No.414 鹿野山・マザー牧場 令和3年(2021年)3月16日(火) |
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房総は春爛漫! → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 「鹿野山」が新版の関東百名山(山と渓谷社・2019年4月初版)に選ばれたので、行ってみる気になりました。もう40年以上の昔…私達の子供がまだ小さかった頃…家族連れで訪れたことのある懐かしのマザー牧場のある、あの千葉県の鹿野山(かのうざん)です。 東京都大田区の自宅を朝の7時に出て、東京湾アクアラインを利用して、あっという間に(1時間足らずの運転で)、九十九谷展望公園の大きな駐車場(無料)に着いたのは午前8時頃でした。春霞(多分…絶対…スギ花粉がその真犯人だ!)のせいで、快晴なのですが富士山は見えず、展望はイマイチです。でも、だからこそ…東山魁夷の絵のモチーフになったという…ぼんやりとした(幽玄な)房総の低山群の山並み(つまり九十九谷など)が、墨絵のような美しさでした。 それからまず立派な鳥居を潜って石階段を登って、日本武尊(やまとたけるのみこと)と弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと)を祀る白鳥神社(白鳥峰379m)に詣でます。ここが鹿野山の東峰です。こじんまりとした境内には君津市教育委員会による解説板(白鳥神社と「鹿野山のはしご獅子舞」)が立っていたので、これをじっくりと読んで、由緒ある当地の歴史を垣間見ます。 この白鳥神社(拝殿)の左奥から小道が続いているので進んでみると、すぐに行き止まりになっていて、日本武尊を祀った塚がありました。中央の石碑には「日本武草薙」と刻まれています。ここが白鳥峰379mのピークかもしれません。周辺の樹種はタブノキ、スダジイ、アラカシ、シロダモ、ヒサカキ、モチノキ、ネズミモチ、イヌツゲ、アオキ、アカマツ、そしてスギ…などで、割と自然です。一昨年の台風によるものと思われる倒木が目立っていました。 車道(県道93号線)に戻って西へ進み、聖徳太子創建と伝えられる神野寺(じんやじ)に参拝。境内の大きなイチョウ(ご神木かな)や立派な社が目立ちます。この神野寺は、江戸の昔から山岳信仰の霊場として賑わったそうです。その奥の院まで行って辺りを探してみましたが、中央峰の熊野峰(薬師峰)376mの山頂が何処にあるのか分かりませんでした。しかし何れにしても、「神」が「鹿」になって鹿野山となったのかも、と云われるように、神野寺が鹿野山の“中心=盟主”であることに間違いはなさそうです。 更に西進して、右手の鳥居を潜って山道を少し登ると春日神社の地味な社です。この裏手を進むと(ここも)行き止まりの小広い空間があって、「元春日神社址(→もしかして馬から落馬している?)」と彫られた花崗岩の石柱が立っていましたが、ここが西峰(春日峰352m)の山頂でしょうか。地形図(25000図)を読むと、この奥には鹿野山測地観測所があって、由緒ある…日本最初の…一等三角点(点名:鹿野山)をはじめ一等水準点や電子基準点などもある筈ですが、それも分からずじまいでした。この地は山頂標識にはあまりこだわってはいないようです。…私達夫婦はピークハンターではないし、三角点ハンターでもないので、まぁいいかの心境です。→ 帰宅後にネット検索で分かったことですが、春日峰の一等三角点は測地観測所の敷地内にあるようです。 鹿野山の3峰を(とりあえず)登り終えてから、車道をマザー牧場へ向かって歩いていると、左手に鹿野山鳥居崎(岬?)に関する解説板が立っていたので、それもじっくりと読んでみます。現在は植林により展望はありませんが、かつては富士山信仰の鳥居があった地で、眺望に優れていたようです。歌川広重の浮世絵や大町桂月の紀行文などにこの地が紹介されています。→ 山梨県立博物館の該当ページへ その解説板の立つ処に分岐する道があったので、これが地形図に載っていた(鳥居岬経由でマザー牧場へショートカットする)破線の小道だと思い、鉄柵を抜けて、皆伐後のハゲ斜面上の金網に沿ってなだらかに登ってみました。するとなんと、登りきった処で鬱蒼とした(倒木と藪の)スギ林に道をふさがれてしまいました。やむを得ず右折して薄い道型を辿り、車道へドスンと戻る羽目になりました。事前の情報収集不足でした。もっと左側(南側)に鳥居岬への「小道」があったようです。結局、私達はかえって遠回りすることになってしまいました。でも、ちょっと楽しい冒険だったので、まぁいいか。 マザー牧場の「まきばゲート」に着いたのは10時半頃でした。もちろん、@1,500円の入場料を支払って…親子連れの観光客に交じって…菜の花が満開のマザー牧場をまったりと楽しんだのは云うまでもありません。…44年前の、古いアルバムに残っている、若かりし私たち一家の思い出を捜しながら…。 神野寺近くのうなぎ料理店「津多屋」が休業中でしたので、マザー牧場内のレストランでジンギスカン料理などを食しました。それから12時18分発の路線バス(日東交通・鹿野山線)に乗車して約5分、終点の神野寺バス停から20〜30分ほど歩いて、振出しの九十九谷展望公園の駐車場に戻りました。 ときあたかも房総は春爛漫。木本ではキブシ、モミジイチゴ、ミツマタ、コブシ、などの花が見ごろで…、道端にはタチツボスミレ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウ、そして菜の花、などの草花がほっこりとした風に揺れていました。お陰様で、都心ではなかなか感じることのできない春の自然を、たっぷりと味わうことができました。おまけに桜(ソメイヨシノ)が二分咲きといったところで、これも今年の早い春の恩恵でした。 しかしながら今回のトレイルは、ハイキングというよりは神社仏閣巡りのウオーキング、といった感じで、その殆どが車道(アスファルト)歩き、というのがかなりスポイルされる点だと思いました。…まぁ、半日で何時もと変わった(散歩)道を歩いてみようかな、なんていうときにはいいかもしれませんが…。 * 鹿野山とは、白鳥峰379m(東峰)、熊野峰376m(中央峰)、春日峰352m(西峰)の3峰の総称で、南房総国定公園内の君津市と富津市の境に位置します。房総半島脊梁の丘陵性山地で、ケスタ地形とされます。 鹿野山・大町桂月著(青空文庫): 古の「案内記」です。大変参考になります。 * マザー牧場は、鹿野山の西側(富津市側・春日峰の南西約2km)に位置する鬼泪山(きなだやま・319m)の周辺に造られたテーマパークで、1962年に前田久吉氏(1893年-1986年)により開設。関東最大級である250万平方メートルの敷地を有する、とのことです。鬼泪山とは面白い山名ですが、日本武尊に追い詰められた阿久留王(征服者からは鬼とされた)が号泣して許しを乞うたことが山名の由来と云われているそうです。この鬼泪山も鹿野山の1峰として記述されているサイトが多くありましたが…。 日本山名辞典(三省堂)、及びウィキペディアの該当項などを参考にして記述しました。 佐知子の歌日記より 黄緑の木五倍子(きぶし)の房が揺れている上総の国の春の道の辺 菜の花と若き親子の間ゆく老い二人なりマザー牧場を
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