No.389 樹海と王岳(御坂山塊) 令和元年(2019年)11月11日(月)〜12日(火) |
||||
西湖・根場民宿をベースにした富士山展望の山旅 第2日目(登山日・11/12)=根場民宿村〜王岳1623m〜鍵掛1589m〜鍵掛峠〜いやしの里根場-《バス》-十二ヶ岳登山口・いずみの湯(入浴)-《バス》-河口湖駅 【歩行時間: 5時間30分】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 秋も深まってきた頃の2日間、いつものメンバー(夫婦)で、西湖の北西岸に位置する根場(ねんば)の「民宿さざなみ」をベースに、富士山展望の山旅を楽しんできました。第1日目は青木ヶ原の樹海散策などで、第2日目が王岳登山です。現地での交通手段には「富士五湖・周遊バスのフリークーポン券(2日間有効@1,500円)」をフルに活用しました。 “観光登山”のつもりだったのですが、常日頃の鍛錬不足もあって、2日目のメイン(王岳登山)はけっこうきつく感じました。 ●第1日目(11月11日): 樹海遊歩道&いやしの里 この日の午前中は西湖の西に位置する「野鳥の森公園」から西湖ネイチャーセンター(コウモリ穴)まで、青木ヶ原の樹海遊歩道を正味70分ほど歩いた。私にとっては生まれて初めての樹海歩きで、意外だったのは森の明るさだった。いろいろと怖い噂や俗説があるようだけれど、山奥によくある深いけれど明るい森といった感じで、案外とあっけらかんとしている。もふもふのヒノキゴケなど、思わず見入ってしまった。(*) 樹海の自然観察ウオーキングを終えてから、ネイチャーセンターのカフェで軽食…ウィンナーデニッシュとカレーパン・@290円…割高に感じたけれど温かくて美味しかった…を摂ってから、受付で入場料の@350円を支払ってヘルメットを借りて(再び樹海の中へ立ち入って)青木ヶ原樹海最大の溶岩洞窟・コウモリ穴の探検だ。トムソーヤーの冒険みたいで楽しかったけれど、腰を屈めて進む箇所があったりして、ちょっと不安がそのときよぎった…。案の定(私はなんとか平気だったけれど)、佐知子がギックリ腰を再発させてしまった。 一瞬「やばッ〜!」と思ったのだけれど、何とか我慢ができる程度の腰痛のようだったので、午後は根場民宿の今日の宿「民宿さざなみ」にザックを預けて身軽になって、入場料@350円を支払って「いやしの里根場」を逍遥した。心のふるさと的な(再現された)茅葺民家が建ち並ぶ丘の様子には風情があって、ここもとても楽しい。昭和41年の台風被害により甚大な被害を受けた根場集落の歴史などもしっかりと勉強した。 レンタルの派手な和服を着てはしゃいでいる外国人女性客たちを微笑ましく眺めていたら…寒冷前線の通過だろうか…一天にわかに掻き曇り、富士山も完全に暗雲に隠れてしまって、大雨が1時間ほども降り続いた。幸い私達は折りたたみ傘だけは持って歩いていたので、それほど濡れないで済んだ。近くの茶屋で暫し雨宿りをしてから徐に「民宿さざなみ」へ戻った。 * 樹海遊歩道で観察のできた樹木: ツガ、ウラジロモミ、アカマツ、ヒノキ、コナラ、ミズナラ、カエデ類(ミネカエデ、コハウチワカエデ、イタヤカエデ、オオイヤタメイゲツ、ホソエカエデ、ウリハダカエデなど)、アカシデ、シナノキ(ヒトツバカエデだったかも)、ダンコウバイ、コシアブラ、タカノツメ、アセビ(多い)、ソヨゴ(赤い果実)、ミヤマシキミ(赤い果実)、…など。 ウィキペディアによると、この樹海の正式名称は「富士山原始林及び青木ヶ原樹海」と云い、国の天然記念物に指定されているそうだ。この地のこの標高(私達が散策したのは凡そ910m〜940m)にしては落葉広葉樹と比べて針葉樹が多いように感じたが、それは溶岩質の土壌に関係しているらしい。なだらかな地形なので水分や養分の多い土壌ならばブナ林になっている筈だと思う。 それにしても(苔生してはいるけれど)思ったよりはずっと明るい森だったのは、一種の驚きというか感動というか“さもありなん”というか、私にとっては新感覚だった。“樹海=暗い”のイメージが私の脳裏から払拭されたような、そんな感じだ。 ●第2日目(11月12日): 王岳登山 根場(ねんば)の「民宿さざなみ」の朝食時間は、少し早めてもらって6時半から頂いた。登山客のちょっとした要望にも笑顔で応えてくれるのが嬉しい。その優しい女将さんにお礼を云って、歩き始めたのは7時10分頃だった。 当初の登山計画では“鬼ヶ岳1738m〜鍵掛峠〜王岳1623m”だったのだけれど、佐知子の腰痛が少し不安なこともあり鬼ヶ岳はカットして、“王岳〜鍵掛峠”の短縮コースに変更した。結果的にはこれが功を奏して、心に余裕のある山歩き(安心登山)に繋がったのがよかったと思う。 