No.407 雲仙岳(妙見岳・国見岳・普賢岳) 令和2年(2020年)11月17日(火) |
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2泊3日の長崎・島原半島…温泉三昧の山旅日記 登山当日(11/17)=雲仙温泉-《車10分》-仁田峠-《雲仙ロープウェイ3分》-妙見岳1333m・妙見神社〜国見分れ〜国見岳1347m〜国見分れ〜鬼人谷口〜西の風穴〜北の風穴〜鳩穴分かれ〜立岩の峰〜霧氷沢分かれ〜秩父宮殿下御登山記念碑〜普賢岳1359m〜紅葉茶屋〜普賢神社・仁田峠-《車30分》-小浜温泉 【歩行時間: 4時間10分】 登山翌日(11/18)=小浜温泉…島原半島一周のドライブ観光…長崎空港14:00-《LCC》-15:45成田 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(普賢岳)へ LCCとGoToキャンペーンをフルに活用しての長崎・島原半島への今回の山旅は、びっくりするくらい低費用だった。喜んでいいのか心配したほうがいいのか…、はっきり云って複雑な心境だ。急速に増えているここ数日の国内の感染者数に、帰宅後は、ただ息をひそめている私達だが…。 ●11月16日・高曇り: 長崎空港…雲仙温泉 閑散とした成田空港からLCC(Peach-MM551便)は定時(12:10)に飛び立ち、草紅葉の滑走路が印象的な長崎空港に着陸したのは定時(14:35)を少し回った頃だった。ここは海上に位置する珍しい空港でもある。予約しておいたレンタカー(今回は軽自動車)の手続きをしているとき、担当の若い女性は私に向かって何回も「大丈夫ですか?」と聞いていた。カーナビに従って走り出すと、助手席の佐知子が「よっぽどあなたが年寄りに見えたのねぇ」とぽつんと言って、苦笑いする私だった。 国道34号線→57号線と、大村から諫早を抜けて島原半島へ入り、県道128号線をくねくねと上る。標高約675mに位置する雲仙温泉「雲仙東洋館」に着いたのは16時半頃だった。辺りの紅葉は終わりかけていて、空気がひんやりと感ずる。 雲仙温泉「湯快リゾート・雲仙東洋館」: 雲仙温泉は、キリシタン殉教悲史の舞台で世界的にも有名な温泉。湯煙の立つ温泉街の北部に位置する大型の温泉ホテルが「雲仙東洋館」。部屋も大浴場も立派。泉質は単純酸性温泉、微かに硫黄臭。残念に思ったのは源泉掛け流しではなく、(多分)一部循環だったことだ。広い館内なので、風呂へ行くのにも道迷いをしてしまいそうなほど。食事は朝夕ともバイキング形式。1泊2食付きで一人8,250円のコースだったが、GoToキャンペーンの割引で実際に支払ったのは約4,500円。チェックアウトでは…二人分の合計でも…1万円でおつりがきた。しかも、別に地域共通クーポン券(3,000円分)も付与されたりして、ほんとうにこれでいいのか、と思った。とにかく、コスパは高い。 ●11月17日(曇り): 雲仙普賢岳登山 7時からの宿の朝食後、徐にチェックアウト。国道389号線から協力金の100円を支払って仁田峠循環道路へ進み、10分強の運転で、標高約1070mに位置する仁田峠の大駐車場に車を停める。辺りが何やら騒がしいので、そそくさと登山口のあるロープウェイ駅へ向かって歩き出す。後で知ったことなのだが、きょう(11月17日)が噴火開始日からちょうど30年目とのことで、九州大学の研究者ら約100人の防災登山(視察登山)が行われようとしていたところだったらしい。 ロープウェイの仁田峠駅前で、佐知子と目を合わせてちょっと悩んだ。まぁしかし、駐車場も利用したことだし、稼働開始の8時31分を過ぎているし、標高差で174mを稼げるし、乗車料金は地域共通クーポン券が使えるし…、矢張りロープウェイを利用しましょう、ということになった。文明の利器はなるべく利用する、という他人にはあまり自慢のできない私達夫婦のポリシーは、今も健在だ。 