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No.294 甲州高尾山1106m
平成23年(2011年)12月11日 快晴

甲州高尾山・略図
今がチャンス! 展望の尾根歩き

JR中央本線勝沼ぶどう郷駅-《タクシー13分》-大滝不動奥宮〜展望台〜富士見台〜甲州高尾山(宮宕山?)〜柏尾山798m〜柏尾・大善寺〜深沢・大日影トンネル遊歩道〜勝沼ぶどう郷駅-《タクシー5分》-勝沼ぶどうの丘・天空の湯(入浴)… 【歩行時間: 3時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  平成19年(2007年)8月に中央本線の旧大日影トンネル(全長1367.8m)が遊歩道化された、という事実を知ったのはつい最近のことだった。 新トンネル建設に伴い平成9年から閉鎖されていたものを、JR東日本が旧勝沼町(現在の甲州市)に無償譲渡して、それを有効活用したものだという。 面白そうだったので是非(山歩きのついでに)歩いてみたいと思って、近くの適当な山を捜した。 そして見つけたのが甲州高尾山1106mだった。
  ハックルベリー・フレンドのT君を誘って出掛けたのは初冬のすっきりとした空気の日曜日。 甲州高尾山を中心に東西に延びる山稜からの大展望に驚いて感動することになろうとは、事前には想像もしていなかった…。
かつての修験霊場
大滝不動尊(本堂)

アイゼンは必要ありません
残雪の林道歩き

明るく開けた山稜
稜線へ出た!

