No.441 人形山(にんぎょうざん・1726m) 令和4年(2022年)8月29日(月) |
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登山前日(8/28)=東京…五箇山の合掌造り集落を観光…五箇山温泉「五箇山荘」 登山日(8/29・月)=五箇山荘−《車25分》−中根平登山口830m〜第一休憩所〜第二休憩所〜宮屋敷跡〜梯子坂乗越(三ヶ辻山分岐)〜人形山1726m(往復)…中根平登山口−《車25分》−五箇山荘… 【歩行時間: 7時間】 登山翌日(8/30)=五箇山荘…白川郷の合掌造り集落を観光…谷汲山華厳寺・料理旅館「立花屋」… → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 人形山(にんぎょうざん・ひとがたやま)は、岩崎元郎さんの「新日本百名山」で知った山だ。世界遺産(文化遺産)に登録された合掌造り集落の、五箇山(富山県南砺市)と白川郷(岐阜県白川村)に挟まれた、由緒と情緒のある処に位置しているようだ。奈良時代の始めに泰澄大師が開山したという。 山名の由来は春先の山腹に残る雪形で、二つの人形(ひとがた)が手をつないでいるように見えるという。それは幼い姉妹の姿で、母親の病気回復を願って白山権現に参った帰りに遭難した、という悲しい伝説に因むものでもあるらしい。確かに、観光用の写真などを見るとそんな風に見えなくもない。 何れにしても面白そうな山で、私達夫婦は前々からずぅ〜っと人形山登山を狙っていた。東京の自宅からはチト遠いのが玉に瑕だけれど…。 * 人形山の山名由来について、「山名事典(三省堂)」の該当項によると “左甚五郎が木の人形をつくり、それに入魂して山地を開拓させた後、ここに埋葬した” という説が有力のようです…。 ●登山前日(8/28・晴) 東京⇒五箇山 朝の6時半に家を出て、久しぶりにマイカーのハンドルを握る。助手席にはナビ役の佐知子が座っているが、結局は古いカーナビの言いなりになって運転することになる。 中央道から長野道へ進み松本ICで降りて、上高地へ向かう懐かしの道(国道158号)を通り、釜トンネルの手前で左折して安房峠を安房トンネルで抜け、直進して富山市街方面(国道471号→41号)へ進む。後で分かったことだが、安房トンネルを抜けてからは左折して国道158号を進み、飛騨高山経由で高山清美道路→東海北陸道を利用するルートの方が大分早かったようだ。最新の道路情報を知らない古いカーナビだから、遠回り(富山市内経由)を指示していたのだ。…そういえばこの車、もう15年間は乗っているなぁ…。 まぁでも、遠回りしたおかげで、飛騨市神岡町の「ひだ宇宙科学館・カミオカラボ」に立ち寄ることができた。あのスーパーカミオカンデ(世界最大の地下ニュートリノ観測装置)の一部を…模型だが…見学することができたのが少し嬉しい。 東海北陸道の五箇山ICから国道156号を東へ進み、五箇山(ごかやま)の二ヶ所の世界遺産(菅沼と相倉の合掌造り集落)をまったりと観光してから、五箇山荘にチェックインしたのは16時頃だった。 佐知子の歌日記より ナビのわれ左折を見落とし沈黙の飛騨路は雲におおわれにけり 五箇山の合掌造りの集落は昔話の絵本のごとし ●登山日(8/29・晴) 五箇山荘⇔人形山登山 7時15分からの宿の朝食を摂ってから、マイカーを走らせてダートな林道を20分強、東屋もある広い駐車場に車を停める。先着の車は1台のみで閑散としている。ここ(中根平登山口)は標高約830mで、朝の空気が涼しい。支度して、人形堂(ひとかたどう)の祠の脇から登り始めたのは8時15分頃、暫くはスギ林が続く。粘土質の山道は思ったよりもなだらかで、よく整備されている。 フユイチゴの甘酸っぱい実を摘んで口に入れながら、正味1時間ほども登ると、木製ベンチのある小さく開けたコブに着く。ここが四等三角点(点名:奥山上)1208.78mのある第一休憩所で、スギ植林地の終わるところでもある。中休止の後、歩き出すと辺りは待望のブナ林だ。 この第一休憩所から第二休憩所1390mを通過して展望の開ける宮屋敷跡1590mまではアップダウンのある正味90分くらいの歩程で、気持ちのよい自然林だ。思わず(時間管理を忘れて)樹種などをメモしまくる私だった。 * 第二休憩所周辺で観察のできた植物: ブナ(多い)、オオカメノキ(赤い実)、ノリウツギ(花)、サラサドウダン(多い)、ナナカマド、ヤマウルシ、コシアブラ、マルバマンサク、(コ?)ハウチワカエデ、リョウブ、タムシバ、ミズナラ(少ない)、ゴゼンタチバナ(赤い実)、チシマザサ、(エゾ?)リンドウ(花)、キンミズヒキ(花)、マルバフユイチゴ(実)、ミヤマコゴメグサ(花)、サワオトギリ(花)、(ミヤマ?)アキノキリンソウ(花)、など 木鳥居の立つ宮屋敷跡(御神体は上梨の白山社に移築とのこと)は開けた高台に位置していて、これから歩く人形山までの山稜などがよく展望できる。