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No.279 荒海山(あらかいざん・1581m)
平成22年(2010年)10月17日 曇り マイカー利用

荒海山・略図
歩きづらいから楽しい♪

《マイカー利用》 東北自動車道・西那須野塩原IC-《車70分》-八総鉱山跡〜登山口(登山カード提出用ボックス)〜砂防堰堤〜稜線の鞍部〜1251m峰〜1380m峰〜南稜小屋〜荒海山西峰1581m〜荒海山東峰1580m(往復) 【歩行時間: 6時間20分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  休日だと高速料金がチョー安いので、どうしてもマイカー登山を選んでしまう。 で、紅葉の始まったらしい10月中旬、未明の東北自動車道を北上する。 今回のターゲットは日本三百名山の一峰で、山と渓谷社の「関東百名山」や「東北百名山」にも選ばれている荒海山(あらかいざん)だ。 福島県南会津郡と栃木県塩谷郡の境…、かつては秘境と云われた山域…、帝釈山脈のやや東部に位置する。 荒海山というのは福島県側の山名で、栃木県側からは太郎岳と呼ばれているらしい。
ここが登山口になるのかな
登山カード提出用ボックス

この先急登になります
最初の渡渉

稜線へ出てホッと一息
一休みして紅葉見物

↓クリック!
素晴らしい自然林が続く
アスナロの巨木

視界が開けていい気分
山頂は目の前だ!

分水嶺を示す石碑があります
西峰の山頂

2等三角点があります
東峰の山頂
  西那須野塩原インターから約70分、野岩鉄道会津鬼怒川線の会津高原尾瀬口駅やその少し先の会津高原温泉「夢の湯」を左に見て、それから荒海川に沿って左折して、10分ほど進むと八総鉱山跡の駐車スペースに着く。 地形図上では標高817mの測量点のある辺りだ。 時計を見ると午前7時少し前。 “晴れ”の天気予報は外れたらしく、空はどんよりとしている。 この季節の天気は移ろいやすい。
 「女心と秋の空か…」 とかぶつぶつと独り言を云っていたら 「えっ、なぁに〜?」 と助手席の佐知子が起きてきた。(ドキドキ)
  お天気もそうだが、治りかけの私の腰痛・つまりギックリ腰も少し心配だったりして、なんか、不安な気持ちで歩き始める。 道端にはノコンギクやダイモンジソウが咲いている。 特徴のある葉型のカメバヒキオコシ(シソ科)もまだ辛うじて青く咲いている。
  荒海川(沢)に沿った林道(滝原線)を20分ほど歩くと、田島町の登山カード提出用のしゃれた木製ボックスがあった。 丁寧に記入して投函する。 沢水が溢れて流れている砂防堰堤の上をじゃぶじゃぶと進んだりして、いよいよ沢登りの気分だ。
  のっけからずっと自然林で、気分はすこぶる良い。 尾根に上がる取付地点から急登が始まり、ロープ場もでてくる。 ミズナラ、トチノキ、サワグルミ、ヤマハンノキ、ウリハダカエデ、オオモミジ、コミネカエデ、オオカメノキ、シナノキ、タムシバ、ハリギリ、ブナ、など、高度が上がるにしたがってそれらの葉の色付きが濃くなってくる。 見上げる稜線近くは既に紅葉の旬に入っているようだ。 道標の赤リボンに留意して慎重に一歩ずつ登る。 土も岩も落葉も、何処も彼処も湿っぽい。
  コル(稜線の鞍部)に出てから左(南)へ直角にカーブして、これから先はアップダウンの尾根歩きだ。 針葉樹のアスナロがでてくる。 スギやヒノキなどより赤っぽい樹肌が印象的だ。 けっこう太い幹のもある。 立派なブナも目立ってきて、アスナロ・ブナ・ミズナラ・ダケカンバ混交林といったところだろうか。 中間層で目立っているのはコミネカエデ、キタゴヨウ、オオカメノキ、ネジキ、ツツジ類、それに常緑樹のヤマグルマなど。 林床はネマガリダケで、ミヤマシキミ(ツルシキミだったかも)の赤い実が所々でアクセントになっている。 葉っぱだけのイワウチワの群落にも風情がある。 植物の種は多様で、ここの自然は予想以上の豊かさだ。
  しかし、数株だったが、立ち枯れているミズナラの巨木を見た。 ここにもいわゆるナラ枯れ(*)の被害が及んでいるのだろうか、ちょっと気になる。 今秋はブナやナラなどの堅果(どんぐり)の不作年ということもあって、それらを主食にしているクマさんも大変だろうと推測する。 佐知子のクマよけの鈴の音が森にこだまする。
  1251m峰、1380m峰と、その西側を巻いて進む。 紅葉や黄葉は思いのほか進んでおらず、その盛期は多分1週間後くらいだと思った。 相変わらず湿っぽくて、岩や木の根っこなど、歩きづらい山道が続く。 高度をさらに上げてくるとアズマシャクナゲ、アカミノイヌツゲ、ハイマツなどの高山性の樹種が目立ち、背の低いネズコ(クロベ)やミズナラ(ミヤマナラかも)も顔を出す。 それにしても、ここにもヤマグルマ(トリモチノキ)が多いのは驚きだ。 果実をつけているものもある。 本来は暖温帯に属し高木に育つのだが、ここでは這うように低く生えている。
  やがて視界が開けだすと素晴らしい雲上のプロムナードだ。 小さな無人小屋(南稜小屋)が左側の藪の中にぽつんと建っていて、そのすぐ先が荒海山の山頂(西峰1581m)だった。 途中で私達を追い越していった単独行の男性が二人、それぞれ離れて憩っていたが、私達が来たのが合図だったようにそそくさと下山していった。 そして、私達二人だけの山頂になった。
  狭い山頂は1点360度の大展望だが、あいにくの曇り空でその山影はぼんやりとしか見えない。 そのぼんやりとした山影を指さして、「北の近くが七ヶ岳で、その右奥が男鹿山塊と那須の山々。西から南にかけて会津や尾瀬やこの帝釈山脈の山々、その奥に日光の山々。そして南東に大きく見えているのが高原山…、ってところかしら」 と、私達は心眼も交えての楽しい山座同定。 それから徐にレジャーシートを敷いてここで大休止。 傍らには立派な石碑があり、「大河の一滴ここより生る・阿賀野川水源之標」、裏側には「平成3年10月、阿賀野川直轄改修70周年記念事業実行委員会」と彫られてある。 この山は日本海(阿賀野川水系)と太平洋(利根川水系)の分水嶺でもあるらしい。
  メロンパンとサーモスの熱いコーヒーで腹を満たした後、ザックをデポして、意を決して東側のネマガリダケの藪に分け入った。 しかし道は案外とはっきりしていて、5分ほどで登り返し、あっけなく2等三角点のある東峰1580.4mの山頂へ着いた。 こちらも狭い山頂で、西峰に勝るとも劣らない大展望だった。 荒海山は双耳峰で、この東峰を特に次郎岳と呼ぶこともあるそうだ。
  下山開始は12時半頃。 踵を返して来た道を下る。 足場が悪く歩きづらいので、登るときと同じくらい時間がかかってしまった。 下山口の登山者カード提出用ボックスを開けて無事に下山した旨を記入して、鉱山跡の駐車スペースに戻りついたのは午後4時頃。 私達の車は来た時と同じに1台でぽつんと停まっていた。
  この日この山で出会ったハイカーは何れも単独行の男性で、同じルートの4〜5人だった。 どうやら今回も、私達夫婦が一番早く出発して一番遅く下山したようだ。 何気に、他のハイカーに抜かされた覚えはあるが、追い抜いた記憶はない。 ちょっと情けない感じもしたけれど…、治りかけの私の腰痛が、この日のお天気と同じで、何とか一日持ちこたえてくれたのでほっとした。

