島根県・4日間の山旅日記・その② No.466 三瓶山(さんべさん・1126m) 令和5年(2023年)10月24日 |
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第2日目(10/24)=国民宿舎さんべ荘・女夫松登山口481m~孫三瓶山903m~大平山854m~女三瓶山953m~兜山981m~男三瓶山1126m~定めの松463m・15:11-《石見交通バス》-15:48大田市駅-《送迎車》-「ちいさなお宿・泉弘坊」 【歩行時間: 5時間】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 第3日目(10/25)=石見銀山観光…玉造温泉 第4日目(10/26)=出雲大社・日御碕灯台…出雲空港…東京 ●10月24日(火)・三瓶山登山: 国民宿舎「さんべ荘」の盛沢山な朝食をたんと食べ、歩き始めたのは7時半頃だった。きょうもお天気は良さそうで、身体はトシのせいでチト重たいけれど、心はわくわく気は軽い。何といっても三瓶山は大山とともに山陰を代表する山で、新日本百名山や日本二百名山にも選ばれているという、私達夫婦の憧れの一座なのだ。 歩き始めてすぐ、三瓶山高原道路(県道30号=三瓶山公園線)の信号を渡って女夫松登山口から山道へ入る。暫くは比較的に若い…戦争前後の頃に皆伐して、その後は自然の成り行きに任せた感じの…自然林(2次林)だ。主な高木はコナラ、クヌギ、クリ、イヌシデ、カシワ(意外と多い)、ナラガシワ(?)、エゴノキ、ノグルミ、ミズキ、ヤマザクラ、ウラジロノキ(赤い実)、ウリハダカエデ、そしてアカマツなどだ。スギ、ヒノキ、カラマツなどの植栽木も少し交ざっている。ヤブツバキやヒサカキなどの照葉樹(常緑広葉樹)はここでは少数派のようだ。林床の主はチュウゴクザサ(チマキザサかも)で、キバナアキギリ、シロヨメナ、リュウノウギク、アキノキリンソウ、ヤマラッキョウ、リンドウ…などの秋の草花がきれいに足元を飾っている。…しかし急登だ。シャツを脱いで長袖のTシャツ1枚でちょうどいい。 * 三瓶山の北側斜面にはブナの自然林が残っているそうですが、今回の計画コースからは外れていたのがチト心残りでした。 空が抜けて展望が開けてくると間もなく孫三瓶903mの山頂だ。ここで向かいに聳える子三瓶961mや男三瓶1126mの景色を楽しんでから、少し下って鞍部の林を抜けて登り返すと、ベンチや東屋もある小広い平地で、そこが大平山(たいへいざん・854m)の山頂だった。これから進む方向の女三瓶953mや男三瓶などの景色を眺めながら、ここで中休止。火曜日のきょうは東ノ原からの観光リフトは定休日とのことで、静かなひとときだった。ナッツチョコレートとサーモスの熱いコーヒーが旨い。 大平山から少し下って急坂をジグザグと登り、無線中継塔の林立する女三瓶山の山頂を往復。それから「ユートピア980m」と書かれた標識のある展望箇所でも小休止して、そしてロープのある岩場を登って、兜山981mのピークは知らずに通り越す。私達が辿っているコースは三瓶山の(子三瓶を除いた)5つの山頂をアップダウンするので、累積標高差は900mくらいになるらしい。ふぅ~。 標高が高くなってきて紅葉も一段とその鮮やかさを増してくる。そろそろ疲れが出てきたころ、その樹林を抜けると辺り一面はススキの原になり、山頂手前の広い原(山頂台地の一角)を通過する。この右手には避難小屋があったけれど、私達はそのまま山頂を目指した。西日本型のホソバノヤマハハコの花も、私達の目を楽しませてくれている。 一等三角点1125.75mの標石と銅製の古い展望盤と三瓶山神社の小祠のある、男三瓶山のただっ広い山頂に着いたのは11時半頃だった。「さんべ荘」で拵えてもらったおにぎりを頬張りながら、360度の大展望を楽しんだ。生憎と若干霞んでいて、流石に“遠く四国の山々や日本海に浮かぶ壱岐の島”は望めなかったけれど…。 南西方向へ向かって明るい山頂台地を下り始める。その広大なススキの原がダイナミックで希覯な眺めだ。これにはかなり驚いた。 やがて急勾配になってきて、中腹の林をジグザグと下っているときに、鮮やかな紅色に思わず足を止めた。「やっぱりシラキは紅葉のナンバーワンだね」などと会話する私達だった。 林を抜けると再び大きく視界が開け、広大なススキの原をなだらかに下るようになる。この辺りが西ノ原のようだ。毎年3月に火入れをして…生物多様性を維持するために…草原の維持管理に努めているというけれど、それはまったくご苦労なことだと思う。地元の関係者やボランティアの方たちに深く頭を下げたい。 登山道もよく整備されていて、気持ちよく定めノ松バス停に下山したのは14時20分頃だった。生憎と休憩所(山の駅さんべ)のドアは閉まっていたので、バスが来るまでの時間を、近くて大きな三瓶山を眺めたり、原っぱ遊びに興じる子供連れ一家の様子に目を細めたり、などしながら過ごした。…大田市駅へ行くバスが到着したのは定時を2分ほど遅れた15時13分。暑くもなく寒くもない、のほほんとした素晴らしい三瓶山登山だった。 三瓶温泉「国民宿舎・さんべ荘」: 大田市駅前からバスで40分強の、南側からの三瓶山登山には絶好の位置に建つ。日帰り入浴も可能なので、ここを下山地にして登山後の温泉入浴を楽しむ、というのが(特に日帰り登山の場合)いいかもしれない。