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福岡~大分の山旅 その②
No.395 由布岳1583m
令和2年(2020年)4月2日 晴れ レンタカー利用

由布院温泉「夢想園」の部屋の窓から撮影
湯布院の街並みと由布岳(右)

九州北部の略図
略図
由布岳の略図

豊後富士の別名に納得だ!
登山口から由布岳を望む
(下山時に撮影)
冬枯れの雑木林を登る
由布鶴見自然休養林

奥に九重連山が・・・
ススキと湯布院の街並み

バックは西峰
マタエに到着!

風が強い
東峰のピークを目指す!

バックは鶴見岳方面
由布岳・東峰のピークにて

別府と由布院の狭間に位置する名山

第1日目(3月31日・曇)=東京・成田…福岡空港…太宰府…英彦山麓
第2日目(4月1日・雨)=英彦山麓…英彦山登山…耶馬渓…別府温泉

第3日目(4月2日・晴)=別府温泉-《車15分》-正面登山口~合野越~マタエ~由布岳(東峰1580m)~正面登山口-《車10分》-由布院温泉 【歩行時間: 4時間45分】
第4日目(4月3日・薄晴)=由布院温泉…鶴見岳(散策)…福岡空港…
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


*** 前項「英彦山」からの続きです ***

 のっけからの私事で恐縮ですが、最近とみにトシを感じるようになりました。身体の節々が痛くて硬くて、足が上がらないから段差は苦痛。身体がひねれなくて首も回らないから車の運転のバックはもうタイヘ~ン。平衡感覚も反射速度も筋力も視力も超弱っているので(かつては大好きで得意だった)岩場が苦手になり、走るようなスピードでリズミカルだった下りは「よっこらしょ」の超スロー。おまけに痔も痛いし水虫も痒いし耳鳴りも煩い。…なので、今回の由布岳登山も私にとってはけっこうハードでした。(^^;)

●第3日目(4月2日・晴) 別府~由布岳登山~湯布院
 別府旅館「湯元美吉」の8時からの朝食後、私達夫婦はいそいそと日産ノート(レンタカー)に乗り込み、すこぶる気分のよい高原の道・県道11号線(やまなみハイウェイの東端)を南西へ進む。明日に予定している鶴見岳のロープウェイ駅(別府高原駅)を右手に見送ってから数分の後、大平原から聳え立つ由布岳の山容が朝靄の隙間から前方に見えてくる。う~ん、思っていたよりもずっと大きくてかっこいい山だ。前線が通過して好天気が予報されている今日一日。もう、わくわくしている。
 道沿いの大きな駐車場に車を停めて、正面登山口から歩き始めたのは9時少し前だった。いかにも火山の裾野っぽい…なだらかに広がる牧野を10分ほど歩くと、落葉広葉樹主体の明るい天然林(由布・鶴見岳自然休養林)に入り、心は一層安らぐ。未だ冬枯れの様相なので、樹種については落ち葉や幹の様子や樹形などを参考に同定する。…コナラ、シデ類、クヌギ、クリ、ヤマザクラ、ニワトコ、ウツギ類(ツクバネウツギ、ノリウツギ、など)、リョウブ(倒木更新を観察)、カラスザンショウ、ハンノキの仲間(ヤシャブシかも)、アブラチャン、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ネジキ、ツツジ類(ミヤマキリシマかも)、…常緑樹ではアカマツとアセビ(花)など。林床は案外と貧弱で、これはシカの食害によるものらしい。シカが食べないアセビが多いのもうなずける。
 合野越(ごうやごえ)で湯布院方面(西登山口)からの登山道が左から合流する。やがて勾配が増して樹高が低く疎になり、大きくジグザグしながら高度を上げる。と、間もなく“黄金色に輝く”枯れススキが辺り一面を覆う。佐知子の「何故ススキが多いの?」の質問に「毎年野焼きをしているからかなぁ…」と私は答える。山火事などの森林の攪乱後に真っ先に現れるのがススキなどのカヤの仲間なのだ。だからこの山腹は、何時も植生遷移の初期状態(草原)を保っている、という訳だ。
 南面を振り返ると、県道11号線沿いの低い山並みやその右手の湯布院の街並みが航空写真のように見えている。そしてその奥には九重連山などの遠景も薄っすらと見てとれる。文句なしの絶景だ!
 岩っぽくなってきて益々いい感じになってきた。そして風も強くなってきて、上り詰めた処がマタエと呼ばれる西峰と東峰の鞍部(火口壁)だった。そうなのである。由布岳というピークはなくて、この西ノ岳(西峰1583m)と東ノ岳(東峰1580m)を併せた双耳峰の総称が由布岳(豊後富士)なのだ。…で、さて、左側の切り立った(老体には)きつくて怖そうなクサリ場の西峰…由布岳の最高地点で一等三角点(点名:油布山)のある…をどうする…?

