常念山脈北部縦走・5日間の山旅日記(前編) No.480-1 蝶ヶ岳~常念岳~燕岳 令和6年(2024年)7月29日~8月2日 |
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雨にもめげず、まず蝶ヶ岳へ 【コースタイム: 第1日=2時間50分 第2日=6時間 第3日=8時間 第4日=約8時間30分 第5日=約4時間20分】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(常念岳)へ 夏のシーズンの5日間、山の仲間たち(山歩会)と、北アルプスの常念山脈北部を縦走してきました。私にとっては超懐かしい…数々の思い出のつまった…珠玉のトレイルです。 今回のメンバーは総勢7名。そのうち徳沢園までが3名で、登山隊(蝶ヶ岳から中房までの縦走隊)は4名でした。平均年齢はもちろん、優に70歳を超えています。 ●7月29日・晴(上高地~徳沢園) 東京から公共交通を利用して上高地に着いたのはお昼頃だった。バスターミナル近くの梓川に面した小広場のベンチで昼食の弁当を食べてから、徐に歩き出す。かっこいい穂高連峰の一部が見えている。7名のメンバーはみんな元気で、和気藹々だ。 7月上旬の集中豪雨の影響で小梨平キャンプ場~明神の区間(梓川左岸歩道)は通行禁止になっているので、河童橋を渡って自然探勝路(梓川右岸歩道)を進む。コースタイム的には20~30分ほど余分に歩くことになるけれど、この日の“時間”はたっぷりとあるので、かえって都合が良かったかもしれない。ハルニレやサワグルミやヤナギ類(ケショウヤナギ、エゾヤナギ、オオバヤナギ、イヌコリヤナギ、ドロノキなど)に代表される上高地の渓畔林を観察したり、明神岳の岩壁直下に位置する神秘的な明神池(穂高神社)に参拝したり、梓川畔でサル(アルパインモンキーだ!)の群れに出遭ったり…、楽しく歩くことができた。それにしても明神池の拝観料@500円は、う~ん、ちょっと高いかも…。 嘉門次小屋のイワナの塩焼きに後ろ髪を引かれたけれど、きょうの宿・徳沢園の夕食のメニューにあるかもね、ということで、ここは素通りした。 明神橋を渡って明神館のT字路を左折して、梓川左岸コースを遡上する。何処も彼処も、上高地はとても懐かしい。 徳沢園に着いたのは15時50分頃。風呂上がりの宴会は…思惑通りイワナの塩焼きも出されたりして…もちろん盛り上がる。男女別の個室(3人+4人)の1泊2食付きの宿泊料は一人19,250円(税込)だったが…、う~ん、これもやっぱり高いなぁ~。 佐知子の歌日記より 朝食はあずさ号にてお決まりのあさりたっぷり深川弁当 梓川右岸の道は混み合いて外人多し明神までは 徳沢園みごとな食事に酒・会話 はずむ老い人七人である
3名のメンバーが…其々体調不良で…徳沢園までという約束だった。その3名に別れを告げて、歩き始めたのは午前5時15分頃だった。昨日は徳沢園の前庭からも見えていた前穂は厚い雲の中。しかも雨が降っている…。常念山脈縦走隊のメンバーは私達夫婦を含めて4名…、何気に、男性は私だけだ。一抹の不安とプレッシャーを押しのけて、雨具に身を包み、とにかくこの日はひたすら登るしかない。徳沢園の右手奥が長塀(ながかべ)尾根から蝶ヶ岳へ続く登山口になっている。 いきなりの急登だけれど、整備された登山道だ。30分~40分歩いては約10分間の休憩、といったペースで、コメツガ、シラビソ、トウヒ、ダケカンバなどの樹林帯を、ゆっくりと休み休み、ジグザグと登る。雨足が弱くなったころを見計らって、徳沢園の朝食弁当(ちまき弁当)を食べる。其々が持ち寄った菓子類なども、休憩の度に口にする。林床のカニコウモリは今がその花の旬であるようだ。イチヤクソウが咲いている。ウサギギクやゴゼンタチバナも咲いている。雨は降ったり止んだりを繰り返す。 標高2500m近くなってくると傾斜は幾分か緩み、樹木の背も低くなってくる。そろそろ森林限界かな、と思った処が長塀山の地味な山頂2565mで、更に進んで樹林帯を少し下り、なだらかに登り返して神秘的な妖精ノ池を通り越すと、完全に森林限界を超える。北アルプスの森林限界は凡そ標高2500mと云われているけれど、う~ん、マニュアル通りだ。