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No.477 ニュウ~中山(北八ヶ岳)
令和6年(2024年)6月11日(火) 晴れ マイカー利用

「ニュウ~中山」の略図
小さな高層湿原です
白駒湿原を通過
ニュウへ:コメツガ、シラビソの原生森(にゅうの森)
苔生す原生林
山頂部のガレ場を登る
ニュウ山頂は近い!
前方:左は硫黄岳、右は天狗岳
ニュウの山頂にて
小岩鏡:イワウメ科の常緑多年草
コイワカガミ:ニュウの山頂部にて
シラビソの縞枯れ現象
縞枯れの現場を通過
前方は蓼科山方面
中山展望台にて
翌朝・横谷峡散策
王滝は2段になっている(上段が14m、下段が7m)
王滝(横谷峡にて)

肝木:ガマズミ科(レンプクソウ科)ガマズミ属の落葉低木〜小高木
カンボクの白い装飾花

苔生した…黒木の原生林を堪能!

《マイカー利用》…中央高速道・諏訪南IC-《車60分》-白駒の池・駐車場~青苔荘~白駒湿原~ニュウ2352m~中山2496m・中山展望台~高見石小屋~白駒荘~白駒の池・駐車場-《車30分》-横谷温泉旅館(泊)…横谷峡散策(王滝展望台東屋まで往復)-《車30分》-諏訪南IC… 【歩行時間: 5時間30分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(ニュウ)へ


●前書き
 このサイト(私達の山旅日記)のBBS(掲示板)の、常連のヒデ坊さんからの投稿に触発されて計画・実行したのが本山行です。八ヶ岳連峰における私達の山旅に欠落していた一座…北八ツの主脈から東に外れて聳えるニュウ2352mの存在を、まざまざと思い出したのです。…で、もう居ても立ってもいられず、意を決してマイカーを運転して、いつものメンバー(夫婦登山です)で、いそいそと出掛けました。
* ニュウの山名由来: 何とも珍しい山名ですが、三省堂の日本山名事典によると「ニュウは入で、稲をハザ木に掛けた形に似ていることからの山名」とあります。ネット上には「南アルプス前衛の入笠山の山名由来も同じ」との記述もあります。この他に、「女性の乳房=にゅう」に由来するとする説などもあるようです。

●白駒池入口~ニュウ~中山~高見石~白駒池
 夏至も間近な、つまり朝のとても早い季節の夜明けに、東京都大田区の自宅からマイカーを走らせる。マイカーとはいっても、じつは私達の長男名義の車で、それを利用しての今回のマイカー登山だ。厳密に云うと借りた車だから「マイカー登山」というのにはちょっと違和感があるけれど…、まぁいいか。
 などと…そんな会話をしながら、中央高速道の諏訪南ICから約1時間、国道299号線(メルヘン街道)沿いの麦草峠の少し先、白駒の池・有料駐車場(1日600円)に着いたのは8時20分頃だった。平日なので駐車場にはたっぷりのスペースがあり、まずは一安心だ。支度して、清々しい風と青空にニンマリして、国道を横切って白駒池へ向かって歩き出す。ここは既に標高約2100mで、北八ヶ岳自然休養林の一角でもある。小鳥たちも爽やかに歌っている。
 青苔荘の前を通り、白駒池の縁を時計回りに進み、分岐を左折してニュウへ向かう。もうずぅ~っと辺りは、オオシラビソ、シラビソ、コメツガ、トウヒなどの黒木が優先する亜高山帯の針葉樹林…苔生す原生林だ!…が続いている。それが北八ツの真骨頂で、佐知子も私も溜息と感動の連発だ。…そういえば、コケ女(苔ガール?)と思しき若い女性のハイカーが目立つなぁ、このコースには…。
 やがて足元がガレてくると間もなく、岩がゴロゴロで三等三角点(点名:乳岩)のあるニュウの山頂2352mだった。ウワサ通りの360度展望で、東面の(小海線が走る)大きな谷を隔てた奥秩父の山々は少し霞んでいたけれど、近くの八ヶ岳連峰の峰々はくっきりと見えている。北面の眼下の…今さっき歩いてきた樹林帯や白駒池などはジオラマのようだ。
ニュウの山頂からの展望: 下手な動画ですが、YouTubeに投稿してみました。撮影中にちょっとこけて、怖かったです。(^^;)

