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礼文島への山旅日記・その2
No.438 礼文岳(れぶんだけ・490m)
令和4年(2022年)7月21日 晴れ

礼文島の略図
礼文島の略図
内路のバス停前が登山口
礼文岳登山口

特に珍しくないキノコですが・・・
ベニテングタケ

舞鶴草:キジカクシ科スズラン亜科の多年草
マイヅルソウ(若い果実)

蔦漆:ウルシ科の落葉蔓性木本。雌雄異株。有毒植物。
ツタウルシ(核果)

前方はニセ山頂
ハイマツだ!

倒れかけていました
山頂のお地蔵様

海に浮かぶ利尻山
利尻山へ向かって下山開始!

間もなく内路に下山
内路港は近い!
翌朝に撮影
ペンションう〜に〜


海抜0mの海岸線から往復登山

第1日目(7月19日): 成田空港…新千歳…札幌
第2日目(7月20日): 札幌…稚内…礼文島・香深

第3日目(7月21日): 香深…桃岩展望台コース…知床-《バス8分》-フェリーターミナル-《バス21分》-内路〜礼文岳490m〜内路-《バス21分》-フェリーターミナル・うすゆきの湯(入浴)・ペンションう〜に〜 【歩行時間: 桃岩展望台コース=約2時間 礼文岳登山=約4時間】
第4日目(7月22日): 香深…スコトン岬コース…船泊…香深
第5日目(7月23日): 香深…稚内…札幌…成田空港…

 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(礼文岳)へ


*** 前項「桃岩展望台コース」からの続きです ***

 桃岩展望台コースを歩き終えて、礼文島の南端に位置する知床から10時26分発のバスに乗る。と10時34分には香深港のフェリーターミナルに着く。暫く待って、10時40分発スコトン岬行きのバスに乗り換える。礼文島の路線バスは本数は少ないが、時間が正確なので安心だ。
 フェリーターミナルからは乗客の少ないバスで21分、礼文岳の登山口のある内路(ないろ)に着く。降車したのは私達の他にもう一組の(私達と同年代の)ご夫婦だけだ。桃岩コースで身体と心の準備ができている私達はそのまますぐに歩きだしたが、いきなりの急登でヒーヒー云っているうちに…まぁいつものことだが…あっさりとそのご夫婦に追い抜かされた。標高490mとはいえ、殆ど海抜0mからなので油断はできない。
 やがて傾斜は緩やかになって、気温は摂氏20度前後だろうか、自然林の中を涼しく進む。礼文島にはクマやシカなどの大型哺乳類やヘビやトカゲなどの爬虫類は棲息していないらしく、なんか、安心だ。
 林床の主はササで、葉裏に毛があるのがクマイザサで、毛が無いのがチシマザサ(ネマガリダケ)だ。初めのうちはシナノキ、ナナカマド、エゾイタヤ(イタヤカエデの亜種)なども少し交じるけれど、この山域の主役は矢張りトドマツとダケカンバであるようだ。不思議に思ったのは、この礼文島では(アカ)エゾマツを見かけないことだ。北海道本島はもちろん、利尻島にも確か自生していたと記憶しているけれど、その理由は…浅識な私には分からない。また、亜高木層と低木層が十分に発達していないような印象を受けたが、その理由も私は知らない。ツルアジサイがきれいに咲いている。足元では何故かベニテングタケがひとつ、美しく屹立している。…おっと危ない、ツタウルシも多そうだ。* ツタウルシは三出複葉だから分かりやすいですが…。
 トドマツとダケカンバの其々の美しい純林を交互に通過する。咲いている花は少なくて、明るい処で咲いているヨツバヒヨドリ、オトギリソウ、ヤマハハコなどが目立つくらいだ。林床のあちこちに(ササの他には)マイヅルソウやゴゼンタチバナなどの群生があるけれど、その花期(6月頃かな)はさぞかし素敵だと思う。…ウグイスの谷渡りが森にこだまする。…樹高が何時の間にか低くなっている…。
 益々なだらかになってきて空が開けてきた。何時の間にか(もう)森林限界を超えたらしい。ハイマツ、タカネナナカマド、ガンコウラン、(潅木化した)ダケカンバなど…標高は未だ350mを越すか越さないかくらいだけれど…いわゆる高山帯の様相だ。ガイドブックによると“日本一低いハイマツ帯”とのことだ。展望は益々広がる。す、すごい!
 前岳(通称:ニセ山頂410m)を過ぎると間もなく、一等三角点(489.75m)のある礼文岳の山頂だった。噂に違わぬ、1点360度の素晴らしい展望だ。北面には明日のトレッキングに予定しているスコトン岬方面の山並み。南面には午前中に歩いた桃岩コース方面の山並みが広がり、その左奥には海を隔てて金字塔(利尻山)が雲に浮かんでいる。…空気がもっと澄んでいればサハリンも望めるというが…。
 礼文島で一番高い処(礼文岳の山頂)からぐるっと島を見回してみて感じたのは、何処も彼処もなだらかな山稜だな、ということだった。それはまるで…大昔に学校で習った地形輪廻の最終段階…準平原とでも形容したくなるような、そんな地形にも見えて興味深い。然してその景観は私達の眼を和ませて、心も充分に癒してくれた。

