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No.413 高塚山216m(南房総)
令和3年(2021年)2月16日(火) 快晴 マイカー利用

麓から高塚山(ほぼ中央・龍護山の奥)方面を望む
高塚山の略図
この右手が登山口
高塚不動尊(大聖院)
↑バックは龍護山

この森(マテバシイの純林)がずっと続く
マテバシイ林を登る

高塚不動尊(奥宮)の境内
山頂部から太平洋を望む

この裏手が山頂です
高塚不動尊・奥ノ院

富士山が見えました
高塚山の山頂

ここが東側の登山口(=下山口)
合有戸溜池

バックは長性寺と高塚山
のどかな里歩き

右手に千田の磯
海岸を道の駅へ向かう

マテバシイの純林・花咲く里・そして磯の匂い
もう春の、南房の千倉里山遊歩道コースを歩く

富津館山道路・富浦IC-《車40分》-道の駅「ちくら潮風大国」の駐車場〜高塚不動尊(里宮)〜高塚不動尊(奥宮)・高塚山〜合有戸溜池〜長性寺入口〜南房千倉大橋公園〜道の駅「ちくら潮風大国」…房総半島をドライブ観光しながら帰宅 【歩行時間: 2時間30分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 関東地方で…島嶼部を除いて…最も春が早い所、といえば矢張り南房総だ。東京に住む寒がりの私にとってみれば珠玉の地域でもある。なので、最も寒い2月に何処を歩こうか、といったときに…行ったことのない山で安心・安全も加味して…(新)関東百名山の一座・南房の高塚山(たかつかやま)を選ぶには時間はかからなかった。

 大田区の自宅からは、東京湾アクアライン→館山自動車道→富津館山道路…と早朝の高速道路を順調に進み、富浦ICから(カーナビに従って)一般道を約40分、「道の駅・ちくら潮風大国」のがらーんとした駐車場にマイカーを停めたのは8時頃だった。海辺だから潮の匂いがする。しかし風がとても強い。慌てて私はジャケットを、妻の佐知子はカッパの上着を、ウィンドブレーカー代わりに身に着ける。
 高塚山方面の低い山並みを前方に仰ぎながら、国道410号線を横切り、里道を北北西へ進む。田園や小集落の風景がおだやかで、目と心が思わずほっこりする。
 高塚不動尊(大聖院)の右側に高塚山登山口の標識があって、千葉県の自然保護課や市民活動団体(高塚山望活クラブ)などの解説板が立ち並んでいる。高塚山自然環境保全地域の植生などについてや、ハリウッドスターの早川雪州(1886〜1973)がこの地(南房総市千倉町千田)の出身であることなど…、じっくりと読んで、とても興味深かった。
 墓地を過ぎてから“階段状に整備された道”を登る。ここからはずぅ〜っと、鬱蒼としたマテバシイの樹林帯(殆ど純林)が続く。…森へ入ったから風は弱まった。足元の所々にはタチツボスミレが咲いている。矢張りこちらは春が早い。ツワブキの葉が光っている。石の階段に腰を下ろして、佐知子の握ったおにぎりで朝食だ。

 登山口から正味20分ほども登ると急傾斜が弱まって、樹林が少し疎になってくる。ベンチのある展望箇所から振り返ると、歩いてきた方面の海(七浦漁港の辺り)や田園や集落の風景が樹林の隙間から見えている。富士浅間神社の石碑や富士講の記念碑などの立ち並ぶ箇所を過ぎ、下山路に予定している合有戸(がゆど)溜池方面への道を右に分けて直進すると間もなく、コンクリートの立派な鳥居を潜る。私達はつまり、高塚不動尊の表参道コースを歩いているのだ。
 左手に龍護山160mや一等三角点峰205.76m(点名:大川)への小道が分岐していて、ちょっと食指が動いたのだけれど、道が荒れているようだし、今回はカットする。道沿いにはヤブツバキがきれいに咲いている。
 やがて太平洋や千倉市街方面の展望が開けた小平地に出る。ここが高塚不動尊(奥宮)の境内で、風神・雷神や狛犬などの由緒ある石像が立派だ。神仏習合の名残りを感じながら…柏手は打つべきか打たざるべきか迷いながら…本殿にお参りした。
 その本殿裏の高台が高塚山の山頂で、「房州低名山・高塚山216m」と書かれた小さな山頂標識と、矢張り小さな石祠が置かれてあった。西面が僅かに開けていて、薄ぼんやりと白銀の富士山が、低い山並みの彼方に、案外大きく見えている。右手に移動すると、樹林の隙間から(北東方向の)和田漁港の辺りだろうか、も垣間見える。

 高塚山の山頂から来た道を分岐まで下り、左折して合有戸溜池方面へ進む。途中、数株のマテバシイの倒木が道をふさいでいる箇所があったけれど、ピンクテープを頼りにそれを乗り越えて進む。フィールドアスレチックのようで、楽しかった。
 それにしても…、私達が歩いているハイキングコース(照葉樹の森コース)周辺は、その殆どがマテバシイの純林、というのには驚いて感動した。山全体がマテバシイ林ということは、この山域の貴重な個性だと思う。三浦半島にはこんなに広い面積のマテバシイ林はない。(→マテバシイについては下欄を参照してみてください。)
 合有戸溜池の池畔が下山口(東側の登山口)だった。ベンチが置かれた、なんとも居心地のよいロケーションだったので、ここでも中休止にした。この付近にはここ以外にもいくつもの(農業用の)溜池があるようだ。それらの“溜池めぐり”も面白そうだね、などと会話する。ここからは里道歩きだ。

