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佐渡島の山旅日記(後編)
No.402-2 白雲台から金北山
令和2年(2020年)9月19日 晴れ レンタカー利用

県道81号線から金北山を望む
金北山の略図
白雲台から防衛省管理道路で金北山へ
防衛省管理道路を歩く

ここでもきれいに咲いていた
↑クリック! ウメバチソウ

山頂部にレーダー施設が…
妙見山を望む

旧レーダー基地
金北山山頂の建物群

この左奥に三角点
山頂の金北山神社

右前方は二の岳
来た道を下山

それがこの山の個性なのだ!

第1日目(9/17・曇り)=両津港…ドンデン山荘〜ドンデン高原を散策 【歩行時間: 80分】
第2日目(9/18・雨)=ドンデン山荘…島内一周観光…相川「大佐渡温泉」 【歩行時間計: 約90分】

第3日目(9/19・晴れ)=相川-《車30分》-白雲台〜金北山1172m〜白雲台…トキの森公園を見学…両津港16:25…新潟港…新潟駅18:12-(とき342号)-20:12東京駅 【歩行時間: 3時間10分】
 島内の移動はレンタカーにて
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(金北山)へ


*** 前項「ドンデン高原と石名天然杉」からの続きです ***

 今回の私達の佐渡島への山旅は、三百名山でもある金北山(きんぽくさん)へ登ることが主題だった。なので、昨日の大雨でドンデン山荘から金北山への縦走を断念せざるを得なかったのは非常に残念だった。でもB案がある。そう…、最終日の本日に、半日のラクラク登山ではあるけれど、白雲台からの往復登山を決行したのだ。何時も低いほうへ水の流れる(何でもすぐにあきらめる軟弱な)私達夫婦にしては気合の入ったB案だったのだ。

第3日目(9/19晴): 相川…白雲台〜金北山
 前線がようやく通過して朝からカラッと良い天気だ。小躍りして、7時からの宿(相川のホテル大佐渡)の朝食をかっ込んでから、いそいそとチェックアウトする。大佐渡スカイラインを走って約30分、標高約840mの白雲台の閑散とした大駐車場に車を停めたのは8時30分頃だった。
 まず専用の登山届を、交流センター前に設置されている投函箱に入れる。ここからは防衛省の管理道路を歩くので、通行申請の提出を兼ねるこの登山届は義務化されているのだ。“義務化”とはいっても、誰もチェックはしていないようだが…、矢張り後ろ指をさされるのは(臆病な)私達の性に合わない。
 車止めのゲートの左端の扉を開いて、広い砂利道の管理道を緩やかに北へ登る。沿道にはゴマナ、オトコエシ、ノコンギク、ヤマトリカブト、ハンゴンソウ、ウメバチソウ(本土のよりは大きめな花弁で特にきれい)、アキノキリンソウ、ツリガネニンジン、エゾリンドウ、ヤマハハコ、そしてアカツメクサなど、様々な花たちが…昨日のドンデン高原で見た花と殆ど同じだけれど…それぞれに自己主張して咲いている。南東面を振り返れば例の“両津湾〜国中平野〜真野湾”の、港や田園や日本海の大絶景が青空に映えて目に飛び込んでくる。
 途中の二ノ岳の西側を巻いた少し先で小さなブナ林(四等三角点が近くにあったらしいが見落とした…)を通過したけれど、林らしい処はそこだけで、広大な空が広がるシバ草原の道が続く。これはこれで素晴らしいトレイルだ。近くの(妙見山や二ノ岳などの)ピークには防衛省関係のレーダー施設などが見えるけれど…あの美ヶ原の電波塔のように…もう既に自然の風景に溶け込んでいるように感じた。
* ブナ林については、金北山の南東の山腹に、そこそこの美林があるらしい。
 金北山の山頂部にも…10年前に妙見山(みょうけんさん・1042m)の山頂に移転したという…レーダー基地の廃屋が建ち並び、独特な異空間をつくっている。佐知子と顔を見合わせて 「まるでダーティハリーやターミネーターの決闘シーンのようだね」 と会話して、内心ニヤニヤしてしまった。
 とはいうものの、そんな物々しい建物群に交じって立派な社(金北山大権現・金北山神社)が祀られていて、石塔や二等三角点の風変わりな標石なども置かれている。混沌として違和感のある山頂だが、それがこの山の個性だと思うと腹も立たない。とにかく、殆ど360度の展望が素晴らしすぎるのだ。…神社前の軒先に腰かけて、近隣の山々や下界を見渡しながら、ポテトチップスとチョコレートを食べてサーモスのホットコーヒーを飲んだ。暑くもなく寒くもなく、そよ風が肌に気持ちよい。
 来た道を辿って、白雲台の駐車場に戻ったのは12時15分頃だった。朝は私達のレンタカーだけだったのだが、観光客の車が数台停まっている。さっそく「交流センター白雲台」の生乳ソフトクリームを食し悦に入る。…そういえば、今日は4連休初日の土曜日だ。これから数日間は佐渡島も賑わいそうだ。(今の都民には適用されないけれど)「GoToトラベルキャンペーン」もあるようだし…。

