愛知県・2日間の山旅日記・その2 No.445 石巻山(いしまきさん) 令和4年(2022年)11月22日(火) |
||
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 弓張山地(ゆみはりさんち)という優雅で風情のある山域名がある。浜名湖の北側から西側に弓状に連なる低山群のことで、田中澄江さんの「花の百名山」や「新・花の百名山」で知った山域だ。ウィキペディアの該当項によると、愛知県豊橋市・新城市と静岡県湖西市・浜松市北区にまたがる山地、とのことで、弓張山脈、弓張山系、八名(やな)弓張山地などの別名もあるようだ。また、弓張山地に付随する(和集合としての)山域名には湖西連峰、湖北連峰、奥浜名丘陵、引佐山地、引佐丘陵、奥三河、…など、これも多種多様に存在する。…つまり、この地の山域の名称は統一されていない感が強い。 「日本百低山(小林泰彦著)」で知った豊橋市の石巻山(いしまきさん・358m)は、そんな弓張山地の南部(湖西連峰)から西へ派生する山稜に位置する。石巻神社を擁する…前日に登った鳳来寺山とも似ている…修験道の山でもある。 そして結論を先に書いてしまうと、この石巻山は、少し歩き足りない気もしたが、見どころがコンパクトにまとまった、ハイキングによい山だと思った。 湯谷温泉「旅館ひさご」の、8時からの朝食を少し早めてもらったこともあり、湯谷温泉駅発8時27分のJR飯田線上り列車にはなんとか間に合った。終点の豊橋駅には定時の9時33分に着いて、豊橋駅前からは30分に1便程度の、9時40分発の豊鉄バス(豊橋和田辻線)に乗る。途中の豊橋創造大学正門バス停で数名の学生たちが降りると、バスの車内は私達夫婦だけになった。 バスに乗車して約20分、人家と田畑が混在する景色になってきたな、と思っていたら間もなく、石巻登山口バス停に着いた。歩いている人は誰もいなくて、静かな郊外の街角、といった風だ。指導標が(見落としたものか)なかったので、プリントした国土地理院の地形図(25000図)に予めバス停の位置を書きこんでおいたものが役に立った。コンパスとその地図を駆使して、バスが来た道を少し戻って神田川を渡って…、行くべき方向(東)へ進む。里道でも地形図は大変役に立つのだ。…と、何気にスマホの地図アプリの活用を無視する私だった。それは、殆ど老ハイカーの意地だけれど…。 豊橋市石巻町間場の静かなアスファルトの里道を暫く歩き、「石巻山自然歩道」の道標に導かれて整備された幅広い山道(つまり遊歩道)へ入る。相変わらず、いまだに、人影を見ない。人工林(ヒノキ林)と照葉樹林(スダジイ、イヌツゲ、アオキなど)が入り交ざる、いいムードの遊歩道だ。里が近いこともあり自然分布ではないと思われるが、3本の長い針葉が束生する立派なテーダマツや赤い実をつけたセンリョウなども目立っている。(石灰岩が大好きな)カタツムリが道の真ん中をのんびりと歩いている。ヤマウルシの紅葉が美しい。…やがて高井主膳正自刃の地を通り過ぎ、石巻山展望台駐車場から続く舗装道と合流する。 石鳥居を潜って石階段を登り、山上社(石巻神社の上の宮)に参拝。それから少し戻って石巻山の山頂へ進む。神社の近くにある「豊橋市石巻自然科学資料館」も「石巻山城址」も…、何処も彼処もしーんとしていて、誰もいない。 アラカシ、タブノキ、ヤブツバキ、カゴノキ、ヤブニッケイ(上部に多い)、アオキ、コクサギ、そして様々なコケやシダ類など、けっこういい感じの(照葉樹主体の)自然林だ。この周辺は国の天然記念物「石巻山石灰岩地植物群落」に指定されて(保護されて)いるそうで、自然度の高さにガッテンする。珍しい植物も多いそうだが、ちょっと見ではよく分からない。 「石巻の蛇穴」とか「ダイダラボッチの足跡」とか「大天狗・小天狗」などの謂れ因縁のある怪しい箇所を過ぎると、石灰岩の岩場が更に多くなる。その岩峰を左側からぐるっと巻いて、鎖や金属階段を登る。と、そこが神坐といわれる石巻山の狭い山頂で、展望が大きく広がった。 岩ゴロの山頂でコンビニのアンパンなどを食べながら、近くの坊ヶ峰などの弓張山地の峰々や、豊橋〜豊川の街並み、三河湾(渥美湾)などの展望を楽しんでいると、中年の(地元の方と思われる)一人の男性が登ってきた。聞きもしないのにその中年男性は「今日は(駐車場から)34分で登ってきた」 と云っている。「よく登られるのですか」 と尋ねたら 「もうほとんど毎日、何百回も登っている」 とのことだった。本山行で出会ったハイカーは少なかったが、この中年男性も含め、みんな軽装だ。本格的な登山姿の私達は少し浮いている感じだったかもしれない。…何気に、少し下った処に季節外れのハナニガナが咲いている。 踵を返して来た道を下る。今回のこのコース(間場コース)はその殆どが緩傾斜なので、膝にやさしくて、下りは特に楽だ。途中、石巻山展望台に立ち寄ってトイレに行ったり自販機でジュースを買ったりして時間を費やしたけれど、それでも13時40分頃には石巻山登山口バス停に着いてしまった。 何時かもう一度、この山域を歩く機会があったなら、老体にはちょっときつそうだけれど、この石巻山自然歩道を含む豊橋自然歩道を(通しで)歩いてみたいと思った。そして、田中澄江さんも絶賛した…東海のミニ尾瀬とも云われる…葦毛(いもう)湿原にも是非立ち寄ってみたいものだ。 湯谷温泉「旅館ひさご」: 前項「鳳来寺山」を参照してみてください。 佐知子の歌日記より 半島や渥美湾を抱え込む豊橋を見たり石巻山より テーブルの手鏡に向く女子高生 新幹線にて化粧の二時間 |