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広島・山口 4日間の山旅日記 その1
No.434 弥山535m(安芸の宮島)
令和4年(2022年)5月30日 登山日はしとしと雨

弥山の略図
5月29日
広島の世界文化遺産
原爆ドームを見る

弥山のピークは見えていない
厳島神社から弥山方面を望む

引き潮のときに撮影
修理工事中の大鳥居

5月30日
食べる草が少ない・・・?
紅葉谷園地のシカ

周囲は「弥山原始林」
石階段を登る

小羊歯:ウラジロ科のシダ植物
コシダがきれい!

右の石階段を登ると弥山の山頂
霊火堂から山頂へ

中央に三角点
岩ゴロの弥山山頂

立派な門でした
大聖院へ下山

地ビールは高いけれど美味い!
穴子飯と地ビール・・・


広島県の原爆ドームと厳島神社
2ヶ所の世界文化遺産を堪能!

第1日目(5月29日・日)=品川駅07:17-《新幹線のぞみ》-11:03広島駅~平和記念公園・市内観光~広島駅-《山陽本線28分》-宮島口駅-《フェリー10分》-宮島・厳島神社などを観光…ホテル菊乃家
第2日目(5月30日・月)=ホテル菊乃家~(紅葉谷コース)~弥山535m~(大聖院コース)~大聖院・宮島観光-《フェリー10分》-宮島口・コーラルホテル 【登山の歩行時間: 4時間10分】
第3日目(5月31日・火)=宮島口駅…新山口駅-《バス》-秋芳洞・秋吉台-《バス》-湯田温泉
第4日目(6月1日・水)=湯田温泉-《タクシー》-金鶏ノ滝入口~東鳳翩山734m~二ツ堂…山口駅-《JR山口線・新幹線》-品川…

 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 自宅を発つ数日前、久しぶりに会った従姉に 「こんど広島県の弥山(みせん)へ登るんだ。…安芸の宮島だよ。そう、厳島神社のある…」 と云ったら 「何回目の宮島?」 と聞かれた。「初めて…」 と答えたら、彼女に 「わたしは3回行ってるわ」と返されて、話はそれで終わってしまった…。
 昔から「日本三景」の一つとして称えられ、国の特別史跡や特別名勝に指定されていて、近年(平成8年)には世界文化遺産にも登録された厳島神社(=宮島)だ。歳を経た(つまり老人の)日本人でありながら安芸の宮島を訪れたことがない、ということは、従姉にとっては信じがたいことだったに違いない。
 とにかく私も妻の佐知子も、中国地方の地理や文化にとんと疎い。山口県が本州の西端にあることはなんとなく認識しているけれど、鳥取県と島根県や岡山県と広島県をイメージするとき、恥ずかしながら何時も、その位置関係が分からなくなってしまう。今、書いているときも、それらの県が、なんか、頭の中でごっちゃになっている。(^^;)
 特に広島県と山口県に関しては、通過したことはあるけれど駅から降りたことがない。なこともあり、不案内な地への今回の山旅に、ここのところず~っと、私達夫婦は“ちむどんどん”していた。

●2022年5月29日(東京~広島・宮島)・晴れ
 朝の東京・品川駅から、飛ぶような速さの「新幹線のぞみ号」で3時間46分、広島駅に着いたのは午前11時03分だった。駅のコインロッカーにザックを預けて、とりあえず広島市街へ出て、お好み焼きを食べた。2枚のクレープにごっそりとキャベツ炒めが挟まっているような、私達にはとても珍しいお好み焼きだったけれど、とても美味しかった。
 それから平和大通りを歩き、平和記念公園内の広島平和記念資料館(平和博物館=原爆資料館)をじっくりと見学する。コロナ下とはいえ、けっこう外国人の入館者も多かった。原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)も見た。1996年12月に世界文化遺産(負の世界遺産)に登録された原爆ドームも、間近に見た。会話の少なくなった私達夫婦は、其々にいろいろなことを考えた。

 まったりと市内観光をしながら広島駅へ戻り、山陽本線で西へ28分、宮島口駅で降りる。駅前から少し歩くとフェリー乗場で、あれよあれよという間に中学生などの団体客(修学旅行かな)に交じって、船上の人になっている。おっとりと海に浮かぶ神の島・宮島が徐々に近づいてくる。他より少し高いピークが…、あれが弥山(みせん・535m)に違いない。
 宮島桟橋(厳島港)には今日の宿「ホテル菊乃家」の車が迎えに来ていたので、ザックだけを預けた。そしてそれから、これも世界文化遺産の厳島神社などをじっくりと見物した。例の大鳥居が修理工事中で、その姿を見ることができなかったのは残念だったけれど、地元の人に言わせると70年~100年に一度の珍しい景色であるらしい。
 永年の、ヒト(観光客)との共生の帰結か、(出迎えてくれた)ここのシカは全く人を恐れない。どころか寄ってくる。とても大人しくて可愛いけれど…、何気に…、なんか痩せているなぁ…。

