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No.125-1 初夏の尾瀬ヶ原
平成13年(2001年)6月23日〜24日 第1日目 曇り第2日目:雨

尾瀬 略図
2日間でたっぷりと初夏の尾瀬

第1日=上越新幹線・上毛高原駅-《バス130分》-鳩待峠〜山ノ鼻〜(上田代・中田代)〜竜宮十字路〜(下田代)〜下田代十字路(見晴)〜(赤田代)〜元湯山荘 第2日=元湯山荘〜平滑ノ滝〜三条ノ滝〜(燧裏林道)〜御池-《バス100分》-会津高原駅 【歩行時間: 第1日=3時間50分 第2日=4時間30分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページ(山ノ鼻)へ


 第1日目(6/23): 東京駅午前6時40分発上越新幹線「あさひ303号」に乗車。 上毛高原駅から関越交通バスで1時間45分、戸倉でマイクロバスに乗り換えさらに約25分、鳩待(はとまち)峠に着いたのは午前10時25分だった。 しかし、ここで大問題。
 「ウッソー、至仏山に登れないのォ‥‥?」
  私達が迂闊(うかつ)だった。 至仏山は残雪期の5月中旬から6月までは自然保護のため全面登山禁止となっていたのだ。 鳩待山荘前で呆然と立ち尽くすこと十数分。 はたと困った。
  しかし、ここでも流石に妻の佐知子。 「尾瀬ヶ原をじっくりと探索する絶好のチャンスよ!」 と、例によって変わり身の素早さには私も脱帽した。 今日の宿の予約も、親切な鳩待山荘の受付係の計らいで、同系列(尾瀬林業株式会社の経営)の元湯山荘へ変更してもらった。 なお、ここ鳩待峠では電話は使えず、宿の無線電話に頼るほかない。 勿論、携帯電話は「圏外」となっている。
 * この後(2002年夏以降)、鳩待峠付近では携帯電話が使用できるようになったそうです。(後日追記)

  という訳で、急遽「至仏山・花の山旅」を変更し、「2日間でたっぷりと初夏の尾瀬」と銘打っての私達の山旅が始まった。 鳩待峠から、閉鎖されている至仏山への道を左に見送り北へ向かう。 梅雨空で曇ってはいたが、スッキリとした大気の中、清々しい気持ちで歩き出したのは午前10時45分。 じつは、私も佐知子も生まれて初めての尾瀬ヶ原だった。
  それにしても、遊歩道の入り口での自然監視員(巡視員?)によるチェックの厳しさには驚かされた。 ぼんやりと歩き出した私を監視員が呼び止めた。 なんでも、私は遊歩道入口に置いてあるマットで靴を拭かなかった、とのことで注意を受けた。 なんか訳の分からないままに「すみません」と謝って、少し戻って、慌てて軽登山靴を丁寧に拭った。 (自然保護のため)異種の植物の種などを持ちこむのを防止しているんだな、と理解できたのはその先随分と歩いてからのことだった。
中田代:前方の山は燧岳
中田代より燧岳を望む

オゼヌマタイゲキ:トウダイグサ科。尾瀬の特産種
オゼヌマタイゲキ
  ブナ、ミズナラ、ダケカンバ、コメツガ、クロベなどの樹林の道を、左手に横長の大きな至仏山を垣間見ながらなだらかに下る。 気持ちのよい明るい天然林だが、よく見ると、ここいら辺の木々は幹の太い老木ばかりで、何故か若木が少ないように感じた。 どこかでカッコーが鳴いていて、それがなつかしく聴こえた。
  鳩待峠から1時間ほどで山ノ鼻に着く。 まずは山ノ鼻ビジターセンターで尾瀬の予習をする。 そして、ウジャウジャといるハイカーたちの(私達もウジャウジャの仲間だけれど…)マンウオッチングなどをしながら、ベンチでゆっくりとお弁当。 ここは標高約1400メートル。 ひんやりとした大気が肌に気持ちよい。
  8年間立入禁止になっていた至仏山への登山道(山ノ鼻登山ルート:平成9年から今頃の残雪期を除き解禁となる)を左に見送り、いよいよ尾瀬ヶ原へと歩き出す。
  歩き出した途端、すぐに視界が開いた。 縦長の緑の大湿原の中を、燧ヶ岳の麓へ向かって木道がほぼ真っ直ぐに伸びている。 思ったほどには花は咲いていなかったけれど、それでも所々、初めて目にしたリュウキンカ、ミツガシワ、ヒメシャクナゲ、や、おなじみのタテヤマリンドウ、チングルマ、などが可憐に美しく咲いている。 ワタスゲの白い綿毛が点々とそよ風になびいている様や、中田代の池塘周辺でひときわ黄緑の美しいヤマドリゼンマイの群落の風景にもウットリ。 そして、木道の前方には威厳に満ちた燧ヶ岳の勇姿。 振り返るとおっとりとした至仏山が優しいまなざしで私たちハイカーを見下ろしている。 あぁ、これが少年の頃から憧れていた尾瀬なんだ、と、思わず身震いした。
  上田代、中田代、下田代、と尾瀬ヶ原を縦断。 それぞれの境目には拠水林があり、その外側などにはレンゲツツジが咲き始めていた。 中田代と下田代の境目、竜宮十字路を少し過ぎた地点に上州(群馬県)と会津(福島県)の国境があり、山ノ鼻から続いていた禁煙区間がここで終わる。 と、まずはここで中休止の一服。 美味い煙草だった。
  なんでも、今年はハクサンチドリの当たり年だとか。 下田代十字路(見晴)から温泉小屋に至る木道沿いには、そのハクサンチドリが沢山咲いていた。 黄色の包葉を付けた背の高いオゼヌマタイゲキ(尾瀬特産とのこと)の群落もまた見事で、本日のフィナーレを飾るのに相応しい存在だった。 温泉小屋の少し先に位置する元湯山荘に着いたのは午後3時20分頃。 まだ日は高く、ゆっくりと温泉に浸かったり、付近を散歩したりすることができた。