その人形山がまだまだ遠くに見えたので、もうここで引き返してもいいかも、と思ったくらいの好ロケーションだ。足元を見ると、群生しているミヤマコゴメグサが小さく可憐に咲いている。…気合を入れて先へ進む。 アップダウンを何回か繰り返すうちに、周囲の樹高がさらに低くなってくる。ダケカンバの老木が芸術的な姿で行く手を塞いでいる箇所や、グチュグチュにぬかるんでいる箇所を進む。辺りの植生に目をやると、ミネカエデとか潅木化したクロベやヒメコマツも交っているようだ。しかし、それを確認している余裕はない。 最後の鞍部からはけっこう長い(ササやススキなどの)藪漕ぎの急登で、常日頃の鍛錬不足の私は早くもバテ始める。でも、エゾリンドウやアザミや(ミヤマ?)アキノキリンソウやツリガネニンジン(ヒメシャジン?)などの花たちや、オオカメノキやゴゼンタチバナの赤い実が、私達を応援してくれている。 梯子坂乗越(三ヶ辻山分岐)でようやく開けた稜線へ出る。ここから人形山山頂までの展望の稜線歩きが、雲上のプロムナードといった感じで、この山の真骨頂だと思った。少しモヤっていたけれど近隣の山々がよく見えていて、道の両脇にはミヤマナラ、アカミノイヌツゲ、ホツツジ、そしてこの山の名物だというキャラボク(イチイの変種)、などの低木が控え目に生い茂り、私たちの目を楽しませてくれる。足元を見ると、ツバメオモトの瑠璃色の液果が不気味なほどに美しい。 楽しく歩いていたら、何時の間にか方位盤の置かれた人形山の山頂だった。でもそこは狭くてちょっと貧弱なので、少し先(南西側)の眺めの良い小広場で大休止にする。…靄のかかった山並みを睨みながら、多分あれが白山で、あっちの三ヶ辻山の奥の辺りが北アルプス〜乗鞍〜御嶽の方面だよ、と指呼しながら(心眼と心願も駆使した)展望を楽しんだ。コンビニのアンパンとペットボトルの麦茶が旨い。 12時55分、人形山の山頂部を辞して来た道を下る。 人形山の山頂からの展望動画(YouTube) 人形山は、思っていたよりも距離があってアップダウンもあったので、私達はかなり疲れてしまった。下山中に佐知子が何回も転んだが…私はよく転ぶけれど…それは本当に珍しいことだった。この山の登山道には危険箇所が少ないのが幸いして、まぁ大事には至らなかったのは何よりだが…。 そんなこんなで、予定時間の下山が難しくなってきた。ようやくスマホの通じた第一休憩所で宿(五箇山荘)に連絡を取ることができてほっとした。 慎重に歩き、ガラ〜ンとした中根平登山口の駐車場に戻ったのは日没の少し前の17時30分。この日の山中で出会ったのは山頂手前ですれ違った若い男性ハイカーの一人だけで、私達にとっての人形山は深くて静かな山だった。…山名のやさしい響きもあって(その難易度に関して)ちょっと甘く見ていたかもしれない。何れにしても、宿の夕食時間には何とか間に合いそうで、よかったヨカッタ。 佐知子の歌日記より 人形山四回転んだ下山時にどうしたんだと我が足に問う 五箇山温泉「国民宿舎・五箇山荘」: 世界遺産の菅沼集落と相倉集落の中間地点…庄川の流れる谷を南へ少し上った山腹…閑静な田向の集落に建つロケーションに優れた温泉宿。人形山の中根平登山口にも近くて、登山者が観光を兼ねて利用するにはうってつけの位置にある。泉質はアルカリ性単純泉、無色透明無味無臭、加熱、半循環で、特に特徴は無い。内湯も露天も広くてゆったりできるのはとても良い。料理の質も量も全く問題はなく、とても美味しかった。私達にとっては特に、初めて食した五箇豆腐の、大豆の旨味がぎゅっと詰まった食感が印象に残った。 私達はこの五箇山荘に2連泊したのだが、その洗練されたサービスや部屋からの景色など、総合的にはいい宿だと思った。1泊分の2食付きは一人13,870円(税込み)で、まぁ、有名な観光地であることを考慮すると妥当な料金だと思う。この時期(コロナ下)のこととて、富山県南砺市(なんとし)の観光クーポン券が計8,000円分(1名1泊につき2,000円分)もらえたのが、期待をしていなかったこともあり、とても嬉しかった。 「五箇山荘」のホームページ ●登山後(8/30〜31・曇雨) 五箇山⇒白川郷⇒華厳寺… 人形山登山の翌日は小雨のちらつく移動日で、世界遺産の白川郷をまったりと観光してから、この日の宿・谷汲山華厳寺の門前に位置する「料理旅館・立花屋」にチェックイン。この宿の鮎料理などがとても美味しくて、1泊2食付き一人9,900円(税込み)はかなり割安に感じた。 天気予報によると明日(8/31)はもっとひどい雨降りの一日になりそうで、予定していた能郷白山登山を潔く断念する。残念だが、また来ればいい。山は(多分)逃げない…。 はたして東京への帰路、東名高速道の岡崎付近では、バケツをひっくり返したような大雨(ゲリラ豪雨)に遭遇した。線状降水帯に入っていたようだ。 佐知子の歌日記より 白川郷三階建ての二階にはお蚕さまの住む合掌の家 夕食に鮎の刺身をいただきぬ澄んだ目をした光る皮目(かわめ)の 屋根やドアを叩きつけたる大雨に前が見えない東名高速 |