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愛知県・2日間の山旅日記・その1
No.444 鳳来寺山684m
令和4年(2022年)10月21日(月) 晴れ

鳳来寺山の略図
1425段あるという鳳来寺の石階段
参道の石階段が始まる

国の重要文化財
仁王門

樹高約60m
傘杉

展望はイマイチ
鳳来寺山の山頂

岩上に立つ
瑠璃山の山頂部
↑左奥は宇連山

瑠璃山の岩場を下る
下山開始!

白文字:クスノキ科の落葉低木
シロモジの黄葉

東照宮の付近から撮影
鳳来寺山(鏡岩)を振り返る
湯谷温泉の部屋の窓から…

宇連川(板敷川)


コノハズクは鳴かなかったけれど・・・

品川06:28-《新幹線ひかり631号》-07:48豊橋08:11-《JR飯田線》-09:29本長篠09:47-《バス8分》-鳳来寺バス停・参道入口〜仁王門〜本堂〜奥ノ院〜鳳来寺山684m〜瑠璃山695m〜天狗岩〜鷹打場〜東照宮〜行者越〜湯谷峠〜橋平〜湯谷温泉(泊) 【歩行時間: 4時間45分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 鳳来寺山(ほうらいじさん)は岩崎元郎さんの「新日本百名山」で知った山で、愛知県から選出された一座である。同書の解説文によると『702年に文武天皇の勅命によって利修人が開創した、山岳仏教の修業をする山』とのことだ。フクロウの一種であるコノハズクの生息地としても知られているらしい。
 「ブッポウソウ(仏法僧)」と鳴く鳥が、昭和10年に、じつはコノハズクであったことが判明した。というエピソードは有名で、私も以前から知っていたけれど、その舞台となったのがこの鳳来寺山であったことは知らなかった。それをつい最近知って、より一層この山に興味をもった。…まぁ、現在ではどの山へ行ってもめったにコノハズクの鳴き声は聞かなくなったけれど…。
* 山梨県笛吹市のホームページによりますと、「ブッポウソウ」と鳴く鳥がコノハズクであることが初めて確認されたのは御坂山地の釈迦ヶ岳、となっています。さて、愛知県なのか山梨県なのか、どっちが本当?

 品川発午前6時28分の新幹線ひかり号631号に乗ると7時48分には愛知県の豊橋駅に着き、8時11分発のローカル色豊かなJR飯田線に乗り換える。この飯田線は2両編成の単線で、いくつかの駅での(列車がすれ違うための)待ち合わせがあったりして、時間がまったりと過ぎる。新幹線に乗った直後だったから、特にそう感じたのかもしれないけれど…。
 閑散とした…もちろん無人駅の…本長篠駅に降りたのは9時29分で、イチョウの見事な黄葉を横目で見ながら駅前広場をウロウロする。バス停がないのだ。人もいないし案内板も無いようなので、とりあえず広い道を先へ進んでみる。と国道151号線へ突き当り、その角の広い空間が本長篠駅前バス停だった。「駅前から随分と歩いた処が駅前バス停、なのね」と妻の佐知子が皮肉っぽく云っている。昨日からの雨が上がって、爽やかな青空だ。

 本長篠駅前バス停からは10分足らずの乗車で鳳来寺バス停に着いた。ここが鳳来寺参道の入口になっているのだ。トイレへ行ったりなにやかやで、歩き始めたのは10時を過ぎていた。平日なこともあるのか、参道の土産物屋などは閉まっていて、ここも矢張り閑散としている。道沿いのイロハモミジが真っ赤に紅葉している。
 1425段あるという鳳来寺参道名物の石階段が始まる。両脇にはスギの巨木が立ち並び、辺りは鬱蒼としている。国の重要文化財に指定されているという仁王門をくぐると、傘杉(かさすぎ)と呼ばれるひときわ立派な(樹高59.6mの)スギが否応なく目に留まる。2017年の秋に測定した京都(大悲山国有林内)の「花脊(はなせ)の三本杉」の2株が其々62.3mと60.7mであることが判明して、樹高日本第1位から第3位に転落したという、いわくつきの大杉であるらしい。
 霧深し大傘杉はどれならむ(岡田耿陽)

* なお、天然杉の樹高での日本第1位は秋田県の仁鮒・水沢(天然スギ植物群落保護林内)にある秋田杉で、高さは58mとのことです。→No.208「小影山(和賀山塊)」

 とにかくこのコース、芭蕉の句碑や若山牧水の歌碑や、様々なお堂や石像など、謂れ因縁のある事物や名所が次から次へと道沿いにでてきて、飽きない。鳳来寺本堂に参拝してから、真向いの田楽堂で山頭火句扁額を読んだり、豊橋方面の大展望を楽しんだりする。振り返って見上げると、本堂の左奥(西側)の頭上には鳳来寺山の象徴ともいえる鏡岩(屏風岩)が、文字通り天空を覆う屏風のように屹立している。