  荒海山の登山道は全体的に歩きづらく、しかも湿っぽい。 だからこそ、久しぶりに登山本来の醍醐味を味わうことができたような気がする。 たまにはこういう(神経と体力をうんと使う)山行もいいものだ、と私達は真摯に話し合った。
  「自然」は必ずしも人間に都合よく存在しない。 “整備された登山道”の山ばかりを歩いていると忘れてしまう山(自然)の反作用がある…。 そんな根源的なことを悟らせてくれたのがこの荒海山だったのかもしれない。
  関東百名山の完登を意識していなかったら、私達はこの荒海山には多分登らなかったと思う。 偏屈でいやな奴だと思っていた職場の上司と、ある日の宴席で偶然隣り合わせになって、少し会話したら彼の意外な良さが分かった、といったような山、それが私達の荒海山だった。

会津高原温泉「夢の湯」: 荒海山登山の帰路に立ち寄りました。 相変わらず源泉掛け流しの気分の良い風呂でした。 日曜日っだったからか、この日は空いていました。
 → 「夢の湯」の詳細については拙山行記録の「初夏の尾瀬ヶ原」の頁を参照してみてください。


* 南会津町の公式HPによりますと、2015年9月の豪雨災害により荒海山は入山禁止となっているようですのでご注意ください。北側の戸坪沢からの非公式ルートがあるらしいですが…、つまり自己責任です。[後日追記]



山稜の紅葉は見ごろに…♪

山稜は紅葉の見ごろに
ドウダンツツジの紅葉
ネマガリダケのヤブコギ
東峰から西峰へ向かう

森林インストラクターのTamuです*** コラム *** 
「ナラ枯れ」について

立ち枯れたミズナラ(荒海山の山稜にて)  近年、主にコナラやミズナラなどのナラ類が集団的に枯損する現象が日本各地で報告されています。 その被害区域はここ10年間でかなりの拡大傾向にあるようです。 カシノナガキクイムシ(カシナガ)とナラ菌の共生関係がもたらす症状だということは分かっていて、カシナガが、樹勢が衰え抵抗力が低下した大径木を狙ってマスアタックをかけるそうです。 日本海側を中心に西から北へ伝播しており、最近の情報によると宮城県の北部まで被害が及んでいるらしいです。
  なお、今回私達が荒海山の山稜で見た立ち枯れのミズナラ
(本欄の写真)については、カシナガとナラ菌によるナラ枯れだったのかどうかは私には確信がもてません。 無責任で申し訳ありません。 <(_ _)>
  ナラ枯れ被害: 林野庁の該当ページです。

* その後、この年(H22年度)をピークに、全国のナラ枯れ被害量は減少傾向にあるようです。
  林野庁の報道発表によりますと、平成24年度のナラ枯れの被害量とその特徴被害について、次のようになっています。
[後日追記]
(1)平成24年度は、新たに被害が確認された県は無く、全国28府県で発生し、全国のナラ枯れ被害量は、前年度と比較してほぼ半減し、約8万立方メートルでした。
(2)平成24年度の全国のナラ枯れ被害量は、近年、被害量が最も多かった平成22年度の約1/4の水準となります。


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