 午後は国中平野にある「トキの森公園」などを見学したりして時間をつぶし、両津港発16時25分のジェットフォイルで帰路についた。

* 金北山について(補足): 大佐渡山地の主峰である金北山(きんぽくさん・1172m)は、三省堂の「日本山名辞典」によると、第三紀の粗面岩質安山岩からなっていて、金剛山・檀特山とともに大佐渡の三霊山に数えられているという。かつては修験道の山であり女人禁制だったというのが意外といえば意外だ。
 山名の由来については、ウィキペディアの該当項によると、「昔は北山
(ほくさん)と呼ばれていたのが、江戸時代初期に佐渡金山が発見されてから現在の名で呼ばれるようになった」とのことだ。

大佐渡温泉「ホテル大佐渡」: 佐渡島の西岸、相川に位置する大きな温泉ホテル。露天からも内湯からも、私達が案内された部屋からも、眼前に日本海が広がる好ロケーション。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉(弱アルカリ性)、無色透明無味無臭(ほんの微かに甘じょっぱい味?)、加水、加温、循環。料理の質と量は充分すぎるほど充分。土曜日なこともあり、部屋は殆ど埋まっていたようだ。朝食が7時から、と比較的この手の宿(観光ホテル)としては早いほうだと思うが、アウトドア派にとっては嬉しい。1泊2食付き一人15,000円だった。
 外部サイトへリンク 「ホテル大佐渡」のホームページ

  佐知子の歌日記より
 お社と防衛施設の頂きの金北山は日本海を見る
 学名はニッポンがつく朱鷺だけどさまざまな国のトキがいる園
 何枚も梅鉢草を撮る君とすすきの揺らぎ見ているわれと


*** コラム ***
佐渡島の自然森について

羽衣杉
大佐渡石名天然杉
(大佐渡山地)
* 佐渡島の森には、不思議なことですが、シデ類(クマシデやアカシデなど)やカンバ類(シラカンバやダケカンバなど)、針葉樹ではツガやシラビソがないといいます。理由は今もよくわかっていないそうです。佐渡島は離島であるが故にその自然環境は偏っているようです。飛翔力の弱い昆虫の種は本土に比べると少なくて、野生の哺乳類の仲間もとても限られているそうです。島には今もクマ、シカ、カモシカ、キツネ、イノシシ、そしてリスもいないらしいです。
 一方、苗木を食害するウサギを退治するために国が(1959年に)島に放ったイタチ科のテンは今も繁殖していて、島の生態系に影響を与えているようです。日本のトキを絶滅させた要因の一つでもあるらしい、あのテンです。当然の帰結だとは思いますが…、サドノウサギの棲息数は激減して、環境省レッドリスト及び新潟県のレッドデータブックに「準絶滅危惧種」として指定されています。

* 新潟大学演習林: じつは、ドンデン高原の北東の大佐渡石名天然杉の森の、その更に北東に位置する山域・山毛欅ヶ平山(ぶながひらやま・947m)を中心とした細長い山稜部分(主に北西側の急斜面)に、貴重な手付かずの原生林が残されているといいます。新潟大学の演習林(約500ha)です。2008年の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の主会場を飾ったのが、写真家天野尚氏が撮影したその原生林の大スギ(金剛杉)だった、ということで一躍有名になりました。入山に関しては、環境保全(生態系の保護)の観点から立ち入りは制限されていて、地元のエコツアーガイドの同行が義務付けられています。
 私はこの原生林を是非見学したいと思って、事前に佐渡観光交流機構のサイトから予約の申し込みをしてみました。しかし残念なことに、催行人数に達せずツアーキャンセルになってしまいました。まぁ、その分のお金を払えば何とかなるようでしたが、財布と相談して今回はあきらめました。…でも多分、今回の山旅で歩くことのできた(だれでも自由に見学することのできる)大佐渡石名天然杉の森には、新潟大学演習林を彷彿とさせる原生の姿があった、と私は思いたいです。

* 大佐渡石名天然杉については、前項の「ドンデン高原と大佐渡石名天然杉」を参照してみてください。

※ 本欄は「日本の森列伝・米倉久邦著(山と渓谷社・2015年6月1日初版発行)」のなかの「冬の豪雪と夏の霧、離島が育んだ知られざる神秘の森」の項などを参考にして記述しました。
* ご意見ご感想は当サイトのBBS(掲示板)をご利用ください。



ススキ越しに二ノ岳と金北山
白雲台から防衛省管理道路で金北山へ(左は二の岳、右奥が金北山)

2枚の写真をパノラマ合成
金北山の山頂から南面を見下ろす
小佐渡山地を挟んで両津湾〜加茂湖〜国中平野〜真野湾

初秋の佐渡島(大佐渡山地)・花の写真集: 大きな写真でご覧ください。

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