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ニセコ連峰(東山系)・4日間の山旅日記(前編)
No.478 ニセコアンヌプリ1308m
令和6年(2024年)6月24日(月) ガスと雨

右側の山はワイスホルン1045m
バスの車窓から、尻別川の彼方に聳えるニセコアンヌプリ

クマはいない!?

・6月23日(登山前日)=羽田空港6:20-《ADO・139便》-7:55新千歳空港08:19-《JR快速エアポート25号》-8:58札幌…北海道大学植物園などを見学…10:35-《高速ニセコ号(北海道中央バス)》-13:36ニセコ温泉郷いこいの湯宿いろは…付近を散策
・6月24日(登山当日・雨)=いこいの湯宿いろは-《タクシー20分》-ニセコ五色温泉~ニセコアンヌプリ1308m~ニセコ五色温泉 【歩行時間: 3時間10分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
6月25日=ニセコ五色温泉~イワオヌプリ~ニトヌプリ~湯本温泉
6月26日=湯本温泉…札幌…新千歳空港…羽田空港…



6月23日
北海道大学植物園
北海道大学植物園のバラ園

冬のスキーコースかも
「いこいの湯宿」の散策路

サッポロフキバッタ?ミカドフキバッタ?
小さなバッタ(散策路にて)
↑フキバッタの仲間?
●6月23日(登山前日・曇)
 ねずみ色の梅雨空のなか、羽田空港から朝一番(6時20分発)のエアドゥ139便に搭乗する。飛行中の機窓からはガスでなにも見えない。時折少し明るくなって、無限に続く雲海が見えている。私達夫婦は言葉少なげに、機内サービスのホットコーヒーを啜る。
 新千歳空港に着陸したのは定時の7時55分頃。空港の鉄道駅からはJR快速エアポート25号に乗り約40分、札幌駅に着いたのは9時の少し前だった。札幌駅前のバスターミナルからニセコまでは北海道中央バスの「高速ニセコ号」を利用する予定だけれど、10時35分発の便までには時間があるので、札幌駅からもほど近い北海道大学植物園を…入園料@420円を支払って…見学することにした。何故か、私達は一度もそこを訪れたことがなかった。
 然し行ってみて驚いた。駅近なのに、こんなにも広くて(13.3ha)立派な植物園だとは思わなかった。北海道の自生植物を中心に約4000種類の植物が見られ…、とパンフレットには書いてある。1時間では全然時間が少なすぎた。各ブロックを急ぎ足で見て回ったが…、う~ん、もっともっと時間が欲しかった。…佐知子は(時間的に)ちょうどいい感じ、と云っていたけれど…。花ではバラ園のバラやライラック並木のハシドイなどがちょうど見頃で、いい香りが辺りに漂っていた。もちろん、高山植物園の花たちにも興味津々だったが…。
 高速ニセコ号は札幌駅前バスターミナルの1番乗り場(道庁赤れんが庁舎の東側)が始発になっている。つまり北海道大学植物園にもほど近いので、今回のバスの待ち時間は有効に使うことができた。しかも、きょうの私達の宿は「ニセコ温泉郷 いこいの湯宿 いろは」なので、そこが終点の高速ニセコ号を利用するということは、これも至極効率の良い交通手段だった。
 私達を乗せた高速ニセコ号は、札幌市街の各所に停車しながら北西へ進み、札幌西ICから札樽自動車道へ入り、小樽ICを出てからは右手に石狩湾を見ながら国道5号線をひた走る。そして余市からは内陸(南の方向)へ向かい、倶知安を過ぎる頃には乗客は大分少なくなっている。やがて左手に雲のかかった羊蹄山1898m、右手にニセコアンヌプリ1308m~ワイスホルン1045mの山影が見えてくる。ニセコ駅前(本通り)を過ぎてからは乗客は私達だけになっている。バスの運行時間は正確で、終点の「いこいの湯宿いろは」で降りたのは定時の13時36分だった。
 未だ宿のチェックイン時間には早すぎたこともあり、宿の周辺にある散策路(外周1.4km)…冬はスキーコースかも…をぶらぶらと歩いてみた。そして、ダケカンバ、イタヤカエデ、ナナカマド、シナノキ、ヤマグワ、チシマザサ(ネマガリダケ)…などの生い茂る森の道にうずくまって、小さなバッタなどを観察したりした。…心安らぐ時間だった。