ロープウェイの山頂展望台やその少し先の妙見岳展望所などからぐるっと見回して…橘湾と島原湾に囲まれた島原半島の山並み…雲仙岳の各ピーク(溶岩ドーム群)の位置関係などを確認する。あちこちに丁寧な説明版があるので、なにかと理解しやすい。 妙見神社で登山の安全を祈願してから、北進して国見岳へ向かう。火山などの貧栄養地に強い(超パイオニア植物の)ミヤマキリシマなどのツツジ類が目立つ山道で、足元に群生するササは…ミヤコザサに似ているけれど…葉裏に毛がないから別種かも…。冬に向かっているこの季節、白くなった葉縁が美しい。(→下山時に解説板を読んでわかったのだが、これはウンゼンザサという種であるらしい。) 咲き残っているアザミ(ツクシヤマアザミ?)の花色も鮮やかで、目を楽しませてくれる。 国見分れを直進して、いくつかのクサリ場を登りきると国見岳1347mのこじんまりとした山頂だった。生憎と、このころからガスっぽくなってきて、近くの普賢岳や迫力の平成新山などの景色がぼやけている。北面の山腹一帯も紅葉の名所らしいけれど、その時季が終わっていたのが少し残念だ。でも気分のとてもいいピークだったので、随分と長いことここで休憩した。普賢岳方面を見やると、その山腹をトラバースする長い列が見える。例の防災登山の大パーティーだ。こちら(国見岳)には登らないようで、平成新山へ向かっているようだ。 国見分れに戻って左折して、更に下って鬼人谷口の分岐で再び左折する。ここからの時計回りの周回コースが、変化に富んでいてとてもよかった。昔は蚕(かいこ)の保存などの氷室(つまり冷蔵庫)として利用されていたという、冷気の漂う二つの風穴(西の風穴と北の風穴)を見学したり、岩盤に根を張ったヤマグルマ(常緑高木)の凄まじい生き様に感動したり…、火山の生々しい痕跡を辿る道は、まず飽きない。 平成の噴火によって植生が草原に戻ってしまったという「立岩の峰」手前の広場で立ち止まる。ここには地元のハイカーと思われるオジサンが休憩していて、どうしようかと迷っている私達を見て、「よか眺めだけん、登っちゃよか」 と声をかけてくれた。オジサンの言葉に従って立岩の峰に登ってみると、ガスが一瞬晴れたこともあり、眼前の平成新山がものすごい迫力だ。山頂部を見やると、なんと、数人の登山者が歩き回っている。あぁ、(特別に許可をとって登った)防災登山の人たちが平成新山の山頂に着いたんだな、と思った。 「立岩の峰」下の広場に戻って、地元のオジサンに「良い景色でした。ありがとうございました」 とお礼を云ってから、いよいよ普賢岳へ向かう。 「秩父宮殿下御登山記念碑」の下を通過すると間もなく、普賢神社の立派な石祠(奥宮かな?)があり、さらに少し登ると一等三角点のある普賢岳1359mの小広い山頂に到着した。東面の近くに平成新山の大容量の気配はあるのだが、このときはガスの中だった。サーモスのコーヒーを飲んだりグリコポッキーやアンパンを食べたりしながら、小1時間ほど安山岩の山頂部で時を過ごした。時折ガスが引いて、微かに平成新山の山稜が見えたときに、やっぱり高くてでかいなぁ、と感じた。30年前(1990年11月17日)から5年近く続いた噴火活動で形成された、日本一新しい山・平成新山1483mは、そう、標高も山体もこの(主峰の)普賢岳よりはずっと高くて大きいのだ。今は未だ、平成新山は警戒区域として立ち入りが厳しく規制されているけれど、いつの日かそれが解除されたら登ってみたい、と、ほんとうにそう思う。 紅葉茶屋(実際の茶屋はない)を経由しての、仁田峠までの下山道の植生…ツツジ類などの潅木帯から徐々に本格的な樹林帯へ移行する…森の様子が個性的で自然で、とても心地よかった。→ シデ類、アブラチャン、マユミ(濃いピンクの実)、ツリバナ、ナツツバキ、ブナ(少し)、ヤマボウシ、ウリハダカエデ、コハウチワカエデ、カマツカ…などの落葉樹にイヌツゲ、シキミなどの常緑広葉樹、そして針葉樹のモミやイヌガヤ、などが交ざり合う自然林で、林床の主は例によって(今回初めて知った)ウンゼンザサだ。 