No.433 嵩山(たけやま・789m) 令和4年(2022年)5月6日(金) |
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→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 自宅を出てもう随分と歩いてから、昨夜のうちに用意しておいた弁当(おにぎりとサンドイッチ)を家の冷蔵庫に忘れたことに気がついた。引き返す時間の余裕がないので、もうきっぱりとあきらめる。…出掛ける時に弁当を忘れることは、そんなによくあることではなくて、今回で(たった)4回目くらいのことだ。私達夫婦の長い付き合いを勘案すると、これは(12年に1回程度の)レアケースだと思う。…と、(弁当担当の)佐知子に対しての一応のフォロー(弁護)を書いておく。 で、朝の高崎駅で、乗り換えの時間を利用してホームの立ち食い蕎麦を食べた。一人で切り盛りしているこの蕎麦屋のオバチャンがとても感じのよい人で、たっぷりと具の入った舞茸の天ぷらそばがとても美味しかった。佐知子も私も上機嫌になって、駅のコンビニで弁当のおにぎりも買った。 高崎からはJR吾妻線で54分、右側の車窓から嵩山の…はっきりとそれと分かる…こじんまりした独立峰的な山容が見え始めると間もなく、中之条駅に着く。ここから嵩山の登山口まで歩いてみようかとも考えたのだけれど、標高差で200m以上はありそうな上り坂だし、アスファルトだし、優に1時間以上はかかってしまいそうだし…、つまり駅前からタクシーに乗る。 その年配の運転手さんから車中で聞いた話だが、つい最近、隣りの(南西に聳える)岩櫃山にクマが出て大騒ぎだったらしい。そして運転手さんにとっての嵩山は、子供の頃のよき遊び場であった…。と、そんな話をしながらあっという間に(約10分の乗車で)、青い空に約100匹の鯉のぼりが泳ぐ道の駅「霊山たけやま」の広い駐車場前に着いた。ここが嵩山の登山口にもなっているのだ。トイレとか準備体操とかペットボトルのお茶を自販機で買ったりとか、なにやかやで歩き始めたのは10時を過ぎていた。 嵩山の表登山道入口から時計回りで、謂れ因縁のある数々の奇岩・怪石を巡ったり、33体の観音像を探したりしながらゆっくりと歩く。観音様を探すのはまるで“宝探し”のようで、私達はそのうちの7割程度しか“発見”できなかった。実際、フィールドアスレチックのような周回路で、本道から派生しているコースを垣間見るのも楽しい。道標はしっかりしている。地元生まれのタクシーの運転手さんが、子供の頃のよき遊び場だったというのも頷ける。 スギの人工林は麓近くの僅かな区間だけで、あとは新緑のコナラ、ホオノキ、ヤマザクラ、リョウブ、イロハモミジ、シデ類、ツツジ類、ネジキ、そしてアカマツ、などの自然豊かな明るい森だ。ヤマツツジが今を盛りに咲いている。トウゴクミツバツツジも少しだけれど咲き残っている。ガマズミが白くて小さな花(散房花序)をたくさんつけている。その(ガマズミの)花言葉のひとつに「私を見て・私を無視しないで」というのがあるけれど、そう、私達夫婦は決して無視しないよ。 体力と平衡感覚がかなり劣ってきていると感ずる昨今だが、思ったほどの“怖さ”は感じなくて、慎重に歩けば問題のない山だと思った。特に不動岩や大天狗の岩場(クサリ場)など、難なく登れてほっとした。随所にある展望箇所からは360度の大パノラマも楽しめる。とにかく飽きない山だ。 * 嵩山の山稜からの眺望: 北面には白銀に輝く谷川連峰などの上信越国境の峰々が並ぶ。東面には赤城山、子持山、小野子山、十二ヶ岳など。南面の榛名山が近く、その右奥は浅間山方面だ。西面には妙義山、浅間隠山、草津白根山などと、それらの左手前に岩櫃山…。 十分に満足して、東登山道入口に下山したのは14時30分頃だった。タクシーを呼ぼうと思って道の駅「霊山たけやま」の受付で電話番号を尋ねたら、「かけてやるよ」と云われた。「電話代は…」と聞いたら「いらない!」とのこと。とても親切で感じのよいオネ―サンたち(スタッフ)だった。 予定していたよりも早い展開で…麓の親都(ちか)神社参拝をカットしたこともあり…中之条駅15時発の上りに乗車することができた。さてこれからは、この二つ先の小野上温泉駅で途中下車して、まったりと温泉入浴を楽しむとしよう。 * 嵩山について(補足説明): 群馬県中之条町のシンボル・嵩山(たけやま)は、“死者の霊が集まる神聖な山として古代から信仰を集めていた”という。戦国時代には城が築かれ、歴史に残る様々な戦のあった処でもある。この山に置かれた沢山の石仏は、その(戦の)犠牲者を供養するためのものでもあるらしい。[→関東百名山(山渓)の該当項、および中之条町のHP等を参考にして記述しました。] 嵩山の最高点は大天狗で、ここに三等三角点(点名:天狗山789.19m)の標石があり、女岩の岩上には石祠が祀られている。 (新)関東百名山に選ばれただけのことはあって…健脚組には少し物足りないかもしれないが…小粒の山椒的というかアドベンチャーパーク的というか、とても楽しい山だと思う。ただ、(東京からは)山を歩いている時間よりも電車に乗っている時間の方がずっと長くて、コスパ(コストパフォーマンス)とタイパ(タイムパフォーマンス)に若干の難があるかもしれない…。 小野上温泉「ハタの湯」: JR吾妻線の小野上(おのがみ)温泉駅から徒歩1分の距離に位置する、公共の近代的な日帰り温泉施設。とにかく、こんなに駅近な温泉施設も珍しい。泉質はナトリウム塩化物温泉(低張性高温泉)でpH9の弱アルカリ性。源泉温度は46.8℃。殆ど無色透明のヌルヌル感、所謂「美人の湯」。湯量も豊富らしく、いい風呂だった。最近(2021年4月)、「さちのゆ」を「ハタの湯」と改名してリニューアルオープンしたらしい。2時間までならば入館料は410円、というのが割安に思う。近くにグラウンドゴルフ場(ゲートボール場も?)があるのが、佐知子にとってはとても気になるらしい。 湯上りに、安くて量のある(つまりコスパの高い)ポテトフライをつまみに飲んだ生ビールが、美味いのなんのって…。 「ハタの湯」のホームページ 佐知子の歌日記より 今日のリュックやけに軽いとなか見れば昨夜作りし弁当が無い |