温泉マーク ニセコ温泉郷「いこいの湯宿いろは」: ニセコ連峰の東端に聳える主峰・ニセコアンヌプリの南麓に位置する温泉ホテル。緑に囲まれて、殆ど一軒宿的なロケーションには好感がもてる。宿の対応もサービスも洗練されていて、特に不満はない。泉質はトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉で、メタケイ酸も含んでいるそうだ。殆ど無色透明無味無臭。大浴場も露天風呂(源泉掛け流し)もいい風呂だった。
 女子高校生が数名…職場体験とのことだが…私達に初々しい笑顔を見せてくれていた。夕食の和食膳も美味しかった。別注文の地酒「飲み比べセット」で、もう完全に出来上がり。ちょっと飲み過ぎたかも…。1泊2食付一人15,578円(税込み・酒代別)だった。
 外部サイトへリンク 「いこいの湯宿いろは」のホームページ

 佐知子の歌日記より
ビール園には行かないで植物園ゆっくり歩く札幌の昼
宿のまわりすなわちスキーの周回路この傾斜ならわれも滑れる


ニセコ連峰の略図
ニセコ連峰の略図
6月24日
左に「クマ出没・注意!」の看板
ニセコアンヌプリの登山口

まだ山頂は遠い
チシマザサの登山道

磯躑躅:ツツジ科の常緑小低木
エゾイソツツジ

バックに避難小屋が・・・
ニセコアンヌプリの山頂

翌朝に撮影
ニセコ五色温泉
●6月24日(ニセコアンヌプリ登山・雨)
 「いこいの湯宿いろは」の朝湯を楽しんで、7時からの朝食を食べてからチェックアウトして、予約しておいたタクシーに乗る。運転手さんは女性で、とても優しい感じの人だった。その運転手さんから聞いた話によると、この辺りではクマは出ていないが、その理由については(特にニセコ連山の東側の山々は)未だ現役の活火山ということと関係しているのかもしれない、とのことだった。多分、ヒグマのハビタットとニッチに関係している、ということを云っていたのだと思う。私達はそれを聞いて安心して、昨夜からの雨は止まないけれど、やっぱりニセコアンヌプリに登ってみよう!ということになった。軟弱な私達にしては珍しい決断だ。
 タクシー料金の5,350円を支払って、「ニセコ町五色温泉インフォメーションセンター」の前で降ろしてもらう。センターには既に係の人がいて、登山口のことなどを丁寧に教えてくれる。「五色温泉周辺の植物」と題した解説パネルには、五色温泉の裏手は硫黄の関係で…かつては硫黄の採掘場所であったらしい(強酸性の土壌)…植物が育ちにくく、限られた種(例えば一部の高山植物)しか育たない、と書いてある。それがそもそもこの地に(森の動物の)クマが少ないことの主因であることを推察して、タクシーの女性運転手さんの話にガッテンした次第だ。…そして雨具に身を固めて、歩き始めたのは8時半頃だった。ここは標高約750m。辺りはガスで、視界約40mだ。
 とはいえ、キャンプ場横の登山口の看板「クマ出没・注意!」にびっくり。な~んだぁ、やっぱり出るんじゃないか、と緊張する。「そうだ、注意だ、注意!」と改めて確認し合う私達夫婦だった。
 その登山口に設置してある「入林届出箱」に入山届を提出してから、いよいよ登山道へ入り、暫くは丸太階段の急坂を登る。周囲にはダケカンバ、ナナカマド(花)、そしてチシマザサなどが茂り、道端ではマイヅルソウの群生が私達を見上げている。タニウツギが咲いている。アカモノ(イワハゼ)やゴゼンタチバナもちょくちょく顔を出す。オトギリソウ(ハイオトギリだったかも?)やハクサンチドリやハクサンボウフウなどもけっこう多い。咲き始めのエゾシオガマやエゾゼンテイカにも出遭った。チシマザサは高度を上げるに従って背丈が低くなる。エゾイソツツジの群生も見事だ。赤っぽい雄花をつけたハイマツも出てきた。ウラジロナナカマドは多くの白花を上向きにつけている。やがて岩礫帯が広がってきて山頂部が近づく。…雨っても、やっぱり山はいい。
 一等三角点(点名:似古安岳)の標石とニセコ観測所跡の石碑とこじんまりとした避難小屋のある、ニセコアンヌプリの広い山頂に着いたのは11時の少し前だった。晴れていれば東に見えるはずの羊蹄山はもちろん霧の中で、つまりホワイトアウトだ。雨は止まないし風も強くなってきて寒くなったので、避難小屋を借りてそこで中休止。菓子パンやチョコレートや煎餅などでおなかを満たす。山頂部では雨に濡れたトカチフウロの淡い青紫色の花が印象に残った。
 来た道を辿り、ずぶぬれ状態でニセコ五色温泉へ下山したのは13時15分頃。一組の団体さんとすれ違っただけの、静かなニセコアンヌプリだった。