実際、私達がチェックインした夕方には日帰りの入浴客たちが目立っていた。 内湯外湯とも数種類の浴槽がありバラエティに富んでいる。泉質は含鉄(Ⅱ,Ⅲ)-ナトリウム-塩化物温泉(低張性弱酸性)。茶褐色に薄く濁り、口に含むと微かに塩味。殆ど源泉掛け流し。いい風呂だった。 先だっての将棋の王将戦の第5局で藤井聡太王将と羽生善治九段が戦った会場にもなった、とのことで、なかなか格調のある温泉施設でもあるらしい。1泊2食付きで一人12,350円(税込み)は割安かもしれない。 ちいさなお宿「泉弘坊(せんこうぼう)」: 大田市駅からは車で10分ほどの距離にある“ちょっと洒落た民家”的な温泉宿。歌手で女優の濱田マリさんによく似た(しゃきしゃきした)女将と料理が上手なご主人が、私達を温かくもてなしてくれた。翌朝は石見銀山公園までご主人の運転する車(約15分)で送ってもらった。いろいろと旅の情報などもお聞きすることができて、親切なご主人に感謝感激だ。 庭から噴出したという温泉はナトリウム塩化物強塩泉。茶褐色に濁る湯はかなりしょっぱい。加温して源泉掛け流し。石タイル貼りの浴槽は2~3人で入るには十分な広さ。とにかく料理が美味い。一夜をゆっくりとくつろげた。1泊2食付き一人15,152円(税込み)だった。 ●10月25日(水)・石見銀山を観光: 龍源寺間歩(坑道)を見学したり、代官所や商家などのあった情緒のある大森の街並みなどをまったりと散策して一日を過ごした。昼食に食べた…「泉弘坊」の親切なご主人に勧められた大森のヒダカ(ベッカライ・コンディトライ・ヒダカ)の…本格的なドイツパンがとても美味しかった。佐知子はアップルジュース、私はドイツビールを、ぐびぐびと飲んだ。 昨日の三瓶山登山で疲れていたので、鉱山集落跡などのあるという仙山538mを周回するハイキングはカットしたけれど、それでもけっこう歩いたので、やっぱりこの日も疲れた。 路線バスで大田市駅へ行き、そこから(なんと一両編成の・バスみたいな)14時24分発の山陰本線に乗り、出雲市駅で特急やくも24号に乗り換えて、玉造温泉駅に着いたのは15時50分だった。予約しておいた宿(翠鳩の巣)の送迎車が出迎えてくれる。 玉造温泉・温泉ゲストハウス「翠鳩(あおばと)の巣」: 楽天トラベルで、とにかく安いから予約した温泉宿。2017年5月にオープンしたという。温泉街の中心に位置する、案外と小さな造り。もしかして“旅館”といったほうが相応しいかもしれない。なので、変にゲストハウス的な冷たさは感ずることはなかった。一人でやりくりしている若い男性スタッフは、終始親切で感じよかった。夕食と朝食は何れも仕出しでちょっと味気ないが、小さな共同浴場と同様、必要かつ十分だ。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉。殆ど無色透明無味無臭、ヌルヌル感あり、源泉掛け流し。玉造温泉は美人の湯として有名なんだそうだ。1泊2食付き一人10,050円(税込み)は妥当な線かも。 翌朝、玉湯川に沿って散歩してみた。いかにも古の温泉街といった感じで、しっとりとした気分になった。…私達の老肌も多少はしっとりつるつるになったかも…。なんとなれば、島根県はポーラによる「美肌県グランプリ」において常にトップクラス(ほとんどの年において日本一)であるそうな…。 ●10月26日(木)・出雲大社と日御碕(ひのみさき)を観光: 記紀の世界・日本神話のふるさとをじっくりと見て回った。私達夫婦にとっては初めての出雲大社のお参りで、ここでは一般的な神社とは異なり「二礼四拍手一礼」となっているのに、まず目を白黒させた。10月(旧暦)には日本中の神様が出雲大社に集まるから、こちらでは「神在月」というのも面白い。 参拝後、出雲大社のバスターミナルから発着している一畑バスの日御碕線に乗って日御碕灯台まで行き、灯台に上ったり遊歩道を日御碕神社まで歩いたり、茶店でサザエのつぼ焼きやイカ焼きを食べたり、そして再び出雲大社に戻って参道沿いの蕎麦屋で美味しい出雲そばを食べたり、けっこう楽しく時間を過ごすことができた。…出雲大社の後ろに連なる出雲北山の一座、弥山登山を(予定を変更して)ボツとしてしまったのが、やはり心残りだったけれど…。 丸一日を島根半島の西端で過ごして、それから電車とバスを利用して出雲空港へ。予約の飛行機は19時25分発なので、まだまだ時間はたっぷりと残っている…。楽しかった4日間の「島根県の旅」を総括しながら、さて、空港のレストランでビールを飲もうか日本酒を飲もうか、少し迷ってしまう。 * 出雲人と岩見人: 隣り合わせの出雲(いづも)と岩見(いわみ)だけれど、そこに住む人の性格は正反対であるらしい。「どこにでも神様…知られざる出雲世界をあるく…野村進著(新潮社)」によると、出雲人は温和で誠実だが陰険で、石見人はざっくばらんだが気分屋で気性が荒いそうだ。神様の国の出雲と銀山や神楽の岩見。さて、風土や文化の違いによるものなのか、面白いことだと思った。 佐知子の歌日記より 女(め)三瓶・子三瓶・孫三瓶 家族のような山を抱き男三瓶はあるじのごとし 暗闇に手掘りの洞(ほら)の背は低く石見銀山の宝は人か 巨大なる注連縄をはる社なり出雲の神に祈る平安 日御碕(ひのみさき)の灯台に昇り眺めたる海の向こうに島影は無し |