 (今の私達にとっては6回に1回は落ちて死ぬ)ロシアンルーレットのようなものかも…」 「(コロナだし…西峰もその先の剣ヶ峰も…つまり由布岳のお鉢巡りは)断念しましょう!」と、正味数秒の緊急夫婦会議の結果、あっさりとそういうことになった。ここでもやっぱり水は低いほうへ流れる。…足元にはキスミレが、一輪だけだったけれど、強風に耐えてひっそりと咲いていた。

 マタエから標高差で約90mの岩場の急登で、360度展望の東峰のピークに着いたのは丁度お昼の12時頃だった。風が一層強くて少し寒い。振り返ると岩の塊のような…北アルプスの岩峰にも似た…西峰の岩壁を3名の若者たちが攀じ登っているのが見える。前方(東隣り)の内山~鶴見岳の山並みも近くに見えている。試しにその方向(東)へ進んで剣ヶ峰や東登山口や日向岳分岐方面へ続く(と思われる)崖を少し下ってみたが、並大抵の気力と勇気では進めそうにないことを悟って、慌てて山頂(東峰)へ引き返した。
 岩が置かれた日本庭園のような東峰のピークでメロンパンとアンパンを食べているとき、小さくて白いものがあちこちを飛んでいるのに気が付いた。白い羽虫かな、それとも柳絮(りゅうじょ:白い綿毛のついた柳の種子)のようなものかな、と不思議に思って辺りを調べてみて驚いた。潅木の枝に張り付いた霧氷(エビの尻尾)が少しずつ剥がれて宙を舞っていたのだ。里では桜が満開のこの季節の九州で、これはいいものを見た~と私達は喜んだ。
 来た道をゆっくりと下山して、正面登山口の大駐車場に戻ったのは15時30分頃だった。ここから今日の宿・由布院温泉までは目と鼻の距離だ。

別府旅館「湯元美吉」: 源泉数、湧出量ともに日本一と云われる、由緒ある超有名な別府温泉だ。別府八湯のどこに泊まるかで随分と悩んだ。で結局、「いまだに湯治の雰囲気を残す(Wikipedia)」という鉄輪(かんなわ)温泉に的を絞って、ネット検索して安くてよさそうな宿を選んだ。…その結果がこの「湯元美吉」だった。結論を先に云うと、私的には“まぁまぁだった”ということになる。
 泉質は硫黄泉で掛け流し。飲用(弱アルカリ性・炭酸水素イオン泉)も無色透明無味無臭で、こちらはミネラルウオーターとして海外にも輸出されているとのことだ。名湯といわれる温泉には単純泉が案外と多い、を身に沁みて感じた次第だ。内外の大浴場の他に貸切風呂(家族風呂)もたくさんあって、流石に別府温泉だと思った。長逗留すればこの宿の本当の良さがもっとわかるのだろうとは思ったけれど、申し訳ないが私達にはそれほどのヒマはない。館内が薄暗くごちゃごちゃとしていて未整理で、それも印象を悪くした感がある。…高齢のご主人の応対には、それなりの人間的な良さもあったが…。1泊2食付き@10,890円は妥当な料金だと思う。
 外部サイトへリンク 「湯元美吉」のホームページ

由布院温泉「山のホテル・夢想園」: 部屋からも各種の外湯からも(この地のランドマークの)由布岳を眺めることのできる、シックでリゾート的で和風な温泉ホテル。このページのトップの写真はこのホテルの部屋から撮ったものです。) 従業員の対応も洗練されているので高級感もあり、1泊2食付き@15,400円は割安に感じた。ただ、びっくりするほどの多様な(外湯や内湯や家族風呂などの)入浴施設は、少しやり過ぎの感もあった。新型コロナウイルス騒ぎで宿泊客が超少なかったから特にそう思ったのかもしれないが、(浴槽などの設備は)もっと控えめで地味でイイと思ったくらいだ。いくら温泉湧出量が多いとはいえ、何種類もある大きな浴槽は、その限界をとっくに超えている。もっと小さな浴槽(容量)でよいから多量の湯の掛け流し感を味わいたいものだ、と思ったりもした。 とはいえ、久しぶりにレベルの高い温泉旅館に宿泊した感があり、スタッフたちの「おもてなし」にも感謝感激だ。泉質はアルカリ性単純温泉、一部循環。蛇足ながら…、登山目的の私達にとっては朝食が7時30分からというのが(この地の宿の朝食が殆ど8時からなのと比べて)とてもいいと思った。もっと早いともっといいのだが…。
 由布院温泉には歓楽街などの俗な環境を廃した現代史があり、それがこの温泉地が近年になってブレークした理由のひとつでもあるという。…それはまったく素晴らしいことだと思う。
 外部サイトへリンク 「山のホテル・夢想園」のホームページ

* 湯布院?それとも由布院?: Wikipediaによると、湯布院は昭和30年(1955年)に由布院町と湯平町が合併して誕生した地名だそうで、一般的には湯平町を含む場合は湯布院、含まない場合は由布院となるらしい。現在の大分県由布市は平成17年(2005年)に湯布院町、庄内町、挾間町の3町が合併して誕生した、とのことで、やっぱりかなりややこしい。よそ者の発言で恐縮だが、どちらかに統一してすっきりとさせてくれ、と怒鳴りたい。

 佐知子の歌日記より
 街並の東も西も煙立ち別府温泉にぎわいにけり
 メモ帳に記
(しる)す樹木は少なくて夫の視線は由布岳東峰
 プール程の露天風呂から由布岳を眺めておりぬ湯布院の宿

次項「ロープウェイで鶴見岳」へ続く



由布岳・東峰のピークは風が強かった!
岩の置かれた日本庭園のよう・・・
芸術的な岩の配列・バックは西峰
霧氷(エビの尻尾)が風に舞っていた・・・
エビの尻尾(霧氷)・バックは鶴見岳方面

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