礼文島への山旅日記・その3 No.439 岬めぐりコース(ゴロタ山) 令和4年(2022年)7月22日 |
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第2日目(7月20日): 札幌…稚内…礼文島・香深 第3日目(7月21日): …桃岩展望台コース…礼文岳登山… 第4日目(7月22日): 香深・フェリーターミナル-《バス56分》-スコトン岬〜トド島展望台〜ゴロタ山180m〜(ゴロタノ浜)〜鉄府〜西上泊神社〜レブンアツモリソウ群生地〜浜中〜久種湖半周〜船泊・病院前-《バス44分》-フェリーターミナル・ホテル礼文 【歩行時間: 約5時間】 第5日目(7月23日): 香深港08:55-《フェリー》-10:50稚内港11:30-《高速バス》-17:20札幌-《電車38分》-新千歳空港20:15-《LCC》-21:55成田空港… → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(ゴロタ山)へ *** 前項「礼文岳」からの続きです *** 宿「ペンションう〜に〜」の7時からの朝食を急いで食べてから、送迎車で香深港のバス停(フェリーターミナル)まで送ってもらう。至れり尽くせりの宿のサービスに感謝感激だ。おかげで、7時45分発の路線バスに楽々と間に合った。1泊分の2食付きの宿泊料・一人13,750円(税込み)は納得できる料金だと思った。 私達夫婦が乗ったこのスコトン岬行きのバスは、じつは昨日の礼文岳登山で利用したのと同じ路線だ。なので途中から高校生たちが次から次へと乗ってくる。昨夕は下校時の利用だが、今朝は登校だ。何となく見覚えのある顔もあって、思わず頬も緩む。 「昨日はこのバス停で男女二人の生徒が降りたけど、いま乗車してきたのは男子一人だけだわ。あの女の子はどうしたのかしら。体の具合でも悪くしたのかしら…」 といらぬ心配をしている佐知子だった。 もはや懐かしの(礼文岳登山口のある)内路を通り過ぎ、その次のバス停(高校前)で生徒たちは降りていった。ここに日本で最も北にある高等学校(北海道礼文高等学校)があるらしい。 途端にガラ〜ンとしたバスはさらに北上して、休止中の礼文空港の脇を通り抜けて金田ノ岬をぐるっと回り込む。移りゆく海岸の景色や森閑とした集落の佇まいなどに情緒があって、この路線バスは殆ど観光バスだ。 終点のスコトン岬バス停に降りたのは定刻の8時41分。まず誰もいない駐車場や売店の脇を通り抜けて遊歩道の階段を下り、礼文島の最北端にある展望所へ行ってみる。海驢島(トド島)などの小さな無人島が近くに見えているけれど、そのもっと遠くは靄っていて、流石にサハリンは見えない。 * 海驢島(とどじま): かつてトド猟が行われていた島の一つ。1990年代にはゴマフアザラシの回遊が確認され、現在はその群れが一年中見られるという。この日は残念ながら見ることはできなかったが…。[ウィキペディアの該当項を参照して記述] 9時の少し前、踵を返して(南へ向かって)、バスの来た道を歩き始める。いよいよ(スコトン岬から浜中までは)12.4kmあるという岬めぐりコースの始まりだ。何処を見回しても緑の草原と低い山稜と青い水平線の穏やかな景色で、空がとても大きく感ずる。 間もなく道標に従って右折して江戸屋山道へ入り、左手の「水難諸霊之塔」や右手の簡素な「須古頓神社」を通過して間もなく、鮑古丹(あわびこたん)方面へ下る道(=浜へ出る道)を右に分ける。左右の草原には例のタカネナデシコ(エゾカワラナデシコ)やトウゲブキ(エゾタカラコウ)などがきれいに咲いている。 道路脇の岩っぽい処にレブンイワレンゲを発見。その葉姿が蓮華とかバラの花のように見えてきれいだ。キリンソウの芽生えの様子にも似ているが、同じベンケイソウ科なのでさもありなんと思う。…大フラワーショーは既に始まっている。 なだらかな坂道を歩いていると、前方(トド展望台方面)から20人ほどの観光客が、ガイドさんから花などの説明を聞きながら歩いてくる。数百メートルの舗装路を歩く人気の島内観光バスツアーであるらしい。慌ててマスクをつけて、挨拶してすれ違う。 東岸の眺めが特に良いトド展望台から500mほども進むと舗装道路が終わり、いよいよ本格的なトレッキングコースだ。 * 銭屋五兵衛: 江戸時代後期の加賀の商人・海運業者。江戸屋山道には眺めの良いトド展望台があり、その一角には「銭屋五兵衛貿易の地」と書かれた記念碑が立っている。その解説板によると、五兵衛はロシアとの密貿易のためにこの地を訪れていたという。なお、“江戸屋”というのは銭屋の屋号であるらしい。 ゴロタ山180m(ゴロタ岬)を経由して、四方に岬を眺めながら、ゆるやかに上り下りする大草原のトレイルはまったく素晴らしいものだった。海食崖がつくりだす西海岸の眺望やエメラルドグリーン(礼文グリーンというそうだ)の透き通った海もファンタスティックだけれど、何といっても咲いている草本の数や種類の多さにはただため息だ。 …エゾカワラナデシコやトウゲブキの他には、チシマワレモコウ、ツリガネニンジン、エゾイブキトラノオ、キタノコギリソウ、エゾノコギリソウ、ミソガワソウ、エゾカンゾウ(=ニッコウキスゲ=ゼンテイカ)、シオガマギク、ヒロハクサフジ(カラフトゲンゲ?)、レブンソウ、チシマフウロ、チシマアザミ、エゾウメバチソウ、エゾオグルマ、など、どれもこれもとにかく美しい。エゾノシシウド、シャク、エゾニュウ、エゾノヨロイグサなどのセリ科の白花たちも相変わらず目立っている。…実際、「花の浮島」とはよくぞ言ったものだ。 ゴロタノ浜に下って海際を南進して、ここも静かで人影の無い…軒先の地面に昆布の干してある…そしてハマヒルガオの咲く…鉄府(てっぷ)漁港の小さな集落を通過する。それから山越えの(稲穂岬と澄海岬をショートカットする)山道へ進み、登り切った処(標高約100m)で大休止。今日の昼食もポテトチップとポッキーだ。昨日の「桃岩展望台コース」でも感じたことだが、スコトン岬・ゴロタ岬・稲穂岬・澄海(すかい)岬と4つの岬を巡るこの「岬めぐりコース」も、何処を如何切り取っても絵になる、そんなロケーションが連続する。実際スキのない名トレイルだ。 本コース最後の岬・澄海岬を横切って、西上泊(にしうえどまり)神社の赤い鳥居を潜って舗装道にドスンと降りて、左へVターンして浜中(はまなか)へ向かう。途中、国の管理するレブンアツモリソウの群生地があったが、もう既にその花期は終わっていて、ロープが張られた園地には誰もいなかった。あとで知ったのだが、レブンアツモリソウ群生地の開園期間は例年5月中旬から6月中旬までとのことだった。 閑散とした浜中のバス停に着いたのは13時50分頃で、ここまでの正味の歩行時間は4時間半ほどだったけれど、私にはあっという間に感じた。ところが、浜中からのバスの午後便は18時07分発の1便だけなので、私達はさらに30分ほど歩いて船泊(ふなどまり)まで行くことになる。そして久種湖(くしゅこ)の湖岸を半周したりして時間をつぶしたけれど、それでもかなりの時間が余ってしまった。 なので、船泊の街で見つけた粋な喫茶店「談」で、佐知子は挽きたての美味しいコーヒーを、私はビールを飲んだりしてから、船泊病院前16時06分始発の香深・フェリーターミナル行きのバスに乗った。手を上げればどこでも止まってくれるこの路線バスは…、昨日の礼文岳登山で帰路に利用したバスと同便で、二日続けて(延べ3回)殆ど同じ顔ぶれの高校生たちと同乗することになった。…もう、この高校生たちは、ほとんど私達の孫のような存在に、今や思えた。 この日のバス移動では一人2,000円の「1DAYフリー乗車券」を利用したのだが、多少はトクになったと思う。 * 礼文島の外来種について: 昨日も本日も、特に里道を歩いていると外来種(帰化植物)をけっこう見かける。アカツメクサ(ムラサキツメクサ)、フランスギク(マーガレット?)、ブタナ、コウリンタンポポ、カラフトホソバハコベなどのきれいな花が多くて、思わず見入ってしまう…。北海道新聞社から出版されている「礼文・花の島を歩く(杣田美野里氏・宮本誠一郎氏)」の記述によると、礼文島の植物総数は737種で、そのうち外来種は145種が確認されているとのことだ。利尻島もそうであるらしいが、地元では必死になって駆除をしているようだ。この国の特産種を保護する重要性と必要性からも、それ(外来種の駆除)はすべきだろうと思う。地元のボランティアなどの活動家には頭の下がる思いだ。 礼文島温泉「ホテル礼文」: 礼文島で最後の一泊を過ごしたのは、香深港のフェリーターミナルにほど近い「ホテル礼文」だった。港や海越しの利尻富士がよく見える部屋で、最上階(7F)の展望大浴場と露天風呂もなかなかよかった。同じ源泉から引いているので泉質は「うすゆきの湯(→前項「礼文岳」)」と同じアルカリ性低張性高温泉、無色透明無臭、微かに塩味、ヌルヌル感。現地の食材を利用した料理は洗練されていて美味しくて、生うにも少し食べることができた。 前日まで2連泊した「ペンション〜うーに〜」と比べると2倍以上の宿泊料金で、1泊2食付一人27,650円(税込み)。もちろん、洗練されたサービスや対応には全く問題はなく、快適な一夜を過ごすことはできたが…。矢張り割高に感じた。 「ホテル礼文」のホームページ ●第5日目(7/23曇) 礼文島…札幌…東京 宿泊したホテル礼文の隣りが香深港、みたいなものだから、朝は安心だ。8時55分発のフェリーに乗って稚内港へ着岸したのは10時50分。稚内のフェリー乗り場前から出ている11時30分発の高速バスで約6時間、17時20分頃に札幌の駅前に着く。札幌駅からはJR快速エアポートで新千歳空港へ行き、お土産(定番の「白い恋人」)を買って、20時15分、機上(LCC・ピーチ)の人となる。ふぅ〜、過密スケジュールだ。 成田空港から電車で東京都大田区の自宅まで、ここもひたすら家路を辿ったのだが、帰宅する寸前で日付が変わって7月24日の日曜日になった。なので、今回の私達の礼文島への山旅は4泊6日、ということになる。厳密に云えば、だけれど。 佐知子の歌日記より スコトンの海の彼方はサハリンか ゆらりゆらりとロシアの影に |