだ。山名の呼び方についての「…やま」と「…さん」は悩ましい問題だが、この上州の2座の三峰山はその呼び方でも区別されているようで、ちょっと面白いと思った。
「日本のテーブルマウンテン」でサイト検索をすると出てくるのが荒船山1423mとこの三峰山1123mだ。何れも上州の山で、南アフリカ共和国や南アメリカのギアナ高地にあるという本家のテーブルマウンテンたちとは迫力においてかなりの差があるようだが、その台形状の山容はなんとも面白い。
荒船山のテーブル(山頂部)の長さが約2kmで三峰山のそれが約3.3kmだから、三峰山のほうが一回り大きいことになる。私の主観だが、岩っぽい魅力は荒船山で、大きさによる絶対的な魅力は三峰山、だと思う。そしてもうひとつの大きな違いは、その「印象=記憶」にある。上越線や関越自動車道などを東京から北上するときに、軍艦山の別称もある荒船山は、その前衛の山々に遮られてなかなか姿を見せないので忘れがちである。一方、三峰山は後閑駅付近や月夜野インター近くになると眼前に目だって立ちはだかるので、常に印象が強くて気になる山、ということになる。もっとも最近は(先月の中旬に)クレヨンしんちゃんの作者が転落死したことで、荒船山のほうが気になる存在になっているようだが…。
前置きが長くなったが、そんな訳で(どんな訳?)、紅葉の盛りにはチト早いこの時季に時間を見つけて、早朝の関越自動車道を青色のマイカーでひた走った。助手席には何時ものとおり妻の佐知子が、カーナビに“仕事”を奪われてうつらうつらしている。
* 荒船山に関しては当サイトの該当項(⇒No.79荒船山) を参照してみてください。
月夜野インターから細い道路をくねくねと15分間ほども走ると、鳥居やトイレのある河内(かわち)神社下の駐車場についた。ここは既に標高約770mで、佐山町方面へ続く林道三峰東線(民有林林道)の起点にもなっているようだ。小広い駐車場には保育園名の書かれてある1台の小型バスがぽつんと止まっているだけで、とても静かだ。略図や河内神社の由緒が書いてある案内板にざっと目を通してから、参道を歩き始めたのは午前10時頃。気温摂氏約13度、高曇り、微風。熱くもなく寒くもない、山歩きにはちょうどいい陽気だ。
河内神社本殿
リュウノウギク
三峰沼
三峰山の山頂
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少し歩くと子供たちの歓声が聞こえてきた。あの小型バスで来たと思われる10数名の保育園児たちが、2〜3名の先生に引率されて木祠の前で休憩している。その傍らにいかめしい小型モノレールの発着所があったが…、ゴルフ場のコース移動などにも使う例のあの乗物だ。「何故こんなところに?」とこのときは不思議に思った。あとでわかったことだが、パラグライダーの愛好家たちがこの上部にある離陸点へ上り下りするのに使用しているものらしい。可愛い子供たちに「こんにちは〜」と声を掛けながら通り過ぎる。この保育園児たちの一団が、この日この山で出会った唯一の人間になるとは、このときは予想もしなかった。
その小祠とモノレールのある処からが山道になる。辺りは典型的な雑木林(二次林)で、足元にはクリのいがやコナラのどんぐりなどがたくさん落ちている。
間もなく石階段を登り、鳥居をくぐって河内神社本殿へ出る。お参りしてから振り返ると南面が開けていて、沼田盆地の田園の彼方には赤城山や子持山がぼんやりと霞んで見えている。
さらに進んで、道標に従って左折して「パラグライダー離陸点」へ登ってみた。ここがつまり追母峰(おっぽみね・949m)の一角で、長大な三峰山山頂部の南端に位置する。今日は誰もいない寂しい空間で、例のモノレールの発着場が場違いな雰囲気で片隅に鎮座している。滑空用の南面が大きく開けていて気分の良いところだ。少し先の足元には可憐でゴージャスなリュウノウギクやサラシナショウマが咲いていた。
やがて道はなだらかになり、いつの間にかアカマツの純林の中を歩いている。これはもちろん人工林だが、今どき案外と珍しい元気なアカマツ林だ。 「これだけずっと立派なアカマツが続くと壮観だね!」 と私が云うと、「マツタケ…、探そうか」 と佐知子が答える。 「山腹のクリでさえ、そのイガの中身はきれいに剥ぎ取られていたのだから、マツタケなんぞはいくら探したってあるものか!」 と私が返す。そして暫く沈黙が続いたが、そのときの私は(多分、佐知子も)、アカマツの根元を横目で探したりして、マツタケのあのなんとも云えぬ美味しい香りを心の中で嗅いでいた。
