ニセコ連峰(東山系)・4日間の山旅日記(後編) No.479 イワオヌプリからニトヌプリ 令和6年(2024年)6月25日(火) |
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・6月24日=「いこいの湯宿いろは」…ニセコ五色温泉~ニセコアンヌプリ~ニセコ五色温泉 ・6月25日=ニセコ五色温泉~イワオヌプリ1116m~ニトヌプリ1080m~道路上のコル~湯本温泉「月美の宿・紅葉音」 【歩行時間: 6時間】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(イワオヌプリ)へ ・6月26日=湯本温泉「月美の宿・紅葉音」-《宿の送迎車10分》-いこいの湯宿いろは10:15-《高速ニセコ号(北海道中央バス)》-13:18札幌14:30-《JR特別快速エアポート116号》-15:06新千歳空港16:15-《SKY720便》-17:50羽田空港… 前項「ニセコアンヌプリ」からの続きです ウィキペディアの該当項(ニセコ連峰)によると、新見峠を境にして東山系と西山系に分かれるらしい。ニセコアンヌプリ・イワオヌプリ・ワイスホルン(小沢岳)・ニトヌプリ・チセヌプリ・シャクナゲ岳・白樺山などの東山系が急峻で中期~新期火山群なのであるのに対し、前目国内岳・目国内岳・岩内岳・幌別岳・雷電山・前雷電山などの西山系は高層湿原の発達したなだらかな古期火山群であるという。もしかして、ニセコ東山系=ニセコ火山群(ニセコアンヌプリ火山群)で、ニセコ西山系=雷電火山群、ということなのかもしれないが…。何れにしてもこの連峰の盟主が、その東端に位置するニセコアンヌプリ1308mであることは衆目の一致するところであるようだ。 今回の私達の山旅は、そのニセコ連峰東山系の東側を徘徊する…南麓のニセコ温泉郷をベースにした…名湯から名湯への…ある意味、究極の温泉ハイキングでもあると思う。だから今回の山旅に際しては、私達夫婦は数ヶ月前の計画段階からずぅ~っとウキウキと…否、気合が入っていた。 ●6月25日(五色温泉~イワオヌプリ~ニトヌプリ~湯本温泉) ニセコ五色温泉旅館の7時30分からの朝食後、立ち込めるガス…きれいに表現するならば“朝靄”だけれど…の中を歩き始める。どうやら、この地に濃霧注意報が出ているようだ。 昨日の朝に立ち寄った「ニセコ町五色温泉インフォメーションセンター」の駐車場横から、ニセコアンベツ川の源流に架かる五色温泉橋を渡って、指導標に従って進み、まずはきれいに整備された丸太階段を上る。途中の小平地に設置された「入林記帳所」で記帳(つまり登山届提出)してから更に登り、分岐を右折して、ニセコ連峰の中で最も若い火山であるというイワオヌプリへ向かう。きょうもウグイスが盛んに囀っている。 本土のそれと比べて背の高いチシマザサ(ネマガリダケ)の様子など、登山道沿いの植生は昨日のニセコアンヌプリとそれほど変わらないように見える。とはいえ、咲いている花はこちらの方が多い気がする。なかでもマイヅルソウやアカモノ(イワハゼ)やエゾイソツツジの群生が見事だ。ベニバナイチヤクソウやウコンウツギもきれいに咲いている。マルバシモツケの白い花序が露に濡れている。ウラジロナナカマドは白花をぎっしりと咲かせているが、ガンコウランは花と果実の狭間のようだ。ダケカンバが潅木状になってきて、ハイマツやミヤマハンノキも出てくる。…ガスっているので植物を見るしかない、という書き方もできるけど…。 安山岩だろうか…、岩っぽくなってきて、いかにも“火山”らしいロケーションになってきた。右側に…ガスでよく見えないが…火口の中の火口の一部だろうか、火山灰が降り積もったような、まぁるくて平らな平地が見えている。赤テープや白ペンキなどを頼りに、分岐らしい処を左方向へ進む。とにかくガスで、何処を如何歩いているのかよくわからない。やがてケルンの積まれた小高い丘に出たが、ここは山頂ではないようだ。コンパスで確認しながら、じぃ~っと真っ白な行く手を睨んでいると、微かにぼんやりと近くの山影が見えてきた。…そう、ここを少し下って、なだらかに登った処がイワオヌプリの山頂であるらしい。…しかし、風が超強い。慌ててウインドブレーカー代わりのカッパの上着を身につけたが、それでもちょっと寒い。身体も揺れるが心も揺れる。 ケルンと山頂標識だけの、だらっとして広い、砂漠のような殺風景なイワオヌプリの山頂だった。多少は明るくなってきたとはいえ未だホワイトアウトだし、風が強くて寒いし、展望はあきらめて早々に退却する。