四国(高知〜香川)・3泊4日の山旅日記・そのA No.447 飯野山422mと 金毘羅宮 令和4年(2022年)12月13日(火) |
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【歩行時間: 飯野山登山=1時間50分 金毘羅宮(奥社往復)=約2時間10分】 ※移動はレンタカー → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 高知ICから高知自動車道へ入り北へ向かい、川之江JCTの辺りからは北東へ向きを変えて高松自動車道を進む。朝なのに混雑の無い高速道はいたって快適だ。やがて前方に、はっきりそれと分かる飯野山(いいのやま・422m)の金字塔が見えてくる。なるほど「讃岐富士」とか「おむすび山」などとはよく言ったものだ。岩崎元郎氏が香川県から選んだ(新日本百名山の)一座であり、もちろん四国百名山の一座でもある。 前泊の高知市街からは1時間半程度の運転で、高松市の西…坂出市と丸亀市の境界付近に位置する…飯野登山口の無料駐車場に着いたのは午前9時頃だった。非舗装道に沿った長細い駐車スペースは、平日にもかかわらず、20台程度の車で6割くらいは埋まっている。ハイカーたちの人声があちこちから聞こえてくる。この山はやっぱり、人気の里山であるらしい。 山頂へ向かっている小道がいくつかあるけれど、どれをどう進んでも(多分)同じ結果だろうと思って、とりあえず東へ向かって登り始める。まぁまぁのお天気で、寒くもなく(もちろん)暑くもなく、気温は絶好で…、道標がしっかりしているので、道迷いの心配もなさそうだ。そもそも谷らしい谷の無い円錐形の山と云うことで、道型を上へ向かって進んでいけば必ず山頂に到達する筈だ。 少し登って、トイレのある広場(丸亀野外センター)で佐知子が用を足しているときに、早くもこの飯野山の名物のニャンコが出てきて、私の足元をすり抜けて、近くでしゃがんで私の目を見上げている。可愛いトラだったので思わず手を出して頭と背中を撫でたけれど、そのトラは逃げようとしない。よっぽど人慣れしている猫であるらしい。…でも何故か、佐知子がトイレから戻ってきたら、すぅ〜っといなくなってしまった。トラ猫はその殆どがオスだと聞いているけれど、う〜ん、このトラはもしかしてメスだったのかなぁ、と思った。 西又分岐からは登山道(直登コース)へ入り、細身のコナラ、ヤマザクラ、アラカシなどが生い茂る天然林を登る。道端のコシダの緑色が美しくて印象的だ。でも、あっという間の飯野山山頂だった。 飯野山の広い山頂にはいろいろな石像や石碑(昭和天皇の歌碑もある)や祠などが散在していて、何をどう見たらよいのか迷ってしまう。立派な木造の薬師堂の前で手を合わせていたら、先着の地元のハイカーと思しき中年男性から 「三角点のある本当の山頂はそのもっと左奥の林の中だよ」 と声をかけられた。お礼を云って慌てて行ってみたら、確かに、樹木に囲まれた狭い空間に山頂標識と埋もれた三等三角点の標石を“発見”した。だから何なの、と云われれば返す言葉はないけれど、やっぱりそれ(三角点を確認)は嬉しいことだった。多分、もう二度と(東京からは超遠い)この地を踏むことはできないだろう、と思うから…。 * 飯野山の山頂部で観察のできた樹木: コナラ、クヌギ、クリ、ヤマザクラ、イロハモミジ、ノグルミ、アラカシ、ネズミモチ(多い)、ヤブニッケイ、ヒサカキ、ビワ、ツツジ類、ヒノキ、など。薬師堂の両脇のサザンカは園芸種。 丸亀野外センター前の広場にあった香川森林管理事務所の解説板によると、飯野山の森(国有林)は保健・風致保安林に指定されているらしい。落葉樹と常緑樹が競い合っている…里山の割には…概ね自然な植生だと感じた。 飯野山の山頂から南側へ少し下った展望台で「おじょもの足跡」を見物する。おじょもというのは当地の伝説の巨人で、ダイダラボッチのような存在であるらしい。この飯野山と琴平の象頭山に足をかけて大雨のような小便をしたが、そのときにできたのが土器川、であるらしい。でも…、超巨人の割には岩の足型は超ちっちゃいと思った。 飯野山をぐるっと時計回りに、らせん状の飯野町ルートを下る。広くてなだらかでよく整備されていて歩きやすい遊歩道だ。所々に展望箇所やベンチがあって、こちらからも讃岐山脈や讃岐平野に点在する山々などが良く見える。この飯野山を含めて讃岐平野に点在する山を「讃岐七富士」と呼んでいるそうだが、実際、展望の山並みには(ため池も多いけれど)円錐形の山容が多いと感ずる。この地の独特な風景で、興味は尽きない。 とてもゆっくりと歩いたつもりだが、飯野登山口の駐車場に戻り着いたのはお昼前の11時40分だった。 * 飯野山などの地質について: ミニ富士だらけ(30座ほどあるらしい)の讃岐平野は、矢張りとても珍しい景観だ。…現在の四国には火山はないけれど、讃岐七富士などの山容は超昔の(約1400万年前の)火山活動に由来しているという。浸食されて残ったあちこちの硬い岩塊が富士山型に残った、ということらしい。…拾って手に取った小石は硬くて重くて…安山岩の一種(サヌカイト)であるらしいが…壮大な地球の歴史を感ずる。 金毘羅宮参拝・奥社往復: たっぷりと時間の余ってしまったこの日の午後は、予定通り、飯野登山口からカーナビに従って約15分ほど南西へ進み「こんぴらさん」を観光…否、参拝する。まずは門前のうどん屋(うどん茶屋・てんてこ舞)で讃岐うどんを食べてから、785段の(例の)石段を上って金比羅宮の御本宮を参拝して、それから気合を入れて…もう583段を上って奥社にも参拝する。計1368段の石階段にはけっこう汗をかいてしまい、もしかして飯野山登山よりきつかったかも…、と思って改めて地形図の等高線を読んでみてびっくりした。飯野山登山の標高差は約350mだけれど、参道入口からこの金比羅宮奥社までの標高差はなんと約400mもあるのだ。さもありなんと思う。 このこんぴらさんの森は所謂“鎮守の森”で、自然が永年に亘り守られてきたようだ。巨木が散見されるなど、原生林と呼んでも差し支えないと思えるほど、きわめて自然度が高いと感心した。 金比羅宮〜奥社の、所々の展望箇所からは独特な景観の丸亀平野(讃岐平野の一部)が見渡せる。その中央奥に聳える「おむすび山=讃岐富士=力山(ちからやま)=飯野山」が、私達に何かを語りかけるように、おっとりとこちらを向いていた。 讃岐の「山」を巡って、思いのほか疲れた一日だったので、金比羅宮の奥社から先の象頭山(ぞうずさん)…大麻山や琴平山の総称でもあるらしい…を巡るトレイルはあっさりとあきらめて、立ち寄り湯も割愛して、一路、今日の宿・高松市街の目抜きに位置する「ホテルウィングインターナショナル高松」へ直行する。 佐知子の歌日記より ぽこぽこと散らばりている低き山 讃岐平野に紅葉うつす 標高は四百ちょっとの飯野山 すがた美し讃岐の富士山 金比羅山 千三百の階段をうどんの力で登りきりたり |