元湯山荘 「元湯山荘」: 赤田代湿原の北に位置しており、隣の温泉小屋とともに温泉が涌いている山小屋として尾瀬ではよく知られている。 石鹸などは使用禁止だが、なんといっても山小屋で温泉に入れる贅沢が嬉しい。 浴槽は充分な広さをもったステンレス貼り。 源泉温度22℃、PH5.8のカルシウム硫酸塩冷鉱泉(硫酸塩泉)。 無色透明とのことだが、私達が入浴した時にはやや濁りがあった。 口に含むとほんのり甘酸っぱい味がする。 飲用には適していないようだった。
 * 隣接する「温泉小屋」については 次項・秋の尾瀬ヶ原 を参照してみてください。

三条ノ滝の展望台にて
三条ノ滝展望台

変形したダケカンバの巨木:燧裏林道にて
ダケカンバの老木
 第2日目(6/24): 昨夜から降り続いている雨は止みそうもない。 6時からの朝食後、カッパに身を包み、傘を差して歩き始める。 幸い風はほとんどない。
  元湯山荘を出て間もなく、段吉新道を右に分け暫らく歩くと、約300mの一枚岩の岩上を豊かな水量で流れる緩慢な滝(平滑ノ滝)が、ブナやトウヒなどの樹林越しに見下ろせる。 尚も只見川本流の右岸に沿って下っていくと、お目当ての三条ノ滝の展望台に降り立った。
  高さ約100m、巾約30mはあるという豪壮な滝を眺めているとき、後からやって来た40歳前後と思われる男性ハイカーから聞いた話。 この三条の滝へ来る途中、クマと出会った、というのである。 中型犬程度のそれほど大きくないクマで、ヤブの中へ消えていったとのことだったが、はっきり言って、私達夫婦はここで完全にビビってしまった。 雨の三条ノ滝展望台にじっと佇むこと約30分。 4〜5人の屈強そうな男性パーティーが歩き出すのを待ち、その後からそっとついていった。
  野鳥の囀りを聞きながら、静かなブナ林と所々に点在する小湿原の道(燧裏林道)を、クマに注意しながら(敢えて大声で会話をしながら)、ゆっくりと歩く。 小湿原ではチングルマやヒメシャクナゲなどに交じりイワカガミも咲いていた。 尾瀬ヶ原では葉っぱだけになってしまっていたミズバショウが、こちらでは辛うじてまだ咲いている。 何処も彼処も明るくて美しい緑だ。
  午前11時30分、無事に御池(みいけ)のバス停に着いてホッとする。 バス待ちの時間、桧枝岐村営の休憩所で食べた天ぷら蕎麦が旨かった。
  御池からバスで約1時間40分、会津高原駅からほど近い処にある会津高原温泉「夢の湯」で山の汗を洗い流す。 ここで地元のオバチャンから聞いた話。 今春、猟師が子連れの親グマに襲われて、近くにいた仲間の猟師がやむを得ず猟銃で撃って仕留めたそうだ。 そのとき子グマは2頭いたらしく、三条ノ滝付近に現れたクマはそのうちの1頭ではないか、とのことだった。 怖いような哀しいような話ではあった。
  何時の間にか雨は上がっていた‥‥。

会津高原温泉「夢の湯」 会津高原温泉「夢の湯」: 野岩鉄道会津高原駅前から約100mの至近距離、荒海川(阿賀野川の支流)の川岸に位置する。 緑の山々や遠くの民家や時々走り過ぎる電車などを眺めながらの露天風呂は野趣たっぷり。 山行の汗を流すにはもってこいだ。 平成元年3月、夢に見た場所をボーリングしたら、温泉が湧き出したところから「夢の湯」と命名したとのことだ。 加熱などは一切していない湯量豊富な純泉で、とても気分がよい。 微かに硫黄の臭いがした。 入浴料一人500円。 休憩室利用だと一人1,000円。 宿泊もできるらしい。
  「夢の湯」のHP

* ラムサール登録湿地: 高層湿原を主とする湿原としては国内最大の尾瀬は、2005年11月、新たにラムサ−ル条約に登録されました。 意外と遅かった、んですねぇ…。
  ラムサール条約というのは「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」として、1971年2月、イランのラムサール(Ramsar)で採択されたものです。
  ラムサール条約と条約湿地 環境省自然環境局の該当ページです。

  秋の尾瀬ヶ原 この年の9月末に再び同地を訪れました。
  尾瀬ヶ原と至仏山 この2年後に至仏山に登る機会を得ました。



中田代にて・至仏山をバックに・・・
ヤマドリゼンマイの美しい黄緑
ヤマドリゼンマイ
至仏山をバックに
おっとりとした至仏山
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