 歩いてきた山稜を右手に見ながら、長性寺〜照明院〜高皇産霊神社〜振出しの高塚不動尊(大聖院)〜長尾神社…と海岸段丘の里道を歩く。この地も神社仏閣の多い処だ。左手(東面)には太平洋が、その水平線を大きな弧にして、何十メートルにも何百メートルにも見える高さで迫ってくる。この日は終日風の強い日で、白波の立つその様子は、まるで途方もなく巨大な津波のようにも見えて、恐怖すら感じた。
 白間津のお花畑で眼を和ませてから海岸線の道へ出て、荒磯を眺めながら、飛ばされそうな帽子を押さえて歩く。「道の駅・ちくら潮風大国」に戻ったのは11時45分頃。今朝はがらーんとしていた大駐車場が殆ど満車状態になっている。…しかしここまでの(歩きの)全行程は、とうとう誰とも出会うことのない、静かな軽ハイキングだった。
 道の駅の食堂で海鮮丼(アジフライのサービス付きで@1,900円)に舌鼓。これからさて、房総半島をドライブ観光しながら帰路につくことにしよう。何気に、山道で採ってきたフキノトウで、佐知子の小さなザックはパンパンになっている。これから当分の間、ご飯のおかずは蕗味噌だ。

* マテバシイ(馬刀葉椎・全手葉椎): ブナ科の常緑広葉高木。日本の固有種。本来の自生地は九州から南西諸島の温暖な沿岸地と考えられていますが、その堅果(どんぐり)が大きくて生でも食べることができることから(少し甘みがあってけっこう美味いです)、救荒食として戦前までは各地で盛んに植栽されたようです。特に三浦半島やこの房総などの太平洋側の沿岸地は生育に適していたようで、その名残りのマテバシイ林が今でもよく残って(自生化して)います。烏場山やこの高塚山のマテバシイ林も、その典型だと思います。
 マテバシイの葉は大きくて厚く、おまけに葉量が多いために林床は暗く、ほとんど他の植物が生育していない…、ということからも純群落(純林)を形成しやすい、と云われています。
 種名の由来については、「待てば椎
(シイ)のようになる」や「その葉がマテガイ(馬刀貝)に似る」などの説がありますが、その真偽は不明です。なお、マテバシイのことをこの地(房州)ではトウジイ(唐椎)と呼んでいますが、唐(中国)のような遠くから渡ってきた椎、とかの意味でしょうか。…各地におけるマテバシイの別名としては、マテガシ、マタジイ、サツマジイ、アオジイ、などもあるようです。学名のedulis が「食べられる」という意味なのは、言い得て妙ですね。
 私の趣味のひとつはネイチャークラフト(→Tamuのネイチャークラフト作品集)ですが、大きくて丈夫で長持ちのするマテバシイのどんぐりは、その素材として(各種のどんぐりの中では)特に優れていると思っています。

* 高塚山で(マテバシイの他に)観察のできた木本: スダジイ、タブノキ、アカガシ、イヌマキ、カクレミノ、シロダモ、オガタマノキ、ホルトノキ、ウバメガシ、トベラ、ヤブツバキ、アオキ、ヤツデ、イヌザンショウ、グミの類(マルバグミ、ナツグミ?、ツルグミ?)、ハマヒサカキ、アリドオシ、イヌガヤ、そして(伐り残された?)スギ、等

* 高塚山のハイキングコースについて(補足): 帰宅後に、南房総市関係のネットサーフィンをしていて分かったことですが、今回私達夫婦が歩いたのは「千倉里山遊歩道コース」のうちの「照葉樹の森コース」を軸に「露地花の里コース」と「汐の香コース」の、それぞれの一部を繋いで歩いたようです。何れにしても半日ハイキングコースです。ボリューム的に物足りないと感ずる健脚な方は、3コースのすべてを繋げて歩いて、かつ龍護山160mや一等三角点峰(大川)206mにも足を延ばせば、ちょうど適量の日帰りハイキングになるかもしれません。
 外部サイトへ ハイキングコースのPDF(千葉県南房総市のHPより)

  佐知子の歌日記より
 打ち寄せる太平洋の白波がうなりてたたく千倉の岩を



ちょっとコミカルかも・・・
高塚不動尊(奥宮)の風神・雷神像
ちょっとコミカルかも・・・

フィールドアスレチックのような・・・
マテバシイの倒木を乗り越えて…
フィールドアスレチックのような・・・

海(水平線)が盛り上がって見えます
海岸段丘の里道から太平洋を望む
まるで巨大な津波のようにも見えて…
バックは高塚山方面
浜辺の里のお花畑
ポピー、キンセンカ、ストックなどが咲く…

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