ここも道標に従って左折して、三峰沼を周遊してみた。二つの沼畔を歩くのだが、最初の小さいほうは小沼というらしい。何れも農業用の溜め池(人工池)で、こんな処によくぞ作ったものだと感心した。初夏にはミズバショウの咲く一角もあるとのことだが、今は紅葉色に染まり始めた森を映してひっそりとしている。道筋に背の高いススキが繁茂していて、それを掻き分けて進むのがけっこう楽しい。辺りにクマイザサが茂るモミの木の下で、三峰沼を眺めながら小休止にした。
尾根道へ戻ってさらに北進する。暫くは感じのよいアカマツ林が続いたが、やがて自然林へ徐々に変化する。耳を澄ますと、時々ガサッ、ゴトッ、カンッ、とあちこちから音がする。ビクビクしながら見回して、それがホオノキの大きな葉っぱが落ちるときに枝などにぶつかって立てる音だと分かった。そしてホッとして、あらためて驚いた。 「ホオ葉の落ちる音って、意外と大きくて迫力があるのね」 と佐知子も云っている。何れにしても、クマじゃなくてよかった。
そこの木の幹に打ち付けてある小さな山頂標識がなかったならば、多分見過ごすであろうと思われるような、地味なピークの吹返峰1088mを通過する。森は益々自然っぽくなってきて、ミズナラ、リョウブ、ネジキ(アカマツ二次林の常連)、モミジ類、ツツジ類など、植生が豊かになってくる。黄葉を始めたオオカメノキ(ムシカリ)の幼木が密生する箇所を通過したが、これは壮観だった。
この先のピークが三峰山の山頂かな、と思ったらそれはニセ山頂で、その更に先の、ブナが目立ち始めた斜面を少し登り返した処が本物の山頂だった。時計を見ると12時20分。快調なペースだ。
テーブル(広くて長い山頂部)の北端にある三峰山の最高峰は後閑峰(ごかんみね・1123m)とも呼ばれているようだ。こじんまりとした山頂で、二等三角点の標石がデンと中央に突き出ている。この日はガスっぽくて、すっきりとした展望ではなかったが、開けた北面からは谷川岳や武尊山などの山影が微かに同定できた。風が出てきたり小雨も降ったりして少し寒い山頂だったけれど、私達は木のベンチに腰掛けてお弁当を食べたりサーモスの熱いコーヒーを飲んだり、ずいぶんと長い間、このステキな山頂で過ごした。
午後1時、踵を返して下山開始。来た道を、三峰沼には立ち寄らないが、北から南へ真っ直ぐに引き返す。どんどん歩いて、河内神社下の駐車場に戻ったのは午後3時頃だった。軟弱な私達にしてはめずらしく、それほど疲れていなかった。これから車で下って、月夜野温泉の「三峰の湯」に浸かるのが楽しみである。
* 上州三峰山の謎: 上州三峰山は北から南へ後閑峰(ごかんみね)、吹返峰(ふきかえし)、追母峰(おっぽみね)の三峰からなるとのことだが、それについて謎がある。現地の山頂標識では山頂部の北端にある最高峰を「三峰山=後閑峰1122.5m」としているが、日本山名事典(三省堂)の該当項を要約すると、“後閑峰は標高1100mで最高峰から南東500mに位置”していることになっている。1/25000地形図で確認してみると、確かにその地点に山名注記のない1100m峰が存在している。私達が何気なく通り過ぎてしまったなだらかなピークだ。
そしてもうひとつの謎は吹返峰の位置だ。沼田市の公式サイトに収められている観光チラシ(⇒登山マップ:PDFファイル)によると、吹返峰は山頂部中央の登山道から西へ少し離れた1015m峰となっているが、現地の標識ではその800mほど北に位置する登山道上の1088m峰が吹返峰となっていた。この山の云々についてもかなりの異同や混乱があるようだ。
本項では現地の標識を信じてそれを採用したが、ちょっと不安である。なんとなれば、木の幹に打ち付けられた山頂標識などは小さくて頼りないもので、作成者の名を記していない(責任の所在のはっきりとしない)ものであった。
なお、上州三峰山には2つの三角点があり、ひとつは北端にある最高峰(後閑峰)の二等三角点1122.51mで点名は「三峰山」。もうひとつは南端の追母峰(おっぽみね)にある三等三角点949.35mで点名は「三峰」…。これもちょっとややこしい。
みなかみ町営温泉センター「三峰の湯」: 関越道月夜野I.Cからは車で約15分の山里に位置する大衆的な日帰り温泉施設。プレハブの外観からはかけ離れた素晴らしい風呂で、豊富な湯量の源泉を掛け流している。泉質はアルカリ性単純泉で、湯上りの肌がなめらかだ。ほどよい広さの内湯も外湯も石貼りで、重量感があり秘湯の趣だ。入浴料金(町外)は2時間まで350円。かなりローカルだが、こんな素晴らしい温泉は誰にも内緒にそっとしておきたいほどだ。これで入浴後のビールが飲めたらもう最高!なのだが…。
三峰山の広い山頂部で森林浴
ムシカリの幼木が群生・・・
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気持ちのよいアカマツ林
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