東西の天狗岳
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第1日目
八方台にて
カモシカの団十郎…
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第2日目
第二展望台にて
西天狗岳の山頂
中山峠へ向かう
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私達の好きな山は、もう秋の気配…
第1日=JR中央本線茅野駅-《宿の送迎車35分》-唐沢鉱泉〜八方台〜唐沢鉱泉 第2日=唐沢鉱泉〜(天狗岳西尾根)〜西天狗岳2646m〜東天狗岳2640m〜中山峠〜黒百合ヒュッテ〜渋ノ湯-《タクシー35分》-茅野駅
【歩行時間: 第1日=1時間30分 第2日=6時間】
* 歩行時間については、今回は特にゆっくりペースです。
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
北八ヶ岳の最南に聳える双耳峰の天狗岳は、北八ツの優しさと南八ツの逞しさを併せもつ、なかなか興味深い山です。私達夫婦のとても好きな山のひとつでもあることから、山の仲間たち(山歩会)をお誘いしてみました。天狗岳の西麓・標高1870mに位置する唐沢鉱泉に前泊しての、ゆっくり安全登山です。第1日目は奥蓼科高原(八方台往復)の軽ハイキング。第2日目にメインの天狗岳登山をしました。
●第1日目(9/23・曇): まず八方台を往復
午後の2時頃、唐沢鉱泉にチェックインした私たちは、足慣らしを兼ねて、宿に荷物を預けて、八方台へハイキングに出かけました。ゆっくり歩いても往復2時間足らずの林道歩きです。
八方台という地名は全国の各地にありますが、何れも「眺望のいい場所」からきているネーミングのようです。この奥蓼科高原の八方台も、アルプスの展望台として古くから定評があったようです。最近では訪れる人は随分と少なくなってしまったようですが、「高原のお嬢さん」がブームだったころ(随分と昔の話です)には高原ハイキングのメッカとして人気を博していたといいます。
太平洋を北上している台風14号の影響があるようで、この日は雲が厚く生憎の天気でした。期待していた展望には恵まれませんでしたけれど、私たち一行はいつものように賑々しく和気藹々と、色づき始めた草木を観察したり、唐沢鉱泉の裏手にあるヒカリゴケ群生地を見て回わったりしました。
八方台からの復路、落ち始めたミズナラの堅果(どんぐり)などを拾いながら歩いていたら、誰かが「カモシカだ!」 と叫びました。見上げると、林道斜面(切取・のり面)の上部(のり頭の小段)に黒っぽい立派なカモシカがまるで歌舞伎役者の団十郎のように立っています。そのカモシカは私たちを観察するようにいつまでもじっと見下ろしていました。
●第2日目(9/24・晴): 天狗岳西尾根を登る
唐沢鉱泉の朝風呂を楽しんでから、朝食後、歩き出したのは7時30分頃でした。やや細身の(オオ?)シラビソやコメツガなど、亜高山性の針葉樹の森は鬱蒼としています。苔生した林床の様子などもなかなか趣があります。幹の細いダケカンバの純林を抜けて暫らく進むと稜線(天狗岳西尾根)へ出ます。樹高が徐々に低くなり、シャクナゲやハイマツが現れます。花は、もうその花期を逸していたものか、殆ど咲いていません。そのせいもあるのでしょうか、道端のゴゼンタチバナの赤い実がやけに目立ちます。
視界が開けてきて、後方の彼方に北アルプスの峰々や蓼科山などが見えてきました。第一展望台、第二展望台など、休憩場所には事欠きません。北アルプスの左手には御嶽や中央アルプスの山並みもよく見えています。そして、赤岳や阿弥陀岳などの南八ヶ岳の景観はもっと近くに、豪快に見えています。
第二展望台から少し下って、目の前の大きな西天狗岳へ登り返します。鞍部からの標高差は約170mくらいでしょうか。八ヶ岳の森林限界は標高約2500mだといいますが、ちょうどこの辺りがそうでした。ゴロ岩とハイマツの、ちょっとアルペンムードの登りです。
