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八丈島・2泊3日の山旅日記(後編)
No.432 三原山(東山)と硫黄沼
海もいいけど山もいいぞぉ~

八丈富士の中腹から三原山を望む
八丈富士から三原山を望む(底土港~八丈島空港~八重根港)

八丈島の略図
第2日目(島内観光)
大島桜:バラ科サクラ属の落葉高木
オオシマザクラ

雨の公園を散歩する
八丈植物公園を再訪

バックは八丈富士
八形山のフリージア畑

第3日目(登山日)
ここが三原山の登山口
無線中継所前から出発!

よく整備された登山道
ツバキの落花

右側は八丈富士
八丈小島が見えた!

手前に三等三角点の標石
三原山の山頂

正面は八丈富士
駐車スペースへ下山!

レジャーシートを敷いて大休止
硫黄沼にて
七島菫:スミレ科の多年草
シチトウスミレ

青野熊竹蘭:ショウガ科ハナミョウガ属の常緑多年草
アオノクマタケラン

八丈苺:バラ科キイチゴ属の落葉低木
ハチジョウイチゴ

豊かで穏やかな自然を楽しむ

第1日目(3/28・晴)=羽田空港07:30…08:25八丈島空港…八丈富士登山【歩行時間:3時間20分】…八丈植物公園…三根
第2日目(3/29・雨)=三根…島内一周ドライブ観光など…中之郷・やすらぎの湯(立ち寄り入浴)・民宿
第3日目(3/30・曇)=中之郷-《車20分》-三原山登山口P~三原山701m往復…駐車場から硫黄沼を往復…島内観光…八丈島空港17:25…18:25東京・羽田空港 【歩行時間: 三原山往復=2時間 硫黄沼往復=1時間】
※島内の移動はレンタカー
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ

*** 前項「八丈富士(西山)」からの続きです ***


 右上の略図を見ても分かるとおり、八丈島は、北西部を占める八丈富士(西山854m)と南東部を占める三原山(東山701m)の二つの火山(現在は噴火警戒レベル1)から成り立っていて、「ひょうたん型」とか「マユの形」などの形容で知られている。ウィキペディアの該当項によると面積は69.11km²で、伊豆七島の中では伊豆大島に次いでの広さだというが、それでも佐渡島奄美大島の1割にも満たない。「八丈一周道路=八丈循環線(都道215号)」の総延長が約43kmとのことで、つまり1時間ほどで島内一周ドライブが可能だ。なこともあり、道が分からなくて行ったり来たりしても、それほどストレスにはならないのだ。

 佐知子の歌日記より
カーナビの装備は無しのレンタカー「さっきもこの道走ったよねぇ…」

●第2日目・令和4年(2022年)3月29日・火・雨
島内観光:
 三根のホテル(リードパークリゾート八丈島)で豪華な食事や高級なサービスを満喫し、朝の8時頃、まったりと出発する。…昨今の天気予報は口惜しいくらいによく当たる。やっぱりこの日は朝から本降りの雨だった。雨の多い(年間降水量は約3300mmで、一年の半分は雨の日の)八丈島なので、まぁ仕方がないかも。で、雨プロ(つまり島内の観光ドライブ)ということになった。
 島を一周したり、内地の林道などをあちこちと走ったり、主だった観光地を観光したり、レンタカーの軽自動車は(少し古いけれど)すこぶる快調だ。そういえば、この島を走っている車の殆どは軽自動車、だったな~。エコで、狭い道もスイスイで、とてもいい。とにかく小さな島なので、車のアクセルをちょっと吹かすと、あっという間に北の海岸から南の海岸へ出てしまう。
 八丈植物公園などは昨日に続いてこの日もじっくりと散策して、島の植物についてなど復習した。温室やビジターセンターやキョンの飼育小屋などもある、けっこう広い自然公園で、歩きがいもあって面白い。そしてなんといっても、入園は無料、というのが素晴らしい。
 もう一箇所、時間をかけて(傘を差して)観光したのは空港の北側に位置する八形山フリージア畑で、ちょうど「八丈島フリージアまつり」の開催中だった。靄に煙る八丈富士をバックに咲き競う満開のフリージアも、とてもきれいだった。こちらも入園は無料で、おまけに一人20本までなら持ち帰ることができる、というのも嬉しい。
 夕方になって島の南側(中之郷)に位置する「やすらぎの湯」に立ち寄って汗を流し、この日は近くの「民宿あしたば荘」に宿を取る。優しいご主人が切り盛りをされていて、島寿司などの郷土料理に舌鼓。地元の島焼酎が飲み放題、というのがスゴい。これで1泊2食付き一人7,300円(税込み)というのは超割安だ。焼酎のお湯割りが美味し過ぎるので…、宿酔いが心配だ。
 外部のサイトへ移動 八丈植物公園の公式ホームページ