大満足で普賢神社拝殿のある仁田峠に戻り着いたのは14時30分頃だった。今日の宿・小浜温泉まではここから30分足らずの運転だ。 * 雲仙岳について(補足説明): 雲仙岳は長崎県の島原半島中央部に位置する火山で、昔は「温泉(うんぜん)山」と表記されていたようです。最高峰の平成新山1483mをはじめ、三岳(普賢岳・国見岳・妙見岳)と五峰(野岳・九千部岳・矢岳・高岩山・絹笠山)、及び東の眉山から西の猿葉山まで、総計20以上の山々の総称で、雲仙岳という名のピークはありません。初夏のミヤマキリシマ、秋の紅葉、冬の霧氷(花ぼうろう)、などが観光における“売り”のようです。 1990年(平成2年)11月17日から始まった普賢岳の噴火活動は約5年間続きました。その時に形成された溶岩ドームは、それまで長崎県最高峰であった普賢岳を超える高さまで発達し、平成新山と命名されました。主峰は今も普賢岳1359mとのことですが、何時の日か平成新山がその(主峰の)地位を引き継ぐのではないか、と今回歩いてみてそう感じました。 戦後初の大規模な火山災害の惨事として、1991年6月の大火砕流で報道陣など43名の死者・行方不明者を出したことは、ご記憶の方も多いと思います。 なお、雲仙は、昭和9年3月に瀬戸内海や霧島とともに日本で最初に指定された国立公園です。昭和31年に天草地域が加わり、「雲仙天草国立公園」となりました。(Wikipediaの該当項などを参考にして要約) 小浜温泉「春陽館」: 島原半島の山間部に位置する雲仙温泉に対し、こちらは海(橘湾)が旅情を誘うロケーション。夕日の沈む海沿いに建つ春陽館は、タイムスリップしたような(ノスタルジックな)木造建築の老舗ホテル。私達が案内された(本館の)部屋も格調ある和風で、とても落ち着けた。 泉質はナトリウム含有泉(塩化物泉)、殆ど無色透明。口に含むと微かに甘塩っぱい味。30ヶ所ほどもあるという小浜温泉の源泉は、なんと105℃とのことで、「湧出量×湯温」で求められる放熱量が日本一といわれているらしい。掛け流しの「山頭火の湯」と「茂吉の湯」、それに展望露天風呂「天空の湯」も、なかなかけっこうだった。私達は利用しなかったけれど、別に貸切風呂(有料)もあるらしい。 1泊2食付きで一人11,150円のところを、GoToトラベルの割引があって、支払ったのは一人約6,900円。もちろん、これとは別に(二人合計で)3,000円分の地域共通クーポン券も付与された。 ●11月18日(晴れ): 島原半島一周の観光ドライブ 島原半島の西岸に位置する小浜温泉から、南へ向かってぐるっと海岸線(国道251号線)を反時計回りに巡る、きょうは観光ドライブだ。イルカが泳ぐという海の景色もいいけれど、左手に眺める雲仙岳の風景は秀逸だった。特に全長8キロの「島原まゆやまロード」からの(東側から眺む)平成新山の、昨日とは違った顔(→下の写真)を見ることができたのが嬉しかった。当初はこの「まゆやまロード」の中ほどに登山口のある眉山(まゆやま・819m)登山を計画していたのだが、どう見積もっても時間的に無理なので、ドライブ観光の半日となった次第。 地域共通クーポン券を利用して島原城見物をしたり、お土産のカステラを買ったりして、予定通り、長崎空港14:00発のLCC(Peach-MM552)に搭乗して帰路についた。温泉三昧のまったりとした今回の(も?)私達の山旅だった。 佐知子の歌日記より 噴火から三十年の普賢岳平成新山を畏れつつ見る 関東と少し違うと植物の同定に迷う夫の視線 夕日撮る露天風呂へと急ぐ夫 転んでカメラと浴衣を濡らす 入り組んだ海岸線の島原に南蛮船の影をさがしぬ 妙見岳の展望台から南面を望む: 矢岳・雲仙ゴルフ場〜雲仙温泉街・鴛ノ池 右手前はマユミ(実) 「まゆやまロード」の展望所(東側)から平成新山を望む このページのトップへ↑ ホームへ |