正味1時間強の林道歩きの後、登山口から王岳への登りはけっこうな急坂で、所々の崩壊箇所があったりロープ場があったりして、なかなか気が抜けない。山頂近くになると葉がやや小さめのクマザサが生い茂っていて、それを漕ぐように登る。段差のある箇所でむんずとそのササをホールドしたら、なんとノイバラの茎をいっしょに掴んでしまって、そのトゲの痛いのなんのって…。指の血を舐めながら山頂に着いた。 * 登山口から王岳までの樹種(観察順=歩きながら落葉で同定): スギ、カラマツ、ミズキ、ニレ科の木(例えばケヤキとかムクノキとか?)、カバノキ科の何か(例えばジゾウカンバとか?)、コナラ、シデ類(クマシデ、アカシデなど)、カエデ類(コハウチワカエデ、オオモミジ、ウリハダカエデなど)、イヌブナ、アワブキ、ヤマハンノキ、ウラジロモミ、ブナ、…など。紅葉については山の中腹辺りがその見頃を迎えていた。 * 王岳山頂の樹種: ツツジ類(ドウダンツツジ?など)、マユミ(実)、ヤマコウバシのような?(黒い実)、ヤマウルシの幼木のような?、ノイバラ(実)、ナワシロイチゴ、クマザサ、…など。ざっと見たのでよくわからない。m(__)m 二等三角点と「南無妙法蓮華経」と彫られた石塔のある王岳の静かな山頂で大休止。「王岳は大岳から転訛した、という説があるようだね」などと会話しながら、南面の樹海越しの大きな富士山を目の前にして食べるメロンパンはこの上もなく美味しい。富士山の山頂部をよく見ると、その右端にぴょこんと剣ヶ峰が、そして左の少し手前には白山岳がぼってりと突き出ているのがよく分かる…ほど近いのだ、ここからは。遠くても近くても、いつまで眺めていても飽きない…、富士山ってやっぱりスゴイと思う。 裏手(山頂の北側)へ回って、樹林越しに南アルプスなどの絶景も充分に堪能してから、東へ向かって市境の主稜線を進む。この尾根歩きが予想以上のコブだらけで、かっこよく云えば“変化のあるテクニカルコース”ということになるとは思うけれど、老体にとってはアップダウンがきつい。とはいえ、所々のビューポイントからは西湖の上空に聳える富士山を見放題なのが何といっても嬉しい。この日は終日快晴で、これで先日の(富士山が雲に隠れっぱなしの)杓子山登山のリベンジを果たすことができた、と留飲を下げる。 地味な山頂の鍵掛(かぎかけ・1589m)を通り過ぎ、20分ほど下ると鬼ヶ岳との鞍部(鍵掛峠1510m)へ出る。根場の集落方面(いやしの里)へ下る分岐はそこから少し進んだ(登り返した)処にあるのがちょっとわかりにくい。 この鍵掛峠から右折しての下山路は、急勾配だけれど比較的に整備されていて歩きやすい。下るにつれてブナやアセビの目立つ自然林からカラマツ、スギの人工林へと移り変わる。眼下にはいやしの里の茅葺屋根などが樹林の隙間から見え隠れする。そしてその上空には勿論、でっかい富士山だ。 やがて林道歩きになって、ここでも休み休みゆっくりと歩いて、昨日見物した「いやしの里根場」に戻り着いたのは14時50分頃だった。本日もこの里は軽装の外国人だらけで、登山姿の私達は少し浮いた感じだったかもしれない。 西湖いやしの里根場バス停から、約30分に一本の割合で運行されている西湖周遊バスに乗って、3駅先の十二ヶ岳登山口バス停で降りて、近くの「いずみの湯」に立ち寄って山の汗を流した。湯上りのビールでいい気分になったその帰路、バスの車窓から眺めた東の空に、きれいな満月が皓々と照っていた。 佐知子の腰痛はといえば、私がいつもザックに入れている(膝痛の)痛み止めの薬が多少は効いたものか、何とか一日を持ちこたえた。帰宅の翌日は近所の整形外科へ行ったみたいだったが…。 いずみの湯: 西湖北岸に位置する日帰り入浴施設。節刀ヶ岳や十二ヶ岳や鬼ヶ岳、それと王ヶ岳などからの下山後に立ち寄るにはもってこいだ。ただし、厳密にいうとここは“温泉”ではない。まぁでも、今どきの怪しい温泉と比べても遜色がないと思う。衛生的で広いし設備も整っている。入浴後、広い休憩スペース(兼食堂)で安くてボリュームたっぷりのフライドポテトフライを食べながら飲んだビールは、もう最高! 河口湖駅までのバス便を心配したのだが、玄関前の路上で手を上げると周遊バスが止まってくれるのは有難かった。 「いずみの湯」のホームページ 「樹海と王岳」写真集: 大きな写真でご覧ください。 佐知子の歌日記より 道しるべを見逃さぬよう気をつけて青木ヶ原の樹海を歩く 腰曲げてコウモリ穴を見学す悲鳴をあげるわが膝と腰 「いやしの里」茅葺き屋根の家ならび着物すがたの外国人おり 王岳の眼前の富士は気前よく剣が峰までくっきりと見す
このページのトップへ↑ ホームへ |