* ホテル菊乃家: 弥山の登山口に近いので(ネットで)予約した。非常に洗練されたサービスで、流石に超一流の観光地の宿は違う、と思った。名物の穴子や牡蠣の料理は勿論、アサリや刺身などもとても美味しかった。指定された時間にフェリー乗場まで荷物だけでも運んでもらえる、というのが有難かった。おかげで両日ともゆっくりと観光や登山を楽しめた。1泊2食付き一人12,000円(税込み)は良心的な料金だと思う。

●2022年5月30日(弥山登山)・雨
 7時からの宿の朝食を食べてから、7時50分頃、ゆっくりと歩き始める。数匹のシカがウロウロする紅葉谷園地を抜けて、ロープウエー駅への道を左に分けると紅葉谷コースの弥山登山口だ。天気予報通りに小雨が降り出したので、カッパに身を包む。幸いに風は弱くて、寒くもなく暑くもなく、まぁ、登山には問題のない天候だ。ガビチョウやシジュウカラが盛んに鳴いている。
 紅葉谷川に沿った登山道はよく整備されていて、ほど良い歩幅の歩きやすい石段(花崗岩かな)が多く、泥道の心配はなさそうだ。周囲はスギも少し交じるけれど、モミやツガやアカマツ交じりの照葉樹主体の(殆ど)天然林だ。シロダモ、モッコク、カゴノキ、シキミ、ヤブツバキ、アセビ、ヒサカキ、サカキ、アオキなどのおなじみの照葉樹はすぐにそれと分かるけど、なんか、微妙に分かりにくい樹木が多い。イヌガシ、クロパイ、ハイノキ、クロキ、ミミズバイ(タイミンタチバナ?)…など、関東に住む私にとっては非常に珍しい樹木たちだ。照葉樹が多いから特にそう感じたのかもしれないが、落葉樹のウリハダカエデの緑葉がとても目立っている。…ガクウツギの白花がきれいに咲いている。所々の雨に濡れたコシダの群生がため息の出るほどに美しい。季節の関係もあるのか、咲いている草本は少ない。
 広島大学のサイト(宮島の植物と自然)によると、宮島の植生は豊かで、他の島と比べて本土との違いが大きいという。永年に亘る神の島としての立ち位置や、それに伴うヒトと自然の微妙な関係が、宮島特有の植生を育んだと云えるかもしれない。特にこの弥山の北斜面一帯の森林(弥山原始林)は、世界遺産の片棒を担いでいるらしく、かなりスゴい自然なのだ。
 紅葉谷コースを登り切ると左からロープウエー獅子岩駅(山頂駅)からの道が合わさる。暫く進んで立派な弥山本堂に参拝。ここは空海(弘法大師)が修行したと伝わる処で、向かいには「消えずの火」で有名な大聖院霊火堂がある。指導標に従って更に石段を上ると三鬼堂で、ここにも参拝。とにかく弥山のハイキングコース沿いは謂れ因縁のある神社仏閣だらけで、どんどん前へ(スルーして)進むわけにはいかない。静粛に荘厳に粛々と、立ち止まったり手を合わせたりお辞儀をしたり、しなければいけない。
 弥山の山頂部一帯はかなり岩っぽい処で、花崗岩質の巨岩や奇岩がゴロゴロしている。宮島全体が巨大な花崗岩でできているというが、ガッテンだ。中央にある二等三角点(点名:御山)の標石を確認してから、立派な展望台にも一応上がってみたのだけれど、雨とガスで何にも見えない。これは本当に残念だった。晴れていれば瀬戸内海の絶景が望めるとのことだ。
 暫し休憩の後、下山コースの選択について小考する。ややマイナーな「博打尾コース」か、モミの原生林が魅力的だという「大元コース」か、上りに利用した「紅葉谷コース」とともにメジャーな「大聖院コース」か…、少し迷ったのだけれど、雨も降っているし…、ここはやっぱり楽な「大聖院コース」を下ることにする。
 大聖院コースも石階段などよく整備されていて、安全安心に下ることができる。仁王門~賽の河原~白糸の滝(水量少ない)、と見物しながら大聖院の門前に下山したのは13時の少し前だった。さて、これから宮島名物の「あなごめし」や「もみまん(もみじ饅頭の通称)」を食べたり、未だ立ち寄っていない五重塔などの歴史スポットを観光してから、フェリーで宮島口へ渡って、今日の宿「コーラルホテル」にチェックインするとしよう。
 明日は広島から山口への移動日で、初めて訪れる秋芳洞や秋吉台も楽しみだ。

* 宮島コーラルホテル: 宮島口駅にも宮島口港にも近いホテル。大浴場はないけれど、サービス内容は一流。1泊朝食付きで一人5,500円(税込み)。夕食は別料金で、外へ食べに行ってもよいのだが、私達はホテルのレストランで食事した。食べたいもの(だけ)が食べられるので、このシステムは良いと思った。牡蠣料理、アサリのバター焼き、鯛のお造りなど、とても美味しかった。もちろん地酒もGood! 結局、かなりの割安だったかも。

  佐知子の歌日記より
 残りたる原爆ドームは知っている苦しむ人の痛みや涙を
 宮島に草は少なく餌ねだり生きいる鹿は小さく細い
 弥山よりじっと見れども瀬戸内の海や小島は霧に隠され