標高2500m以上の山に生まれて初めて登る、というウキウキ女性メンバーもいましたが、軽い高山病の症状を訴える男性メンバーも出てきましたので、さらにペースダウンして対応します。
ハイマツに囲まれた西天狗岳2646mのなだらかな山頂に着いたのは11時半頃でした。ここで山岳展望を楽しみながら昼食。宿(唐沢鉱泉)で作ってもらったお弁当はおかずがたくさんあって、美味しくいただけました。主稜線から外れた位置にあるのが幸いしているのか、静かで好ましい山頂でした。
西天狗岳から岩がゴツゴツしている東天狗岳2640mへ登り返しますと、再び360度の大展望です。これもまったく、なんという素晴らしい眺めだったでしょうか。佐久平方面(東側)は霞んでいましたが、南と北の八ヶ岳の風景が対照的で面白く、その遠巻きに日本アルプスたちがずらっと勢揃いです。
名残り惜しいですが、南面の八ヶ岳の主峰たちに別れを告げて、ここ(東天狗岳)からは主稜線を北上します。前方の北八ツの峰々の山腹には縞枯れ現象
[No.33北八ヶ岳縦走のコラム欄を参照してください] がはっきりと見て取れます。なんとも云えず穏やかな景色の、快晴ということもありますが、素晴らしい空中散歩です。私は仲間たちと軽口を言い合いながらも、稜線へ出てからはずっと、2年半前の冬に訪れたときのこと[1月の天狗岳]を思い出していました。
思ったことは、冬期と夏期では“全然違う!”ということでした。冬は歩きやすかった雪道が無雪期の今回はゴロ岩の道でかえって歩きにくかった、というような「発見」もありました。そして、覚えている稜線上の雪庇(せっぴ)の位置については予想以上に多く張り出していたことが分かり、雪道の「踏み抜き」による危険と隣り合わせだったんだな、と、しみじみと悟りました。冬山は、矢張り怖いですね。
中山峠から黒百合ヒュッテを経由して、黒木(シラビソやコメツガなど)の感じのいい樹林帯を通り、下山口の渋ノ湯に着いたのは午後4時20分頃でした。喜び勇んで渋御殿湯の受付へ入ると、入浴のみは午後3時まで、とのことでガックリです。ゆっくりと歩きすぎたかなぁ、と後悔もしました。しかし、後で分かったことなのですが、私たちは何故かこの渋御殿湯しか頭にありませんでしたが、このすぐとなり(上手)に「渋の湯ホテル」があり、そちらでは優しいご主人がいて入浴を受け付けていたらしいのです。その情報は帰路のタクシーの運転手さんから聞いた話しなのですが、それなら何故、渋御殿湯の受付の人はそう云ってくれなかったのか、と、ちょっと訝しく思いました。タクシーの運転手さんから聞いた話や私達夫婦が過去数回利用した経験論から推察して、どうやら、やはり、渋御殿湯はヘンコ(偏固)のようです。
予定していた下山地(渋の湯)での入浴が出来なかったのは残念でしたけれど、じつは、座席指定予約のしてあった茅野駅からの「あずさ」の時間の関係で、いずれにしても入浴はちょっとむずかしい状況だったのです。快晴の天狗岳の素晴らしさに免じて、まぁいいか、の心境です。
尚、西天狗岳の山頂付近で軽い高山病のために体調を崩されていた最長老の男性メンバー(69歳)は、下山時に高度が下がるにしたがって元気になり、帰りの「あずさ」の車中では美味しそうに缶ビールを飲んでいました。
比較してみてください!
雪庇(冬山)の怖さがおわかりになりますか?
今回(9月)の東天狗岳
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1月の東天狗岳(過日撮影)
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* 雪庇(せっぴ): 山の稜線から風下の谷側の空間に向かって張り出した庇(ひさし)状の積雪。[大辞林]
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