前方に南アルプス
高尾山方面を望む

それほど広くない、ひっそりとし山頂です
甲州高尾山の山頂

コナラの黄葉とアカマツの緑
下山道にて

  駅舎より高い位置にある勝沼ぶどう郷駅のホームに降り立ち、私たちが乗っていた電車が走り去った瞬間、もうすでに感動だった。 甲府盆地を隔てた西面に、白装束の南アルプスが北は甲斐駒ヶ岳から南は聖岳まで、ずらっと並んで私たちを出迎えてくれたのだ。 それをうっとりと眺めていたら、登山姿の中年夫婦に 「あのぉ〜、ご存知でしたら、端から順に山名を教えてくれませんか」 と声をかけられた。 「右から順に…、甲斐駒でしょ、そして少し手前が鳳凰三山で…あの尖がっているのが地蔵岳のオベリスクです…、それから北岳・間ノ岳・農鳥岳の白峰三山、少し離れてぴよこんと塩見岳の山頂部、荒川三山…、赤石岳…」 と私は得意満面で喋った。 「ありがとうございます」 とその中年夫婦からお礼を言われ、ふと我に返ると、先に進んだ相棒のT君がホームの彼方から私を振り返って訝しそうにしている。
  勝沼ぶどう郷の駅前からはタクシーを利用した。 いろいろ思い悩んだのだが、結局、最も楽だと思われるアプローチを選んだ私たちだった。 一昨日降った雪が道の所々に残っていたけれど、タクシーの運転手さんは、とばすこととばすこと。 T君が時計を計っていたので正確な乗車時間がわかったのだが、駅前から登山口の大滝不動尊(奥宮)までは12分フラット。 タクシー料金は2,060円だった。
  朱塗りの仁王門前には山梨県や旧勝沼町・教育委員会などの案内板が立っていて、大滝不動尊についての蘊蓄やこの地が県指定の景観保存地区になっていることなどが書かれてある。 石段を登っていくと前滝や雄滝などが見えてくる。 落差はかなりのものだが、季節がら水量が少なくて迫力はイマイチ。 梅雨時や雨台風の翌日などに見物するといいかもしれない。 これも朱塗りの、立派な本堂を右に回り込むと山道になり、辺りはスギ林からヒノキ林へ移りゆく。
  少し登ると林道の交差点へ出る。 直進は山稜の北側をトラバースする林道で甲州高尾山への近道。 左折は棚横手山1306m方面で、富士見台を経由して甲州高尾山へ至る登山道が途中で分岐する。 私たちはとりあえず右折して近くの展望台へ出てみた。 南アルプスや奥秩父の山々がよく見えている。 八ヶ岳(権現岳と赤岳かな)もちょこんと白い頭を出している。 鉄パイプ造りの簡易東屋には石祠があって、立派な木板には「甲州御嶽山」と彫られてあった…。 「甲州御嶽山って金峰山のことじゃなかったっけ…?」 と云ってみたが、T君はそういうことには全然興味がないみたいだ。
  林道の交差点へ引き返し、富士見台経由の方向へ進む。 左下に先ほどの大滝不動尊の本堂や滝などが見えている。 やがて右の登山道へ分岐する地点へ出たのだが、私たちは前を歩いていた2人の男性ハイカーに引きずられるように林道を直進してしまった。
  ずいぶんと進んでから、「なんか変じゃない…?」 とT君が珍しく主張した。 「う〜ん、やっぱり変だね」 と私が返事して、素直に黙々と先ほどの分岐へ引き返した。 こんなにしっかりした道標もあるのに、何故間違ったんだろう。 なんとなく他のパーティーの後を追いかけるということは、分岐点のある山道では案外と危険な行為なのかもしれない。 それにしても、先導の2人連れはいったい何処へ行くつもりだったのだろう…。
  北側の登山道に残っていた雪は稜線へ出ると消えた。 正面(東側)には南大菩薩の山々が近くに連なり、南側の御坂山塊の奥には真っ白な富士山が頭を出している。 首をぐるぐる回しながらの、ここからが素晴らしい展望の尾根歩きになるのだ。 当初は左(北東)側の棚横手山を往復(歩程1時間弱)する予定だったのだが、林道での道迷いなどで気合が抜けていたので、ここは“あうん”の呼吸でT君と意見が合った。 つまり棚横手山の山頂往復はカットすることにした。 水は必ず低いほうへ流れるのだ。
  稜線を右へ進んでからの最初のピーク(富士見台)は360度の大展望で、数組のハイカーたちで賑わっていた。 西面の南アルプスや北面の奥秩父の山々は相変わらず美しく並んでいる。 この富士見台の標高は地形図で読むと凡そ1170mほどで、今回の尾根歩きの中では最も高いピークということになる。 「これから甲州高尾山へ向かって“山下り”だね」 とT君のボルテージもあがってきた。
  山火事の痕跡が痛々しい稜線をアップダウンしながら西進する。 カラマツ林なども少しあるが、撹乱(山火事)直後の植生…ススキが主人公の開けた風景が暫く続く。 やがてアカマツ、リョウブ、ネジキなどの陽樹が疎に生える天然林へと移り変わる。 標高がその限界付近なのか、ここではコナラとミズナラが同居しているのが面白い。(関東近県の山地では、標高約1000mを境に下部がコナラ、上部がミズナラと棲み分けているのが一般的です。)
  こじんまりとした甲州高尾山の山頂で大休止。 甲府盆地や南アルプスなどの大展望は、この山頂もそうだけれど、数年後から数十年後には植えられたヒノキの若木などが育って、そのときにはスポイルされているかもしれない。 山の不幸(山火事のこと)を喜ぶわけじゃないけれど、ここ数年がこの山稜における展望の旬で、今がチャンスなのかもしれない。
  山頂での昼食は、T君は駅弁(とんかつ弁当)で、私はコンビニのおにぎり2個だ。 それから“ふじ(リンゴ)”をナイフで切って2人で半分ずつ食べた。 奥秩父の金峰山がよく見えていたからというわけでもないが、なにげに…、このとき私は尾崎喜八の詩「金峯山の思ひ出」を思い出していた。
・・・・・・・・・
尾根へ出たら目が覚めたやうで、
筒ぬけの空にくらっとしたな。
もう其処では暑さと寒さとが縞になってゐたな。
・・・・・・・・・
それからたうとうてっぺんだったな。
天の方が近かったな。
二人きりだったな。
なんだか人間をもう一皮脱ぎたいやうな気がしたな。
・・・・・・・・・
それから五丈石の下へうづくまって
ハンケチの端で珈琲を濾したな。
思ひ出せば何もかもたのしいな。
・・・・・・・・・
       
尾崎喜八「金峯山の思ひ出」より
大日影トンネル遊歩道・深沢口
大日影トンネル遊歩道

懐中電灯は必要ありません
トンネルの内部
  高尾山の山頂を辞し、登り返して宮宕山(みやごやま・みやたごやま・1092m)の3等三角点(点名:嶮ケ峯)を確認する。(*) それから林道を横切って、展望を楽しみながらひたすら尾根を下る。 経塚があるという柏尾山(かしおやま・740m)の山頂は知らずに通り過ぎ、コナラの黄葉とアカマツの緑葉が美しくコントラストしている斜面を下ると、柏尾五所神社下の国道20号線(甲州街道)へドスンと降りる。 右へ行けば古刹・大善寺なのだが、私たちは左へ進み、深沢川に架かる橋を渡って信号をさらに左折して川の右岸を遡上する。 ぶどう畑の中のなだらかな坂を息せき切って登り、大日影トンネル遊歩道の入口(深沢口)についたのは午後3時少し前だった。 ほっとした。 午後4時になるとこの遊歩道は閉じられてしまうのだ。
  ゆっくり歩いて、どきどきわくわくの約25分間。 明りは灯されているものの赤レンガ造りの薄暗いトンネル歩きは冒険っぽくて楽しかった。 待避所の所々には大日影トンネルの歴史や旧深沢トンネルのワインカーヴ(ワイン貯蔵庫)のことなどを説明した案内板があり、とても勉強になる。 しかし前を歩くT君の足が異常に速い。 「ちょっと待ってよ」 と云いながらその解説文を読む私だった。
  トンネルの出口(菱山口)は鉄道遺産記念公園になっていて、昔の電気機関車が展示されている。 少し進むと起点の勝沼ぶどう郷駅前だった。 さて、これから再びタクシーを利用して勝沼ぶどうの丘にある「天空の湯」へ立ち寄る予定なのだが、もうさっきからずっとT君の顔がほころんでいる。 私も、入浴後の地ビールとワインを頭に浮かべ、自然と顔がほころぶのであった。