 ニュウから主稜線(中山分岐)へ出るまでの登山道も、岩っぽいガレ場もあったけれど、その殆どはシラビソとコケの美林だった。足元の所々には可憐と妖艶を足して2で割ったようなコイワカガミが、きれいに咲いている。シラビソとオオシラビソの違いを観察したり、縞枯れ現象の現場を通過したり…北八ツの自然をゆっくりと楽しみながら…山稜を進む。
 中山2496mの山頂を知らずに通り過ぎ、その少し先の(ここも岩ゴロの)広々とした中山展望台でも大休止。北面(蓼科山方面)の素晴らしい展望を楽しみながら、梅干しとおかかのおにぎりを食べ、ペットボトルの麦茶を飲む。…この主稜線の尾根道は積雪時に二人で歩いている(→No.164「3月の天狗岳」)ので、そんな思い出話にも花が咲き…、「岩っぽい箇所など、雪道の方が歩きやすかったわねぇ」などと、ベテラン登山家を気取る私達だった。
 高見石小屋の後ろに位置する高見石の岩場もすこぶる展望はよいのだけれど、寄る年波で岩場がちょっと怖くて、疲れていたこともあり、岩を攀じ登るのはあきらめて、白駒池を目指してひたすら下った。
 白駒池に面した白駒荘の前を通り、来た道と合流して、白駒の池・駐車場に戻ったのは15時30分頃。少し疲れたけれど…、北八ツの良さを充分に堪能した一日に大満足だ。
 この日の宿は山麓に位置する横谷(よこや)温泉旅館にネット予約してある。

* 北八ヶ岳自然休養林内の白駒池周辺の原生林には…、何時のことからなのか、各ブロックごとにそれらしいネーミングがされている。私達が今回歩いたルート上には「白駒の森」「もののけの森」「にゅうの森」「オコジョの森」「高見の森」があり、その周辺にも「黒曜の森」「ヤマネの森」「カモシカの森」「丸山の森」「茶水の森」…などがある。もしかして細かく分けすぎかも、と思うのは私一人だろうか。
 なお、これらの森は日本蘚苔類学会から『日本の貴重なコケの森
(令和4年10月現在31件)』のひとつに認定されているそうで、やっぱり苔好きにはたまらない山域なんだろうと思う。奥秩父の深山も…苔生すという点では…とてもいいんだけどなぁ~~。

 佐知子の歌日記より
北八ツの苔むす山の静けさよ すべての音は緑に吸われ
「にゅう」という珍しき名の頂きに立てば少しは若返りする・・・か


温泉マーク 横谷温泉旅館: 白駒池入口からは車で約30分、諏訪南ICまでも約30分、国道299号(メルヘン街道)から少し入った横谷(よこや)渓谷の懐に位置する、つまりロケーションの良い大きな温泉ホテル。テレビドラマの刑事ものなどの舞台によく使われているらしい。泉質は弱酸性低帳性冷鉱泉、加温、掛け流し。鉄分と炭酸ガスを多く含んでいるとのことで、茶褐色に濁っている。肌触りはやわらかい感じで、口に含むと殆ど無味無臭。広い内湯も露天もぬるめの温度に設定してあるが、よく温まる。源泉(19℃)の浴槽もある。地元の食材を使った会席料理など、それなりに美味しかった。
 夕食後の…毎夜開催しているらしいが…ロビーコンサートがなかなかだった。この日は藤森敬一さん(ボーカル、ギター)と下川久美香さん(電子ピアノ)で、70年代フォークを中心に、心に響く歌声を聞かせてもらった。
 私達が支払った宿代は…最も安いコース「創業100周年特別宿泊プランコース」で…1泊2食付きで一人12,250円(税込み)だった。コスパは高い!
 外部サイトへリンク 「横谷温泉旅館」のホームページ

●翌朝・横谷峡散策(6月12日)
 この日は午後から天気が崩れるという予報だったが、朝食後に真っ直ぐ帰宅するのも勿体ないと思い、旅館の駐車場に車を置いて、横谷峡(横谷渓谷)の散策路を王滝展望東屋まで往復してみた。これが意外と良くて、幾つもの立派な滝を巡ったり樹木などの自然観察をしたりして、渓谷美を楽しめた。正味1時間半ほどの、蝉時雨を聞きながらの乙な遊歩道歩き…。歩いてみて本当によかった、と思った。
* 横谷峡で観察のできた樹木など: ミズナラ、サワグルミ、イタヤカエデ、チドリノキ(意外と多い)、テツカエデ、ハウチワカエデ、アオハダ、カンボク(白い装飾花)、アオダモ、オオバボダイジュ、ツリバナ、サワシバ(多い)、ヤシャブシ、ヤマツツジ(花)、針葉樹ではサワラが多い。・・・沢筋なので、やや湿り気のある場所を好む樹種が多いようだ。
 目立って咲いていた草本はクリンソウ、シロバナノヘビイチゴ、フタリシズカ、など。


 佐知子の歌日記より
黄土色の温めのお湯に時忘れ手足をほぐす横谷温泉
歌声よし選曲よしのコンサート ホテルのロビーに寛ぐ旅の夜
道すがら樹木の話しをする夫と王滝めざし食後の散歩


※ 本サイト(私達の山旅日記)の北八ヶ岳に関する山行記録
蓼科山・北横岳:H28年7月 北八ヶ岳縦走:H8年9月 冬の北横岳:H11年1月,他 縞枯山・茶臼岳:H26年3月 冬の天狗岳:H16年1月,他 天狗岳西尾根:H7年11月 八方台と天狗岳:H18年9月



コメツガ・シラビソの苔生す原生林!
コメツガ、シラビソの原生森
にゅうの森
シラビソとコケの美林
ニュウ~中山分岐

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まぁ、ゆっくりと歩きましょう!