自然って、やっぱりとても律儀だ。 振り返ると…晴れていれば…梓川の流れる深い谷を挟んで…穂高~槍の大絶景なのだが、それは今は雲とガスの中だ。展望は明日以降の楽しみにして、岩っぽくなってきてハイマツやハクサンシャクナゲの目立つ高山帯を登りきると、そこが蝶ヶ岳の最高点(長塀ノ頭2677m)で、ほっと一安心だ。今ではこの長塀ノ頭がイコール蝶ヶ岳山頂、ということになっているらしい。その北側のすぐ近くに蝶ヶ岳ヒュッテの赤い屋根が見えている。 びしょ濡れになって、蝶ヶ岳ヒュッテにチェックインしたのは13時20分頃。乾燥室が大賑わいだった。 * 常念山脈: 松本平の西側に、標高差2000m近い高度で聳えて連なる北アルプス南東部の山脈で、槍・穂高連峰とは梓川を挟んで平行に対峙する。北端の唐沢岳(からさわ・2632m)から、餓鬼岳(がき・2647m)、東沢乗越を経て燕岳(つばくろ・2763m)、有明山(ありあけ・2268m)、大天井岳(おてんしょう・2922m)、横通岳(よこどおし・2767m)、常念岳(じょうねん・2857m)、蝶ヶ岳(ちょう・2677m)、大滝山(おおたき・2614m)、徳本峠を越えて霞沢岳(かすみざわ・2646m)まで、直線距離にして30キロメートルになんなんとする長大な山脈だ。山脈の最高峰は大天井岳だが、端正な金字塔の姿といい量感といい、中央に位置する常念岳を盟主とするに異存のある人はいないと思う。 今回私達が歩いたのは、上高地の徳沢から入山し蝶ヶ岳~常念岳~燕岳と北へ縦走して中房温泉へ下るという、北アルプス登山の代表的な入門コースのひとつで、槍・穂高連峰の大パノラマを満喫できることでも定評がある。なお、この山稜は日本の高山蝶研究の第一人者であり写真家でもあった田淵行男氏(1905-1989)ゆかりの場所でもある。高山蝶9種のすべてが観察できたというこのコースを特に「アルパイン・バタフライ・コース」と名づけていたそうだ。[山岳ガイドブックやウィキペディアの該当項などを参考にして記述] * 蝶ヶ岳の山頂について: 蝶ヶ岳は常念山脈の主峰の1座で、なだらかな頂稜からの穂高連峰の眺めは壮観だ。お花畑や独特の二重山稜をもつことでも有名だ。しかしながら、その「山頂」については案外ややこしい。というのは、蝶ヶ岳山脈とでも名付けたくなるほど南北に細長い頂稜には幾つものピークがあるからだ。最高点は蝶ヶ岳ヒュッテ南側直近の長塀ノ頭2677mだが、三角点2664mはヒュッテから稜線を北へ歩くこと約30分の位置にある。蝶槍の岩塔はその三角点から更に北へ約10分の距離にある。ヒュッテ北側直近には展望指示盤が置かれているピーク(瞑想の丘)もあったりして、なんか判然としない。所謂蝶ヶ岳の山頂と云う場合は最高点の長塀ノ頭を指すらしいが…。何れにしても、山頂標識の位置は、昔(確か三角点辺りにあったような…)とは随分と変わってしまったようだ。 尚、蝶ヶ岳の山名の由来については、高山蝶が多いからではなく、豊科付近から山稜に見える残雪期の蝶の雪型によるもの、とのことだ。 * 今回の山旅で出遭った花たち: カニコウモリ、バイケイソウ、イチヤクソウ、ギンリョウソウ、ウサギギク、マルバダケブキ、コバイケイソウ、ミヤマアキノキリンソウ、クルマユリ、ゴゼンタチバナ、キヌガサソウ、ハクサンフウロ、ニッコウキスゲ、モミジカラマツ、ミヤマコゴメグサ、コウメバチソウ、ウラジロタデ、オンタデ、メイゲツソウ、イワツメクサ、タカネツメクサ、エゾシオガマ、ヨツバシオガマ、ハクサンチドリ、ミヤマキンポウゲ、チングルマ、ミヤマキンバイ、ミヤマトリカブト、イワギキョウ、チシマギキョウ、ウラジロナナカマド(果実)、タカネナナカマド(果実)、ハクサンシャクナゲ、イブキトラノオ、イワツメクサ、タカネツメクサ、コメススキ、コマクサ、…など 常念山脈・5日間の山旅の写真集へ 佐知子の歌日記より 黙々と雨の山道登りたり蝶ヶ岳へと重いリュックで 次項(後編)へ続く ※当サイトの常念山脈関係のページ 蝶ヶ岳から常念岳:H16年(2004年)8月 燕岳:H18年(2006年)5月 表銀座縦走(燕~大天井~槍):H20年(2008年)8月 霞沢岳:H27年(2015年)6月 |