* 宮宕山?甲州高尾山?: 国土地理院の地形図では三角点1091.9mのある辺りを「宮宕山」と注記してあり、「高尾山」の文字はどこにも書かれていません。 実際に歩いてみると「甲州高尾山」の山頂標識があるピークを挟んで、100m〜200mくらいの間隔で、東側に無名峰(山頂標識無し)、西側に三角点峰1092m、と3つのピークがありますが…。 どうやら、この3峰を総称して「宮宕山=高尾山」と解釈したほうがよさそうです…。
  この1年後に同コースを歩いてみて気付いたのですが、三角点峰に立派な山頂標識が立っていて、それには「甲州高尾山嶮ヶ峰1091m」と書かれてありました。 三角点の点名が「嶮ヶ峯」なので、このネーミングには説得力があるような気がします。 まぁ、この小さな山域(大菩薩嶺から南西にのびる日川尾根の末端)も、その峰々の呼称についての異同が多々あるようです。
  だいたい、甲州高尾山の標高についても、じつは、ガイドブックや山名事典などで調べても、1106mとしているものや1120mとしているものなど色々とあって、私としては何がなんだかさっぱり分からないのが本音です。 [後日追記]

* 大日影トンネル遊歩道はこの翌年(H24年1月18日)から緊急閉鎖されました。 専門家による“漏水と経年劣化への大規模対策が必要”との報告を受けたもののようです。 非常に残念です。 [後日追記]
  山梨県公式観光情報の該当ページへ


天空の湯 勝沼ぶどうの丘温泉「天空の湯」: 2000年3月にオープンした甲州市の日帰り温泉施設。 露天風呂の温めの湯に浸かりながら俯瞰する甲府盆地の大パノラマは秀逸。 西の空がオレンジ色に染まり、南アルプスに日が落ちるのをT君とずっと眺めていた。 「天空の湯」のネーミングに誇張はない! 泉質はアルカリ性単純泉。 私には無用のものだが、寝湯やミストサウナもある。 風呂場の広さの割には脱衣所が少し狭いかもしれない。 入浴料は3時間まで600円。 朝の8時から夜の10時まで営業(最終受付午後9時)、というのは嬉しいかぎりだ。
  入浴後の展望ラウンジもファンタスティックだった。 勝沼ワインや地ビールの美味さもさることながら、ここからの大展望も凄かった。 話に夢中だった私たちが、ふと夜の帳(とばり)が降りた窓の外を見てびっくり。 甲府の街がまるで宝石箱のようにきらめいていた。

  展望のよさといいコースの面白さといい、「大日影トンネル遊歩道」と「天空の湯」を利用したこの山域の山歩きは、これから益々人気が出てくると予感した…。



甲州高尾山へ続く山稜からの大展望!
南大菩薩〜道志・御坂山塊・富士山
富士見台から東面〜南面を望む

甲府盆地を挟んで白峰三山〜鳳凰三山〜甲斐駒ケ岳
西面(南アルプス方面)を望む ・ 右手前は奥秩父前衛

再び 甲州高尾山 平成24年11月18日 快晴

  ほぼ1年ぶりに、山の仲間たち山歩会と同コースを歩きました。 例によって、特急電車とタクシーをフル活用した大名登山です。
  前日の雨の影響か、大滝不動奥宮の前滝や雄滝は水量が多くて迫力がありました。 冬型気圧配置の快晴の1日で、数年前の山火事のおかげもあり(林業関係のみなさま、こんな書き方をしてスミマセン)、山稜からの展望は相変わらず抜群です。 ぐるっと360度…、甲府盆地の奥にずらっと南アルプス…奥秩父や南大菩薩の山々…そして銀色に光る富士山…など、爽やかな青空に映えて感動モノです。 紅葉も見ごろでした。
  大日影トンネル遊歩道が今年の1月18日から“閉鎖”されていて、通行できなかったのが少し残念でした。 下山地の大善寺からは直接「勝沼ぶどうの丘・天空の湯」へ行きました。
  その「天空の湯」からの眺めはさらに素晴らしく、荒川三山(南ア)に落ちる夕日や甲府盆地の夜景など、とてもロマンチックでした。 地ビールや勝沼ワインが超美味かったのは、言うまでもありません。 (*^^)v



富士見台から甲州高尾山へ向かう
高尾山へ向かって山下り…
樹木が大分育ってきていました
甲州高尾山の山頂にて
59歳〜75歳の
参加メンバーです


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