* 私達は山頂標識のある処が山頂だと思って、そこから引き返しましたが…下山してから分かったことですが…地形図上の(本当の)山頂はこの少し先(北東へ約170mほど進んだ処)にあったようです。景色が何も見えなかったし指導標も無かったので、まぁ仕方のないことでした。 イワオヌプリの山頂から来た道を暫く進み、二股を左折して、時計回りに(多分)火口のお鉢巡りをする。この復路で、大分前に私達を追い越していった3人組の若い女性たちとすれ違ったが、話を聞くと、なんとやっぱり、道に迷っていたらしい。ガスの中の登山は…特にこんなにただっ広い山頂部は…ほんとうに要注意だ。 右手の硫黄鉱山や大沼の方面へは進まずに直進して、ニトヌプリへ向かう。この辺りから人影は絶え、益々登山道らしくなってくる。アカモノやゴゼンタチバナも超見頃で、相変わらずマイヅルソウやエゾイソツツジの群生も素晴らしい。…途中、道が崩落して泥壁になっている危ない箇所があったけれど、設置されたロープを頼りに何とか通り抜けることができた。…何気に、ガスが晴れだして明るくなっている。足元のエゾゼンテイカが眩しそうに顔をもたげる。 青空が覗き始めたニトヌプリの山頂に着いたのは13時頃で、ここで遅めの昼食、菓子類やカロリーメイトでエネルギーを補充する。チセヌプリなどの近くの山々の一部が(ようやく)見え出した。山間の霧や雲がすぅ~っと引いていくときの、このステキな情景は、私達ハイカーへの山からの極上のご褒美だ。 ところが、このニトヌプリからの下りが大変で、ゴロ石とぬかるみの、非常に歩きにくい悪路に大苦戦する。若いころならばリズムよくひょいひょいと下ったのだろうけれど、今の私達にとっては地獄の急斜面だ。腰が痛いし膝も痛い。佐知子は軽く数回、私は重いのを1回、滑ったり転んだりする。幸い大事には至らなかったけれど、ほんとうに、トシはとりたくないものだ、と思う。 ニトヌプリの頂上から道路上のコル(道道66号線=ニセコパノラマライン)までの下りは、慎重に歩いたので、コースタイム40分のところを65分もかかってしまった。でもまだ14時半頃。私達のきょうの時間はたっぷりと残っている。 チセヌプリやニトヌプリなどの緑の山々を眺めながら、ニセコパノラマラインをだらだらと下って、きょうの宿・湯本温泉「月美の宿 紅葉音」に辿り着いたのは丁度16時だった。きょうも時間管理は完璧だ、多分。 * イワオヌプリとニトヌプリの山名由来: 何れの山名もアイヌ語由来で、イワオヌプリは「イワウ・ヌプリ=硫黄の山」、ニトヌプリは「ニドム・ヌプリ=森のある山」を意味しているという。イワオヌプリの「硫黄の山」は理解できるけれど、ニトヌプリの「森のある山」はイマイチ釈然としない。昔はもっと高木などが茂っていたのだろうか…。[出典は三省堂の山名事典、及びウィキペディアの該当項] ニセコ湯本温泉「月美の宿 紅葉音(あかはね)」: ニセコ連峰のチセヌプリとニトヌプリの南麓、馬場川の源流に位置する温泉ホテル。ロビーも客室も瀟洒で、私達好みのセンスだ。泉質は硫黄泉。白濁、口に含むと硫黄臭と微かな酸味。もちろん源泉掛け流し。木枠の内湯や露天などにも風情がある。湯船の底に溜まっている「湯花」で泥パックができるらしいが、私は試していない。新鮮な素材を使った和食会席や、思いやりのある宿の対応にもとても満足した。ニセコ駅などからの無料送迎があるのも嬉しい。1泊2食付き一人15,550円(税込み)は割安に感じた。 北側の部屋の窓から山の方を眺めると、手前のニセコパノラマラインの少し先に大きな池のようなものがあり、その水面から湯気が立っている。それがニセコ湯本温泉の大湯沼(源泉の沼)だった。 「月美の宿 紅葉音」のホームページ 佐知子の歌日記より 磯躑躅・舞鶴草の群落に見とれておりぬ そのまっ白に ニトヌプリ過ぎて下山時転びたりわれは六回夫は一回 たどたどしく宿の案内する女性 ベトナムからとにっこり笑う ●6月26日(ニセコ~札幌~東京) 湯本温泉「月美の宿」の朝食後に、近くの大湯沼(源泉の池)を散歩してみた。ぐるっと一周できると思ったら、途中で行き止まりになっていたので引き返したが、硫黄臭漂う湯煙の中を歩くという得難い経験をした。ひっそりとしていて静かだったのもとてもよかった。 宿の送迎車で約10分、高速ニセコ号の始発バス停でもある「いこいの湯宿いろは」まで送ってもらい、札幌行き10時15分発の便に乗る。そして札幌の街で(半世紀ぶりに食べた)味噌ラーメンに舌鼓を打ってから、JR快速で新千歳空港へ行き、16時15分発のスカイマーク720便で東京へ向かう。 お天気にはあまり恵まれなかったが、行きも帰りも至極順調な、今回の私達の山旅だった。 佐知子の歌日記より 「どちらから?」「東京です!」と答えると「ほうー」と驚くニセコ連峰 |