* 海成段丘と周氷河地形: 今回の礼文島の山旅で座右の書としたのが北海道新聞社から出版されているガイドブック「礼文・花の島を歩く(杣田美野里氏・宮本誠一郎氏)」で、花の同定などに大変役に立ちました。その冒頭部分に礼文島のなだらかな地形についての解説があり、その要因として海成段丘(海岸段丘)と周氷河地形をあげています。そのうちの周氷河地形の部分を箇条書きに要約してみました。
 ・(礼文島の)なだらかな斜面は「周氷河性平滑斜面」と呼ばれる。
 ・最終氷期(約7万年前から1万年前)に穏やかに浸食が進んだ。
 ・寒期と暖期に土壌が凍結・溶解をゆるやかに繰り返すことで、なだらかな斜面が形成された。


礼文岳山頂から360度展望の動画: Youtubeに投稿してみました。北面のスコトン岬方面から時計回りにぐるっと一周。利尻山もよく映っています。…風の雑音が耳障りで、超へたくそな動画ですが、ご勘弁を。

 展望を楽しんだりメロンパンを食べたりポテトチップやチョコバーを齧ったりして、30分近くを礼文岳山頂で過ごし、13時35分、踵を返して来た道を下る。
 路線バスの時間を鑑みながら、休み休みゆっくり歩いて、それでも内路のバス停に下山したのは15時35分だった。16時29分発のフェリーターミナル行きのバスを待つ間、閑散とした駐車場奥のベンチに腰掛けて、自動販売機のジュースを飲んだり、少し歩いて海(小さな漁港)を見たりして静かに過ごした。
 その路線バスには、高校生たちがたくさん(といっても約10名程)乗っていて、コロナ下ということもあって割と静かだったけれど、それなりに活気のある車内だった。定期券を見せる生徒たちと運転手さんとのやりとりを見ていても、なんかほんわかとした雰囲気で、ここでも心が和んだ。行儀のよい生徒たちは三々五々、一駅ごとに下車していき、終点の香深フェリーターミナルで降りたのは私達夫婦だけだった。礼文島の(本数の超少ない)路線バスは、あぁそうか、通学バスでもあったのだ。

  佐知子の歌日記より
 ゆるやかな一本道の礼文岳 夫の植物講義始まる

礼文島温泉「うすゆきの湯」: 香深港・フェリーターミナルの近くに位置する、礼文町の日帰り温泉施設。私達夫婦は香深の丘の中腹に建つ「ペンションう〜に〜」に2連泊したのだが、夕方の宿の送迎で、昨日もこの日も「うすゆきの湯」を楽しむことができた。昨今ではよくある近代的な日帰り温泉施設の平均的なレベルで、泉質はナトリウム・塩化物・硫酸塩泉(アルカリ性低張性高温泉)、無色透明無臭、微かに塩味、ヌルヌル感。湯温を違えた二つの内湯や利尻富士を眺めることのできる露天など、充分すぎるほどの及第点だ。…まるで、ここがそんなに遠くの地であることを忘れさせてくれる…そんな感じだったかも…。
* 海底の隆起によりできた礼文島は火山島である利尻島と異なり温泉はないとされてきましたが、2008年(平成20年)に湯脈を掘り当てることに成功したそうです。源泉は地下1300mから湧き出ているといいます。[ウィキペディアの該当項を要約]
 外部のサイトへ移動 「うすゆきの湯」のホームページ

次項「岬めぐりコース」へ続く



バックは礼文岳の南面
礼文岳の山頂・バックは利尻島

礼文岳中腹の美しい純林
椴松:マツ科モミ属の常緑針葉高木
トドマツ林
岳樺:カバノキ科の落葉広葉高木
ダケカンバ林
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