中之郷温泉「やすらぎの湯」: 八丈島には温泉が多いけれど、意外だったのは(以前は確かあったけれど…)温泉宿がなくて何れも日帰り温泉施設、ということだった。樫立(南西部)に1軒「ふれあいの湯」、末吉(南東部)には2軒「みはらしの湯」と「洞輪沢温泉」、そして中之郷(最南部)には私達が立ち寄った「やすらぎの湯」の他に「裏見ヶ滝温泉」「ブルーポート・スパ・ザ・BOON」「足湯きらめき」がある。噂では、どれも庶民的な名湯であるらしい。
 私達が狙っていたのは、じつは絶景の露天風呂を有する「みはらしの湯」だったのだが、生憎とこの日(火曜日)は定休日だった。しかし「やすらぎの湯」も浴室から海の景色が見渡せた。八丈島の中では一番小さな温泉施設であるらしいが、木造の外見など、私達好みのシブさだ。泉質はナトリウム-塩化物温泉で無色透明のしょっぱい湯。やや熱めだったけれど、評判通り、なかなかいい湯だった。入浴料は@300円。
 外部のサイトへ移動 「やすらぎの湯」のホームページ


●第3日目・令和4年(2022年)3月30日・水・曇り
★三原山登山:
 宿(民宿あしたば荘)の7時からの朝食後、ゆっくりと支度してからレンタカーの軽自動車に乗り込む。曇ってはいるけれど、今日一日は雨の心配はないようだ。
 八丈一周道路を西へ進み、樫立の大坂トンネル手前を右折して防衛道路を進む。「防衛道路」とは物々しい名称だが、戦時中(1944年)に、敵の攻撃で八丈一周道路が寸断されたときのために…島の中央部を縦断できるようにするために…急ピッチで造成された軍用道路であったらしい。その謂れ因縁のある防衛道路を約10分走り、道標に従って分岐を右折して数分で、標高約430mに位置する割と広い駐車スペースに着く。ここがNTT無線中継所のある三原山の西側登山口になっている。振り返ると八丈富士や八丈小島が朝日を受けて明るく見えている。昨日の下見のお陰もあって快調な出だしだ。

* 三原山の(西側の)登山口について: 帰宅してからネットなどを閲覧していて分かったことですが、私達が駐車したスペースには、1~2年前まではNTTの建物が建っていたようです。現在は緊急ヘリポートとして利用されていると書いてあるサイトもあったりして、なんか、目がテンです。八丈島観光協会が発行しているウォーキングマップなどによると、(正しい)登山口の駐車スペースはもっと手前の…歩程で25分程度の距離の…防衛道路と鴨川林道の分岐近くにあったようです。現地には(登山口の駐車場に関しては)何の表示も説明板も注意書きもありませんでしたが、私達は結局誰にも迷惑をかけずに、結果オーライということだったのかもしれません。…何れにしても、判然としません。

 NTT無線中継所の立派な鉄塔の左脇から整備された登山道は続いている。その長い石階段を歩き始めたのは午前8時15分頃だった。
 45分ほども登ると気持ちのよい尾根道へ出たけれど、ここから先(山の上部)はガスに包まれてしまった。晴れていればカルデラなどの火山特有の山容や向かいの八丈富士や下界の展望などが楽しめた筈だが、それがチト残念だ。
 展望が期待できそうもないので、登山道沿いの樹木名などをひたすらメモする。
 『…スダジイ(黄八丈の黒色部の染料に)、タブノキ(黄八丈の樺色部の染料に)、ヤマグルマ、カクレミノ、ヤブツバキ(花)、ヒサカキ、(ハチジョウ)イヌツゲ、マルバグミ、モクレイシ、オオバヤシヤブシ、ガクアジサイ、ハチジョウキブシ…、林床の主は(ハチジョウ)スズタケやオオシマカンスゲやシダ類などで、シチトウスミレ、ツワブキ、アシタバ、シマテンナンショウ、など多彩。ウグイスの谷渡りがそんな薮の中から聞こえている…』
なお、黄八丈の黄色の染料はイネ科のコブナグサ(八丈刈安)が原料、とのことです。