 「山頭火献咏」から三句
 人聲もなく散りしいて白椿
 石だんのぼりつくして ほっと水をいただく
 ずんぶりぬれてならんで石佛たちは


 何時の間にか道は東海自然歩道に吸収されていて、その標識が目立つようになる。石像、不動堂(勝岳不動明王)、六本杉、などの利修仙人に因む事物などを見物しながら登り、少し朽ち果てた奥ノ院を通過すると間もなく、木製のベンチのある小広い空間に出た。木々に囲まれて展望は殆どないけれど、ここが鳳来寺山の山頂だった。ひとまずザックを降ろして小休止。それから、やっぱり、さらに先の棚山高原方面の、瑠璃山(るりさん)を目指す。
 すると、岩場が多くなってきて展望も開けてきて、道は細くワイルドになってくる。でもスタンスはしっかりしていて、急勾配の要所には金属製の階段などが整備されているので、恐怖は感じない。私達的な楽しい登山道だ。
 とはいえ鳳来寺山の山頂からはあっという間に(5〜6分の歩程で)、瑠璃山の岩ゴツのピークに着いた。「山頂」ではなくて敢えて「ピーク」と書いたのは、瑠璃山の山頂と思しき高みには山頂標識が無かったからだ。知らないで歩いていたら、棚山高原へ抜ける尾根道の途中のちょっとした狭いピーク(名も無い岩峰)、と思うかもしれない。でもここは…多分…れっきとした瑠璃山の山頂だ。宇連山をはじめとする近隣の(奥三河というか弓張山地というか)の山々がぐるっと見えている。北東方面の遠くには、ぼんやりと南アルプスの峰々などの展望も良くて、おまけに静かで、私の好きな山頂ランキングのベスト10には必ず入ると思う…ほどの好ましいピークだった。

* じつは、鳳来寺山684mの北側に位置する瑠璃山695mの方が背が少し高いのです。両峰間の直線距離は(地形図上で測ると)約140mで、かなり近い距離にあります。近年では鳳来寺山の標高を(瑠璃山の)695mとして表示しているガイドブックやサイトも多いようです。
* 鳳来寺山の登山コースについては、私達の歩いた表参道か東照宮の駐車場から歩くのが主流となっているようです。今回歩いてみて気がついたのは、鳳来寺山の山頂で踵を返すハイカーが多い、ということです。その理由のひとつに、「棚山高原へ」の指導標はあるけれど「瑠璃山へ」の標識も案内板も無い、ということがあると思います。鳳来寺山〜瑠璃山の岩場の山稜は、明るくて展望も良くて、登山っぽいムードも楽しめるので、なんか(瑠璃山に登らないのは)勿体ないと思いました。

 下山開始は13時頃。まず瑠璃山から鳳来寺山へ引き返し、奥ノ院への来た道を右に分けて、気分のよい尾根道を東へ進む。そして、どれが天狗岩だか分らない「天狗岩」を通過して、展望の良い「鷹打場」で一休み。それから由緒ある鳳来山東照宮へ下る、と途端に人影が多くなる。東照宮の駐車場を利用した観光客たちだ。東照宮の駐車場へ至る舗装道から振り返ると、鳳来寺山の鏡岩(屏風岩)がかっこよく見えている。
 指導標に従って東海自然歩道へ左折して、再び山稜の山道を歩く。多くの石仏が無造作に置かれた行者越えを過ぎ、鳳来寺山パークウェイなどに架かる二つの歩道橋を渡る、と間もなくベンチのある湯谷峠を通過する。辺りは天然林からスギ・ヒノキの人工林へ移行している。膝に負担の少ない傾斜の下りなので、佐知子も私もすこぶる順調だ。
 やがて沢沿いの気分のよい林道になって、橋本の集落へ入る。そして宇連川に突き当たる(湯谷大橋の)手前を左折して、JR飯田線の踏切を渡ると湯谷温泉街に入る。時計を見ると16時10分。心配していた日没には余裕で間に合った。
 夏鳥なこともあり、やっぱりコノハズクの鳴き声は聞けなかったけれど、楽しい一日を過ごせた鳳来寺山だった。

* 鳳来寺の境内に掲げられた新城市教育委員会による解説板には、鳳来寺山に関係の深い著名人の一覧が書かれていました。それを転記してみます。…錚々たるメンバーに驚いて感動です。
文化: 伊原西鶴、松尾芭蕉、太田白雪、高山彦九郎、糟谷磯丸、十返舎一九、種田山頭火、若山牧水、依田秋圃、岡田耿陽 歴史: 源頼朝、徳川家康、武田信玄、奥平仙千代丸、井伊直政』


* 鳳来寺山で目立った樹木: スギ、ヒノキ、ツガ、ハリモミ(ドイツトウヒだったかも?)、ネズミサシ(ネズ)、タブノキ、ヤブツバキ、ヒサカキ、ツツジ類(アカヤシオなど)、ユズリハ、アセビ、シロモジ、カエデ類(ハウチワカエデ、イロハモミジ)、コアジサイ、など。

湯谷温泉「旅館ひさご」: JR飯田線の湯谷温泉駅にほど近い、景勝地として名高い鳳来峡の宇連(うれ)川沿いに位置している。部屋の窓からも、岩風呂風の渋い浴室の大きな窓からも、板を敷き詰めたような宇連川の岩盤がよく見下ろせる。宇連川が板敷川と呼ばれているのもガッテンだ。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で、源泉温度は35.9℃、加温、半循環、薄褐色で無臭、肌にやわらかい感じがする。高齢のおっとりとした大女将が受付を担当していて、少し言葉不足で頼りない感じもしたけれど、気分は充分に癒された。1泊2食付一人12,100円(税込み)は妥当な料金だと思う。
 外部のサイトへ移動 「旅館ひさご」のホームページ

  佐知子の歌日記より
 千四百の石段登り本堂へ御利益願う鳳来寺山
 低山と言えども奇岩あまたあり足場に迷い膝が泣いてる
 行者越えあたりで迷うがコンパスと地図読む夫が見つけた山路
 霜月の日暮れ気になる山道にアスファルト見ゆ 安堵の瞬間
 川底の岩が大きな板のよう鳳来峡の流れ静かに
 手違いにクーポン券はもらえないお土産無しの湯谷温泉

翌日は石巻山へ



奥三河〜弓張山地の大展望!
瑠璃山の山頂にて・奥三河〜弓張山地の大展望!
遠く南アルプスが・・・

この左奥から山頂へ
鳳来寺の本堂・バックは鏡岩(屏風岩)

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