 ニセコアンヌプリ登山については、じつは、19年前に悪天候のために断念した思い出がある。→No.181「後方羊蹄山」 今回も悪天候だったが、そのリベンジを果たすことができて、私達は少しうれしかった。

* ニセコアンヌプリの山名由来: アイヌ語での名称は「ニセイ・コ・アン・ヌプリ」で、意味は「ニセコアンベツ川の(源の)山」ということだそうです。なお、ニセコアンベツ川のアイヌ語名「ニセイコアンペッ」は「絶壁・に向って・いる・川」、あるいは「峡谷・に・ある・川」の意とされている、とのことです。
* 「ニセコ観測所跡」について: ニセコアンヌプリの山頂にこの石碑が立っている。これは第二次世界大戦中の1943年~1945年の冬季に、零戦を使った着氷実験が行われた場所であることに由来しているという。
 [以上、ウィキペディアの該当項より]

温泉マーク ニセコ五色温泉旅館: ニセコ連峰東山系の、ニセコアンヌプリとイワオヌプリの谷合・標高約750mに位置するひなびた一軒宿。周囲には硫黄の臭いが立ち込める。泉質は酸性・含硫黄のマグネシウム・ナトリウム・カルシウム、硝酸塩・塩化物温泉、殆ど無色透明で口に含むとかなり酸っぱい。飲用には適していないというが、さもありなんと思う。男女別の2種類の浴場(「大浴場+露天」と「からまつの湯」)も、もちろん源泉掛け流し。いい風呂だった。
 テレビなどでもたびたび紹介されているからか、マイカー組の日帰り入浴客などにも人気があるようだ。宿泊予約についてはネット(ラクテン)からのみ、というのが…ある意味…この宿の個性を象徴しているかもしれない。殆どの従業員は(一人の中年女性を除いて) 融通が利かなくて、客に背を向けている(逃げている)感じがした。旅館業はつまり接客業だということが(多分)分かっていないのではないか、と思ったくらいだ。つまり経営者不在の様相だった。まぁ、温泉付きの山小屋だと思えば腹も立たないのだが、もしもそう(山小屋)だったとしたら、7時30分からの朝食というのはいくらなんでも遅すぎる。スキーシーズン向けの経営に特化しているのかもしれないし、もしかして何らかの経営的な隘路があるのかもしれない。風呂が良いだけに残念で、ちょっと辛口の感想になってしまった…。
 1泊2食付き一人12,150円(税込み)だった。
 外部サイトへリンク 「ニセコ五色温泉旅館」のホームページ

 佐知子の歌日記より
 傘・合羽・手袋装備のいでたちでニセコアンヌプリ登頂せり
 源泉の掛け流しの湯に身を伸ばし雨の登山の疲れをはらう



ニセコアンヌプリの登山道にて
蝦夷禅庭花:ワスレグサ科ワスレグサ属の多年草
山頂は近い!(エゾゼンテイカ)
赤物:ツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木・別名:岩黄櫨
アカモノ(イワハゼ)

次項「イワオヌプリからニトヌプリ」へ続く

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