 尾根道を15分ほども進むと開けた空間に出て、建物と鉄塔(電波塔)が立っている。建物の表札には「東京都防災行政無線・三原山中継所」と記されているが、NHKなどの各テレビ局も間借りしているようだ。そこから少し登ると、三等三角点(700.88m)のある三原山(東山)のこじんまりとした山頂だった。
 生憎とガスは晴れず、山頂の周囲は真っ白だ。試しに少し先(東側)へ下ってみると、そちらにも立派な鉄塔があって、車道が通っている。その道を進んで大池・小池を経由して下山するのも面白そうだが、今回の私達は車を利用しての登山だから、来た道を戻るしかなさそうだ。
 とうとう誰とも出会わずに、NTT無線中継所の駐車スペースに戻ったのは10時40分頃だった。さてこれから、まだ陽も高いし、車でぐるっと回って、三原山の南麓に位置する「唐滝・硫黄沼ハイキングコース」を散策してみよう。

★硫黄沼往復: 八丈一周道路へ戻ってから樫立の伊勢崎富次郎商店のある交差点を左折(北進)して、細い道を5分ほども上ると「唐滝・硫黄沼ハイキングコース」の小広い駐車場(標高約180m)に着く。今さっき三原山登山をしたばかりなので、そのままの支度で歩き始める。と、注意書きの立札が立っていて「硫黄沼より先(つまり唐滝見物)は一部崩落により通行禁止・山岳ガイド同行の場合に限り通行可能」と書いてある。なので仕方なく、私達は硫黄沼までを往復した。唐滝川沿いのなだらかで整備された小道を歩く、往復約3km、高低差約140mの軽ハイキングだ。
 道沿いの樹種などを(ここでも)メモりながら歩いた。『スダジイ、カクレミノ、ヤブツバキ(花)、ヒサカキ、モクレイシ、(オオ?)アリドオシ、ミヤマシキミ、オオシマザクラ(花)、ハチジョウキブシ、オオバヤシャブシ、オオバエゴノキ、ガクアジサイ、…』 と、ここまで書いてふと気がついた。そういえば、一昨日の八丈富士や先ほどまでいた三原山の西側にも、暖温帯ではおなじみのカシ類(アラカシ、シラカシ、アガガシなど)が…八丈島の何処を見回しても…自生していない。不思議な気がして少し考えた。…矢張り、タブやシイと比べるとカシは潮風に弱いのかもしれないなぁ…。
 足元のあちこちにはシチトウスミレなどが咲いていて目を楽しませてくれる。オオシマザクラよりも一回りも大きな白花は…上を向いて咲いているのはカジイチゴで、下向きなのはハチジョウイチゴだ。アオノクマタケランは赤い果実をつけて自己主張している。湿った枯葉の上をカタツムリが退屈そうに(超ゆっくりと)歩いている。ノキシノブ(?)が群生して道端の岩っぽい泥壁に垂れ下がっている。…昼下がりの、豊かで穏やかな自然の遊歩道だ。
 “硫黄成分が混ざっている為か青緑色に輝き、日によって色が違う溜池”とのことだが、この日の硫黄沼は地味な(灰色に濁って彩度の低い)緑青だった。沼の畔にレジャーシートを敷いて、菓子パンとサーモスの熱いコーヒーで昼食。水面には懐かしのアメンボがスーィスーィと泳ぎ、沼の奥には小さな滝も見えている。チョコレートパンを齧りながら「あの小さな滝のもう少し先に、もしかして唐滝があるのかしら」と妻の佐知子が話しかける。

 八丈富士と三原山のそれぞれの山域の樹種を比較してみると、八丈富士には無い(あるいは超少ない)スダジイが三原山には多いことなど、三原山の方が八丈富士よりも植生は豊かであるように感じた。三原山の方が古い火山だということが、土壌の発達に影響しているのかもしれない。

 硫黄沼を往復してからは、八丈中央道路沿いの「スーパーあさぬま」に立ち寄って、地元客に紛れてクサヤや島焼酎などの土産(殆ど自分達用だけれど)を買ったり、「フリージアまつり」を再度訪れて苗をもらってきたり、などして過ごした。
 レンタカーを返して、17時25分発のANA1896便(東京・羽田行き)を待つ間、空港のレストランで島焼酎のお湯割りを飲んだりして、甘露甘露の大団円。八丈島は海も勿論いいけれど、山旅もとてもよかったぞぉ~!

 佐知子の歌日記より
 坂の名は「長友ロード」わが軽(自動車)はアシスト無しにゴールを目指す
 三原山のゆるい階段登りつつスミレの写真あまた撮る夫



オオシマカンスゲなどの明るい山稜
三原山の山頂は近い!

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