No.426 霧訪山(きりとうやま・1306m) 令和3年(2021年)12月2日(木) |
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上諏訪温泉をベースに・2日間の山旅日記(前編) → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 上諏訪温泉に1泊して、初日は中央アルプス北端の霧訪山(きりとうやま・1306m)、2日目は南アルプス最北端(または伊那山地北端)の守屋山(もりやさん・1650m)を登ってみよう、という私の提案に、膝痛が大分治ってきた妻の佐知子が大賛成した。何れも日本アルプスや八ヶ岳などの展望に定評がある、人気のある山だ。それほどきつくない歩程であるらしい、というのも彼女の“大賛成”に拍車をかけている。 寒空に星が瞬く未明、朝のラッシュが始まる前の5時半頃に自宅を出て、首都高から中央道へと、快調にマイカーを西進させる。中央沿線の山々や奥秩父や南アルプスの峰々が朝日に輝いて、久々に見るすっきりとした、車窓からの山岳風景だ。心ワクワク、今回の山旅の大成功を予感する。 岡谷JCTから長野道へ入って間もなく、塩尻I.Cから一般道を約15分南下して、小野神社や矢彦神社の脇を通り過ぎる。そして広い田園地帯を進むと、その突き当りが霧訪山登山口(北小野登山口)の大駐車場だった。カーナビに従ったのだが、あとで地図をじっくりと見てみると、手前の岡谷I.Cからのほうが距離も短くて高速料金も安く済んだのではないか、と訝った。所用時間は微妙な差で…、まぁ、たいした問題じゃないけれど…。 午前9時10分頃、軽登山靴に履き替えて歩き始める。まず階段状(擬木階段)の登山道を、カラマツ林からアカマツ林へと登る。この山は全山が「お止め山」で、登山道を外れて林内へ入ることは固く禁止されている。そう…マツタケが採れる個人所有の“茸山”なのだ。その旨を書いた注意書きが其処彼処にあって、道の左右はネットなどで防備されている。…う〜ん、まぁ〜、仕方ないかぁ…。 登山口の「あと1600m」から始まって100mおきに標示が出てくるので、今いる自分の位置が分かりやすい。一種の合目表示だが…、ちょっとやり過ぎの感も…。 その「あと1100m」の標示板の少し先に御嶽山大権現碑があって、さらに少し先の鉄塔下を通過すると「かっとり(川鳥)城址」の解説杭が立っている。戦国時代の山城だった処らしい。至れり尽くせりの、まるで観光歩道のような登山道だ。心配していた積雪もほんの僅かで、歩行にはまったく問題がないようだ。 分岐を左折して引き続き「かっとりコース」を進むと、トタン作りのテントのような(三角屋根の)避難小屋の脇を通過する。コナラ、ミズナラ、ネジキ、リョウブ、シデ類、カエデ類、そしてブナなどの広葉樹がアカマツに交ざり始め、いい感じのロケーションだ。林床には常緑小高木のソヨゴ(冬青・モチノキ科)が目立ってくる。その明るい緑葉が木漏れ日を受けて美しい。赤い実を吊り下げている雌株もあって、その姿にも風情がある。常緑広葉樹にしては寒さや日陰に強い種で、矢張りアカマツ林に多いらしい。 小野神社の境外社(石祠)や二等三角点の標石や山岳方位盤などのある、ちょっとごちゃごちゃした霧訪山の山頂は、1点360度の大展望だ。北西面には北アルプスの白峰たちがずらっと並んでいる。その反対側(南東面)の南アルプスの峰々や東面の八ヶ岳連峰も、昨日の積雪を加えて真っ白だ。西面の山々の頭上には、矢張り真っ白な御嶽山の山頂部がぴょこんと覗いている。山岳方位盤と首っ引きでの山座同定。至福の大感動だ。霧が訪れる山(=霧がよく発生する山)だと云うが、今日は澄み渡った大気に包まれている。サーモスの熱いコーヒーを飲んだりメロンパンを齧ったり、出会った地元のハイカーたちと会話をしたり…、小1時間ほど山頂を楽しんだ。 霧訪山の山頂からは北へぐるっと右回り、「新道南沢コース(北小野新道)」を下って周回する。この下山道でもソヨゴの群落が気になって、何回も立ち止まって観察した。(私にとっては)案外と珍しい樹種なのだ。 この辺りは日本海側(信濃川水系)と太平洋側(天竜水系)との分水嶺にもなっているらしい。途中から左(北東)へ分岐する尾根道(霧訪山〜大芝山〜善知鳥(うとう)峠)は「中央分水嶺コース」と呼ばれているようだ。 北小野登山口の駐車場に戻ったのは13時30分頃。まだ十分に日が高いので、諏訪大社などをじっくりと参拝してから今日の宿・上諏訪温泉へ向かうとしよう。 上諏訪温泉「ホテル鷺乃湯」: 上諏訪温泉は諏訪湖の東岸に位置し、多くのホテルや旅館が建ち並んでいる。古くから諏訪大社の門前町としても栄えた由緒ある温泉であるらしい。ウィキペディアの該当項によると、自噴泉は1958年になくなり、すべての温泉が動力揚湯である、とのことだ。私達が今回利用したホテル鷺乃湯は特に理由があって選んだわけではなく、ネットの楽天トラベルから適当に見切りをつけて予約したものだ。つまり、数あまたある宿泊施設の中で、立地や宿泊料などが妥協点にあったのだ。結果は大正解で、洗練されたサービスや料理や、もちろん風呂も、とても良かった。泉質はナトリウム・カルシウム・炭酸水素塩泉(中性低張性高温泉)で、殆ど無味無臭だが、この地では珍しい琥珀色をしている。部屋の窓からの諏訪湖の風景もなかなかだ。朝食は7時から。1泊2食付き一人12,492円は、矢張りかなりの割安感だ。 鷺乃湯の隣りには、国の重要文化財にも指定されている片倉館が建っている。昭和初期に開業したという、深さ1.1mの千人風呂で有名な、古典的な日帰り入浴施設である。映画「テルマエ・ロマエU」のロケ地にもなったらしく、ちょっと後ろ髪を引かれたが、今回は入浴の機会がなかった。 「ホテル鷺乃湯」のホームページ 佐知子の歌日記より 「ウォー」と夫 我は拍手を白銀の富士山・北岳・間ノ岳へ 留山の霧訪山の登山道 左右ロープにきつく結わかれ まっ白な北アルプスは連なりて山の名確かめ存分に眺む 振り向けば蓼科山や八ヶ岳 雪をかぶりて青空に映ゆ 諏訪大社三ヶ所巡り祈りたり山旅つづくを感謝しながら |