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No.56 淡雪山から興因寺山(甲府)
平成10年(1998年)1月10日〜11日 晴れ


雪道に点々と猪の足跡…

第1日=JR甲府駅-《タクシー》-和田町・緑ヶ丘総合グラウンド〜白山〜堂ノ山〜千代田湖〜甲府YH〜金子峠〜淡雪山〜興因寺山855m〜積翠寺温泉 第2日=積翠寺温泉〜武田神社-《バス》-甲府駅 【歩行時間: 第1日=4時間50分(雪道) 第2日=50分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページ(興因寺山)へ


  一昨日の午後から翌未明にかけて関東地方に2年ぶりの大雪が降った。
  心配していた積雪量は15〜20センチ程度で、思ったほどではなく、新調したスパッツのおかげで快適に歩けた…、と言いたいところだが、矢張り若干苦戦。 雪道の難しさを実感する羽目になった。 アイゼンは持参したが、使用しなかった。
花崗岩の露出している淡雪山
淡雪山の山頂部

三角点の標石にタッチ!
興因寺山の山頂
  ここいら辺の山道は「武田の杜遊歩道」と呼ばれており、甲府市民に親しまれているとのことだが、道標がほとんど無く、一面の積雪も手伝って、自分達が今いる場所とか分岐点での方向が全然分からない。 ガイドブックの曖昧な地図と、若い頃に買い求めた昭和48年測量の古い5万図と、中学生の頃から使っている(つまり37年間使っている)オモチャのようなコンパスとで何とかストレイシープは免れた。 赤松の多い山だった…。
  遊歩道入口で散歩中の地元の老人3名に逢った。 静かな湖上に釣のボートが浮かぶ千代田湖畔でも地元の老人と擦れ違った。 金子(きんす)峠に出て、やっと淡雪山(あわゆきやま)への尾根道を見つけて安堵する。 おあつらえむきの雪の無い地面の小岩に腰をかけて弁当を食べているとき、猪を追っている猟師たちに出会った。 「手負いの猪に注意しろ!」 と驚かされた。 猟師たちが持っている黒光りのする本物の猟銃を間近に見て、一瞬、真剣の刃先を胸元に突きつけられたときのような戦慄が走った。
  金子峠からは誰にも出逢わなかった。
  尾根筋の雪の上に猪らしき足跡と犬の足跡。 そして生々しい血痕が点々と付いているのを発見した。 背筋が凍る思いをした。 それは寒さのせいでもなく、猪が怖いわけでもなかった。 人間の業(ごう)が、多分、怖かったからだと思う。 暫し茫然として、なんとも云えず悲しい思いで、私達夫婦はその猪の血痕を見ていた。
  でも…、今晩の宿の夕食で「猪鍋」がでてきたら矢張り私達は食べるだろう。 これも人間の業か…。 花崗岩の露出している淡雪山からの下り、暫くそんなことを考えていた。
  三等三角点(点名:相川)の標石と鉄塔のある興因寺山(こういんじやま・854.5m)の山頂からは、相変わらず南アルプスや富士山がよく見えていた。 甲府の街が積雪のために薄いベージュ色に染められて、まるでエッフェル塔から眺めたパリの街のように美しかった。
* 狩猟には、増え過ぎた動物の個体数を調整する“機能”もあり、地域の永い歴史の中でそれ自体が“自然保護”になっている場合が多い。 日本の山における絶滅危惧種は「若者」と「猟師」である、とも揶揄されている昨今だが、狩猟については、情緒だけによる短絡的な“非難”は危険である。
  このときの私達は、ただ悲しいだけだったのだ…。

積翠寺温泉「古湯坊」 積翠寺温泉「古湯坊」: 要害温泉(新湯)と古湯坊温泉(古湯)を合わせて積翠寺温泉と呼ばれているそうだ。 私達が下山後に泊った古湯坊温泉は、昨年の9月にリニューアルしたらしい。 新築の木の臭いのするツインのベッドルームと十畳の和室にベランダが付いて、一人14,200円は安い、と思ったのだが、風呂は大きいがぬるすぎて、泉質もこれといった取り柄が無いようだし、和風食堂での食事はおかずが少なすぎて少し物足りない。 広い絨毯のロビーは良いと思った。 酸性緑礬泉、加熱。 浴槽は岩貼り。
  翌朝、武田神社まで約3キロの車道を歩いてみた。 アスファルトだが、ちょうどいい“散歩”だった。 初詣がようやく(ついでに)できたのが嬉しかった。
* この後、経営者に代替わりがあって、引き継いだ十八代目は、平成19年(2007年)10月、「古湯坊」という旅館名に「坐忘庵」を付け加えたようです。 内容的にも“リニューアル”が進んでいるらしいです。 [後日追記]
* そのまたその後(2017年7月)、“改装資金の調達困難…再開めどたたず” とのことで、同年1月の「要害」と同様、「坐忘庵」は閉館(休館?)したようです。…とても残念なことだと思います。[後日追記 ]

兜山から積翠寺温泉(平成25年2月): この15年後の山行記録です。[後日追記]

 かりゅど  金子みすゞ
ぼくは小さなかりゅうどだ、 ぼくは鉄砲の名人だ。
鉄砲は小さな杉鉄砲、 弾丸
(たま)は枝ごと提(さ)げている。
みどりの鉄砲、肩にかけ、 山みち、小みちをすたこらさ。
ぼくはやさしいかりゅうどだ、 ほかのかりゅうど行くさきに、
すばやくぬけて、鳥たちに、 みどりの弾丸を射
(う)ってやる。
みどりの弾丸は痛かない、 鳥はびっくり、飛ぶばかり。
鳥はそのときゃ、怒るだろう、 でも、でも、ぼくはうれしいよ。
ぼくはちいさなかりゅうどだ、 ぼくは鉄砲の名人だ。
みどりの鉄砲、肩にかけ、 山みち、小みちをすたこらさ。



アイゼンは必要なかった
赤松の多い山…(金子峠〜興因寺山)
まるでパリの街よう・・・(バックは南ア)
甲府の街並みを俯瞰する

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